児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたい

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性的せいてき虐待ぎゃくたい > 児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたい

児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたい（じどうせいてきぎゃくたい、英語えいご: child sexual abuse、CSA）とは、成人せいじんまたは年長ねんちょうの青年せいねんが性的せいてき刺激しげきのために子供こどもを利用りようする児童じどう虐待ぎゃくたいの一ひとつであり[1][2][3]、性的せいてき虐待ぎゃくたいでもある。他ほかにも児童じどう性せい虐待ぎゃくたい、子供こどもに対たいする性的せいてき虐待ぎゃくたい、児童じどう期き性的せいてき虐待ぎゃくたい、性的せいてき児童じどう虐待ぎゃくたいなどの訳語やくごがある。

児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいの形態けいたいとしては、児童じどうとの性行為せいこうい、わいせつな露出ろしゅつ、児童じどうのグルーミング、児童じどうの性的せいてき搾取さくしゅ[4][5][6]、実際じっさいの児童じどうを用もちいた児童じどうポルノの制作せいさくなどがある[1][7][8]。ユニセフは、児童じどう婚こんも同様どうように「少女しょうじょに対たいする性的せいてき虐待ぎゃくたいと搾取さくしゅの最もっとも一般いっぱん的てきな形態けいたい」に分類ぶんるいしている[9]。

児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいの影響えいきょうには、うつ病びょう[10]、心しん的てき外傷がいしょう後ごストレス障害しょうがい[11]、不安ふあん[12]、複雑ふくざつ性せいPTSD[13]、成人せいじん期きにおいてさらに被害ひがいを受うける傾向けいこう[14]、そして何なにより子供こどもへの身体しんたい的てき傷害しょうがい[15]などがある。家族かぞくによる性的せいてき虐待ぎゃくたいは近親きんしん相姦そうかんでもあり、特とくに親おやからの近親きんしん相姦そうかんの場合ばあい、より深刻しんこくで長期ちょうき的てきな精神せいしん的てき外傷がいしょうをもたらす可能かのう性せいがある[16]。

ペドフィリアという言葉ことばは、一般いっぱん的てきに、児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいの加害かがい者しゃに使つかわれることが多おおいが[17]、語義ごぎとしては思春期ししゅんき前まえの子供こどもへの強つよい性的せいてき関心かんしんである。小児しょうに性せい犯罪はんざい者しゃは特とくにチャイルド・マレスターと呼よばれており、用語ようごとしては犯罪はんざい分析ぶんせきでよく用もちいられる。チャイルド・マレスターが複数ふくすうの子供こどもを性的せいてきに虐待ぎゃくたいしている状況じょうきょうをチャイルド・セックス・リング（英語えいご版ばん）（英語えいご: child sex ring）と呼よぶ[18]。

法律ほうりつの下したでは、大人おとなが未成年みせいねん者しゃと性的せいてき行為こういを行おこなったり、性的せいてき満足まんぞくのために未成年みせいねん者しゃを搾取さくしゅしたりする刑事けいじおよび民事みんじ犯罪はんざいを表あらわす包括ほうかつ的てきな用語ようごとして児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいが多用たようされる[8][19]。

定義ていぎ[編集へんしゅう]

米国べいこくのカリフォルニア州しゅうでは、州法しゅうほうPC11165条じょうにおいて、性的せいてき虐待ぎゃくたいは18歳さい未満みまんの者ものに対たいする性的せいてき暴力ぼうりょく及および性的せいてき搾取さくしゅだと規定きていし、その性的せいてき暴力ぼうりょくの内容ないようとして「性交せいこう、近親きんしん姦かん、肛門こうもん性交せいこう、14歳さい以下いかの子供こどもに対たいするわいせつ行為こうい、口腔こうくう性交せいこう、器物きぶつを用もちいる性器せいき及および肛門こうもんの貫通かんつう行為こうい、性的せいてき愛撫あいぶ」、性的せいてき搾取さくしゅについては「子供こどもがわいせつな行為こういを行おこなっている模様もようを描えがいたものの売買ばいばい、わいせつな行為こういを目的もくてきとした子供こどもの雇用こよう、商業しょうぎょう的てきな目的もくてきで子供こどもに対たいしわいせつな行為こういを行おこなわせる行為こうい（写真しゃしんと映像えいぞうを含ふくむ）」とする。

