戦時せんじ国際こくさいほう

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戦時せんじ国際こくさいほう(せんじこくさいほう、英語えいご: law of war)は、戦争せんそう状態じょうたいにおいてもあらゆる軍事ぐんじ組織そしき遵守じゅんしゅするべき国際こくさいほうである。戦争せんそうほう戦時せんじほうともう。ここでは戦時せんじ国際こくさいほうという用語ようごもちいる。戦時せんじ国際こくさいほうは、戦時せんじのみに適用てきようされるわけではなく、宣戦せんせん布告ふこくされていない状態じょうたいでの軍事ぐんじ衝突しょうとつであっても、あらゆる軍事ぐんじ組織そしきたい適用てきようされるものである。

概説がいせつ[編集へんしゅう]

17世紀せいきヴェストファーレン条約じょうやくからはじまる戦時せんじ国際こくさいほうにおいてはユス・アド・ベルム (jus ad bellum)「軍事ぐんじてき必要ひつようせい英語えいごばん」とユス・イン・ベロ(jus in bello)「人道じんどうせい」の原則げんそく法的ほうてき基盤きばんがある[注釈ちゅうしゃく 1]軍事ぐんじてき必要ひつようせいとはてき撃滅げきめつするために必要ひつよう戦闘せんとう行動こうどうなどの軍事ぐんじてき措置そち正当せいとうする原則げんそくであり、人道じんどうせいとは適切てきせつ軍事ぐんじ活動かつどうには必要ひつよう措置そち禁止きんしする原則げんそくである。 国際こくさい紛争ふんそうにおいてはユス・アド・ベルムとユス・イン・ベロの双方そうほう遵守じゅんしゅすることがもとめられている。つまり正当せいとうせい相手あいてだからとなにをやってもいいやくではないし、正当せいとうせいがあるからとなにをやってもいいやくではない[1]

ユス・アド・ベルム戦争せんそう正当せいとうなものと不当ふとうなものに区別くべつし、正当せいとうなもののみを合法ごうほうとするもので、せいせんろんただしい戦争せんそうろん)ともばれた。しかし主権しゅけん国家こっかあいだにおいて、国家こっか上位じょうい存在そんざいする機関きかんがない以上いじょう紛争ふんそう当事とうじこく正当せいとうせい主張しゅちょうするかぎり、戦争せんそうはいずれにとっても正当せいとうとならざるをない。そこで18世紀せいきになると、戦争せんそう正否せいひわない「差別さべつ戦争せんそうかん」というかんがえが登場とうじょうした。19世紀せいきにおいては、国際こくさい法学ほうがく戦争せんそう開始かいしから終了しゅうりょうまでの手続てつづき、戦闘せんとう手段しゅだん方法ほうほうとう規制きせいにあるとされ、戦争せんそう正当せいとう原因げんいん研究けんきゅう規律きりつ国際こくさい法学ほうがく対象たいしょうがいとの見解けんかいもあったが、20世紀せいきになりだいいち世界せかい大戦たいせん戦争せんそう違法いほうながれのなかで国際こくさい連盟れんめい設立せつりつされ、そのだい世界せかい大戦たいせん勃発ぼっぱつふせげなかった国際こくさい連盟れんめい様々さまざま反省はんせいまえ国際こくさい連合れんごう設立せつりつされると、そこで合法ごうほうかどうか判断はんだんされることとなった。

ユス・イン・ベロは、戦闘せんとうにおける人道的じんどうてき行為こうい被害ひがい最小さいしょうするためにれられており、近年きんねんでは「国際こくさい人道じんどうほう」としてさい構成こうせいされている。 内容ないよう非常ひじょう幅広はばひろく、だい1に戦時せんじ国際こくさいほう適用てきようされる状況じょうきょうについての規則きそくだい2に交戦こうせん当事とうじこくあいだ戦闘せんとう方法ほうほう規律きりつする規則きそくだい3に戦争せんそうによる犠牲ぎせいしゃ保護ほごする規則きそくだい4に戦時せんじ国際こくさいほう履行りこう確保かくほする規則きそく、でおも構成こうせいされる。具体ぐたいてきには開戦かいせん終戦しゅうせん交戦こうせんしゃ資格しかく捕虜ほりょ条約じょうやく適用てきよう許容きょようされる諜報ちょうほう活動かつどうがいてき手段しゅだん禁止きんし制限せいげん死傷ししょうしゃ収容しゅうよう保護ほご病院びょういん地帯ちたい武装ぶそう地帯ちたいなどについてさだめている。ハーグ陸戦りくせん法規ほうき慣例かんれいかんする条約じょうやくジュネーヴ条約じょうやくなどが有名ゆうめいである。

