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泥炭でいたん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
された泥炭でいたん

泥炭でいたん(でいたん、えい: peat)は、どろじょうすみで、石炭せきたん一種いっしゅ石炭せきたんなかでは植物しょくぶつからの炭化たんかすくない。湿地しっちおび表層ひょうそうなどにあるなん変哲へんてつもない普通ふつうどろだが、可燃かねんぶつである。採取さいしゅしてかわかせば燃料ねんりょうとして使用しようできる一方いっぽうで、やま火事かじ延焼えんしょう要因よういんともなる[1]英語えいごピート、あるいはくさすみそうたんともばれることがある。

概要がいよう

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蓄積ちくせきする条件じょうけん

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泥炭でいたん植物しょくぶつ遺骸いがい堆積たいせき微生物びせいぶつとうによる分解ぶんかい速度そくど上回うわまわった土地とち形成けいせいされる。酸性さんせい嫌気いやけせいといった条件じょうけん植物しょくぶつ分解ぶんかい速度そくどおそくなるため、酸性さんせい湿地しっち形成けいせいされることがおおいが、アルカリ土壌どじょうでも形成けいせいされうる(フェン[2]

泥炭でいたん蓄積ちくせきした湿地しっちたい泥炭でいたんび、日本にっぽんではおも北海道ほっかいどう地方ちほう中心ちゅうしん北日本きたにっぽんおお分布ぶんぷする。泥炭でいたんあるいは泥炭でいたんはあらゆる気候きこう大陸たいりく存在そんざいしており、地球ちきゅう表面ひょうめんの2.8%をめる。おおくはヨーロッパ、きたアメリカ、ロシアの低温ていおん多雨たう条件じょうけん形成けいせいされ、ミズゴケを主体しゅたいとするが、東南とうなんアジア、中央ちゅうおうアメリカ、アフリカとうでは高温こうおん多雨たう条件じょうけん形成けいせいされ、木質もくしつ遺骸いがいふくむトロピカルピートが形成けいせいされる。泥炭でいたんには植物しょくぶつ遺骸いがいのこっているが、適切てきせつ地質ちしつがくてき条件じょうけんふかく、あつく)になると石炭せきたんになるとかんがえられている。

泥炭でいたん埋蔵まいぞうりょう莫大ばくだいで5せんおくトン程度ていどかんがえられている[3]が、泥炭でいたん形成けいせい速度そくどは1ねんに1mm程度ていど[4]であり、再生さいせい可能かのう資源しげんではない。

おも用途ようと

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炭素たんそ含有がんゆうりつひくく(不純物ふじゅんぶつおおく)、含水りょうおおしつわる燃料ねんりょうである。このため、日本にっぽんでは工業こうぎょうよう燃料ねんりょうとしての需要じゅようすくないが、だい世界せかい大戦たいせん末期まっきには貴重きちょう燃料ねんりょうとして使つかわれた。またスコットランドではスコッチ・ウイスキー製造せいぞう大麦おおむぎ発芽はつがさせて麦芽ばくがにしたのち麦芽ばくが成長せいちょうめるために乾燥かんそうさせるさい燃料ねんりょうとして、かおけをねて使用しようされる。このときつく香気こうきをピートう。ただし、泥炭でいたんだけで乾燥かんそうおこなうことはすくなく、燃料ねんりょう併用へいようすることがおおい。現在げんざい日本にっぽんでは厚岸あっけしウイスキーが釧路くしろ湿原しつげん厚岸あっけし別寒辺牛べかんべうし採掘さいくつおこなっているほか、工業こうぎょうよう脱臭だっしゅうざいなどの用途ようと個人こじんによる小規模しょうきぼ採掘さいくつおこなわれている。かつてはニッカウヰスキーなどの会社かいしゃ自社じしゃようのために石狩平野いしかりへいや採掘さいくつおこなっていた。