日本にっぽんでは児童じどう虐待ぎゃくたい防止ぼうし法ほう（児童じどう虐待ぎゃくたいの防止ぼうし等とうに関かんする法律ほうりつ）が2000年ねん5月がつに可決かけつし、同どう法ほう第だい2条じょうで「児童じどうにわいせつな行為こういをすること又または児童じどうをしてわいせつな行為こういをさせること」として性的せいてき虐待ぎゃくたいを定さだめる。また厚生こうせい労働省ろうどうしょうは、児童じどうの性的せいてき虐待ぎゃくたいを「子こどもへの性的せいてき行為こうい、性的せいてき行為こういを見みせる、性器せいきを触さわる又または触さわらせる、ポルノグラフィの被写体ひしゃたいにする など」としている[20]。

統計とうけい[編集へんしゅう]

公的こうてきな実数じっすう[編集へんしゅう]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく[編集へんしゅう]

性的せいてき虐待ぎゃくたいは公表こうひょうが必要ひつようなため報告ほうこく数すうは少すくなくなりがちであるが、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくではかなり報告ほうこく数すうを上あげることに成功せいこうした。1976年ねんに保護ほごサービス機関きかんに持もち込こまれたのは6,000件けんであったが、その10年ねん後ごには132,000件けんの性的せいてき虐待ぎゃくたいが報告ほうこくされるようになった[21]。

日本にっぽん[編集へんしゅう]

検挙けんきょ件数けんすう
被害ひがい者しゃと加害かがい者しゃの内訳うちわけ（2021年ねん）

被害ひがい者しゃ

  男児だんじ - 12人にん (3.5%)
  女児じょじ - 327人にん (96.5%)

加害かがい者しゃ

  実父じっぷ - 135人にん (39.5%)
  養父ようふ・継父けいふ - 149人にん (43.6%)
  その他た（男おとこ） - 48人にん (14.0%)
  実母じつぼ - 10人にん (2.9%)

警察庁けいさつちょうの発表はっぴょうによると、児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいでの検挙けんきょ件数けんすうは増加ぞうか傾向けいこうにある[22]。ただし、暗くら数すうが多おおいとされており、後述こうじゅつのように様々さまざまな推定すいていが試こころみられている。

被害ひがい者しゃは女児じょじが多おおく、約やく97%を占しめている[22]。加害かがい者しゃは養父ようふ・継父けいふが最多さいたで約やく44%のほか、実父じっぷも約やく40%を占しめている。その他たには、内縁ないえんの夫おっと、祖父そふ、兄弟きょうだい、いとこ等とうが含ふくまれる。

全国ぜんこく統一とういつダイヤルで受うけ付つける子こどもの電話でんわ相談そうだん「チャイルドライン」で、宮城みやぎ県内けんないから2017年度ねんどに発信はっしんされた児童じどう虐待ぎゃくたいの相談そうだん52件けんのうち、性的せいてき虐待ぎゃくたいが53．8%（28件けん）を占しめていた。被害ひがい者しゃは主おもに小学生しょうがくせいから高校生こうこうせいの女子じょしで、特とくに中学生ちゅうがくせいが多おおく加害かがい者しゃの多おおくは実父じっぷとみられる[23]。法務ほうむ総合そうごう研究所けんきゅうじょ の2001年ねん少年院しょうねんいん調査ちょうさによると、家族かぞく以外いがいの者ものから強制きょうせい的てきに性交せいこうされた例れいは女子じょし68.6%（229人にん中ちゅう157例れい）、男子だんし7.3%（2112人にん中ちゅう155例れい）、家族かぞくによる強制きょうせい的てき性交せいこうは女子じょし4.8%（229人にん中ちゅう11例れい）、男子だんし0.3%（2096人にん中ちゅう7例れい）であった[24]。