適用てきよう対象たいしょう[編集へんしゅう]

戦時せんじ国際こくさいほう戦時せんじにおける国際こくさいほうであるため、まず時間じかんてき適用てきよう範囲はんい規定きていされることとなる。つまり適用てきよう開始かいし要件ようけん終了しゅうりょう要件ようけんである。現在げんざい戦時せんじ国際こくさいほう武力ぶりょく紛争ふんそう存在そんざい適用てきよう開始かいし要件ようけんとしており、宣戦せんせん布告ふこく有無うむ戦争せんそう状態じょうたい認定にんていわない[2]

さらに戦時せんじ国際こくさいほう適用てきよう終了しゅうりょうする要件ようけんとしては紛争ふんそう当事とうじこく軍事ぐんじ行動こうどう終了しゅうりょう、または占領せんりょう終了しゅうりょうである[3]。また適用てきよう対象たいしょうとなるのは紛争ふんそう当事とうじこくである。また武力ぶりょく紛争ふんそう類型るいけいされたうえ適用てきようされる。これには国際こくさいてき武力ぶりょく紛争ふんそう国際こくさいてき武力ぶりょく紛争ふんそうがある。国際こくさいてき武力ぶりょく紛争ふんそうにおいては国内こくないほう維持いじ国際こくさいてき武力ぶりょく紛争ふんそう適用てきようという矛盾むじゅんがしばしば発生はっせいする。

もし国際こくさいてき武力ぶりょく紛争ふんそう要件ようけんたせば犠牲ぎせいしゃ保護ほご義務付ぎむづけられ、さらに指揮しき系統けいとう存在そんざいはん組織そしきせい軍事ぐんじ行動こうどう時間じかんてき継続けいぞくせい事実じじつじょう領域りょういき支配しはい、という要件ようけんたすことができれば文民ぶんみん保護ほごなどの交戦こうせん法規ほうき義務付ぎむづけられる[4]


軍事ぐんじてき必要ひつようせい[編集へんしゅう]

ユス・アド・ベルム(jus ad bellum)とばれる概念がいねんで、国際こくさい連合れんごう憲章けんしょうおよび慣習かんしゅう国際こくさいほうによってさだめられている。

国連こくれん憲章けんしょうだい2じょうでは自衛じえいのもとの戦争せんそうふくめ、いかなる武力ぶりょくによる威嚇いかく武力ぶりょく行使こうし禁止きんししている。

もし威嚇いかく武力ぶりょく行使こうしをするくに場合ばあいには、安全あんぜん保障ほしょう理事りじかい国連こくれん憲章けんしょうなどにもとづいてその行為こうい合法ごうほうかどうか判断はんだんする。 違法いほう判断はんだんされれば、まず勧告かんこくおこない、つづいて国連こくれん加盟かめいこく武力ぶりょく以外いがい制裁せいさいくわえ、最終さいしゅうてきには国連こくれんぐんによる武力ぶりょく制裁せいさいくわえることとなる(どう39じょう)。 これが集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょうばれる仕組しくみである(どう42じょう)。

ただし集団しゅうだん安全あんぜん保障ほしょう機能きのうしない場合ばあい安保理あんぽりによる判断はんだんわない場合ばあいにのみ、反撃はんげきする権利けんり自衛じえいけんとしてみとめている。 自国じこくのみで反撃はんげきするのが個別こべつてき自衛じえいけん他国たこくとともに反撃はんげきするのが集団しゅうだんてき自衛じえいけんばれる。 また自衛じえいけん行使こうしには安保理あんぽりへの報告ほうこく義務ぎむと、どう42じょう発動はつどうまでのあいだにのみみとめられるという制限せいげんがついている(どう51じょう)。

