数学 すうがく における正 せい の数 かず (せいのすう、英 えい : positive number, plus number, above number ; 正数 せいすう )は、0 より大 おお きい実数 じっすう である。対照 たいしょう 的 てき に負 まけ の数 かず (ふのすう、英 えい : negative number, minus number, below number ; 負数 ふすう )は、0より小 ちい さい実数 じっすう である。とくに初等 しょとう 数学 すうがく ・算術 さんじゅつ や初等 しょとう 数 すう 論 ろん などの文脈 ぶんみゃく によっては、(暗黙 あんもく の了解 りょうかい のもと)特 とく に断 ことわ りなく、より限定 げんてい 的 てき な範囲 はんい の正 せい の有理数 ゆうりすう や正 せい の整数 せいすう という意味 いみ で単 たん に「正 せい の数 かず 」と呼 よ んでいる場合 ばあい がある。負 まけ の数 かず も同様 どうよう である。
定義 ていぎ 域 いき が実数 じっすう であり、正数 せいすう に対 たい して1を、負数 ふすう に対 たい して−1を、ゼロに対 たい して0を返 かえ す関数 かんすう sgn(x ) を定義 ていぎ できる。この関数 かんすう は符号 ふごう 関数 かんすう と呼 よ ばれることがある
sgn
(
x
)
=
{
−
1
:
x
<
0
0
:
x
=
0
1
:
x
>
0
{\displaystyle \operatorname {sgn}(x)=\left\{{\begin{matrix}-1&:x<0\\\;0&:x=0\\\;1&:x>0\end{matrix}}\right.}
このとき(x =0の場合 ばあい を除 のぞ き)以下 いか の式 しき が得 え られる。
sgn
(
x
)
=
x
|
x
|
=
|
x
|
x
=
d
|
x
|
d
x
=
2
H
(
x
)
−
1.
{\displaystyle \operatorname {sgn}(x)={\frac {x}{|x|}}={\frac {|x|}{x}}={\frac {d{|x|}}{d{x}}}=2H(x)-1.}
ここで |x | は x の絶対 ぜったい 値 ち であり、H (x ) はヘヴィサイドの階段 かいだん 関数 かんすう である。微分 びぶん 法 ほう も参照 さんしょう 。
複素 ふくそ 符号 ふごう 関数 かんすう [ 編集 へんしゅう ]
定義 ていぎ 域 いき が複素数 ふくそすう であり、正数 せいすう に対 たい して1を、負数 ふすう に対 たい して-1を、ゼロに対 たい して0を返 かえ す csgn(x ) を定義 ていぎ できる 。この関数 かんすう は複素 ふくそ 符号 ふごう 関数 かんすう と呼 よ ばれることがある。
csgn
(
x
)
=
{
−
1
:
x
<
0
0
:
x
=
0
1
:
x
>
0
{\displaystyle \operatorname {csgn} (x)=\left\{{\begin{matrix}-1&:x<0\\\;0&:x=0\\\;1&:x>0\end{matrix}}\right.}
複素数 ふくそすう の大小 だいしょう は以下 いか のように解釈 かいしゃく する。
{
x
>
0
⟺
Re
(
x
)
>
0
∨
(
Re
(
x
)
=
0
∧
Im
(
x
)
>
0
)
x
<
0
⟺
Re
(
x
)
<
0
∨
(
Re
(
x
)
=
0
∧
Im
(
x
)
<
0
)
{\displaystyle {\begin{cases}x>0\iff \operatorname {Re} (x)>0\vee (\operatorname {Re} (x)=0\land \operatorname {Im} (x)>0)\\x<0\iff \operatorname {Re} (x)<0\vee (\operatorname {Re} (x)=0\land \operatorname {Im} (x)<0)\\\end{cases}}}
符号 ふごう 付 つ き数 すう の算術 さんじゅつ 演算 えんざん [ 編集 へんしゅう ]
