舞阪まいさか宿やど

歌川うたがわ広重ひろしげ『東海道とうかいどう五ご十じゅう三さん次じ・舞坂まいさか』

舞阪まいさか宿やど（脇本わきもと陣じん跡あと）

舞阪まいさか宿やど（まいさかしゅく、まいさかじゅく、正式せいしき名称めいしょう：舞坂まいさか宿やど）は、東海道とうかいどう五ご十じゅう三さん次じの江戸えど・日本橋にほんばしから数かぞえて30番目ばんめの宿場しゅくば町まちで、旧きゅう国くには遠江とおとうみ国こくにある。現在げんざいの静岡しずおか県けん浜松はままつ市し中央ちゅうおう区く舞阪まいさか町まちに相当そうとうする。

概要がいよう

舞坂まいさか宿やどは東海道とうかいどうに設置せっちされ、浜名湖はまなこ東岸とうがんの今こん切口きりくちに面めんした標高ひょうこう約やく3メートル（m）前後ぜんこうの低地ていちに立地りっちしていた。、北きたに新川しんかわがあり、西側にしがわに浜名湖はまなこ（今こん切口きりくち）に面めんし、南みなみに遠州灘えんしゅうなだ（太平洋たいへいよう）がある。現在げんざいの静岡しずおか県けん浜松はままつ市し西にし区く舞阪まいさか町まち舞阪まいさかに相当そうとうする。尚なお、旧来きゅうらい江戸えど時代じだいの地名ちめいは「舞坂まいさか」であったが、現在げんざいは「舞阪まいさか」である（以下いか、舞阪まいさかを舞坂まいさかと記述きじゅつする）。

背景はいけい

「明あかり応おう地震じしん」および「浜名湖はまなこ」も参照さんしょう

明あかり応おう地震じしんにより消滅しょうめつした浜名湖はまなこの陸地りくち

中世ちゅうせい、遠州灘えんしゅうなだでは、明あかり応おう8年ねん（1498年ねん）8月がつ25日にちに明あかり応おう地震じしんが起おこり、遠州灘えんしゅうなだ沿岸えんがんは大だい津波つなみに襲おそわれた。浜名湖はまなこ開口かいこう部ぶは沈下ちんかし、今こん切口きりくちが決壊けっかいして海水かいすいが湖みずうみに流入りゅうにゅうし、塩水えんすい湖ことなった。 「明あきら応おう7年ねん8月がつの地震じしん津波つなみ以前いぜんの湖みずうみ口こう」の絵図えずによると舞坂まいさかと荒井あらい（現げん新居しんきょ）は陸続りくつづきで、舞坂まいさかは当時とうじ「前沢まえさわ」と呼よばれていたという。

沿革えんかく

地震じしん・津波つなみの被害ひがい

「宝永ほうえい地震じしん」および「新居しんきょ宿やど」も参照さんしょう

遠州灘えんしゅうなだでは中世ちゅうせいから江戸えど時代じだいに地震じしん津波つなみ被害ひがいを受うけており、舞坂まいさかでも津波つなみの被害ひがいがあった。

元禄げんろく12年ねん(1699年ねん)には高潮こうちょう被害ひがいにより舞坂まいさか宿やどの対岸たいがんにある新居しんきょ関所せきしょが大破たいはされ、荒井あらい宿やどでは、約やく120軒けんが流出りゅうしゅつした。また、元禄げんろく14年ねん（1701年ねん）に津波つなみのため対岸たいがんの関所せきしょは移転いてんしている。

宝永ほうえい4年ねん（1707年ねん）に宝永ほうえい地震じしんが起おこり、地震じしんと津波つなみのため被害ひがいを受うけた。対岸たいがんの新居しんきょ宿やどでも家屋かおく855軒けんが浸水しんすい、倒壊とうかいし、渡船とせんは大おおきな被害ひがいを受うけた。津波つなみ被害ひがいにより、今こん切口きりくちの復興ふっこうと今こん切きり関所せきしょの流出りゅうしゅつと移転いてんによって、舞坂まいさか宿やどと荒井あらい宿やどを結むすぶ航路こうろであった今こん切きりの渡わたしの航路こうろが延長えんちょうした。延長えんちょうにより渡航とこうが不便ふべんになったため、東海道とうかいどうの利用りようを避さけ本坂ほんざか通どおりに回避かいひした。

