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水疱すいほうしょう

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水疱すいほうしょう(すいほうしょう)は、水疱すいほうみずぶくれ)やびらんしょうじる疾患しっかんをまとめてしょうする(ウイルスせい細菌さいきんせい疾患しっかん熱傷ねっしょうなどの物理ぶつりてき刺激しげきによる水疱すいほう形成けいせいのぞく)。遺伝子いでんし異常いじょうによる先天せんてんせいのものと、自己じこ免疫めんえきによるものに大別たいべつされる。

分類ぶんるい

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てん疱瘡ほうそう

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えいPemphigus

尋常じんじょうせいてん疱瘡ほうそう(じんじょうせいてんぽうそう)
表皮ひょうひうち基底きていそう直上ちょくじょう水疱すいほうができる疾患しっかんである。てん疱瘡ほうそうのうち65%をめ、中高年ちゅうこうねんおおい。口腔こうくううち病変びょうへん非常ひじょうおおいのが特徴とくちょうである。口腔こうくうのほか、咽頭いんとうそと陰部いんぶがよくおかされる。Nikolsky現象げんしょう陽性ようせいTzanck試験しけん陽性ようせいである。蛍光けいこう抗体こうたい直接ちょくせつほうで、表皮ひょうひ細胞さいぼうあいだIgGやC3の沈着ちんちゃくる。蛍光けいこう抗体こうたい間接かんせつほうでも表皮ひょうひ細胞さいぼうあいだ陽性ようせいとなる。デスモグレイン1、デスモグレイン3にたいする自己じこ抗体こうたいこうデスモゾーム抗体こうたい)によっておこる自己じこ免疫めんえき疾患しっかんかんがえられている。治療ちりょう副腎ふくじんステロイド内服ないふく(40-60mg/にち)となる。治療ちりょう抵抗ていこうせいのものでは、免疫めんえき抑制よくせいざい血漿けっしょう交換こうかんおこなう。
落葉らくようじょうてん疱瘡ほうそう(らくようじょうてんぽうそう)
角質かくしつそう水疱すいほうができる疾患しっかんであるが、すぐ破損はそんしてあさいびらんとべにむらのみとなっていることがおおい。デスモグレイン1にたいする自己じこ抗体こうたいのみを血清けっせいちゅうゆうし、口腔こうくう粘膜ねんまく病変びょうへんはほとんどみられることはない。Nikolsky現象げんしょう陽性ようせい、Tzanck試験しけん陽性ようせい蛍光けいこう抗体こうたい直接ちょくせつほうでは表皮ひょうひ細胞さいぼうあいだにIgG/C3の沈着ちんちゃくがある。治療ちりょう尋常じんじょうせいてん疱瘡ほうそうじゅんずる。
増殖ぞうしょくせいてん疱瘡ほうそう(ぞうしょくせいてんぽうそう)
尋常じんじょうせいてん疱瘡ほうそう同様どうよう部位ぶい同様どうよう症状しょうじょうはじまるがびらんめんさい上皮じょうひすることなく次第しだい隆起りゅうきしてくる。表面ひょうめん乳頭にゅうとうじょう、しばしばしょう水疱すいほうしょう膿疱のうほうゆうする。治療ちりょう尋常じんじょうせいてん疱瘡ほうそうじゅんずる。
べにむらせいてん疱瘡ほうそう(こうはんせいてんぽうそう)
顔面がんめんせい中部ちゅうぶ中心ちゅうしんとしたべにまだら特徴とくちょうとしたいみきにもしょう水疱すいほうべにまだら主体しゅたいとするてん疱瘡ほうそうさまかわ疹をしょうじる。デスモグレイン1にたいする自己じこ抗体こうたいゆうし、落葉らくようじょうてん疱瘡ほうそう移行いこうすることがある(そもそも落葉らくようじょうてん疱瘡ほうそうがたであるともわれる)。
腫瘍しゅよう随伴ずいはんせいてん疱瘡ほうそう(しゅようずいはんせいてんぽうそう)
悪性あくせい腫瘍しゅよう血液けつえきけい腫瘍しゅよう(とくにリンパだまけい)に合併がっぺいしてしょうじる。口腔こうくう粘膜ねんまくつよおかされ(鼻腔びこうそと陰部いんぶも)かわ疹は多彩たさいであるが比較的ひかくてき限局げんきょくしてしょうじる。はい疾患しっかん合併がっぺいすることがあり、おおきく影響えいきょうする。
IgAてん疱瘡ほうそう
しょう水疱すいほうしょう膿疱のうほうよりなるかわ疹で、ちゅう表皮ひょうひ細胞さいぼうあいだ物質ぶっしつたいするIgA抗体こうたいゆうする。蛍光けいこう抗体こうたい直接ちょくせつほうで、表皮ひょうひ細胞さいぼうあいだにIgAの沈着ちんちゃくみとめる。(間接かんせつほう抗体こうたいによっては陽性ようせいとならないこともある)