推定すいていの実数じっすう[編集へんしゅう]

性的せいてき虐待ぎゃくたいには公的こうてきに認みとめられている実数じっすう以外いがいの暗くら数すうが多おおく含ふくまれると推定すいていされており、主おもに社会しゃかい学がく的てきな観点かんてんからの性的せいてき虐待ぎゃくたいの真しんの実数じっすうの推定すいてい調査ちょうさも多おおく行おこなわれている。

児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいの被害ひがいを受うける割合わりあいは、世界せかい的てきには女性じょせいで19.7%、男性だんせいで7.9%と推定すいていされる[25]。

加害かがい者しゃのほとんどは被害ひがい者しゃと面識めんしきがあり、約やく8割わりが顔見知かおみしり（家族かぞく・親族しんぞくや家族かぞくの信用しんようできる友人ゆうじんなど）[26]、約やく3割わりが子供こどもの親戚しんせきで、兄弟きょうだい、父親ちちおや、叔父おじ、いとこなどである[27]。他たの約やく60%は、家族かぞくの友人ゆうじん、ベビーシッター、近所きんじょの人ひとなどの「知人ちじん」である。見知みしらぬ人ひとからの加害かがいは約やく10%である[28]。そのため、水面すいめん下かに隠かくれているケースが少すくなくない。

児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいの加害かがいの大半たいはんは男性だんせいであり、約やく80%から90%を占しめる[29][30]。女性じょせいによる加害かがいも全体ぜんたいで1-20%あると推定すいていされており[29]、男児だんじへの犯罪はんざいでは14%から40%、女児じょじへの犯罪はんざいでは6%が女性じょせいである[28][31][32]。例れいとしてドイツの2018年ねんの犯罪はんざい統計とうけいによると、女性じょせい容疑ようぎ者しゃの割合わりあいは4.5%であった[33]。ノルウェーのオスロでの調査ちょうさによると、子供こどもに対たいする近親きんしん姦かんは男性だんせいが9割わり、女性じょせいは1割わりとされた（女性じょせいからのものの多おおくは母親ははおや）[34]。同様どうようの報告ほうこくとして、アメリカ、イギリス、スウェーデンなどにおける調査ちょうさでは、子供こどもへの性的せいてき虐待ぎゃくたいの5 - 20%が女性じょせいによるものであると推定すいていされている[35]。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく[編集へんしゅう]

