モガディシュの戦闘せんとう

モガディシュの戦闘せんとう
戦争せんそう：ソマリア内戦ないせん
年月日ねんがっぴ：1993年ねん10月3日にち-10月4日にち
場所ばしょ：モガディシュ市内しない バッカラ市場いちば周辺しゅうへん
結果けっか：Habar Gidir(ハウィエ)派はの幹部かんぶたちの捕縛ほばくに成功せいこうするも、米べい軍ぐんの損害そんがい甚大じんだい
交戦こうせん勢力せいりょく
アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく パキスタン マレーシア	アイディード派は民兵みんぺい
指導しどう者しゃ・指揮しき官かん
ウィリアム・ガリソン	不明ふめい
戦力せんりょく
デルタフォースＣ中隊ちゅうたい 第だい75レンジャー連隊れんたい第だい3大隊だいたいB中隊ちゅうたい 第だい160特殊とくしゅ作戦さくせん航空こうくう連隊れんたい第だい1大隊だいたい 第だい10山岳さんがく師団しだん SEALs チーム6 空軍くうぐん第だい24特殊とくしゅ戦術せんじゅつ飛行ひこう隊たい 米べい陸軍りくぐん情報じょうほう支援しえん隊たい パキスタン陸軍りくぐん マレーシア陸軍りくぐん 合計ごうけい160名めい	民兵みんぺい1,500-2,000名めい
損害そんがい
<アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく> 戦死せんし19名めい、負傷ふしょう73名めい、捕虜ほりょ1名めい MH-60墜落ついらく3機き（1機きは空港くうこうに不時着ふじちゃく） <マレーシア> 戦死せんし1名めい、負傷ふしょう7名めい <パキスタン> 戦死せんし1名めい、負傷ふしょう2名めい	戦死せんし200-500名めい 負傷ふしょう500-812名めい 捕虜ほりょ2名めい

モガディシュの地図ちず

モガディシュの戦闘せんとう（モガディシュのせんとう）は、1993年ねん10月3日にち、ソマリアの首都しゅとモガディシュにおいてアメリカ軍ぐんとソマリア民兵みんぺいとのあいだで発生はっせいし、のちにアメリカがソマリア内戦ないせん介入かいにゅうから撤収てっしゅうするきっかけとなった戦闘せんとうである。戦闘せんとうの激はげしかった地域ちいきの名なを取とって「ブラック・シーの戦たたかい」とも呼よばれる。

概要がいよう

1993年ねん10月3日にちに統合とうごう特殊とくしゅ作戦さくせんコマンド（JSOC）の実行じっこうした作戦さくせんであり、ソマリアで行おこなわれたもので、第だい一いち目標もくひょうはソマリア民兵みんぺいの将軍しょうぐんであるモハメッド・ファッラ・アイディードの側近そっきん二に人にんを捕とらえることだった。後のちにこの出来事できごとは世界中せかいじゅうのメディアによって『モガディシュの戦闘せんとう』と名なづけられた。

冷戦れいせんの終結しゅうけつと共ともに始はじまったソマリア内戦ないせんは泥沼どろぬま化かし、戦争せんそうによる難民なんみんの飢餓きがが国際こくさい的てきな課題かだいとなった。国際こくさい連合れんごう（UN）は難民なんみんへの食糧しょくりょう援助えんじょを行おこなうため、平和へいわ維持いじ活動かつどうから平和へいわ強制きょうせい活動かつどうによる軍事ぐんじ的てき介入かいにゅうを行おこなった。アイディード派はによる敵対てきたい者しゃたちへの軍事ぐんじ的てき包囲ほういをやめさせ、飢餓きが状態じょうたいを救すくおうとした。

作戦さくせんは国連こくれん主導しゅどうのものではなく、米国べいこく（当時とうじの大統領だいとうりょうはビル・クリントン）が単独たんどくで行おこなったものであった。米べい軍ぐんは作戦さくせんを30分ふん程度ていどで終おわらせる自信じしんがあったが、実際じっさいには15時じ間あいだを費ついやし、2機きのヘリコプターを失うしない、銃撃じゅうげき戦せんによって19名めいの米兵べいへいを殺害さつがいされ（国連こくれん軍ぐん兵士へいし2名めいを入いれると21名めい）、ソマリア民兵みんぺい・市民しみん200名めい以上いじょう（米べい政府せいふ発表はっぴょうは1,000名めい以上いじょう）を殺害さつがいした。撃墜げきついされた1機き目めのヘリ「スーパー61」の『We got a Blackhawk down, We got a Blackhawk down（ブラックホークの墜落ついらくを確認かくにん、ブラックホークの墜落ついらくを確認かくにん）』という墜落ついらく時じの交信こうしんで有名ゆうめいである。スーパー61が墜落ついらくした第だい一いち墜落ついらく地点ちてんは激戦げきせん地ちとなった。

