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天然てんねんぶつ化学かがく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

天然てんねんぶつ化学かがく(てんねんぶつかがく、英語えいご:natural products chemistry)とは、生物せいぶつさんせいする物質ぶっしつ天然てんねんぶつばれる)をあつか有機ゆうき化学かがくいち分野ぶんやである。おも天然てんねんぶつたんはなれ構造こうぞう決定けってい合成ごうせいあつかう。通常つうじょう直接ちょくせつ生物せいぶつさんせいする物質ぶっしつのみをあつかい、石炭せきたん石油せきゆのような鉱物こうぶつてき要素ようそ有機物ゆうきぶつについては天然てんねんぶつ化学かがくではあまりあつかわない。

歴史れきし

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もともと有機ゆうき化学かがく生物せいぶつのみがさんせいすることができるとされていた物質ぶっしつあつか化学かがくいち分野ぶんやであったので有機ゆうき化学かがく=天然てんねんぶつ化学かがくであった。しかし、19世紀せいき前半ぜんはんフリードリヒ・ヴェーラーヘルマン・コルベによって生物せいぶつ体内たいないくとも有機ゆうき化合かごうぶつ合成ごうせいすることが可能かのうであることがしめされた。また天然てんねんには存在そんざいしない有機ゆうき化合かごうぶつ合成ごうせいされるようになり、有機ゆうき化学かがく炭素たんそ化合かごうぶつあつか化学かがく分野ぶんや拡張かくちょうされ、そのなかいち分野ぶんやとして生物せいぶつさんせいする物質ぶっしつあつか分野ぶんやとして天然てんねんぶつ化学かがく確立かくりつした。

有機ゆうき化合かごうぶつ合成ごうせいできることがあきらかになると、生物せいぶつからられる高価こうか染料せんりょう医薬いやく香料こうりょうといったものを合成ごうせいにより供給きょうきゅうするための研究けんきゅう天然てんねんぶつ化学かがく主要しゅようなテーマとして中心ちゅうしんおこなわれるようになった。いちれいとしてはウィリアム・ヘンリー・パーキンキニーネ合成ごうせいこころみて、そのさい合成ごうせい染料せんりょうモーブ発見はっけんしたことがげられる。この時代じだいはまだ有機ゆうき化合かごうぶつ構造こうぞうろん確立かくりつしていなかったため、目的もくてき物質ぶっしつ組成そせいしき分解ぶんかいぶつのみから合成ごうせい手法しゅほう検討けんとうしていた。

フリードリヒ・ケクレヤコブス・ヘンリクス・ファント・ホッフジョセフ・ル・ベルらにより19世紀せいき後半こうはん有機ゆうき化合かごうぶつ構造こうぞう化学かがく確立かくりつしてくると有機ゆうき化合かごうぶつ構造こうぞう決定けっていするのも天然てんねんぶつ化学かがく研究けんきゅうとしておこなわれるようになってくる。当時とうじ構造こうぞう決定けっていするための手段しゅだん既知きち物質ぶっしつ物性ぶっせいデータを比較ひかくする以外いがいにはなかったため、たんはなされた天然てんねんぶつ分解ぶんかい反応はんのうとうにより既知きち物質ぶっしつへと変換へんかんし、その結果けっかから天然てんねんぶつ構造こうぞう一部いちぶ推定すいていし、それらをわせることで構造こうぞう推定すいていしていた。そして推定すいていされた構造こうぞう確認かくにんするために、容易ようい入手にゅうしゅできる構造こうぞう既知きち物質ぶっしつからその構造こうぞう物質ぶっしつ合成ごうせいし、どういち物質ぶっしつ生成せいせいすることを確認かくにんするのも天然てんねんぶつ化学かがく研究けんきゅうとしておこなわれるようになった。これをぜん合成ごうせいぶ。