  • キンゼイ報告ほうこく (1953) ：女性じょせい4441人にんのうち24%（1075人にん）が性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけている[36][37]。
  • ダイアナ・ラッセル (1978) の調査ちょうさ：この調査ちょうさではサンフランシスコの女性じょせい930人にんを無作為むさくいに抽出ちゅうしゅつし電話でんわ調査ちょうさを行おこなったのであるが、身体しんたい的てき接触せっしょくを伴ともなう性的せいてき虐待ぎゃくたいを18歳さいまでに38%（357人にん）の女性じょせいが受うけており、さらに14歳さいまでであっても28%（258人にん）の女性じょせいが受うけていた[37]。そして非ひ接触せっしょくを含ふくめると54%にまで数値すうちは跳はね上あがった[38]。さらに近親きんしん姦かん被害ひがいが18歳さいまでに16%[39][40]、14歳さいまでに12%[40]であった[41]。16%のうち4.5%が父親ちちおやではあるが残のこり12%は別べつの肉親にくしんからであった[42]。性的せいてき虐待ぎゃくたいの程度ていどを最さい重度じゅうど（膣ちつ挿入そうにゅう、性器せいき接吻せっぷん、肛門こうもん挿入そうにゅう）、重度じゅうど（膣ちつへの指ゆび挿入そうにゅう、裸はだかの胸むねへの愛撫あいぶ）、軽度けいど（強制きょうせい的てきなキス、衣服いふくを着きたままの意図いと的てきタッチング）に分わけたが、近親きんしん姦かんの場合ばあい23%、41%、36%とそれぞれ出でている[43]。
  • デイビッド・フィンケラー (1979) の報告ほうこく：796人にんの大学生だいがくせいを対象たいしょうに行いった調査ちょうさ。19.2%の女性じょせいが性的せいてき虐待ぎゃくたいを報告ほうこくし、8.6%の男性だんせいが性的せいてき虐待ぎゃくたいを報告ほうこく[36][37]。
  • デイビッド・フィンケラー (1984) の報告ほうこく：ボストンの521人にんを対象たいしょうに行おこない、女性じょせいの15%、男性だんせいの12%が性的せいてき虐待ぎゃくたいを報告ほうこく[37]。
  • Lewis,J. (1985) の報告ほうこく：18歳さいまでに女性じょせい1374人にんのうち27%が性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけていた。男性だんせい1252人にんのうち16%が18歳さいまでに性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけていた[38]。
  • Nelson, Higginson, Grant-Worley (1994) の研究けんきゅう：オレゴンの男子だんし高校生こうこうせいを対象たいしょうとした研究けんきゅうで、一いち週間しゅうかん以内いないに2%の男子だんしが性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけていた[44]。
  • David Lisak, Hoppers and Song (1996) の報告ほうこく：595人にんの一般いっぱん男子だんし大学生だいがくせいを無作為むさくい抽出ちゅうしゅつし調査ちょうさを行おこなった[45]。「虐待ぎゃくたい」という表現ひょうげんを排除はいじょし、出来事できごとについてのみ質問しつもん用紙ようしを配布はいふする形かたちで尋たずねた。それによると全体ぜんたいの18%[39][46]の者ものは16歳さいまでに直接的ちょくせつてきな身体しんたい接触せっしょくを伴ともなう性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけており、非ひ接触せっしょくを含ふくめるとその値ねは28%にまで跳はね上あがった[47]。家庭かてい内ないで起おこった被害ひがいはそれら性的せいてき虐待ぎゃくたいのうち21%であり、初はじめて性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた年齢ねんれいは2-15歳さいで平均へいきん10.1歳さいであった[47]。その内容ないようは脅迫きょうはくされたのが36%、明白めいはくではない誘惑ゆうわくを受うけたのが43%、自発じはつ的てきに参加さんかしたのが22%であった[47]。加害かがい者しゃは61%が男性だんせい、28%が女性じょせい、両性りょうせいからが11%とされた[47]。また、この調査ちょうさではいわゆる身体しんたい的てき虐待ぎゃくたいを受うけた率りつも調しらべられた。対象たいしょう者しゃのうち身体しんたい的てき虐待ぎゃくたいを受うけた者ものは全体ぜんたいの34%であった[47]。その加害かがい者しゃの男女だんじょ比率ひりつは男性だんせいからが58%であり、女性じょせいからが11%であり、男女だんじょ双方そうほうからが31%であり、身体しんたい的てき虐待ぎゃくたいを受うけた者もののうち70%が自みずからの家庭かてい内ないで受うけていた[47]。また身体しんたい的てき虐待ぎゃくたいを初はじめて受うけた年齢ねんれいの平均へいきんは7.3歳さいであった[47]。さらにこの調査ちょうさでは23%の男性だんせいが自分じぶんに身体しんたい的てき・性的せいてき虐待ぎゃくたいの加害かがい体験たいけんがあることを認みとめている[48][49]。だが身体しんたい的てき・性的せいてき虐待ぎゃくたいの男性だんせい加害かがい者しゃの79%が身体しんたい的てき・性的せいてき虐待ぎゃくたいの被害ひがい者しゃであるとされながらも、その全体ぜんたいの数かずから見みれば身体しんたい的てき・性的せいてき虐待ぎゃくたいの男性だんせい被害ひがい者しゃが加害かがい者しゃになる率りつは19%であった[48]。さらに、身体しんたい的てき虐待ぎゃくたい加害かがい者しゃの約やく3分ぶんの1が性的せいてき虐待ぎゃくたい加害かがい者しゃであり、性的せいてき虐待ぎゃくたい加害かがい者しゃの約やく3分ぶんの1が身体しんたい的てき虐待ぎゃくたい加害かがい者しゃであった[48]。
  • Lewis Harris and Associates, Inc. (1998) の報告ほうこく：1996年ねん12月から1997年ねん6月がつにかけ思春期ししゅんき男子だんし3162人にんを対象たいしょうに、身体しんたい的てきもしくは性的せいてきな虐待ぎゃくたいを受うけたかと直接的ちょくせつてきに問とう形かたちで質問しつもんをし、8人にんに1人ひとりが「はい」と答こたえたが、性的せいてき虐待ぎゃくたい率りつに限定げんていした場合ばあいは5%（白人はくじんや黒人こくじんが3%と低ひくく、アジア系けいが9%と高たかい）であり、その性せい虐待ぎゃくたいの約やく3分ぶんの1が家庭かてい内ないで起おこっており、また家族かぞくのメンバーによるものが45%であった[50]。