数列 すうれつ は、零 れい ・正数 せいすう ・負数 ふすう の三 さん 種類 しゅるい が組 く み合 あ わさって構成 こうせい されており、基準 きじゅん 点 てん が零 れい 、基準 きじゅん 点 てん から増 ふ えている分 ふん が正数 せいすう 、基準 きじゅん 点 てん から減 へ っている分 ふん が負数 ふすう となる。
従 したが って、加算 かさん と減算 げんざん では、負数 ふすう は負債 ふさい であり、正数 せいすう は収益 しゅうえき であると考 かんが えることができる。同 おな じく、時間 じかん や世代 せだい の距離 きょり を数 かぞ える場合 ばあい にも、零 れい は現在 げんざい や自分 じぶん 、負数 ふすう は過去 かこ や年上 としうえ (親 おや や祖父母 そふぼ など)、正数 せいすう は未来 みらい や年下 としした (子供 こども や孫 まご など)であると考 かんが えることもできる。
負数 ふすう を加 くわ えることは、対応 たいおう する正数 せいすう を減 げん ずることになる。逆 ぎゃく に、負数 ふすう を減 げん ずることは、対応 たいおう する正数 せいすう を加 くわ えることになる。
(9歳 さい 年下 としした の人物 じんぶつ と5歳 さい 年下 としした の人物 じんぶつ は、4歳 さい 離 はな れている。)
(7歳 さい 年下 としした の人物 じんぶつ と2歳 さい 年上 としうえ の人物 じんぶつ は、9歳 さい 離 はな れている。)
(¥4の負債 ふさい があって収益 しゅうえき による¥12の資産 しさん を得 え たら、純資産 じゅんしさん は¥8である)(注 ちゅう :純資産 じゅんしさん =資産 しさん 総額 そうがく -負債 ふさい 総額 そうがく )
(¥5の資産 しさん を持 も っていて¥3の負債 ふさい ができたら、純資産 じゅんしさん は¥2である)
(¥2の負債 ふさい があってさらに¥5の負債 ふさい ができたら、負債 ふさい は合 あ わせて¥7になる)
減算 げんざん と負 ふ 符号 ふごう の概念 がいねん の混乱 こんらん を避 さ けるため、負 ふ 符号 ふごう を上 うえ 付 つ きで書 か く場合 ばあい もある(ただし、会計 かいけい では負 ふ 符号 ふごう を△で表現 ひょうげん する)。
− 2 + − 5 = − 2 − 5 = − 7
△2 + △5 = △2 − 5 = △7
正数 せいすう をより小 ちい さな正数 せいすう から減 げん ずると、結果 けっか は負 まけ となる。
4 − 6 = −2
(¥4を持 も っていて¥6を使 つか ったら、負債 ふさい ¥2が残 のこ る)
正数 せいすう を任意 にんい の負数 ふすう から引 ひ くと、結果 けっか は負 まけ となる。
−3 − 6 = −9
(負債 ふさい が¥3あってさらに¥6を使 つか ったら、負債 ふさい は¥9となる)
負数 ふすう を減 げん ずることは、対応 たいおう する正数 せいすう を加 くわ えることと等価 とうか である。
5 − (−2) = 5 + 2 = 7
(純資産 じゅんしさん ¥5を持 も っていて負債 ふさい を¥2減 へ らしたら、新 あら たな純資産 じゅんしさん は¥7となる)
別 べつ の例 れい
−8 − (−3) = −5
(負債 ふさい が¥8あって負債 ふさい を¥3減 へ らしたら、まだ¥5の負債 ふさい が残 のこ る)
負数 ふすう を掛 か ける ことは、正負 せいふ の方向 ほうこう を逆転 ぎゃくてん させることになる。負数 ふすう に正数 せいすう を掛 か けると、積 せき は負数 ふすう のままとなる。しかし、負数 ふすう に負数 ふすう を掛 か けると、積 せき は正数 せいすう となる[1] 。
(−20) × 3 = −60
(負債 ふさい ¥20を3倍 ばい にすれば、負債 ふさい ¥60になる。)
(−40) × (−2) = 80
(後方 こうほう へ毎時 まいじ 40km進 すす む車 くるま は、2時 じ 間 あいだ 前 まえ には現在地 げんざいち から前方 ぜんぽう へ80kmの位置 いち にいた。)
これを理解 りかい する方法 ほうほう の1つは、正数 せいすう による乗算 じょうざん を、加算 かさん の繰 く り返 かえ しと見 み なすことである。3 × 2 は各 かく グループが2を含 ふく む3つのグループと考 かんが える。したがって、3 × 2 = 2 + 2 + 2 = 6 であり、当然 とうぜん −2 × 3 = (−2) + (−2) + (−2) = −6 である。