るいてん疱瘡ほうそう

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えいPemphigoid

水疱すいほうせいるいてん疱瘡ほうそう
70さい以上いじょう高齢こうれいしゃおお水疱すいほうしょうである。表皮ひょうひ真皮しんぴ境界きょうかいのBP180抗原こうげん、BP230抗原こうげんたいする自己じこ抗体こうたいこうヘミデスモゾーム抗体こうたい)による疾患しっかんである。表皮ひょうひ水疱すいほうができるいわゆる緊満せい水疱すいほう形態けいたいをとる。粘膜ねんまく病変びょうへんおおくはないが時折ときおりられる。デルマドロームである場合ばあいがある。Nikolsky現象げんしょう陰性いんせい、Tzanck試験しけん陰性いんせい蛍光けいこう抗体こうたい直接ちょくせつほう基底きていまくにIgGやC3のせんじょう沈着ちんちゃくみとめる。1モルしょく塩水えんすい剥離はくり皮膚ひふもちいた蛍光けいこう抗体こうたい間接かんせつほうで、基底きていまく表皮ひょうひがわ陽性ようせいとなる。
粘膜ねんまくるいてん疱瘡ほうそう
結膜けつまく口腔こうくうなどの粘膜ねんまく水疱すいほう、びらんをかえ形成けいせいし、瘢痕はんこんせいなおる。瘢痕はんこんせいるいてん疱瘡ほうそうともう。結膜けつまく口腔こうくうのほか、咽頭いんとう喉頭こうとう食道しょくどう尿道にょうどうちつ肛門こうもんなどにも病変びょうへんしょうじる。水疱すいほう・びらんー瘢痕はんこん治癒ちゆかえした部位ぶい放置ほうちすると癒着ゆちゃく狭窄きょうさくをきたす。BP180か、ラミニン5にたいする自己じこ抗体こうたいによる疾患しっかんである。

治療ちりょう

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疱疹じょう皮膚ひふえん

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疱疹じょう皮膚ひふえん
表皮ひょうひ水疱すいほうしょうじる水疱すいほうしょうであるが、血清けっせいちゅう基底きていまくたいする抗体こうたいたず、病因びょういんははっきりしない。浮腫ふしゅせいべにまだら周囲しゅういしょう水疱すいほう環状かんじょう配列はいれつするのが特徴とくちょうてきである。海外かいがいではセリアックびょう合併がっぺいおおい。蛍光けいこう抗体こうたい直接ちょくせつほうで、真皮しんぴ乳頭にゅうとうにIgAの顆粒かりゅうじょうないしさい線維状せんいじょう沈着ちんちゃくがある。ヨードカリ内服ないふく増悪ぞうあくし、これによるぬの試験しけん陽性ようせいとなる。ジアフェニルスルホン(DDS)内服ないふく有効ゆうこう

せんじょうIgA水疱すいほうせい皮膚ひふしょう

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せんじょうIgA水疱すいほうせい皮膚ひふしょう
表皮ひょうひ水疱すいほうしょうじる水疱すいほうしょう水疱すいほうせいるいてん疱瘡ほうそうや疱疹じょう皮膚ひふえん症状しょうじょうていする。蛍光けいこう抗体こうたい直接ちょくせつほう基底きていまくにIgAのせんじょう沈着ちんちゃくる(間接かんせつほう抗体こうたいによっては陽性ようせいにならないこともある)。DDSやステロイド内服ないふくをする。治療ちりょうにはがいしてよく反応はんのうする。