なお、下記かきふしからの戦闘せんとうちゅうにおける行動こうどう規制きせいは、すべ人道じんどうせいもとづく概念がいねんでユス・イン・ベロ(jus in bello)に該当がいとうする。

交戦こうせん法規ほうき[編集へんしゅう]

陸戦りくせん法規ほうき[編集へんしゅう]

陸戦りくせん法規ほうき陸上りくじょう作戦さくせんにおける武力ぶりょく行使こうしについての規則きそくであり、現代げんだいではおもに1977ねん署名しょめいされたジュネーヴしょ条約じょうやくだいいち追加ついか議定ぎていしょによって規定きていされる。その内容ないようおも攻撃こうげき目標もくひょう選定せんてい攻撃こうげき実行じっこう規則きそくであり[注釈ちゅうしゃく 2]従来じゅうらい戦闘せんとう教義きょうぎにも変化へんかうながした。

攻撃こうげき目標もくひょう選定せんてい原則げんそくは、攻撃こうげきおこな目標もくひょうをどのように選定せんていするのかについての原則げんそくである。まず攻撃こうげき目標もくひょうてき戦闘せんとういん軍事ぐんじ目標もくひょうさだめられる。戦闘せんとういんとは紛争ふんそう当事とうじこく軍隊ぐんたい構成こうせいしている兵員へいいんであり、陸戦りくせん法規ほうきにおける軍事ぐんじ目標もくひょうとは野戦やせん陣地じんち軍事ぐんじ基地きち兵器へいき軍需ぐんじゅ物資ぶっしなどの物的ぶってき目標もくひょうである[注釈ちゅうしゃく 3]。また攻撃こうげき目標もくひょうとして禁止きんしされているものは、降伏ごうぶくしゃ捕獲ほかくしゃ負傷ふしょうしゃ病者びょうしゃ難船なんせんしゃ軍隊ぐんたい衛生えいせい要員よういん宗教しゅうきょう要員よういん文民ぶんみん民間みんかん防衛ぼうえい団員だんいんなどの戦闘せんとういんと、衛生えいせい部隊ぶたい病院びょういんなどの医療いりょう関係かんけい施設しせつ医療いりょう目的もくてき車両しゃりょうおよび航空機こうくうき教育きょういく施設しせつ歴史れきしてき建築けんちくぶつ宗教しゅうきょう施設しせつ食料しょくりょう生産せいさん設備せつび堤防ていぼう火力かりょく水力すいりょく原子力げんしりょく発電はつでんしょなどの軍事ぐんじ目標もくひょう以外いがいみんようぶつ[注釈ちゅうしゃく 4]である。

攻撃こうげき実行じっこうにおいてはおもに3つの規則きそく存在そんざいする。だい1に軍人ぐんじん文民ぶんみん軍事ぐんじ目標もくひょうみんようぶつ区別くべつせずにおこな無差別むさべつ攻撃こうげき禁止きんしさだめている。これによってだい世界せかい大戦たいせんにおいてられた住宅じゅうたく文教ぶんきょう施設しせつ宗教しゅうきょう施設しせつふく都市としけんたいする戦略せんりゃく爆撃ばくげき違法いほうされている。だい2に文民ぶんみんみんようぶつへの被害ひがい最小さいしょうすることである。軍事ぐんじ作戦さくせんにおいては文民ぶんみんみんようぶつえになることは不可避ふかひであるが、攻撃こうげき実行じっこうにあたっては、そのえが最小限さいしょうげんになるように努力どりょくし、攻撃こうげきによってられる軍事ぐんじてき利益りえきえとなる被害ひがい比例ひれいせい原則げんそくもとづいておこなわれなければならない。だい3に同一どういつ軍事ぐんじてき利益りえきられる2つの攻撃こうげき目標もくひょうがある場合ばあい文民ぶんみんみんようぶつ被害ひがいすくないとかんがえられるものを選択せんたくしなければならない。

海戦かいせん法規ほうき[編集へんしゅう]