このほか、繊維せんいしつたもち、保水ほすいせい通気つうきせいむので、園芸えんげいでは腐植ふしょくとして培養ばいよう混入こんにゅうし、土質どしつ改善かいぜんさせるために肥料ひりょうとして重宝ちょうほうされる。泥炭でいたんちゅう微生物びせいぶつ有機ゆうきさん生成せいせいするために酸性さんせいであるので、アルカリ土壌どじょうこの植物しょくぶつ使用しようする場合ばあい石灰せっかいなどで中和ちゅうわする必要ひつようがあるが、ぎゃくにアルカリ土壌どじょう中和ちゅうわさせるためにそのまま使つかわれることもある。また泥炭でいたんをプレスして播種はしゅ育苗いくびょうよう植木鉢うえきばちとしたものもあり、これは時間じかんつと同化どうかするので、植物しょくぶつかずにそのままえることができる。

泥炭でいたんはわずかな荷重かじゅう圧縮あっしゅくされるため、泥炭でいたん地盤じばんとして流砂りゅうしゃみに軟弱なんじゃくである。建築けんちくのみならず道路どうろなどの敷設ふせつにおいてもおおきな問題もんだいなされ、十分じゅうぶん基礎きそ工事こうじ必要ひつようとなる。

2000年代ねんだいには火力かりょく発電はつでんのエネルギーげんとしておも北欧ほくおうなどで利用りようされるようになった。たとえばフィンランドいちこく泥炭でいたん埋蔵まいぞうりょう北海ほっかい油田ゆでん埋蔵まいぞうりょうの2ばい匹敵ひってき[5][よう追加ついか記述きじゅつ][よう出典しゅってん]泥炭でいたん発電はつでん同国どうこくのエネルギー消費しょうひの7%をまかなっている[6]

日本にっぽん国内こくない利用りよう

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だい世界せかい大戦たいせん日本にっぽんでは都市とし中心ちゅうしん燃料ねんりょう事情じじょう逼迫ひっぱくとくに、1947ねんふゆ東京とうきょう都内とない家庭かてい配給はいきゅうする木炭もくたんたきぎ工面くめん絶望ぜつぼうてきとなった。このため千葉ちばけん検見川けみがわまちげん:千葉ちば花見川はなみがわ)に存在そんざいする東京大学とうきょうだいがく敷地しきちげん:東京大学とうきょうだいがく検見川けみがわ総合そうごう運動うんどうじょう)および周辺しゅうへんでは、埋蔵まいぞうりょう1000まんトンとも推定すいていされる泥炭でいたんさかんに採掘さいくつされるようになり、豆炭まめたん加工かこうしてかく家庭かてい供給きょうきゅうされた[7]検見川けみがわ泥炭でいたんでは、採掘さいくつちゅう縄文じょうもん時代じだい丸木舟まるきぶねなどが出土しゅつど、その発掘はっくつにより大賀おおがハス見出みいだされている。

火災かさい危険きけんせい

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泥炭でいたんそのものが可燃かねんぶつであるため、落雷らくらい放火ほうかなどの人為じんいてき自然しぜんてき発火はっかわず、一旦いったんがつけばすぐに延焼えんしょう発生はっせいし、長期ちょうきにわたりおおきくがり、消火しょうか非常ひじょう困難こんなんである。今日きょうでも東南とうなんアジアなどの泥炭でいたんおおくある場所ばしょではしばしば泥炭でいたんによる火災かさい発生はっせいし、煙害えんがいや、温暖おんだんガスである二酸化炭素にさんかたんそ排出はいしゅつ資源しげん浪費ろうひなどをこしている[8]

たとえば、インドネシアではプランテーション開発かいはつのため熱帯ねったいりん伐採ばっさいしたうえで、そのしたにある泥炭でいたん湿地しっちみぞってみずき、二酸化炭素にさんかたんそ排出はいしゅつりょう森林しんりん火災かさいのリスクをやしているとして、国際こくさいてき問題もんだいされていた。それをけ、インドネシア政府せいふは2016ねん泥炭でいたんかかしょ問題もんだい管轄かんかつする「泥炭でいたん復興ふっこうちょう」を設置せっちした[9][10]