負数 ふすう による乗算 じょうざん も、加算 かさん の繰 く り返 かえ しと見 み なすことができる。例 たと えば、3 × −2は各 かく グループが−2を含 ふく む3つのグループと考 かんが えられる。
3 × −2 = (−2) + (−2) + (−2) = −6
これは乗算 じょうざん の交換 こうかん 法則 ほうそく を満 み たすことに注意 ちゅうい
3 × −2 = −2 × 3 = −6
「負数 ふすう による乗算 じょうざん 」と同 おな じ解釈 かいしゃく を負数 ふすう に対 たい しても適用 てきよう すれば、以下 いか のようになる。
−4 × −3
= − (−4) − (−4) − (−4)
= 4 + 4 + 4
= 12
しかし形式 けいしき 的 てき な視点 してん からは、2つの負数 ふすう の乗算 じょうざん は、積 せき の和 わ に対 たい する分配 ぶんぱい 法則 ほうそく によって直接 ちょくせつ 得 え られる。
−1 × −1
= (−1) × (−1) + (−2) + 2
= (−1) × (−1) + (−1) × 2 + 2
= (−1) × (−1 + 2) + 2
= (−1) × 1 + 2
= (−1) + 2
= 1
除算 じょざん も乗算 じょうざん と同 おな じく、負数 ふすう で割 わ ることは、正負 せいふ の方向 ほうこう を逆転 ぎゃくてん させることになる。負数 ふすう を正数 せいすう で割 わ ると、商 しょう は負数 ふすう のままとなる。しかし、負数 ふすう を負数 ふすう で割 わ ると、商 しょう は正数 せいすう となる。
被除数 ひじょすう と除数 じょすう の符号 ふごう が異 こと なるなら、商 しょう は負数 ふすう となる。
(−90) ÷ 3 = −30
(負債 ふさい ¥90を3人 にん で分 わ けると、負債 ふさい ¥30ずつ継承 けいしょう される。)
24 ÷ (−4) = −6
(東 ひがし を正数 せいすう 、西 にし を負数 ふすう とする場合 ばあい :4時 じ 間 あいだ 後 ご に東 ひがし へ24km地点 ちてん に進 すす む車 くるま は、1時 じ 間 あいだ 前 まえ には西 にし へ6kmの位置 いち にいる。)
両方 りょうほう の数 かず が同 おな じ符号 ふごう を持 も つなら、商 しょう は(両方 りょうほう が負数 ふすう であっても)正数 せいすう となる。
(−12) ÷ (−3) = 4
累乗 るいじょう は乗算 じょうざん や除算 じょざん と同 おな じく、指数 しすう を正数 せいすう にすると、「n乗 じょう 」に倍増 ばいぞう される。しかし、指数 しすう を負数 ふすう にすると、「1 / n乗 じょう 」に分割 ぶんかつ される。つまり、指数 しすう n を正数 せいすう にすると「n 回 かい 乗算 じょうざん を繰 く り返 かえ す 」ことになるが、指数 しすう n を負数 ふすう にすると「n 回 かい 除算 じょざん を繰 く り返 かえ す 」ことになる。
33 = 27
(×3 ×3 ×3 = 27)
3−3 = 1/27
(÷3 ÷3 ÷3 = 1/27)
360 × 23 = 2880
(360 ×2 ×2 ×2 = 2880)
36 × 5−1 = 7.2
(36 ÷5 = 7.2)
負 まけ の整数 せいすう と負 まけ でない整数 せいすう の形式 けいしき 的 てき な構成 こうせい [ 編集 へんしゅう ]
有理数 ゆうりすう の場合 ばあい と同様 どうよう 、整数 せいすう を自然 しぜん 数 すう の順序 じゅんじょ 対 たい (a , b ) (これは整数 せいすう a − b を表 あらわ していると考 かんが えることができる)を下 した に述 の べるようにして同一 どういつ 視 し したものとして定義 ていぎ することによって自然 しぜん 数 すう の集合 しゅうごう N を整数 せいすう の集合 しゅうごう Z に拡張 かくちょう できる。これらの順序 じゅんじょ 対 たい に対 たい する加法 かほう と乗法 じょうほう の拡張 かくちょう は以下 いか の規則 きそく による。
(a , b ) + (c , d ) = (a + c , b + d )
(a , b ) × (c , d ) = (a × c + b × d , a × d + b × c )