海戦かいせん法規ほうき海戦かいせんほう海上かいじょう作戦さくせん法規ほうき)は海上かいじょうでの武力ぶりょく紛争ふんそう適用てきようされる戦時せんじ国際こくさいほうである。海戦かいせん法規ほうき海上かいじょうでの軍事ぐんじ目標もくひょう武力ぶりょく紛争ふんそうにおける臨検りんけん拿捕だほ機雷きらい使用しようなどについてさだめたものである。海戦かいせん法規ほうき陸戦りくせん法規ほうきとはことなり、そのだい部分ぶぶんが19世紀せいきまでの慣習かんしゅう国際こくさいほうもとづいたものである。ただし海上かいじょう戦力せんりょく多様たようあたらしい海洋かいようほう環境かんきょうほう成立せいりつがあったことで、人道じんどうほう国際こくさい研究所けんきゅうじょ海上かいじょう武力ぶりょく紛争ふんそうほうサンレモ・マニュアル英語えいごばん完成かんせいさせ、海戦かいせん法規ほうき普及ふきゅうと、将来しょうらい条約じょうやく貢献こうけんしている。

海戦かいせんにおける軍事ぐんじ目標もくひょう規定きてい慣習かんしゅう国際こくさいほうによって構成こうせいされる。軍事ぐんじ目標もくひょうとして識別しきべつされる敵国てきこく船舶せんぱくはまず海軍かいぐん所属しょぞくした軍艦ぐんかん補助ほじょ船舶せんぱくであり、これにたいしては攻撃こうげきまたは拿捕だほすることが可能かのうである。また商船しょうせん直接ちょくせつ攻撃こうげき機雷きらい敷設ふせつなどの敵国てきこく戦争せんそう行為こうい従事じゅうじしている、またはてきぐん補助ほじょおこなっているならば軍事ぐんじ目標もくひょうである。また軍事ぐんじ物資ぶっし輸送ゆそう作戦さくせん従事じゅうじなどの戦争せんそう遂行すいこう努力どりょく英語えいごばんまれた敵国てきこく商船しょうせん軍事ぐんじ目標もくひょうとなる。ただし敵国てきこく船舶せんぱくであっても、病院びょういんせん沿岸えんがん救助きゅうじょよう小型こがたてい、などの軍事ぐんじてき任務にんむにな船舶せんぱく特別とくべつ保護ほごけているために攻撃こうげき拿捕だほ免除めんじょされている。

中立ちゅうりつこく軍艦ぐんかんおよび軍用ぐんよう公海こうかいおよ排他はいたてき経済けいざい水域すいいきから国際こくさい水域すいいきにおいては自由じゆう航行こうこう飛行ひこう訓練くんれん情報じょうほう収集しゅうしゅうなどをおこな権利けんりゆうする。中立ちゅうりつこく軍艦ぐんかん軍用ぐんようたいして攻撃こうげきすることは、中立ちゅうりつこくたいする武力ぶりょく攻撃こうげきであり、中立ちゅうりつこく自衛じえいけん行使こうしすることが出来できる。過失かしつであっても攻撃こうげきした国家こっか国家こっか責任せきにんうことになり、謝罪しゃざい賠償ばいしょう責任せきにんしゃ処罰しょばつ再発さいはつ防止ぼうし措置そちなどがもとめられる。

空戦くうせん法規ほうき[編集へんしゅう]

空戦くうせん法規ほうき空戦くうせん規則きそく空戦くうせんかんする規則きそくあん)は航空こうくうせんにおける武力ぶりょく行使こうしについて規定きていしたものであり、ワシントン軍縮ぐんしゅく会議かいぎ設置せっちされた戦時せんじ法規ほうき改正かいせい委員いいんかいにおいて日本にっぽん、イギリス、オランダ、アメリカ、フランス、イタリアが1923ねん署名しょめいした報告ほうこくしょ規則きそくさだめられたが、当時とうじ将来しょうらいてき航空機こうくうき発展はってん可能かのうせいかんがみて運用うんよう制限せいげんされることを回避かいひしたために、現在げんざい条約じょうやくとして存在そんざいしない。しかし、慣習かんしゅうほうとしてしばしば引用いんようされる場合ばあいがある。