1999年ねん、マーク・ボウデンにより'Black Hawk Down: A Story of Modern War'（邦題ほうだい『ブラックホーク・ダウン　アメリカ最強さいきょう特殊とくしゅ部隊ぶたいの戦闘せんとう記録きろく』早川書房はやかわしょぼう刊かん）という本ほんとして出版しゅっぱんされ、2001年ねんにはリドリー・スコット監督かんとくにより、『ブラックホーク・ダウン』として映画えいが化かされた。

作戦さくせん状況じょうきょう

主おもにレンジャー部隊ぶたいとデルタフォース（第だい1特殊とくしゅ作戦さくせん部隊ぶたい分遣ぶんけん隊たい-デルタ）から成なるアメリカ特別とくべつ作戦さくせん部隊ぶたいは、アイディード派はの外務がいむ大臣だいじんオマール・サラッド・エルミン(Omar Salad Elmim)と最高さいこう政治せいじ顧問こもんモハメッド・ハッサン・エワレ(Mohamed Hassan Awale)を捕とらえる事ことを目的もくてきとした作戦さくせんコード「アイリーン」を発動はつどうした。

作戦さくせん計画けいかく

作戦さくせんコード「アイリーン」

1. ナイトストーカーズが航空こうくう支援しえんを担当たんとうし、以下いかの機種きしゅが投入とうにゅうされる。
   • MH-60 ブラックホーク
   • OH-6 カイユース
   • MH-6/AH-6 リトルバード - OH-6の特殊とくしゅ部隊ぶたい向むけモデル。
2. 侵入しんにゅう
   • タスクフォースレンジャーは、ブラックホークから迅速じんそくに目標もくひょうビルに降下こうかし、建物たてものの四隅よすみを占拠せんきょし目標もくひょう周辺しゅうへんの安全あんぜんを確保かくほする。
   • デルタフォースは、リトルバードから建物たてもの内ないに突入とつにゅうし、生いきたまま対象たいしょう人物じんぶつを捕とらえる。
3. 離脱りだつ
   • ハンヴィーの車両しゃりょう部隊ぶたいが、全員ぜんいんを収容しゅうようする。
   • ナイトストーカーズが空そらから支援しえんする。

作戦さくせん開始かいし後ごの数すう分間ふんかん、4組くみのチョーク（積載せきさい班はん、ヘリコプターへの搭乗とうじょうを前提ぜんていとして編成へんせいされた戦闘せんとう班はんの意い）から成なるレンジャーが作戦さくせん対象たいしょうのビルの四隅よすみに展開てんかいし、安全あんぜん地帯ちたいを確保かくほする事ことに成功せいこうしたものの、ソマリア人ひとの住民じゅうみんや民兵みんぺいの手てにより、ハンヴィーで構成こうせいされた地上ちじょう部隊ぶたいが安全あんぜん地帯ちたいに辿たどり着つけないように、岩いわや火ひのついたタイヤを用もちいてモガディシュの通とおりにバリケードが作つくられていた。

モガディシュ街路がいろの上空じょうくう70フィート（約やく21メートル）でホバリングするヘリコプターから米べい軍ぐんのレンジャー、及および、デルタフォースが降下こうか、民兵みんぺいのリーダーたちを捕とらえるという任務にんむを順調じゅんちょうに達成たっせいしたが、長時間ちょうじかんに渡わたる遅延ちえんの間あいだに、数すう分ふん後ごにはソマリア民兵みんぺいによってMH-60 ブラックホーク1機きが撃墜げきついされた。

ブラックホークによる急襲きゅうしゅう部隊ぶたいと車両しゃりょうから展開てんかいした地上ちじょう部隊ぶたいは互たがいを視認しにんできないまま20分間ふんかんひたすらに戦線せんせんを維持いじしていたが、何なにとか接触せっしょくする事ことに成功せいこうする。だが、この直後ちょくごに2機き目めのブラックホーク(スーパー64)が撃墜げきついされた。この際さい、デルタフォースの2人ふたりの狙撃そげき員いん、ランディ・シュガート一等いっとう軍曹ぐんそうとゲーリー・ゴードン曹長そうちょうが、近ちかづきつつある民兵みんぺいたちから負傷ふしょうしたブラックホークのパイロット（マイケル・デュラント准尉じゅんい）を守まもるために地上ちじょうに降下こうかした。民兵みんぺいの規模きぼや攻撃こうげきの危険きけんを知しりつつ、また、統合とうごうタスクフォース指令しれいセンターからヘリにとどまった方ほうがよいと助言じょげんされながらも、躊躇ちゅうちょすることなく地上ちじょうに降下こうかしたその決断けつだん力りょくからベトナム戦争せんそう以来いらいの名誉めいよ勲章くんしょうを授与じゅよされた。しかし、両りょう兵士へいしとも数すうで勝まさる民兵みんぺいたちによって殺害さつがいされている。