ここで以下 いか の規則 きそく により、これらの順序 じゅんじょ 対 たい に同値 どうち 関係 かんけい ~ を定義 ていぎ する。
(a , b ) ~ (c , d ) となるのは a + d = b + c なる場合 ばあい 、およびこの場合 ばあい に限 かぎ る
この同値 どうち 関係 かんけい は上記 じょうき の加法 かほう と乗法 じょうほう の定義 ていぎ と矛盾 むじゅん せず、Z をN 2 の ~ による商 しょう 集合 しゅうごう として定義 ていぎ できる。すなわち2つの順序 じゅんじょ 対 たい (a , b ) と (c , d ) が上記 じょうき の意味 いみ で同値 どうち であるとき同一 どういつ 視 し する。
さらに以下 いか の通 とお り全 ぜん 順序 じゅんじょ をZ に定義 ていぎ できる。
(a , b ) ≤ (c , d ) となるのは a + d ≤ b + c となる場合 ばあい 、およびこの場合 ばあい に限 かぎ る
これにより加法 かほう の零 れい 元 げん が (a , a ) の形式 けいしき で、(a , b ) の加法 かほう の逆 ぎゃく 元 もと が (b , a ) の形式 けいしき で、乗法 じょうほう の単位 たんい 元 もと が (a + 1, a ) の形式 けいしき で導 みちび かれ、減法 げんぽう の定義 ていぎ が以下 いか のように導 みちび かれる。
(a , b ) − (c , d ) = (a + d , b + c ).
負 まけ の数 かず の起源 きげん [ 編集 へんしゅう ]
長 なが い間 あいだ 、問題 もんだい に対 たい する負 まけ の解 かい は「誤 あやま り」であると考 かんが えられていた。これは、負数 ふすう を実 じつ 世界 せかい で見付 みつ けることができなかったためである(例 たと えば、負数 ふすう のリンゴを持 も つことはできない)。その抽象 ちゅうしょう 概念 がいねん は早 はや ければ紀元前 きげんぜん 100年 ねん – 紀元前 きげんぜん 50年 ねん には認識 にんしき されていた。中国 ちゅうごく の『九 きゅう 章 しょう 算術 さんじゅつ 』には図 ず の面積 めんせき を求 もと める方法 ほうほう が含 ふく まれている。赤 あか い算木 さんぎ で正 せい の係数 けいすう を、黒 くろ い算木 さんぎ で負 まけ の係数 けいすう を示 しめ し、負 まけ の数 かず がかかわる連立 れんりつ 方程式 ほうていしき を解 と くことができた。紀元 きげん 後 ご 7世紀 せいき ごろに書 か かれた古代 こだい インド の『バクシャーリー写本 しゃほん 』[2] は"+"を負 ふ 符号 ふごう として使 つか い、負 まけ の数 かず による計算 けいさん を行 おこな っていた。これらが現在 げんざい 知 し られている最古 さいこ の負 まけ の数 かず の使用 しよう である。
プトレマイオス朝 あさ エジプトではディオファントス が3世紀 せいき に『算術 さんじゅつ 』で 4x + 20 = 0 (解 かい は負 まけ となる)と等価 とうか な方程式 ほうていしき に言及 げんきゅう し、この方程式 ほうていしき はばかげていると言 い っており、古代 こだい 地中海 ちちゅうかい 世界 せかい に負数 ふすう の概念 がいねん がなかったことを示 しめ している。
7世紀 せいき の間 あいだ に、負数 ふすう はインド で負債 ふさい を表 あらわ すために使 つか われていた。インドの数学 すうがく 者 しゃ ブラーマグプタ は『ブラーフマスプタ・シッダーンタ 』(628年 ねん )において、今日 きょう も使 つか われている一般 いっぱん 化 か された形式 けいしき の解 かい の公式 こうしき を作 つく るために、負数 ふすう を使 つか うことについて論 ろん じている。彼 かれ は二 に 次 じ 方程式 ほうていしき の負 まけ の解 かい を発見 はっけん し、負数 ふすう と零 れい が関 かか わる演算 えんざん に関 かん する規則 きそく も与 あた えている。彼 かれ は正数 せいすう を「財産 ざいさん 」、零 れい を「0 (cipher)」、負 まけ の数 かず を「借金 しゃっきん 」と呼 よ んだ[3] [4] 。12世紀 せいき のインドで、バースカラ2世 せい も二 に 次 じ 方程式 ほうていしき に負 まけ の根 ね を与 あた えていたが、問題 もんだい の文脈 ぶんみゃく では不適切 ふてきせつ なものとして負 まけ の根 ね を拒絶 きょぜつ している。