日本にっぽん[編集へんしゅう]

  • 「子こどもと家族かぞくの心しんと健康けんこう」調査ちょうさ (1998)：女性じょせい回答かいとう者しゃの39.4%が18歳さいまでに性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけており、小学校しょうがっこう卒業そつぎょうまでに性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけたのが女性じょせい回答かいとう者しゃの15.6%であった。男性だんせい回答かいとう者しゃの10.0%が18歳さいまでに性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけており、小学校しょうがっこう卒業そつぎょうまでに虐待ぎゃくたいを受うけたのは男性だんせい回答かいとう者しゃの5.7%であった（日本にっぽん初はつの全国ぜんこく調査ちょうさ）[51]。
  • 沖縄おきなわタイムスの調査ちょうさ (実施じっし年ねん：1998年ねん)：沖縄おきなわ県けんの大学生だいがくせいに対たいし調査ちょうさをとったが、全体ぜんたい女性じょせいの80.6%が性せい被害ひがいを受うけており、強姦ごうかん・強姦ごうかん未遂みすいに絞しぼっても15.3%という数値すうちが弾はじき出だされている[52]。男性だんせいは男性だんせい対象たいしょう者しゃの28.5%が性せい被害ひがいを受うけており、強姦ごうかん・強姦ごうかん未遂みすいに絞しぼってみても2.7%という数値すうちが弾はじき出だされた[52]。これは性せい被害ひがい調査ちょうさであり、いわゆる「性的せいてきいじめ」が多おおく含ふくまれている。

歴史れきし[編集へんしゅう]

子供こどもに対たいする性的せいてき虐待ぎゃくたいが問題もんだい視しされてくるのは、一般いっぱんに近代きんだい以降いこうである。

欧米おうべい[編集へんしゅう]

1886年ねん、リヨン大学だいがくの法医学ほういがくの主任しゅにん教授きょうじゅアレクサンドル・ラカサーニュが「幼女ようじょにたいする性的せいてき暴行ぼうこう」という論文ろんぶんを発表はっぴょう。同おなじ年ねんに、弟子でしのポール・ベルナールが『幼女ようじょにたいする性的せいてき暴行ぼうこう』を出版しゅっぱん。1827年ねんから70年ねんの間あいだにフランスでは15歳さい以下いかの子供こどもに対たいする強姦ごうかん及および性的せいてき暴行ぼうこうの事件じけんが36176件けん存在そんざいする事ことを公表こうひょうした。

