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性欲せいよく

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情欲じょうよくから転送てんそう
セミラミス女王は常に欲望の擬人化であると信じられた。 CesareSaccaggiによる象徴主義の作品。
セミラミス女王じょおうつね欲望よくぼう擬人ぎじんであるとしんじられてきた。チェザーレ・サッカッジドイツばんによる象徴しょうちょう主義しゅぎ作品さくひん

性欲せいよく(せいよく、ふつ: luxureえい: Lust)は、人間にんげん欲求よっきゅうひとつでせいてき満足まんぞくもとめる本能ほんのうである。えい口語こうご:sexual desire、 sex drive、ラテン語らてんご):libidoなどの表現ひょうげんもある。

概要がいよう[編集へんしゅう]

一般いっぱんだい性徴せいちょう発現はつげんして生殖せいしょく能力のうりょく獲得かくとくしたとき、「せい目覚めざめ」がきるとされる[1]異性いせいのアイドルにたいする関心かんしんなどは、それ以前いぜんからいだくこともある。性欲せいよくたかまる時期じきつよさは、個人こじん性差せいさおおきい。おおくの伝統でんとうてき宗教しゅうきょうで、性欲せいよくつつしむべきもの、忌避きひすべきもの、警戒けいかいすべきもの、とされてきた。医学いがくてき研究けんきゅうにより、性欲せいよくには男女だんじょ[注釈ちゅうしゃく 1]ことなったピークの時期じきがあることがあきらかになっている[よう出典しゅってん]#生物せいぶつがくてき医学いがくてき説明せつめい参照さんしょう)。

人間にんげん性欲せいよく個人こじんによって多様たようせいつ。また、「動物どうぶつ同性愛どうせいあいなど生殖せいしょくむすびつかないせい行動こうどうもある」という[2]

キリスト教きりすときょう[編集へんしゅう]

不適切ふてきせつ性欲せいよくつみとする宗教しゅうきょうおおい。モーセの十戒じっかいでは「姦淫かんいん禁止きんしを戒のひとつにかぞえる」ため、ユダヤきょうおよびキリスト教きりすときょうイスラム教いすらむきょうもこれにならう。ローマ教皇きょうこう、ヨハネ・パウロ2せいは「性欲せいよく男女だんじょ永遠えいえん魅力みりょくを、欲望よくぼう満足まんぞくのために減少げんしょうさせてしまう」とべている[3]新約しんやく聖書せいしょ使徒しとパウロは、実際じっさい性交せいこうおよ姦淫かんいんのみならず、行為こうい外面がいめんげんわさない内心ないしんにおける姦淫かんいんつみであると強調きょうちょうした。

ただし、かならずしも性欲せいよく自体じたい全面ぜんめん否定ひていするものではなく、たとえばカトリック教会きょうかいななつの大罪だいざいひとつとする色欲しきよくは、婚姻こんいん関係かんけいそとにあるものや、生殖せいしょくからはなされそれ自体じたい快楽かいらく追求ついきゅうするもののことであると説明せつめいされる。性欲せいよくもまたかみ創造そうぞう一部いちぶとされ、適切てきせつ充足じゅうそくつみとはされないことが一般いっぱんてきである。グノーシス主義しゅぎのひとつであるカタリではこのてん逆転ぎゃくてんし、生殖せいしょく人間にんげん創造そうぞうしたサタン意図いととしてまれ、生殖せいしょく目的もくてきとしない性欲せいよくほうつみすくないとされた。

仏教ぶっきょう[編集へんしゅう]

チャクラサンヴァラ(かちらくタントラ)しょ尊像そんぞう

仏教ぶっきょうでは煩悩ぼんのうひとつとされ、邪淫じゃいん戒という戒律かいりつ存在そんざいする。ただし邪淫じゃいん戒は、つま以外いがい女性じょせいせい交渉こうしょうをしてはならない、という戒である。釈迦しゃか従弟じゅうていであるまご陀羅なんが、出家しゅっけでもつまかれてなかなかさとりをけなかったエピソードなどがある。