8世紀 せいき 以降 いこう 、イスラム世界 せかい はブラーマグプタ の著書 ちょしょ のアラビア語 ご 訳 わけ から負 まけ の数 かず を学 まな び、紀元 きげん 1000年 ねん 頃 ころ までには、アラブの数学 すうがく 者 しゃ は負債 ふさい に負 まけ の数 かず を使 つか うことを理解 りかい していた。
負 まけ の数 かず の知識 ちしき は、最終 さいしゅう 的 てき にアラビア語 ご とインド語 ご の著書 ちょしょ のラテン語 らてんご 訳 わけ を通 とお してヨーロッパに到達 とうたつ した。
しかし、ヨーロッパ の数学 すうがく 者 しゃ はそのほとんどが、17世紀 せいき まで負数 ふすう の概念 がいねん に抵抗 ていこう を見 み せた。ただしフィボナッチ は、『算盤 そろばん の書 しょ 』(1202年 ねん )の第 だい 13章 しょう で負数 ふすう を負債 ふさい と解釈 かいしゃく し、後 のち には『精華 せいか 』で損失 そんしつ と解釈 かいしゃく して金融 きんゆう 問題 もんだい に負 まけ の解 かい を認 みと めた。同時 どうじ に、中国人 ちゅうごくじん は右 みぎ 端 はし のゼロでない桁 けた に斜線 しゃせん を引 ひ くことによって負数 ふすう を表 あらわ した。ヨーロッパ人 じん の著書 ちょしょ で負数 ふすう が使 つか われたのは、15世紀 せいき 中 なか のシュケ によるものが最初 さいしょ であった。彼 かれ は負数 ふすう を指数 しすう として使 つか ったが、「馬鹿 ばか げた数 かず 」であると呼 よ んだ。
イギリスの数学 すうがく 者 しゃ フランシス・マセレス[2] は1759年 ねん 、負数 ふすう は存在 そんざい しないという結論 けつろん に達 たっ した[5] 。
負数 ふすう は現代 げんだい まで十分 じゅうぶん に理解 りかい されていなかった。つい18世紀 せいき まで、スイス の数学 すうがく 者 しゃ レオンハルト・オイラー は負数 ふすう が無限 むげん 大 だい より大 おお きいと信 しん じており(この見解 けんかい はジョン・ウォリス と共通 きょうつう である)、方程式 ほうていしき が返 かえ すあらゆる負 まけ の解 かい を意味 いみ がないものとして無視 むし することが普通 ふつう だった[6] 。負数 ふすう が無限 むげん 大 だい より大 おお きいという論拠 ろんきょ は、
1
x
{\displaystyle {\frac {1}{x}}}
の商 しょう と、x が正 せい の側 がわ から x = 0 の点 てん に近 ちか づき、交差 こうさ した時 とき 何 なに が起 お きるかの考察 こうさつ によって生 しょう じている。
正 せい 行列 ぎょうれつ
実 み 行列 ぎょうれつ A について、A が負 まけ でない ということを、A のすべての成分 せいぶん が負 まけ でない、というふうに定 さだ めることができる。このとき、実 じつ 行列 ぎょうれつ のうちには正 せい とも負 まけ とも言 い えないものもあることになる。また、実 み 行列 ぎょうれつ A について、A の全 すべ ての正方 せいほう 部分 ぶぶん 行列 ぎょうれつ の行列 ぎょうれつ 式 しき が負 まけ でないとき、A のことを完全 かんぜん に非負 ひふ (行列 ぎょうれつ 理論 りろん )あるいは、完全 かんぜん に正 ただし (コンピュータ科学 かがく 者 しゃ )と呼 よ ぶことがある。
正 せい 定値 ていち 行列 ぎょうれつ
一方 いっぽう で、線形 せんけい 代数 だいすう 学 がく 的 てき な観点 かんてん から、実 みのる 対称 たいしょう 行列 ぎょうれつ やより一般 いっぱん に複素 ふくそ エルミート行列 ぎょうれつ について、上 うえ とは異 こと なった正負 せいふ の概念 がいねん がしばしば用 もち いられる。エルミート行列 ぎょうれつ A は、その固有値 こゆうち の全 すべ てが負 まけ でないときに、負 まけ でない(あるいは単 たん に、正 せい である)とよばれる。A が負 まけ でないということはある行列 ぎょうれつ B についてA が B *.B と書 か けることと同値 どうち になる(行列 ぎょうれつ の定値 ていち 性 せい も参照 さんしょう )。無限 むげん 次元 じげん の場合 ばあい として、函数 かんすう 解析 かいせき 学 がく における正 せい 作用素 さようそ の概念 がいねん が対応 たいおう する。