その水疱すいほうしょう

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先天せんてんせい表皮ひょうひ水疱すいほうしょう
遺伝いでんせい疾患しっかんであり、昭和しょうわ62ねん1がつ1にち難病なんびょう指定していされた特定とくてい疾患しっかんである[2]遺伝いでん形式けいしき水疱すいほう初発しょはつする部位ぶいによって、単純たんじゅんがた・ヘミデスモソームがた接合せつごうがた致死ちしがた)・栄養えいよう障害しょうがいがたけられる。臨床りんしょう症状しょうじょうおよび責任せきにん遺伝子いでんしについて[3]したしるす。
単純たんじゅんがた表皮ひょうひ水疱すいほうしょう (ESB, epidermolysis bullosa simplex)
単純たんじゅんがたケラチンKRT5, KRT14やプレクチン遺伝子いでんし変異へんいにより表皮ひょうひない水疱すいほうしょうじる。ケラチンの変異へんいによるどうしょうは、KRT5/KRT14のヘテロりょうたい (KIF, keratin intermediate filament) の形成けいせい重要じゅうようなドメインに変異へんいはいっており、ケラチンりょうたい正常せいじょう形成けいせいできないことが原因げんいんであるとかんがえられている[4]優性ゆうせい遺伝いでん場合ばあい劣性れっせい遺伝いでん場合ばあいがある。臨床りんしょうぞうでさらに3がた分類ぶんるいされる。
ヘミデスモソームがた表皮ひょうひ水疱すいほうしょう (hemidesmosomal variant of EB)
ヘミデスモソームがたおもαあるふぁ6/βべーた4インテグリン変異へんい原因げんいんとなるが、~500kDaのおおきな接着せっちゃく分子ぶんしをコードしているプレクチン遺伝子いでんしPLEC1の変異へんいによって発症はっしょうするケースもある。ヘミデスモソームがたぞくするGABEB(generalised atrophic benign EB)では、XVIIがたコラーゲン/180kDa Bullous pemphigoid抗体こうたい(BP180抗原こうげんたいする抗体こうたい)遺伝子いでんしCOL17A1/BPAG2の変異へんいによりしょうじる。プレクチン遺伝子いでんし異常いじょうによるどうしょう場合ばあいきんジストロフィーを、αあるふぁ6/βべーた4インテグリン遺伝子いでんし異常いじょうによるどうしょう場合ばあい先天せんてんせい幽門ゆうもん閉塞へいそくしょう合併がっぺいすることがられる。BP180遺伝子いでんし異常いじょう(ときにラミニン5遺伝子いでんし部分ぶぶん異常いじょう)によるどうしょうは「致死ちしがた接合せつごうがた…」とわれる。これを接合せつごうがたふくめてしょうされることもおおい。劣性れっせい遺伝いでんにより遺伝いでんする。
接合せつごうがた表皮ひょうひ水疱すいほうしょう (JEB, junctional epidermolysis bullosa)
接合せつごうがたは、表皮ひょうひ真皮しんぴ境界きょうかい構成こうせいするラミニン5遺伝子いでんしLAMA2, LAMB3, およびLAMC2の変異へんい欠損けっそんによりしょうじ、つめ粘膜ねんまくおかされるが、萎縮いしゅくのこすものの比較的ひかくてきひえつぶしゅ瘢痕はんこんのこさない。Herlitz(致死ちしせい接合せつごうがたでは、N末端まったん付近ふきんストップコドンしょうじており、どう遺伝子いでんし産物さんぶつおおきく欠損けっそんしてしまっている。劣性れっせい遺伝いでんによって遺伝いでんする。
栄養えいよう障害しょうがいがた表皮ひょうひ水疱すいほうしょう (the dystrophic form of EB)
栄養えいよう障害しょうがいがた遺伝いでん形式けいしきによりさらに優性ゆうせい栄養えいよう障害しょうがいがた劣性れっせい栄養えいよう障害しょうがいがたかれる。ひえつぶしゅ瘢痕はんこんのこる。優性ゆうせい栄養えいよう障害しょうがいがた係留けいりゅう線維せんい形成けいせい不全ふぜんにより基底きていいた水疱すいほう形成けいせいする。劣性れっせい栄養えいよう障害しょうがいがたは、VIIがたコラーゲンの欠損けっそん減少げんしょうにより基底きていいた水疱すいほう形成けいせいする。粘膜ねんまくおかせかさねつよい。劣性れっせい遺伝いでん場合ばあい優性ゆうせい遺伝いでん場合ばあいがある。おおくは新生児しんせいじから乳幼児にゅうようじにかけて発症はっしょうし、症状しょうじょう持続じぞくする傾向けいこうがある。
後天こうてんせい表皮ひょうひ水疱すいほうしょう
緊張きんちょうせい水疱すいほう形成けいせいする。基底きていまく厳密げんみつには基底きていばんより深部しんぶ係留けいりゅう線維せんい)を構成こうせいする成分せいぶんであるVIIがたコラーゲンにたいする自己じこ抗体こうたいによる自己じこ免疫めんえき疾患しっかんかんがえられている。1モルしょく塩水えんすい剥離はくり皮膚ひふもちいた蛍光けいこう抗体こうたい間接かんせつほうで、基底きていまく真皮しんぴがわ陽性ようせいとなり、水疱すいほうせいるいてん疱瘡ほうそうとの鑑別かんべつてんとなる。アミロイドーシス糖尿とうにょうびょう悪性あくせい腫瘍しゅようともなっている場合ばあいがある。

関連かんれん項目こうもく

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出典しゅってん

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  1. ^ https://www.dermatol.or.jp/qa/qa15/q07.html
  2. ^ 難病なんびょう情報じょうほうセンター|対象たいしょう疾患しっかん一覧いちらんひょう公費こうひ対象たいしょう45疾患しっかん
  3. ^ R Varki, S Sadowski, E Pfendner, J Uitto. Epidermolysis bullosa. I. Molecular genetics of the junctional and hemidesmosomal variants. J Med Genet(2006); 43: 641–652
  4. ^ Felix B. Müller, Wolfgang Küster, Kerstin Wodecki, Hiram Almeida Jr., Leena Bruckner-Tuderman, Thomas Krieg, Bernhard P. Korge, and Meral J. Arin. Novel and Recurrent Mutations in Keratin KRT5 and KRT14 Genes in Epidermolysis Bullosa Simplex:: Implications for Disease Phenotype and Keratin Filament Assembly, HUMAN MUTATION(2006)
  5. ^ 自家じか培養ばいよう表皮ひょうひジェイス:表皮ひょうひ水疱すいほうしょう治療ちりょう目的もくてきとした希少きしょう疾病しっぺいよう医療いりょう機器きき指定してい (PDF) - 2011ねん3がつ18にち(2013ねん3がつ28にち閲覧えつらん

外部がいぶリンク

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