1896年ねんには、ジークムント・フロイトがウィーン精神せいしん医学いがく神経しんけい学がく学会がっかいの会合かいごうで『誘惑ゆうわく理論りろん』と呼よばれる精神せいしん疾患しっかんと性的せいてき虐待ぎゃくたいの関連かんれんを発表はっぴょうしたが完全かんぜんに無視むしされ、フロイトはフリースにあてた書簡しょかんで「奴やつらはみんな地獄じごくへ落おちろ」と書かいた。その後ご彼かれは自説じせつを捨すててしまい幼児ようじ性欲せいよくによる幻想げんそうに過すぎないとして、この後のち長ながらく性的せいてき虐待ぎゃくたいの事実じじつは黙殺もくさつされる事ことになった。1932年ねん、フロイトの一番いちばん弟子でしであったフェレンツィ・シャーンドルが性的せいてきな心しん的てき外傷がいしょうに関かんする論文ろんぶん『大人おとなと子供こどもの間あいだの言葉ことばの混乱こんらん』をフロイトの反対はんたいを押おし切きり、学会がっかいで発表はっぴょうし論争ろんそうが起おこったが、翌よく1933年ねんに本人ほんにんが死亡しぼうしたこともあり、結果けっかとしてこの後のち50年ねん近ちかく性的せいてき虐待ぎゃくたいはほとんど話題わだいにされることがなくなった。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは、1937年ねんから1940年ねんにかけFBI長官ちょうかんジョン・エドガー・フーヴァーが国家こっか主義しゅぎ・人種じんしゅ主義しゅぎ・反はん共産きょうさん主義しゅぎを喚起かんきする策さくとして性せい犯罪はんざい者しゃに対たいし宣戦せんせん布告ふこくをし、さらに1948年ねんに女性じょせい版ばんと1953年ねんに男性だんせい版ばんが発表はっぴょうされたキンゼイ報告ほうこく（調査ちょうさ対象たいしょうの4分ぶんの1近ちかくの女性じょせいが子供こども時代じだいに大人おとなとセックスをした、あるいはセックスを求もとめる男性だんせいに迫せまられたという報告ほうこくがあった）の発表はっぴょう後ごの1949年ねんから1955年ねんの期間きかんでも、社会しゃかい的てきな注目ちゅうもくを浴あび、州しゅう議会ぎかいは特別とくべつ対策たいさく委員いいん会かいを設置せっちし、性せい犯罪はんざい者しゃに対たいする新法しんぽうを制定せいていしたが、いずれも性的せいてき虐待ぎゃくたいを行おこなう人物じんぶつが社会しゃかい的てきに問題もんだいがある以上いじょうの説明せつめいはなされておらず、性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた女性じょせいに後遺症こういしょうが残のこるという証明しょうめいが出来できないとされていた[53]。

1956年ねん、ヴィンセント・デ・フランシスが児童じどう保護ほごを訴うったえ、この頃ころから性せい虐待ぎゃくたいが概念がいねんとして一般いっぱん化かしだす。1950年代ねんだい後半こうはん以降いこう、家族かぞく療法りょうほうが生うまれたことでかつて性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた女性じょせいが比較的ひかくてき話はなしやすい状況じょうきょうが生うまれ、父親ちちおやによるものがごくわずかに報告ほうこくされた。鈴木すずき透とおるは、性せいにまつわる話題わだいの社会しゃかい的てき隠蔽いんぺいが性せいの革命かくめいで揺ゆらいだ時期じきと1960年代ねんだいに児童じどう虐待ぎゃくたいへの社会しゃかい的てき注目ちゅうもくの始はじまった時期じきが一致いっちすることを指摘してきしている[54]。

1965年ねんにはデ・フランシスは近親きんしん姦かんの用語ようごはより広義こうぎに使用しようされるべきであるとし全ぜん事例じれいを性せい虐待ぎゃくたいのカテゴリーに組くみ込こみ、顔見知かおみしりが犯人はんにんの可能かのう性せいが高たかい事ことや専門せんもん化かが必要ひつようであり現状げんじょうはコミュニティ自体じたいが加害かがい者しゃのようになっている事こと、そして報告ほうこく数すうよりも性的せいてき虐待ぎゃくたいははるかに多おおい可能かのう性せいがある事ことを示唆しさした。