抽象 ちゅうしょう 代 だい 数学 すうがく の言葉 ことば では、正 せい の数 かず の全体 ぜんたい P は実数 じっすう 全体 ぜんたい ℝ の正 せい 錐 きり (英語 えいご 版 ばん ) と呼 よ ばれる対象 たいしょう を成 な す。これにより ℝ は加法 かほう に関 かん して順序 じゅんじょ 群 ぐん 、加法 かほう と乗法 じょうほう に関 かん して順序 じゅんじょ 体 たい と呼 よ ばれる構造 こうぞう を持 も ち、また逆 ぎゃく に、順序 じゅんじょ 群 ぐん や順序 じゅんじょ 体 たい としての ℝ の正 せい 錐 きり P が与 あた えられれば「正 せい の数 かず とは P の任意 にんい の元 もと のことである」と述 の べることができる。
xy -平面 へいめん ℝ 2 の第 だい 一 いち 象限 しょうげん (英語 えいご 版 ばん ) や xyz -空間 くうかん ℝ 3 の x > 0, y > 0, z > 0 なる八 はち 分 ふん 象限 しょうげん (英語 えいご 版 ばん ) などが順序 じゅんじょ 線型 せんけい 空間 くうかん としての正 せい 錐 きり の例 れい であり、この構造 こうぞう に「錐 きり 」の名称 めいしょう がつけられている理由 りゆう をみることができる。
これらのような順序 じゅんじょ 構造 こうぞう において、正 せい 錐 きり はそれぞれの付加 ふか 構造 こうぞう によって記述 きじゅつ できる良 よ い性質 せいしつ を様々 さまざま に持 も つ。
函数 かんすう 解析 かいせき 学 がく における正 せい 作用素 さようそ 全体 ぜんたい の成 な す凸 とつ 錐 きり もまたそのような例 れい であり、より抽象 ちゅうしょう 的 てき にバナッハ環 たまき 、C*-環 たまき における正 せい の元 もと (英語 えいご 版 ばん ) などが考察 こうさつ の対象 たいしょう となる。
^ 『相対 そうたい 論 ろん の式 しき を導 みちび いてみよう、そして、人 ひと に話 はな そう』(小笠 おがさ 英志 えいじ 、ベレ出版 しゅっぱん 、ISBN 978-4860642679 )の
PP.121-127にマイナス×マイナスがプラスになることの小学生 しょうがくせい も納得 なっとく できる説明 せつめい が書 か いてある。
^ Hayashi, Takao (2005), "Indian Mathematics", in Flood, Gavin, The Blackwell Companion to Hinduism, Oxford: Basil Blackwell, 616 pages, pp. 360-375, ISBN 978-1-4051-3251-0 .
^ Colva Roney-Dougal, Lecturer in Pure Mathematics at the University of St Andrews, stated this on the BBC Radio 4 "In Our Time", on Negative Numbers, 9 March 2006.
^ Knowledge Transfer and Perceptions of the Passage of Time , ICEE-2002 Keynote Address by Colin Adamson-Macedo. [1]
^ Maseres, Francis, 1731–1824. A dissertation on the use of the negative sign in algebra , 1758.
^ Alberto A. Martinez, Negative Math: How Mathematical Rules Can Be Positively Bent , Princeton University Press, 2006; おもに1600年代 ねんだい から1900年代 ねんだい 前半 ぜんはん にかけての、負数 ふすう に関 かん する論争 ろんそう の歴史 れきし 。