密教みっきょうはその出現しゅつげん以前いぜん仏教ぶっきょう顕教けんぎょうとしてひくるが、密教みっきょうでの性欲せいよくとらかた従来じゅうらい仏教ぶっきょうおおきくことなる。密教みっきょう経典きょうてんおもむきけいには、「男女だんじょ欲望よくぼう交合こうごう性交せいこう)のみょうなる恍惚こうこつ、また欲望よくぼうなどもすべて清浄せいじょうなる菩薩ぼさつ境地きょうちである」などとかれる。ただし、修行しゅぎょう無関係むかんけい男色なんしょく容認ようにんされることもおお顕教けんぎょう女犯にょぼん以外いがいについてはあまりきびしくなかったのにたいし、密教みっきょうではむしろせいについての厳格げんかくさがもとめられ、夢精むせい非常ひじょうおそれるようなめんもあった[4]真言宗しんごんしゅう主流しゅりゅうなどによる解釈かいしゃくでは、おもむきけいにおける言及げんきゅう概念がいねんを「自性じしょう清浄せいじょう」といい、本来ほんらい人間にんげんよごれた存在そんざいではなく、欲望よくぼう人間にんげんとして自然しぜんなものである、といった煩悩ぼんのうそく菩提ぼだいという思想しそうあらわすものであり、修行しゅぎょうしゃ性交せいこうすすめるような意味いみではないとされる。一方いっぽうで、かれほう集団しゅうだん[注釈ちゅうしゃく 2]などは「直接的ちょくせつてき性交せいこうれる」などしたが、聖俗せいぞくからの排撃はいげきつよく、性的せいてき概念がいねん抽象ちゅうしょう概念がいねんとみなした教派きょうはのこり、この集団しゅうだん消滅しょうめつしている。

密教みっきょう以外いがい仏教ぶっきょうでは、天台宗てんだいしゅうおこったげんむね帰命きみょうだん同様どうように「性交せいこう儀式ぎしきれていた」が、これも弾圧だんあつされ途絶とぜつしている。なお焚書ふんしょおこなわれた歴史れきしがあるため、弾圧だんあつがわ文書ぶんしょ依拠いきょするが、それらの記述きじゅつには誇張こちょうがあるのではないかとする見方みかたもある。浄土真宗じょうどしんしゅうでは親鸞しんらんゆめつげもとづきそう妻帯さいたいみとめられるが、性欲せいよくゆるされるにせよあくまでごうとされ、肯定こうていてき意義いぎあたえられていない。

精神せいしん分析ぶんせきがくにおける性的せいてき欲求よっきゅう[編集へんしゅう]

オナニーする女性じょせいクリムト。1913ねん

19世紀せいきまつから20世紀せいき初頭しょとう精神せいしん分析ぶんせきをおこなった学者がくしゃであるフロイト(1856ねん - 1939ねん)が創始そうしした精神せいしん分析ぶんせきがくでは「リビドー」(ラテン語らてんご) (libido) が「性的せいてき衝動しょうどう発動はつどうさせるちから」とする解釈かいしゃくを、当時とうじ心理しんりがく使用しようされていた用語ようごリビドーにあてた[5]。フロイトは性欲せいよく空腹くうふく権力けんりょくへの意志いし類似るいじしていると分析ぶんせきしている[6]同派どうは性欲せいよく研究けんきゅうについてえば、フロイトによる小児しょうに性欲せいよくエッセイ著名ちょめいである。フロイトは発達はったつ小児しょうににも性欲せいよくがあるとかんがえ、口唇こうしん肛門こうもん男根だんこん(エディプス)、性器せいきという段階だんかい分類ぶんるいした。こうしたせい行動こうどうをともなわない性欲せいよく充足じゅうそくさせるかかがこう人格じんかく形成けいせいおおきくかかわるとかんがえたフロイトは、こうした性欲せいよく抑圧よくあつ欲求よっきゅう不満ふまん)をヒステリー原因げんいん想定そうていした。またそうした性欲せいよく根源こんげんてき性欲せいよく名付なづけた。フロイトはこうして、人格じんかく形成けいせい性欲せいよく起因きいんする欲求よっきゅう説明せつめいしようとかんがえた。これをひろし性欲せいよくろんぶが、近年きんねんではおおくの批判ひはんけ、妥当だとうせいけるとされている。