軍用ぐんようぜん方位ほういから視認しにんできる軍用ぐんよう外部がいぶ標識ひょうしき単一たんいつ国籍こくせき記載きさいゆうし、軍人ぐんじん操縦そうじゅうする航空機こうくうきであり、これだけに交戦こうせんけん行使こうし容認ようにんされる。軍用ぐんよう民間みんかんじん交戦こうせんけんみとめられず、どのような敵対てきたい行為こうい禁止きんしされる。空襲くうしゅう戦闘せんとういん保護ほご観点かんてんから軍事ぐんじ目標もくひょう、すなわちその破壊はかい交戦こうせんこく明確めいかく軍事ぐんじてき利益りえきをもたらす目標もくひょう限定げんていされる、などがさだめられている。

背信はいしん行為こうい禁止きんし[編集へんしゅう]

戦時せんじ国際こくさいほうにおいて背信はいしん行為こういとは、てき信頼しんらい裏切うらぎ目的もくてきちながらてき信頼しんらいさそ行為こういであり、禁止きんしされている。背信はいしん行為こうい禁止きんし中世ちゅうせい騎士きしどう由来ゆらいし、慣習かんしゅう国際こくさいほうとして確立かくりつされ、1907ねんにはハーグ陸戦りくせん条約じょうやく、1977ねんにもだい1議定ぎていしょしるされた。

その具体ぐたいてき行為こういとしては、赤十字せきじゅうじあか新月しんげつはた塗装とそうなどをげながらの軍事ぐんじ行動こうどう休戦きゅうせんげながら裏切うらぎ行為こうい遭難そうなん信号しんごう不正ふせい発信はっしんする行為こうい敵国てきこく軍服ぐんぷく国籍こくせき標識ひょうしき使用しよう行為こういなどがげられる。なおこれにのっとり、鹵獲ろかくした戦闘せんとう車両しゃりょう航空機こうくうき船舶せんぱく軍事ぐんじ利用りようする場合ばあいは、即時そくじ自国じこく標識ひょうしき変更へんこうすることが必要ひつようである[注釈ちゅうしゃく 5]

戦闘せんとういんおよび降伏ごうぶくしゃ捕獲ほかくしゃ保護ほご[編集へんしゅう]

戦闘せんとういんとは、軍隊ぐんたい編入へんにゅうされていない人民じんみん全体ぜんたい[5]し、これを攻撃こうげきすることは禁止きんしされている。また、軍隊ぐんたい編入へんにゅうされているものといえども、降伏ごうぶくしゃ捕獲ほかくしゃたいしては、一定いってい権利けんり保障ほしょうされており、これを無視むしして危害きがいくわえることは戦争せんそう犯罪はんざいである。

  • まず降伏ごうぶくしゃおよび捕獲ほかくしゃは、これを捕虜ほりょとしてあらゆる暴力ぼうりょく脅迫きょうはく侮辱ぶじょく好奇心こうきしんから保護ほごされて人道的じんどうてきあつかわなければならない。捕虜ほりょ質問しつもんたいして回答かいとうしなければならない事項じこうみずからの氏名しめい階級かいきゅう生年月日せいねんがっぴ認識にんしき番号ばんごうのみである。
  • また負傷ふしょうしゃ病者びょうしゃ難船なんせんしゃ人道的じんどうてきあつかいをけ、可能かのうかぎすみやかに医療いりょうじょう措置そちける。衛生えいせい要員よういん宗教しゅうきょう要員よういん攻撃こうげき対象たいしょうではなく、あらゆる場合ばあい保護ほごける。
  • 文民ぶんみんとは、交戦こうせんこく領域りょういき占領せんりょうでの てき国民こくみん中立ちゅうりつこく自国じこく政府せいふ保護ほごられないもの難民なんみん国籍こくせきしゃである。すべての文民ぶんみん人道的じんどうてきあつかわれる権利けんりがあり、女性じょせいはあらゆる猥褻わいせつ行為こういから保護ほごされる。文民ぶんみん強制きょうせいてき移送いそう追放ついほうすることは禁止きんしされている。

これらは、1949ねんのジュネーブしょ条約じょうやくと1977ねんのジュネーブ条約じょうやく追加ついか議定ぎていしょⅠとⅡにおいてさだめられている。

戦争せんそう犯罪はんざい処罰しょばつ[編集へんしゅう]

