鉱油こうゆ

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鉱油こうゆ(こうゆ、えい: mineral oil)は、石油せきゆ原油げんゆ)、天然てんねんガス石炭せきたんなど地下ちか資源しげん由来ゆらい炭化たんか水素すいそ化合かごうぶつもしくは不純物ふじゅんぶつをもふくんだ混合こんごうぶつ総称そうしょう鉱物こうぶつ(こうぶつゆ)、鉱物こうぶつせいあぶら(こうぶつせいゆ)ともばれており、一般いっぱんてきには石油せきゆ由来ゆらいあぶらとしてひろ工業こうぎょう製品せいひんひとしもちいられている。

鉱油こうゆでないあぶらとは、たとえば(いま抽出ちゅうしゅつしたばかりの)動物どうぶつ脂肪しぼう植物しょくぶつ油脂ゆしである。

石油せきゆ由来ゆらい物質ぶっしつに、英語えいごmineral漢字かんじの「こう」のがあてられているのは、石油せきゆリンネ時代じだいなど過去かこ分類ぶんるいがくじょう鉱物こうぶつあつかいされてきたことの名残なごりである。

国際こくさい鉱物こうぶつがく連合れんごうさだめる鉱物こうぶつ定義ていぎについては、鉱物こうぶつこう参照さんしょうのこと。

潤滑油じゅんかつゆ[編集へんしゅう]

潤滑油じゅんかつゆの90 %以上いじょう鉱油こうゆである[1]鉱油こうゆけい潤滑油じゅんかつゆ成分せいぶんのほとんどは芳香ほうこうぞくけい炭化たんか水素すいそパラフィンけい炭化たんか水素すいそ、ナフテン(シクロアルカンけい炭化たんか水素すいそである。一般いっぱんてきに、かん分析ぶんせき(n-d-Mほう)でパラフィンの炭素たんそすうが50以上いじょう潤滑油じゅんかつゆをパラフィンけい、ナフテンの炭素たんそすうが30 - 45をナフテンけいぶ。

安価あんかである。ねばたび範囲はんいひろく、様々さまざまねばたび鉱油こうゆ存在そんざいする。

精製せいせいでは不純物ふじゅんぶつ完全かんぜん除去じょきょすることはできない。一般いっぱんに、この不純ふじゅんぶつにより、ねつ安定あんていせいひくく、流動りゅうどうてんたかい。ひくくとも-20 ℃で凝固ぎょうこする[2]。このため、不純物ふじゅんぶつがない合成ごうせいくらべると使用しよう温度おんど範囲はんいせまい。

パラフィンけい[編集へんしゅう]

鉱油こうゆ潤滑油じゅんかつゆもと大半たいはんパラフィンけいである。非常ひじょう種類しゅるいおおい。炭素たんそすうはC15 - C50、分子ぶんしりょうは200 - 700 mol/g、つねあつ換算かんさん沸点ふってんは250 - 600 ℃と範囲はんいひろい。その種類しゅるいセイボルトユニバーサルねばたび(SUSねばたび)(Saybolt Universal Second)で区別くべつされている。SUS/100Fのねばたびで60 - 700程度ていどとめぶんはニュートラル(Neutrals)、減圧げんあつ蒸留じょうりゅうざんだっれき精製せいせいしたものはブライトストック(Bright Stocks)とばれる[1]

ねばたび指数しすう引火いんかてんはナフテンけいねばたび指数しすう0 - 70、引火いんかてんVG68でやく230)とくらべてたかい(ねばたび指数しすう90 - 110、引火いんかてんVG68でやく192)。エンジンオイルもちいられる[3]

原料げんりょうは、パラフィンけい炭化たんか水素すいそおおふく原油げんゆであり、おも中東ちゅうとう西にしアジア)から産出さんしゅつされる。この原油げんゆつねあつ蒸留じょうりゅうしたざんから製造せいぞうされる。通常つうじょうのパラフィンけい潤滑油じゅんかつゆ製造せいぞう工程こうてい溶剤ようざい精製せいせいほう水素すいそ分解ぶんかいほうふたつがある。これとはべつに、こう精製せいせい潤滑油じゅんかつゆこうねばたび指数しすう潤滑油じゅんかつゆてい流動りゅうどうてん潤滑油じゅんかつゆなどの高性能こうせいのう潤滑油じゅんかつゆ製造せいぞうするための特殊とくしゅ精製せいせい工程こうていがある。

ナフテンけい[編集へんしゅう]

ナフテンとは石油せきゆふくまれるのシクロアルカン総称そうしょうである[4]流動りゅうどうてんひくく、パラフィンけいの-10 - -25 ℃にたいし、-30 - -50 ℃である[3]代替だいたいフロン以外いがい冷凍れいとうあぶら電気でんき絶縁ぜつえん使つかわれる。アニリンてんひくく、溶解ようかいせいたかい。パラフィンけいの80 - 110にたいし、60 - 90である[3]金属きんぞく加工かこうあぶらインキもと粘着ねんちゃくざいもとざいゴム配合はいごう/伸展しんてんグリースもとなどに使つかわれる。また、カーボンやわらかく、べんなどに堆積たいせきしたカーボンがれやすいため、高温こうおんようレシプロがた空気くうき圧縮あっしゅくあぶら使つかわれる[5]

原料げんりょうベネズエラアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくロシアオーストラリアなどの一部いちぶ油田ゆでんから産出さんしゅつされる。日本にっぽんおもにオーストラリアのワンドゥー原油げんゆ(Wandoo Crude)を使用しようしている[3]。これらナフテンけい原油げんゆつねあつ蒸留じょうりゅうまたは減圧げんあつ蒸留じょうりゅう処理しょりをしたざん精製せいせいしてつくられる。精製せいせい方法ほうほうおおむ硫酸りゅうさん洗浄せんじょう - 白土しらつち処理しょり溶剤ようざい精製せいせい水素すいそ処理しょりわせである[1]