1970年代ねんだいにはフェミニストたちによる激はげしい怒いかりの声こえが上あがる。児童じどう虐待ぎゃくたい防止ぼうし協会きょうかい元もと職員しょくいんのフロレンス・ラッシュが性せい虐待ぎゃくたいを受うけた経験けいけんを語かたり、被害ひがい者しゃの身みの潔白けっぱくを訴うったえ、その原因げんいんが家父長制かふちょうせいにあると主張しゅちょうした。このフェミニストの活動かつどうにより状況じょうきょうが変かわりだす。それまでは父ちち娘むすめ相姦そうかんは母親ははおやの冷つめたさに一因いちいんがあるとして母親ははおやを責せめていたのであるが、たとえそれが一因いちいんとなっていても父親ちちおやの責任せきにんは回避かいひできないということで、加害かがい者しゃとして父親ちちおやが責せめられるようになった。だがこの時点じてんであっても報告ほうこく数すうが少すくなく、Freedman, Kaplan and Sadockの1976年ねんの教科書きょうかしょにさえ父ちち娘むすめ相姦そうかんは100万まん分ぶんの1の確かく率りつと記述きじゅつされていた。それに対たいし1970年代ねんだい後半こうはんは多おおくの雑誌ざっしが児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいの恐おそろしさを伝つたえる記事きじを報道ほうどうし、報告ほうこく数すうが伸のびる。また、多おおくの無む作為さくい抽出ちゅうしゅつ調査ちょうさがキンゼイ報告ほうこくとほぼ同様どうようの「数すう人にんに1人ひとり程度ていど」の調査ちょうさ結果けっかを示しめし、パニックが始はじまる。

だが、1980年代ねんだいに入はいるとそれまで個々ここの事件じけんに焦点しょうてんがあてられていたものがセンセーショナルな話題わだいとなっていき、集団しゅうだん的てきな悪魔あくま的てき儀式ぎしき虐待ぎゃくたいが注目ちゅうもくを集あつめだす[55]。1983年ねんにマクマーティン保育園ほいくえんでの虐待ぎゃくたい（結果けっか的てきに全員ぜんいん無罪むざい判決はんけつが下くだっている）が報道ほうどうされた後のちは、それから1990年代ねんだい初頭しょとうにかけて「悪魔あくま崇拝すうはい者しゃらによる儀式ぎしき的てき虐待ぎゃくたいが国内こくないで多おおく行おこなわれており保育ほいく施設しせつなどで儀式ぎしき的てきで集団しゅうだん的てきな性的せいてき虐待ぎゃくたいが行おこなわれている」というような根拠こんきょのないデマが広ひろまり保育園ほいくえんなどでの性的せいてき虐待ぎゃくたいの可能かのう性せいに対たいする社会しゃかい的てき恐怖きょうふが起おこる。

1980年代ねんだいは性的せいてき虐待ぎゃくたいが特とくに注目ちゅうもくを浴あびるようになるが、鈴木すずき透とおるによれば、これは同性愛どうせいあいや妊娠にんしん中絶ちゅうぜつなどを解放かいほうせよなどといった性せいの革命かくめい後ごの運動うんどうに対たいして守勢しゅせい一いち方ぽうであった保守ほしゅ派はが、反発はんぱつの一ひとつとして性的せいてき虐待ぎゃくたいを攻撃こうげきの対象たいしょうとしたためであったのだという[56]。また、この悪魔あくま的てき儀式ぎしき虐待ぎゃくたい騒動そうどうの最中さいちゅうに一部いちぶで催眠さいみん術じゅつやセラピーを通つうじ記憶きおくは思おもい出だせるというような回復かいふく記憶きおく運動うんどうが起おこった[55]。この療法りょうほうにおいては親おやからの悪魔あくま的てき儀式ぎしき的てき虐待ぎゃくたいという抑圧よくあつされた記憶きおくを思おもい出ださせるケースが目立めだった。

だが幼稚園ようちえん・保育園ほいくえんの儀式ぎしき的てきな話はなしが本当ほんとうなのかということで1990年代ねんだい初頭しょとうから調しらべられ、幼稚園ようちえんなどにおける「悪魔あくま崇拝すうはい者しゃの運営うんえいする保育ほいく施設しせつにおける虐待ぎゃくたいが広ひろく行おこなわれている」というパニックには実際じっさいには根拠こんきょはなく、その根源こんげんは仕事しごとを持もつ母親ははおやや共働ともばたらきの家庭かていに対たいする反発はんぱつというところが強つよいとされFBIはモラル・パニックとみなした。