リビドーかんがかた前提ぜんていとした場合ばあい性欲せいよくそのものは非常ひじょう単純たんじゅんであり根源こんげんてき欲求よっきゅうである。ただしそのせい衝動しょうどうをどう充足じゅうそくするかによって、性的せいてき指向しこう個々ここ変化へんかする、とかんがえる。フロイトてき解釈かいしゃくによれば、口唇こうしん欲求よっきゅう不満ふまん固着こちゃくした場合ばあいは、悲劇ひげきてき不信ふしんかんち、皮肉ひにくなパーソナリティが形成けいせいされる可能かのうせいがあるという、いささか「科学かがくてき結論けつろん」になってしまう。

一般いっぱん性的せいてき欲求よっきゅうつよまるのは、思春期ししゅんき以降いこうわれるが、個人こじんおおきい。性的せいてき好奇心こうきしん年齢ねんれいわずにおこり、発現はつげん仕方しかた多様たようである。

状況じょうきょうによっては、関係かんけいせいへの欲求よっきゅう所有しょゆうよく共感きょうかんよくといったべつ欲求よっきゅうわる場合ばあいもある。性愛せいあい性的せいてき欲求よっきゅう一生いっしょう自覚じかくせずにごす)もまれに存在そんざいする。

生物せいぶつがくてき医学いがくてき説明せつめい[編集へんしゅう]

自慰じいするおとこあざけ二人ふたりおんな(Dos Mujeres y un hombre)」(ゴヤ1820としころ

男性だんせい場合ばあい[編集へんしゅう]

男性だんせい性欲せいよく睾丸こうがん精子せいしをつくるリズムと連動れんどうする[7]睾丸こうがん分泌ぶんぴつされるテストステロン左右さゆうされる。(そのため、去勢きょせいおこなうと性欲せいよく低下ていかする)。テストステロンが急激きゅうげき増加ぞうかする思春期ししゅんき(13~22さいごろ)に性欲せいよくたかまり、70さいごろまでたか状態じょうたいつづ[8]。『ボディ・リズム』の著者ちょしゃリン・ランバーグの指摘してきによると、男性だんせい性欲せいよくとし周期しゅうき変化へんかしており、10月にもっともおお精子せいしがつくられ性欲せいよくもピークをむかえる[7]複数ふくすう研究けんきゅうしゃ[注釈ちゅうしゃく 3]研究けんきゅうでもセックスマスターベーション回数かいすうおおいのも10がつだといい、結果けっか女性じょせい妊娠にんしんえるという[よう検証けんしょう]ぎゃくにテストステロンの分泌ぶんぴつるのは3がつである[7]。ピークの10がつもっとひくい3がつは25%にたっするという[7]男性だんせい性欲せいよく年齢ねんれい関係かんけいについてえば、思春期ししゅんきがもっとも性欲せいよくつよいとわれ(より具体ぐたいてきには精子せいし製造せいぞうでは15さい前後ぜんこう。テストステロンの分泌ぶんぴつりょうでは19さいがピークだとされ[7])、ピーク以降いこう年齢ねんれいとともに漸減ぜんげんする。

女性じょせい場合ばあい[編集へんしゅう]