ナフテンけい原油げんゆ油田ゆでん世界せかいてき枯渇こかつしてきており、かつ高級こうきゅう潤滑油じゅんかつゆにできる良質りょうしつ原油げんゆはさらに少量しょうりょうであるとかんがえられている。また、精製せいせい技術ぎじゅつ発展はってん添加てんかざい開発かいはつにより、パラフィンけい潤滑油じゅんかつゆでも一部いちぶ性能せいのうがナフテンけい潤滑油じゅんかつゆ同等どうとうとすることが可能かのうとなった。このため、ナフテンけいはパラフィンけい潤滑油じゅんかつゆ代替だいたいされてきている[3]

歴史れきし[編集へんしゅう]

エンジンオイル

紀元前きげんぜんより天然てんねんアスファルト(れきあお)が潤滑じゅんかつざいもちいられた。しかし、(当時とうじ技術ぎじゅつりょくで)容易ようい利用りようできる石油せきゆ資源しげん偏在へんざいしていたため、植物しょくぶつ動物どうぶつ由来ゆらい油脂ゆしくらべて一般いっぱんすることはなかった。

17世紀せいき以降いこう燃料ねんりょうようとして石油せきゆ掘削くっさく精製せいせいさかんにおこなわれるようになると、分留ぶんりゅうしたじゅうしつ潤滑油じゅんかつゆへの用途ようと注目ちゅうもくされるようになった。1845ねんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおいてカルシウムグリース鉱油こうゆ獣脂じゅうし石灰せっかい混合こんごうした潤滑油じゅんかつゆ)が開発かいはつされた[6]動植物どうしょくぶつくら安定あんていせいなどにすぐれ、石油せきゆ製品せいひん同様どうよう安価あんかであったため、一部いちぶ用途ようとのぞ動植物どうしょくぶつから鉱油こうゆへと移行いこうした。

20世紀せいきはいると、フィッシャー・トロプシュほうベルギウスほうなどの発明はつめいにより、鉱油こうゆ分解ぶんかい合成ごうせいして不純物ふじゅんぶつのぞき、水素すいそ添加てんか異性いせいなどで成分せいぶん改良かいりょうした高度こうど精製せいせい鉱物こうぶつ製造せいぞうされるようになった[7]

最近さいきんでは、従来じゅうらい鉱油こうゆとしてあつかわれた高度こうど精製せいせい鉱物こうぶつ化学かがく合成ごうせい名称めいしょう使つかうことがある。代表だいひょうかくは、自動車じどうしゃもちいられるエンジンオイルであるが、鉱油こうゆ鉱物こうぶつ)と化学かがく合成ごうせい定義ていぎ境界きょうかい議論ぎろんとなっている。

鉱油こうゆ化学かがく合成ごうせいちがいにかんする議論ぎろん詳細しょうさいは、カストロール#化学かがく合成ごうせい概念がいねんかわったこう参照さんしょうのこと。

燃料ねんりょう[編集へんしゅう]

エネルギー革命かくめい以前いぜんに、植物しょくぶつせい動物どうぶつせい油脂ゆし燃料ねんりょうとしてもちいられていた時代じだいには、ガソリン鉱油こうゆとして区別くべつしていた。日本にっぽんではその名残なごりとして、燃料ねんりょうあつか業者ぎょうしゃなかで、社名しゃめいに「鉱油こうゆ」をもちいるものがある(れいガソリンスタンドチェーンを展開てんかいする宇佐美鉱油うさみこうゆ太陽たいよう鉱油こうゆとう)。

化粧けしょう品等ひんとう[編集へんしゅう]

白色はくしょくワセリンのれい(ユニリーバせい

鉱油こうゆは、化粧けしょうひん医薬品いやくひんひとしにもひろ利用りようされている。代表だいひょうかくは、日本にっぽん薬局方やっきょくほう処方しょほう定義ていぎされている白色はくしょくワセリンである。これは性質せいしつ性状せいじょう安定あんていせいたもつため、あえて鉱油こうゆ精製せいせいした原料げんりょうもちいて製造せいぞうしており、ワセリンをてき利用りようした化粧けしょう品等ひんとうおお流通りゅうつうしている。値段ねだんやすいことでもられており、おおくの化粧けしょうひん会社かいしゃ使用しようしている。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c 各種かくしゅ潤滑油じゅんかつゆ製造せいぞう使つかわれるベースオイルの品質ひんしつ性状せいじょう”. ジュンツウネット21. 2017ねん3がつ28にち閲覧えつらん
  2. ^ ジェイテクト「ベアリング入門にゅうもんしょ編集へんしゅう委員いいんかい. 図解ずかい入門にゅうもんよくわかる最新さいしんベアリングの基本きほん仕組しく 
  3. ^ a b c d e パラフィンけいもととナフテンけいもと相違そういについて”. 日本にっぽん潤滑油じゅんかつゆ協会きょうかい. 2017ねん4がつ5にち閲覧えつらん
  4. ^ ナフテン”. コトバンク. 2021ねん6がつ20日はつか閲覧えつらん
  5. ^ レシプロがた圧縮あっしゅくあぶらとナフテンもと”. ジュンツウネット21. 2017ねん4がつ5にち閲覧えつらん
  6. ^ グリースの歴史れきし協同油脂きょうどうゆしホームページ)
  7. ^ 特集とくしゅう記事きじ・「合成ごうせい潤滑油じゅんかつゆ-その素性すじょう可能かのうせい」2005/8(潤滑じゅんかつ通信つうしんしゃホームページ)

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]