宝永ほうえい地震じしんから1年ねん以上いじょう経過けいかした後のちも、東海道とうかいどうに利用りよう者しゃはもどらず復興ふっこうもままならないことから、宝永ほうえい6年ねん3月がつ（1709年ねん）に舞阪まいさか宿やどを始はじめ、浜松はままつ・新居しんきょ・白須賀しらすか・二川ふたかわ・吉田よしだの6宿しゅくは、公的こうてき旅行りょこうでは東海道とうかいどうを利用りようするよう嘆願たんがん書しょが出だされた。10年ねん後ごの享とおる保ほ2年ねん（1717年ねん）11月になり、本坂ほんざか通どおりの通行つうこう差さ留とめとなった^。

舞阪まいさか宿やど周辺しゅうへんの中なか近世きんせいの地震じしん被害ひがい

地震じしん	年とし	死者ししゃ	家屋かおく倒壊とうかい数すう		推定すいてい震度しんど	津波つなみの波高はこう	出典しゅってん
			倒壊とうかい数すう	半壊はんかいその他た
明あかり応おう地震じしん	明あかり応おう7年ねん（1498年ねん）					6-8 m
慶長けいちょう地震じしん	慶長けいちょう10年ねん（1605年ねん）					5-6 m
宝永ほうえい地震じしん	宝永ほうえい4年ねん（1707年ねん）					3-5 m
安政あんせい東海とうかい地震じしん	嘉よしみ永なが7年ねん（1854年ねん）		12，流失りゅうしつ 8，土蔵どぞう23，寺てら 3	58，破損はそん214，土蔵どぞう 9	6	5-9 m	飯田いいだ（1985）、p.171。

交通こうつう路ろ・関所せきしょ

新居しんきょ関所せきしょと浜名湖はまなこ周辺しゅうへんの東海道とうかいどう

「新居しんきょ宿やど」および「新居しんきょ関所せきしょ」も参照さんしょう

今こん切きりの渡わたしと船着ふなつき場ば

明あかり応おう8年ねん（1498年ねん）8月がつ25日にちに、明あかり応おう地震じしんが起おこり、遠州灘えんしゅうなだ沿岸えんがんは津波つなみに襲おそわれた。津波つなみにより浜名湖はまなこ開口かいこう部ぶが沈下ちんかし、今こん切口きりくちが決壊けっかいして、湖みずうみに海水かいすいが流入りゅうにゅうし、浜名湖はまなこは塩水えんすい湖ことなった。そのため、浜名湖はまなこの今こん切口きりくちを通過つうかするため舞坂まいさかー荒井あらい間あいだを結むすぶ渡船とせんである今こん切きりの渡わたしが置おかれていた。

舞坂まいさかから対岸たいがんの荒井あらいとの間あいだは約やく6キロメートル（km）離はなれていたが、宝永ほうえい4年ねん（1707年ねん）の宝永ほうえい地震じしんの津波つなみ被害ひがいにより今こん切口きりくちの復興ふっこうと対岸たいがんの荒井あらいにあった今こん切きり関所せきしょが西にしへ移転いてんされたことによって、舞坂まいさか宿やどと荒井あらい宿やどを結むすぶ航路こうろであった今こん切きりの渡わたしが27丁ちょう（2.9 km）から1里さと（約やく4 km）の延長えんちょうとなった。