墜落ついらくしたスーパー64の乗員じょういん達たち

武装ぶそうしたソマリア民兵みんぺいと武装ぶそう車両しゃりょう（テクニカル）

地上ちじょう部隊ぶたいはやがて最初さいしょの墜落ついらく地点ちてんに到着とうちゃくした。約やく90人にんのレンジャーたちは激はげしい銃撃じゅうげきによって包囲ほういされた。航空こうくう支援しえんが十分じゅうぶんに受うけられない状況じょうきょう下かで、次つぎの日ひの早朝そうちょうに米べい軍ぐん第だい10山岳さんがく師団しだんやマレーシアとパキスタンの国連こくれん部隊ぶたいが救援きゅうえんに来くるまで、レンジャーたちは夜通よどおし戦たたかい続つづけた。他たの国連こくれん部隊ぶたいによる救援きゅうえんの計画けいかくや調整ちょうせいは作戦さくせんの困難こんなんさを考慮こうりょしながら行おこなわれたため、時間じかんがかかった。

兵士へいしたちの話はなしによると、戦闘せんとうが続つづくにつれてアイディード派はの民兵みんぺいたちは兵士へいしを遮蔽しゃへいするために市民しみんを彼かれらの前まえに押おし出だしていた。しかしながら、アメリカ軍ぐん兵士へいしが民兵みんぺいを隠かくすような市民しみんを何なん度どもためらわずに射殺しゃさつしたため、市民しみんによる遮蔽しゃへいは減へった。また、少数しょうすうの米兵べいへい（車両しゃりょう）を多数たすうで挟はさみ銃撃じゅうげきし、その流ながれ弾だまによる同士討どうしうちも多数たすう目撃もくげきされている。

翌よく10月4日にち午前ごぜん6時じ30分ふん、米べい軍ぐんは国連こくれんのパキスタン・スタジアムに引ひき上あげてきた。米兵べいへい18人にんが死亡しぼう・74人にんが負傷ふしょう(後のちに1人ひとり死亡しぼう)、国連こくれん軍兵ぐんびょう2人にんが死亡しぼう・9人にんが負傷ふしょうしていた。

この戦闘せんとうは、ソマリアの国連こくれん活動かつどうの中なかでアメリカ軍ぐんが直面ちょくめんしたもっとも激はげしい市街しがい戦せんのうちの1つであった。また、この戦たたかいの後のち、死亡しぼうした米兵べいへい（上記じょうきの降下こうかした2名めいとブラックホークの乗員じょういん）の遺体いたいが裸はだかにされ、住民じゅうみんに引ひきずり回まわされるという悲惨ひさんな映像えいぞうが公開こうかいされ、アメリカのニュース番組ばんぐみで放映ほうえいされた（後のちに身体しんたいを切断せつだんされた状態じょうたいで発見はっけんされる）。これに衝撃しょうげきを受うけたアメリカ国民こくみんの間あいだで撤退てったい論ろんが高たかまった。アメリカ世論せろんを背景はいけいにビル・クリントンは1994年ねん、ソマリアからの撤兵てっぺいを決定けっていしたが、この戦闘せんとうが平和へいわ維持いじ活動かつどうから撤退てったいしたことの理由りゆうの1つとして挙あげられている。また、クリントンはこの作戦さくせんの痛手いたでによって、その後ごは地上ちじょう軍ぐんの派遣はけんを渋しぶり、ミサイルや航空機こうくうきによるハイテク戦争せんそうへの方向ほうこうを推おし進すすめていく。

この作戦さくせんの所期しょきの目的もくてきは達成たっせいされたため「作戦さくせん上じょうは成功せいこう」であったが、当初とうしょ30分ふん程度ていどで終了しゅうりょうする予定よていの任務にんむが夜よるをまたいで15時じ間あいだにもおよび、多おおくの犠牲ぎせいを出だした。

関連かんれん項目こうもく

• ソマリア内戦ないせん
• 戦闘せんとう一覧いちらん
• 市街しがい戦せん
• 第だい二に次じ国際こくさい連合れんごうソマリア活動かつどう
• ブラックホーク・ダウン
• ランディ・シュガート
• ゲイリー・ゴードン
• シュガート級きゅう車両しゃりょう貨物かもつ輸送ゆそう艦かん
• ゴードン級きゅう車両しゃりょう貨物かもつ輸送ゆそう艦かん
• Delta Force: Black Hawk Down - PC、PS2、Xboxにて発売はつばいされたFPSゲーム。