戦争せんそう犯罪はんざいとは、軍隊ぐんたい構成こうせいいん文民ぶんみんによる戦時せんじ国際こくさいほう違反いはんした行為こういであり、かつその行為こうい処罰しょばつ可能かのうなものをう。

  • 交戦こうせんこくてきぐん構成こうせいいんまたは文民ぶんみん戦争せんそう犯罪はんざい処罰しょばつすることができる。
  • また国家こっか自国じこく軍隊ぐんたい構成こうせいいん文民ぶんみん戦争せんそう犯罪はんざい処罰しょばつする義務ぎむう。戦争せんそう犯罪はんざいじんには死刑しけいしょすことができるが、刑罰けいばつ程度ていど国内こくないほうによってさだめられる。
  • とく重大じゅうだい戦争せんそう犯罪はんざいとしてかんがえられるものとしては、戦闘せんとういんへの殺害さつがい拷問ごうもん人道的じんどうてき処遇しょぐう文民ぶんみん人質ひとじちにすること、軍事ぐんじてき必要ひつようせいえる無差別むさべつ破壊はかい殺戮さつりくなど様々さまざまかんがえられる。

1998ねんには、戦争せんそう犯罪はんざいとうさば常設じょうせつ裁判所さいばんしょとして国際こくさい刑事けいじ裁判所さいばんしょ規程きてい国連こくれん外交がいこう会議かいぎ採択さいたくされた。

中立ちゅうりつこく義務ぎむ[編集へんしゅう]

交戦こうせん当事とうじこくとそれ以外いがい第三国だいさんごくとの関係かんけい規律きりつする国際こくさいほうである。中立ちゅうりつこく戦争せんそう参加さんかしてはならず、また交戦こうせん当事とうじこくのいずれにも援助えんじょおこなってはならず、平等びょうどうせっしなければならない義務ぎむう。一般いっぱんに、つぎの3しゅ分類ぶんるいされる。

回避かいひ義務ぎむ
中立ちゅうりつこく直接ちょくせつ間接かんせつわず交戦こうせん当事とうじこく援助えんじょおこなわない義務ぎむう。
防止ぼうし義務ぎむ
中立ちゅうりつこく自国じこく領域りょういき交戦こうせんこく利用りようさせない義務ぎむう。
黙認もくにん義務ぎむ
中立ちゅうりつこく交戦こうせんこくおこな戦争せんそう遂行すいこう過程かていにおいて、ある一定いってい範囲はんい不利益ふりえきこうむっても黙認もくにんする義務ぎむがある。このてんについて外交がいこうてき保護ほごけん行使こうしすることはできない。

スイスの自衛じえい努力どりょく[編集へんしゅう]

永世えいせい中立ちゅうりつこくとして有名ゆうめいスイスは、だい世界せかい大戦たいせんにおいても中立ちゅうりつまもった。ただし、中立ちゅうりつまもるために相応そうおう努力どりょくをしている。スイスぐん領空りょうくう侵犯しんぱんたいしては迎撃げいげきおこない、連合れんごうこくがわ航空機こうくうきを190撃墜げきつい枢軸すうじくこくがわ航空機こうくうきを64撃墜げきついした。スイスがわ被害ひがいやく200推定すいていされている。

条約じょうやく履行りこう確保かくほ[編集へんしゅう]

条約じょうやく履行りこうしない国家こっかおよび企業きぎょう経済けいざい制裁せいさいける。

条約じょうやくされた戦時せんじ国際こくさいほう一覧いちらん[編集へんしゅう]

多国たこくあいだ条約じょうやくされた戦時せんじ国際こくさいほう一覧いちらん[6]

ジュネーブしょ条約じょうやく[編集へんしゅう]