ギャラリー

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その

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  • 泥炭でいたんは、植物しょくぶつ由来ゆらいであるため花粉かふん化石かせきふくむことがある。この化石かせき分析ぶんせき花粉かふん分析ぶんせき)することは、泥炭でいたん形成けいせいされはじめた当時とうじ気候きこう植物しょくぶつ群落ぐんらく状態じょうたい推測すいそくする手掛てがかりとなる[11]
  • ネッシー有名ゆうめいなネスでは、付近ふきん地層ちそうから泥炭でいたんながむため、ほとんどの場所ばしょにごっている。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 宇宙うちゅう開発かいはつ利用りよう森林しんりん火災かさい検知けんち抑制よくせい文部もんぶ科学かがくしょう(2018ねん8がつ1にち閲覧えつらん)。
  2. ^ What are peatlands?(2024ねん5がつ9にち閲覧えつらん)
  3. ^ インドネシアのトロピカルピート:そのエネルギー利用りよう現状げんじょう”. 資源エネルギしげんえねるぎちょう. 2024ねん5がつ9にち閲覧えつらん
  4. ^ 『Wetland Ecology: Principles and Conservation (2nd edition)』Cambridge University Press, UK. Cambridge、2010ねん、497ぺーじ 
  5. ^ "The leading supplier of peat"(2007ねん3がつ12にち時点じてんアーカイブ)、VAPOしゃ英語えいご
  6. ^ "再生さいせいエネルギーと泥炭でいたん"(2006ねん8がつ18にち時点じてんアーカイブ)、フィンランド通産省つうさんしょう英語えいご
  7. ^ 心細こころぼそ入荷にゅうか たのみは千葉ちばくさすみ」『朝日新聞あさひしんぶん昭和しょうわ22ねん9がつ11にち.2めん
  8. ^ Turetsky, Merritt R.; Benscoter, Brian; Page, Susan; Rein, Guillermo; van der Werf, Guido R.; Watts, Adam (2014-12-23). “Global vulnerability of peatlands to fire and carbon loss” (英語えいご). Nature Geoscience 8 (1): 11–14. doi:10.1038/ngeo2325. ISSN 1752-0894. https://www.nature.com/articles/ngeo2325.epdf?referrer_access_token=aMRi_GzS5aa6bGTOi4rpQtRgN0jAjWel9jnR3ZoTv0O3ImZ1lZ68gbGX950I294U7-bERHS0ZRCG_DnmYOafQHbQhQfPK_EIV3PCOAexYtUgWkpgSbWmZ60OkJ0LLevSo_0SmauVKbZDV_ByRBrcZvYYnYuHSMoTcxuU5qWW8wyo9ep2ibvzkFPm8xH8ACr1wBxJnieE7jIVs0jmf7DhkWjMWGmYRp25WKm-yzpPRXW5j_Rqq9bvDAa9B0BB8o6F4YIOPy0lkzaWZuPeMjjsqVHd2qkLZMtmWZDqGElovCl9airDAylAoMTAUJ4j39v9-yP_VtuqBandtF2Hd9i2KjrgfaWzaQW9A9QPVK8Cv94=&tracking_referrer=www.bbc.com. 
  9. ^ 京都大学きょうとだいがく人間にんげん文化ぶんか研究けんきゅう機構きこう、およびインドネシア共和きょうわこく泥炭でいたん復興ふっこうちょうによる共同きょうどう声明せいめい発表はっぴょうしました。 京都大きょうとだいがく(2016ねん4がつ25にち)2018ねん8がつ1にち閲覧えつらん
  10. ^ 科学かがくとびら温暖おんだん脅威きょうい 地中ちちゅうにも朝日新聞あさひしんぶん朝刊ちょうかん2018ねん7がつ30にち(2018ねん8がつ1にち閲覧えつらん)。
  11. ^ 栗田くりたいさお「かふんぶんせき」『新版しんぱん 林業りんぎょう百科ひゃっか事典じてんだい2はんだい5さつ p97-98 日本にっぽん林業りんぎょう技術ぎじゅつ協会きょうかい 1984ねん昭和しょうわ59ねん発行はっこう

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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