女性じょせい性欲せいよく排卵はいらん期間きかんたまごだき)を頂点ちょうてんとしてたかまり、月経げっけい周期しゅうき変化へんかしているとわれている[7]。つまり(月経げっけい順調じゅんちょう女性じょせいであれば)1かげつ前後ぜんこう周期しゅうき増減ぞうげんかえしている。

女性じょせいホルモン分泌ぶんぴつ変化へんかで40さい以降いこうから性欲せいよくしていき、50だいなかばくらいにピークがくるとするせつがあった。その根拠こんきょ更年期こうねんき閉経へいけいけて女性じょせいホルモン低下ていかし、女性じょせいでも少量しょうりょう分泌ぶんぴつされている男性だんせいホルモン割合わりあい相対そうたいてきえるからというものであった。2022ねん1がつに、民間みんかん病院びょういんとリサーチ会社かいしゃによる20だい-50だい女性じょせいかく650めい(10さい階級かいきゅう)、けい2,600にん女性じょせいたいする「理想りそうてき性行為せいこうい回数かいすう」にかんするインターネット調査ちょうさおこなわれた。その結果けっか理想りそうてき性行為せいこうい回数かいすうが、「理想りそうとする性行為せいこうい回数かいすう」からみると、女性じょせい性欲せいよくのピークは、20だい女性じょせいであった。また30だい、40だい、50だい年齢ねんれいすすむごとに女性じょせい性欲せいよく低下ていかしていく傾向けいこうられた。また、女性じょせい理想りそうとする性行為せいこうい回数かいすうは、「1週間しゅうかんに1かい前後ぜんこうとする回答かいとうが20だい-50だいのどの年代ねんだいでもおおくなった。性行為せいこういがまったくなくてよいとこたえた割合わりあいひくく、50だい女性じょせいでも4にんやく3にん(73.5%)で、回数かいすうはあっても性行為せいこうい必要ひつようかんがえていることもわかった[8]

関連かんれん文献ぶんけん/推薦すいせん図書としょ[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 女性じょせい場合ばあい、35さいから45さい性欲せいよくのピークとされている。
  2. ^ 立川たちかわ混同こんどうされることがあるが、べつ宗派しゅうはである。
  3. ^ ロスチャイルド財閥ざいばつアラン・ラインバーグパリ大学だいがくのミシェル・ラゴギー。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ からだ発達はったつ-だい性徴せいちょうなどの変化へんか”. www.ibmjapankenpo.jp. 日本アイ・ビー・エム健康けんこう保険ほけん組合くみあい. 2021ねん5がつ9にち閲覧えつらん
  2. ^ Bruce Bagemihl, Biological Exuberance: Animal Homosexuality and Natural Diversity, St. Martin's Press, 1999; ISBN 0312192398
  3. ^ Pope John Paul II, Mutual Attraction Differs from Lust. L'Osservatore Romano, weekly edition in English, 22 September 1980, p. 11. Available at http://www.ewtn.com/library/papaldoc/jp2tb39.htm
  4. ^ ツルティム・ケサン正木まさきあきら『チベット密教みっきょう』ちくま新書しんしょ(2000ねん)p.152
  5. ^ https://hdl.handle.net/10131/2758  岩切いわきりただしかい フロイトとヘルバルト。とくにリントナーへん経験けいけんてき心理しんりがく教本きょうほん』について Die Beziehung zwischen Freud und Herbart: Lindners Lehrbuch von Psychologie
  6. ^ Malabou, Catherine (2012). The New Wounded: From Neurosis to Brain Damage. New York: Fordham University Press. p. 103. ISBN 9780823239672.
  7. ^ a b c d e f 日本にっぽん博学はくがく倶楽部くらぶ『「人体じんたいなぞ解決かいけつファイル』PHP研究所けんきゅうじょ、2009ねん 
  8. ^ a b 女性じょせい性欲せいよくのピークは40さい、50さいというのは間違まちがいだった!”. 竹越たけこし 昭彦あきひこ浜松はままつまちだいいちクリニック院長いんちょう). 2023ねん11月16にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]