舞坂まいさか宿やどには、浜名湖はまなこ今こん切口きりくちの今こん切きり渡わたし船ぶね場じょうがあった。船着場ふなつきばには階段かいだん状じょうの構造こうぞう物ぶつである「雁木がんぎ」があった。明あかり暦れき3年ねん（1657年ねん）から寛文ひろふみ元年がんねん（1661年ねん）にかけて構築こうちくされたという。船着場ふなつきばは、3区分くぶんされ 「北きた雁木がんぎ」が大名だいみょう用よう、 「中ちゅう（本ほん）雁木がんぎ」 が武家ぶけ用よう、「南みなみ雁木がんぎ（渡わたり荷に場じょう）」が庶民しょみん用ようまた荷物にもつの積つみおろしに使用しようされていた。舞まい坂ざかでは「雁木がんぎ」を「がんぎ」とよまず、「がんげ」呼よばれていた。

今こん切きり関所せきしょ

舞阪まいさか宿やどは浜名湖はまなこと遠州灘えんしゅうなだが「今こん切きり渡わたし」でつながる開口かいこう部ぶにあった。こうした地形ちけいを自然しぜんの要害ようがいと考かんがえた徳川とくがわ家康いえやすは、慶長けいちょう5年ねん（西暦せいれき1600年ねん）に対岸たいがんの新居しんきょの渡船場とせんばに今こん切きり関所せきしょ（新居しんきょ関所せきしょ）を設置せっちして、「入はいり鉄砲てっぽうと出で女おんな」を水際みずぎわで厳きびしく取とり締しまることにした。今こん切きり関所せきしょ（新居しんきょ関所せきしょ）は東海道とうかいどうの通過つうかだけでなく、今こん切きり港みなとの検閲けんえつも兼かねていた。

名所めいしょ・旧跡きゅうせき・接続せつぞく道路どうろ等とう

名所めいしょ・旧跡きゅうせき

「舞阪まいさか宿やど北きた雁木がんぎ」・「西町にしまち常夜灯じょうやとう」・「舞阪まいさか宿やど脇本わきもと陣じん」・「仲町なかまち常夜灯じょうやとう」、「松まつ並木なみき」が残のこる。

「舞阪まいさか宿やど脇本わきもと陣じん」は、天保てんぽう年間ねんかんに設置せっちされた脇本わきもと陣じん「茗荷みょうが屋や」で、現在げんざいは浜松はままつ市しの保有ほゆう。改築かいちくされていた主おも屋やなどを復元ふくげんして公開こうかい。旧きゅう東海道とうかいどうでは唯一ゆいいつの脇本わきもと陣じんの遺構いこうである。「舞阪まいさか宿やど北きた雁木がんぎ（がんげ）」は、雁木がんぎ構造こうぞうの船着場ふなつきばである。

その他た、「見付みつけ石垣いしがき」、「本ほん雁木がんぎ跡あと」、「渡わたり荷に場じょう（とうかば）跡あと」、「一里塚いちりづか」がある。

隣となりの宿やど

東海道とうかいどう

浜松はままつ宿やど - 舞阪まいさか宿やど - （今こん切きりの渡わたし) -　今こん切きり関所せきしょ（新居しんきょ関所せきしょ）　- 新居しんきょ宿やど

最寄もより駅えき

JR東海道本線とうかいどうほんせん 弁天島べんてんしま駅えき、舞阪まいさか駅えき

「舞阪まいさか宿やど」ギャラリー

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  舞阪まいさか宿やど付近ふきんの松まつ並木なみき（2006年ねん12月撮影さつえい）
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  舞坂まいさか宿やどの一里塚いちりづか跡あと (2020年ねん8月がつ撮影さつえい)
• 
  月岡つきおか芳年よしとし画が：『東海道とうかいどう名所めいしょ絵え』より「東海道とうかいどう　舞坂まいさか」
• 
  『東海道とうかいどう五ご十じゅう三さん對たい 舞坂まいさかの驛えき』
• 
  『五ご十じゅう三さん次じ名所めいしょ図会ずえ　丗一　舞坂まいさか』、今こん切きり海上かいじょう舟渡ふなと
• 
  『東海道とうかいどう五ご十じゅう三さん次じ（狂歌きょうか入いれ東海道とうかいどう）舞坂まいさか　今こん切きり船渡ふなと』
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  『東海道とうかいどう五ご十じゅう三さん次じ之これ内ない（行書ぎょうしょ東海道とうかいどう）、まい坂ざか 今こん切きり 海上かいじょう舟渡ふなと』
• 
  明治めいじ時代じだいの舞坂まいさか

