地域ちいき研究けんきゅう

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地域ちいき研究けんきゅう(ちいきけんきゅう、英語えいご: area studies)とは、おも国家こっか規模きぼ地域ちいき対象たいしょうとして、かく地域ちいきともせい留意りゅういしながら、その地域ちいき特色とくしょく地域ちいき比較ひかくしながら考察こうさつし、当該とうがい地域ちいき政治せいじ経済けいざい産業さんぎょうほう制度せいど社会しゃかい文化ぶんか民俗みんぞくなどについてひろ研究けんきゅうする学問がくもん分野ぶんやである。

歴史れきし概要がいよう[編集へんしゅう]

地域ちいき研究けんきゅう (area studies) の発祥はっしょう通常つうじょうアメリカとされる。戦後せんご冷戦れいせん背景はいけいとして世界せかい全域ぜんいきへの関与かんよつよめたアメリカだったが、モンロー主義しゅぎ影響えいきょうなどもあって、中南米ちゅうなんべい以外いがいだいさん世界せかいについての知見ちけん限定げんていされたものだった。そのため、アメリカの世界せかい戦略せんりゃく推進すいしんするための知識ちしき情報じょうほう蓄積ちくせきする、いわば「地域ちいき物知ものしり」が必要ひつようとされるようになった。そのためアメリカは巨費きょひとうじてアジアアフリカ専門せんもん育成いくせいした。これらの地域ちいきは、西洋せいようてき常識じょうしき通用つうようしないため、従来じゅうらい経済けいざいがく法学ほうがく歴史れきしがくといった枠組わくぐみでは分析ぶんせきしきれず、人類じんるいがく民族みんぞくがく成果せいか手法しゅほうれた学際がくさいてき手法しゅほうることがおおかった。その意味いみでは、東洋とうようがく植民しょくみん地学ちがくのアメリカばんともいえる。

下位かい分野ぶんや[編集へんしゅう]

隣接りんせつ学問がくもん領域りょういきとの接点せってん[編集へんしゅう]

地域ちいき研究けんきゅうという名前なまえからは、地域ちいきとはなにか?、あるいは、国家こっか地方ちほう行政ぎょうせい相互そうご排他はいたてきであるのにたいし、重層じゅうそうてき相互そうご重複じゅうふくてき存在そんざいしうる地域ちいき特質とくしつ、といったことへの考察こうさつ連想れんそうされるが、これらはむしろ政治せいじ経済けいざいがく分野ぶんや地域ちいき主義しゅぎなどでなされていて、地域ちいき研究けんきゅうわれることはすくない。また、地縁ちえん関係かんけいもとづく基層きそうてき地域ちいき社会しゃかい対象たいしょうとする研究けんきゅう地域ちいき研究けんきゅうではなく社会しゃかいがく対象たいしょうとされている(地域ちいき社会しゃかいがく農村のうそん社会しゃかいがく)。一方いっぽうユーラシア南北なんぼくアメリカといった広域こういきてき地域ちいき研究けんきゅう国際こくさい関係かんけいろん対象たいしょうとされ、地域ちいき研究けんきゅうあつかわれることはすくない。地域ちいき研究けんきゅうは、国際こくさい関係かんけいろん比較ひかく政治せいじがくのように、複数ふくすう地域ちいき国家こっか関係かんけいせい比較ひかく留意りゅういするよりも、個々ここ地域ちいき独立どくりつてきとらえようとする傾向けいこうつよい。また、日本にっぽん研究けんきゅう組織そしきまれている「地域ちいき研究けんきゅう」における「地域ちいき」とは、原則げんそくとしてひがしアジア東南とうなんアジアみなみアジア中東ちゅうとうアフリカヨーロッパアメリカ大陸あめりかたいりくなどかなりおおきく区分くぶんする傾向けいこうがある。

地域ちいき研究けんきゅう地誌ちしがく相違そういてん[編集へんしゅう]