20世紀せいきはいると天然てんねんぶつ化学かがく方法ほうほうろんえるおおきな技術ぎじゅつてき進歩しんぽ相次あいついだ。まず1903ねんクロマトグラフィー原理げんり発見はっけんされた。この技術ぎじゅつにより複雑ふくざつ混合こんごうぶつからも目的もくてき天然てんねんぶつたんはなれすることが容易よういになった。1916ねんにはフリッツ・プレーグルにより微量びりょう元素げんそ分析ぶんせきほう発表はっぴょうされ、ミリグラム単位たんい化合かごうぶつ組成そせいしき決定けっていする方法ほうほう導入どうにゅうされた。1930年代ねんだいには有機ゆうき電子でんしろん提唱ていしょうされ、有機ゆうき化学かがく反応はんのう統一とういつてき理解りかいされるようになり有機ゆうき合成ごうせい設計せっけい容易よういになった。1940年代ねんだいには高速こうそく液体えきたいクロマトグラフィー開発かいはつされた。またこのころからむらさきがい可視かし分光ぶんこうほうあかがい分光ぶんこうほう質量しつりょう分析ぶんせきほうXせん構造こうぞう解析かいせきといった分析ぶんせき手法しゅほう天然てんねんぶつ構造こうぞう決定けってい導入どうにゅうされた。それよりすこおくれてかく磁気じき共鳴きょうめい分光ぶんこうほうもちいられるようになった。1960年代ねんだいにはイライアス・コーリーによりぎゃく合成ごうせい解析かいせき提唱ていしょうされ、より効率こうりつてき合成ごうせい経路けいろ設計せっけい可能かのうとなった。1976ねんには次元じげんNMRが測定そくてい可能かのうとなり複雑ふくざつ有機ゆうき化合かごうぶつ構造こうぞう決定けっていする方法ほうほうとして繁用はんようされるようになっていった。

現在げんざいでも天然てんねんぶつ化学かがくあたらしい医薬品いやくひんとなる候補こうほ物質ぶっしつ探索たんさくとう目的もくてきさかんに研究けんきゅうされている。

天然てんねんぶつ化学かがく方法ほうほうろん

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天然てんねんぶつ化学かがく目的もくてき有用ゆうよう物質ぶっしつ発見はっけんし、それが本当ほんとう有用ゆうようであるかを確認かくにんし、もし有用ゆうようならば、その供給きょうきゅうほう確立かくりつすることにある。そのため、以下いかのようなながれにしたがって研究けんきゅうおこなわれることがおおい。

天然てんねんぶつたんはなれ

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有用ゆうよう物質ぶっしつ発見はっけんするために、すでに有用ゆうよう作用さようられている生物せいぶつたいからその作用さようをもたらしている物質ぶっしつたんはなれする。ふるくは蒸留じょうりゅうさい結晶けっしょうさん塩基えんきなどによるぶんなどにより目的もくてき物質ぶっしつたんはなしていたが、現在げんざいではそれにくわえてクロマトグラフィーによるぶん多用たようされる。ぶんかくされたかくフラクションについて作用さよう有無うむ調しらべ、目的もくてきとする天然てんねんぶつがどこのフラクションにふくまれているかを確認かくにんする。そのフラクションがまだ混合こんごうぶつであるなら、さらにぶんおこない、単一たんいつ化合かごうぶつとなるまでかえす。

天然てんねんぶつ構造こうぞう決定けってい

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目的もくてきとする作用さよう天然てんねんぶつたんはなしたならばつぎ構造こうぞう決定けっていおこなう。ふるくは元素げんそ分析ぶんせき分解ぶんかい反応はんのうによる構造こうぞう決定けっていおこなわれていたが、現在げんざいではこれはほとんど機器きき分析ぶんせきによってとってわられている。こう分解能ぶんかいのう質量しつりょう分析ぶんせきほうにより分子ぶんししき決定けっていでき、あかがい分光ぶんこうほうかく磁気じき共鳴きょうめい分光ぶんこうほうによりどのような官能かんのうもと部分ぶぶん構造こうぞうつかが決定けっていできる。とく次元じげんNMRでは炭素たんそ原子げんしがどのように連結れんけつしているかを決定けっていするのに有用ゆうよう情報じょうほうられる。もしたん結晶けっしょうられればXせん構造こうぞう解析かいせきにより直接ちょくせつ構造こうぞう決定けっていすることができる。

天然てんねんぶつ合成ごうせい

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各種かくしゅ機器きき分析ぶんせきのデータからみちびかれた構造こうぞうはあくまで推定すいていである。実際じっさい合成ごうせいおこなったところみちびかれた構造こうぞう間違まちがっていたれいおお存在そんざいする。そのため構造こうぞう推定すいていされた天然てんねんぶつぜん合成ごうせいにより、その構造こうぞう確認かくにんする必要ひつようがある。

また構造こうぞう確認かくにんされた物質ぶっしつについても、作用さようについてより詳細しょうさい実験じっけんおこなうため、ある程度ていどりょう供給きょうきゅうする必要ひつようがある。そのためより簡便かんべんおさむりつたか合成ごうせいほう研究けんきゅうおこなわれる。また実際じっさい上市かみいちするにあたっては工業こうぎょう可能かのう合成ごうせいほう開発かいはつする必要ひつようもある。

出典しゅってん

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関連かんれん項目こうもく

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