脚注きゃくちゅう

注釈ちゅうしゃく

出典しゅってん

参考さんこう文献ぶんけん

和書わしょ

• 飯田いいだ汲事「愛知あいち県けん及および隣接りんせつ県けん被害ひがい津波つなみ史し」　、『東海とうかい地方ちほう地震じしん･津波つなみ災害さいがい誌し(飯田いいだ汲事教授きょうじゅ論文ろんぶん選集せんしゅう)』、飯田いいだ汲事教授きょうじゅ論文ろんぶん選集せんしゅう発行はっこう会かい、1985年ねん、.669-789頁ぺーじ。
• 都と司つかさ嘉よしみ宣せん「浜名湖はまなこ今こん切口きりくちの変遷へんせん」.『防災ぼうさい科学かがく技術ぎじゅつ』 35、1979年ねん、15-20頁ぺーじ
• 辻つじ啓介けいすけ「がんぎ考こう　弁才べんさい船せんの船着場ふなつきばについての考察こうさつ」『大島商船高等専門学校おおしましょうせんこうとうせんもんがっこう紀要きよう』36、大島商船高等専門学校おおしましょうせんこうとうせんもんがっこう、2003、9-17頁ぺーじ。
• 松浦まつうら律子りつこ「第だい2章しょう　宝永ほうえい地震じしんによる被害ひがいとその後ご、第だい2節せつ　各地かくちの被害ひがいと救援きゅうえんや復興ふっこう策さく」、『災害さいがい教訓きょうくんの継承けいしょうに関かんする専門せんもん調査ちょうさ会かい報告ほうこく書しょ　 1707 宝永ほうえい地震じしん 』、内閣ないかく府ふ（防災ぼうさい担当たんとう）、2014年ねん、23-27頁ぺーじ。
• 矢田やた俊文としふみ(2005)「[講演こうえん記録きろく] 1498 年ねん明あきら応おう東海とうかい地震じしんの津波つなみ被害ひがいと中世ちゅうせい安濃あのう津つの被災ひさい」、『歴史れきし地震じしん』第だい20号ごう、歴史れきし地震じしん研究けんきゅう会かい、2005年ねん、 9-12 頁ぺーじ。
• 渡辺わたなべ和敏かずとし「近世きんせい関所せきしょの諸しょ形態けいたい」、『法政ほうせい史学しがく』第だい23巻かん、法政大学ほうせいだいがく史し学会がっかい、1971年ねん、 17-26頁ぺーじ。

ウェブサイト

• “浜松はままつ市し公式こうしきウェブサイト”. 重要じゅうよう文化財ぶんかざい中村なかむら家か住宅じゅうたく. 浜松はままつ市役所しやくしょ. 2016年ねん11月16日にち閲覧えつらん。
• “浜松はままつ市し公式こうしきウェブサイト”. 舞坂まいさか宿やど脇本わきもと陣じん. 浜松はままつ市役所しやくしょ. 2016年ねん11月16日にち閲覧えつらん。

関連かんれん項目こうもく

• 舞阪まいさか町まち
• 弁天島べんてんしま (浜松はままつ市し)
• 渚なぎさ園えん
• 東海道とうかいどう
• 東海道とうかいどう五ご十じゅう三さん次じ
• 東海道とうかいどうの一里塚いちりづか一覧いちらん
• 本坂ほんざか通どおり

外部がいぶリンク

• 舞阪まいさか宿やど脇本わきもと陣じん - 浜松はままつ市し