また、地域ちいき研究けんきゅう一見いっけん地誌ちしがくているが、やはり相違そういてんがある。

地域ちいき研究けんきゅう原則げんそくとして自然しぜん科学かがくてき方法ほうほう排除はいじょするが、地誌ちしがく自然しぜん科学かがくてき研究けんきゅう方法ほうほうもちいる
地域ちいき研究けんきゅう自然しぜん科学かがくてき研究けんきゅう方法ほうほう原則げんそくとしてもちいないが、地誌ちしがく人文じんぶん科学かがく社会しゃかい科学かがく自然しぜん科学かがくすべての研究けんきゅう方法ほうほうもちいる。したがって地域ちいき研究けんきゅうでは対象たいしょうとしない地域ちいき自然しぜん地形ちけいみずぶん気候きこうひとし)は地誌ちしがく研究けんきゅう対象たいしょうとなる。また政治せいじ経済けいざい産業さんぎょうほう制度せいど社会しゃかい文化ぶんか民俗みんぞくとうについてるべきものがなく、地形ちけいみずぶん気候きこうとうしか研究けんきゅう対象たいしょうのない北極ほっきょく地方ちほう南極なんきょく地方ちほう地誌ちしがく研究けんきゅう対象たいしょうとなるが、地域ちいき研究けんきゅう対象たいしょうとはならない。ただし、近年きんねん環境かんきょう問題もんだい環境かんきょう政策せいさくのようにある程度ていど自然しぜん科学かがく知識ちしき必要ひつよう問題もんだい地域ちいき研究けんきゅう課題かだいとされるようになっているため、この区別くべつ絶対ぜったいてきなものではなくなっている。日本にっぽんにおいて地域ちいき研究けんきゅうしたおこなわれている研究けんきゅうが、いまのところ自然しぜん科学かがくてき方法ほうほう排除はいじょしている背景はいけいとして、地域ちいき研究けんきゅうしゃになるためには、研究けんきゅう対象たいしょうとしている地域ちいき言語げんごきゅう宗主そうしゅこく言語げんごなど様々さまざま語学ごがく修得しゅうとくしなければならず、語学ごがく並行へいこうして自然しぜん科学かがくてき統計とうけいがくコンピュータによる解析かいせきなどを修得しゅうとくするとなると、かなり負担ふたんおもくなることがかんがえられる。
例外れいがいてきに、京都きょうと大学だいがく東南とうなんアジア研究けんきゅう中心ちゅうしん展開てんかいされた地域ちいき研究けんきゅうは、はやくから自然しぜん科学かがくしゃとの共同きょうどう研究けんきゅうおこなっており、世界せかいてきにもユニークな成果せいかした。
地域ちいき研究けんきゅう通常つうじょうは、研究けんきゅう主体しゅたいにとって自国じこく文化ぶんか以外いがい対象たいしょうとするが、地誌ちしがく世界せかい自国じこく対象たいしょうとする
ただし、地域ちいき研究けんきゅう比較ひかく対照たいしょうとして自国じこく研究けんきゅう対象たいしょうとする場合ばあいおおい。さらに、ここから派生はせい東京とうきょう大学だいがくなどですすめられている比較ひかく日本にっぽん研究けんきゅう地域ちいき研究けんきゅう一部いちぶ理解りかいすべきである。

地域ちいき研究けんきゅうおこなっている研究けんきゅう機関きかん[編集へんしゅう]

日本にっぽん[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは、戦中せんちゅうの1941ねん東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく東洋とうよう文化ぶんか研究所けんきゅうじょ設置せっちされ、1960年代ねんだいはいると、1960ねんには通産省つうさんしょう所管しょかんアジア経済けいざい研究所けんきゅうじょ現在げんざい日本にっぽん貿易ぼうえき振興しんこう機構きこう)、1964ねんには東京外国語大学とうきょうがいこくごだいがくアジア・アフリカ言語げんご文化ぶんか研究所けんきゅうじょ京都大学きょうとだいがく東南とうなんアジア研究けんきゅうセンターが設置せっちされ、以後いご全国ぜんこくてき国際こくさいてき地域ちいき研究けんきゅうまれるようになっている。また、2006ねん4がつには京都大学きょうとだいがく地域ちいき研究けんきゅう統合とうごう情報じょうほうセンターが設置せっちされ、全国ぜんこくやく90の地域ちいき研究けんきゅう教育きょういく機関きかんおよび学会がっかい市民しみん団体だんたいからなる地域ちいき研究けんきゅうコンソーシアム (JCAS) の幹事かんじ組織そしきとして事務じむきょく運営うんえい担当たんとうしている。2017ねんには京都大学きょうとだいがく東南とうなんアジア研究所けんきゅうじょ統合とうごう京都大学きょうとだいがく東南とうなんアジア地域ちいき研究けんきゅう研究所けんきゅうじょ発足ほっそくしている。

現在げんざい地域ちいき研究けんきゅうさかんな日本にっぽん国内こくない大学だいがくおよび大学院だいがくいん研究けんきゅう機関きかんとしては、

などがげられる。またミッションけい大学だいがくにおいて、創設そうせつ宗派しゅうは関係かんけいふか研究けんきゅうおこなっているれいもある。

日本にっぽん国外こくがい[編集へんしゅう]

日本にっぽん国外こくがいでは、

などがある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]


外部がいぶリンク[編集へんしゅう]