1949ねん8がつ12にちのジュネーブしょ条約じょうやく

  • 戦地せんちにある軍隊ぐんたい傷者しょうしゃおよ病者びょうしゃ状態じょうたい改善かいぜんかんする1949ねん8がつ12にちのジュネーブ条約じょうやくだい1ジュネーブ条約じょうやく
  • 海上かいじょうにある軍隊ぐんたい傷者しょうしゃ病者びょうしゃおよ難船なんせんしゃ改善かいぜんかんする1949ねん8がつ12にちのジュネーブ条約じょうやくだい2ジュネーブ条約じょうやく
  • 捕虜ほりょ待遇たいぐうかんする1949ねん8がつ12にちのジュネーブ条約じょうやくだい3ジュネーブ条約じょうやく
  • 戦時せんじにおける文民ぶんみん保護ほごかんする1949ねん8がつ12にちのジュネーブ条約じょうやくだい4ジュネーブ条約じょうやく

ジュネーブしょ条約じょうやく追加ついか議定ぎていしょ[編集へんしゅう]

1977ねんのジュネーブしょ条約じょうやく追加ついか議定ぎていしょ

児童じどう権利けんり保護ほご[編集へんしゅう]

文化財ぶんかざい保護ほご[編集へんしゅう]

戦闘せんとう手段しゅだんかんする条約じょうやく[編集へんしゅう]

  • 陸戦りくせん法規ほうき慣例かんれいせきスル条約じょうやくハーグ陸戦りくせん条約じょうやく
  • 開戦かいせんさいニ於ケルてき商船しょうせん取扱とりあつかいせきスル条約じょうやく
  • 商船しょうせん軍艦ぐんかん変更へんこうスルコトニせきスル条約じょうやく
  • 自動じどう触発しょくはつ海底かいてい水雷すいらい敷設ふせつせきスル条約じょうやく
  • 戦時せんじ海軍かいぐんりょくヲ以テスル砲撃ほうげきせきスル条約じょうやく
  • 海戦かいせんニ於ケル捕獲ほかくけん行使こうし制限せいげんせきスル条約じょうやく

武器ぶきるい禁止きんし制限せいげんかんする条約じょうやく[編集へんしゅう]

  • 対人たいじん地雷じらい使用しよう貯蔵ちょぞう生産せいさんおよ委譲いじょう禁止きんしならびに廃棄はいきかんする条約じょうやく
  • 化学かがく兵器へいき開発かいはつ生産せいさん貯蔵ちょぞうおよ使用しよう禁止きんしならびに廃棄はいきかんする条約じょうやく
  • 過度かど傷害しょうがいあたまた差別さべつ効果こうかおよぼすことがあるとみとめられる通常つうじょう兵器へいき使用しよう禁止きんしまた制限せいげんかんする条約じょうやく
  • 過度かど傷害しょうがいあたまた差別さべつ効果こうかおよぼすことがあるとみとめられる通常つうじょう兵器へいき使用しよう禁止きんしまた制限せいげんかんする条約じょうやく付随ふずいする1996ねん5がつ3にち改正かいせいされた地雷じらい、ブービートラップおよ類似るいじ装置そうち使用しようまた制限せいげんかんする議定ぎていしょ
  • 環境かんきょう改変かいへん技術ぎじゅつ軍事ぐんじてき使用しようその敵対てきたいてき使用しよう禁止きんしかんする条約じょうやく
  • 細菌さいきん兵器へいき生物せいぶつ兵器へいきおよ毒素どくそ兵器へいき開発かいはつ生産せいさんおよ貯蔵ちょぞう禁止きんしならびに廃棄はいきかんする条約じょうやく
  • 窒息ちっそくせいガス、毒性どくせいガスまたはこれらにるいするガスおよ細菌さいきんがくてき手段しゅだん戦争せんそうにおける使用しよう禁止きんしかんする議定ぎていしょ
  • 窒息ちっそくセシムヘキ瓦斯がす散布さんぷスルヲ唯一ゆいいつ目的もくてきトスル投射とうしゃぶつ使用しよう各自かくじ禁止きんしスル宣言せんげんしょ
  • そとつつみかたかたナル弾丸だんがんニシテ其ノそとつつみ中心ちゅうしん全部ぜんぶぶたつつみセスわかハ其ノそとつつみニ截刻ヲほどこせシタルモノノ如キ人体じんたいないにゅう容易よういひらきてんまた扁平へんぺいためルヘキ弾丸だんがん使用しよう各自かくじ禁止きんしスル宣言せんげんしょ

中立ちゅうりつとうかんする条約じょうやく[編集へんしゅう]

  • 開戦かいせんかんする条約じょうやく
  • 陸戦りくせん場合ばあいニ於ケル中立ちゅうりつこく中立ちゅうりつじん権利けんり義務ぎむせきスル条約じょうやく
  • 海戦かいせん場合ばあいニ於ケル中立ちゅうりつこく権利けんり義務ぎむせきスル条約じょうやく

国際こくさい組織そしきとうかんする条約じょうやく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 軍事ぐんじてき考慮こうりょ」と「人道的じんどうてき考慮こうりょ」ともう。小寺こでらあきら岩沢いわさわ雄司ゆうじ森田もりた章夫あきおへん講義こうぎ国際こくさいほう』(有斐閣ゆうひかく、2006ねん)468ぺーじ
  2. ^ ここでいう攻撃こうげきとは攻勢こうせい作戦さくせんぼうぜい作戦さくせんや、その戦術せんじゅつ行動こうどうかかわらない暴力ぼうりょく行為こういをさす。だい1追加ついか議定ぎていしょだい49じょうだい1こう
  3. ^ 石油せきゆ貯蔵ちょぞう施設しせつ港湾こうわん施設しせつ飛行場ひこうじょう鉄道てつどう発電はつでんしょ産業さんぎょう施設しせつなど間接かんせつてき軍事ぐんじりょく貢献こうけんするものについては、その全面ぜんめんてき、または部分ぶぶんてき破壊はかい無力むりょく奪取だっしゅあきらかに軍事ぐんじてき利益りえきになる場合ばあいにのみかぎられる。防衛大学校ぼうえいだいがくこう防衛ぼうえいがく研究けんきゅうかいへん軍事ぐんじがく入門にゅうもん』(かや書房しょぼう、2000ねん)60ぺーじ
  4. ^ みんようぶつ軍事ぐんじ目標もくひょう以外いがいすべてのものう。だい1追加ついか議定ぎていしょだい52じょうだい1こう
  5. ^ ただし背信はいしん行為こうい禁止きんしさだめた『ジュネーヴしょ条約じょうやく国際こくさいてき武力ぶりょく紛争ふんそう犠牲ぎせいしゃ保護ほごかんする追加ついか議定ぎていしょ』の37じょう背信はいしん行為こうい禁止きんし)1こう(d)英語えいご Article 37 1.(d))では「国際こくさい連合れんごうまた中立ちゅうりつこくその紛争ふんそう当事とうじしゃでないくにしめぎあきらまた制服せいふく使用しようして、保護ほごされている地位ちいよそおうこと」が禁止きんしされているのであり、「敵対てきたいする紛争ふんそう当事とうじしゃはたぐんしめぎあきら記章きしょうまた制服せいふく使用しようすること」を禁止きんししているのはどう39じょうくにしめぎあきら)2こう英語えいご Article 39 2.)である。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ だれおしえない時事じじ教養きょうよう「ユスアドベルムとユスインベロをけてかんがえよう」(憲政けんせい研究けんきゅうしゃ 倉山くらやまみつるとりで)
  2. ^ ジュネーブ条約じょうやく共通きょうつう2じょう1ぶん議定ぎていしょⅠ1じょう3こう4こう・3じょう(a)
  3. ^ 議定ぎていしょⅠ3じょう(b)
  4. ^ 小寺こでらあきら岩沢いわさわ雄司ゆうじ森田もりた章夫あきおへん講義こうぎ国際こくさいほう』(有斐閣ゆうひかく、2006ねん)468-470ぺーじ
  5. ^ 田岡たおか良一りょういち空襲くうしゅう国際こくさいほう』(いわおまつどう書店しょてん、1937ねん)119-120ぺーじ
  6. ^ 防衛ぼうえい法規ほうき研究けんきゅうかい自衛じえいかん国際こくさいほうしょう六法ろっぽう』(学陽書房がくようしょぼう平成へいせい18年版ねんばん)のそう目次もくじ参考さんこう

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

  • War and International Humanitarian Law赤十字せきじゅうじ国際こくさい委員いいんかい公式こうしきサイト)(フランス語ふらんすご英語えいご、スペイン、アラビア、ポルトガル、ロシア中国ちゅうごく