さらにここからそういった話はなしを「思おもい出ださせて」いた治療ちりょう者しゃに矛先ほこさきが向むけられ、1992年ねんにFMS財団ざいだん（False Memory Syndrome Foundation）が設立せつりつされた。この後のち、カウンセラーが呼よび戻もどしたとされる記憶きおくの中なかには虚偽きょぎ記憶きおくによる冤罪えんざいが存在そんざいしている可能かのう性せいが頻繁ひんぱんに報道ほうどうされ、催眠さいみん療法りょうほうやアミタールなど催眠さいみん系けいの薬物やくぶつを用もちいて思おもい出だしたとする事例じれいの多おおくが冤罪えんざいであったと証明しょうめいされた。だが、こうした反発はんぱつによりセンセーショナルな話題わだいは影かげを潜ひそめたものの、児童じどう性せい虐待ぎゃくたいが蔓延まんえんしているという疑惑ぎわくは抜ぬけず、至いたる所ところに犯罪はんざい者しゃが存在そんざいしているのではないかという混乱こんらんが残のこったため、これを利用りようして政治せいじ的てきなポイントを稼かせぐためにミーガン法ほうなどといった法律ほうりつの整備せいびが行おこなわれた[57]。

1990年代ねんだい後半こうはんから21世紀せいき直前ちょくぜんの時期じきになると、それまでマスメディアが報道ほうどうしてきたイメージに対たいする批判ひはんも発生はっせいし、事件じけんの性質せいしつと性的せいてき虐待ぎゃくたいの現実げんじつ的てきな犯罪はんざいの数かずがどのくらいなのかということについて激はげしい混乱こんらんが起おこった[58]。1997年ねんから1998年ねんにかけ、シアトルで女性じょせい教師きょうしメアリー・ケイ・ルトーノーが男子だんし生徒せいとと性交せいこうした挙句あげく妊娠にんしんし少年しょうねんの家族かぞくとなるという全米ぜんべいを震撼しんかんさせる事件じけんが起おこる。この件けんは法ほうの下したで強姦ごうかんとされたが、同情どうじょう論ろんが一般いっぱんには強つよかった。リチャード・ガートナーは1999年ねんの自みずからの著書ちょしょで、Wright, D.の1997年ねん発表はっぴょうの資料しりょうを引ひいて、女性じょせい運動うんどうによって男性だんせいが加害かがい者しゃであって被害ひがい者しゃにはなりえず、女性じょせいが被害ひがい者しゃであり加害かがい者しゃにはなりえないという見方みかたを強化きょうかしてしまったという話はなしを指摘してきした[59]。

2002年ねんにはボストン・グローブ紙しがカトリック教会きょうかいの性的せいてき虐待ぎゃくたい事件じけんを報道ほうどうし、教会きょうかい側がわが事実じじつを認みとめなければならない状態じょうたいとなったため、再ふたたび性的せいてき虐待ぎゃくたいに対たいするパニックが起おこりだす。統計とうけい上じょうは全まったく増ふえてはいないのだがアメリカ中ちゅうが苛立いらだつ事態じたいとなり、様々さまざまな性せい犯罪はんざい及および児童じどう誘拐ゆうかいに対たいする報道ほうどうは白熱はくねつを極きわめ、その年としの8月がつ6日にちにはホワイトハウスでジョージ・ウォーカー・ブッシュ大統領だいとうりょうもテロリズムとの戦たたかいに並ならべて児童じどう性せい虐待ぎゃくたいという歪いがんだコミュニティの問題もんだいに対たいし立たち向むかう姿勢しせいを表明ひょうめいした。

2003年ねんにはマーティン・バシールのインタビューにより「マイケルジャクソンの真実しんじつ」が報道ほうどうされ、その後ごマイケル・ジャクソンが少年しょうねんに対たいする性的せいてき虐待ぎゃくたいで訴うったえられる。マイケルジャクソンは1993年ねんにも性的せいてき虐待ぎゃくたい疑惑ぎわくを持もたれていた。この裁判さいばんは世界せかい的てきな大だいスターということで世界中せかいじゅうが注目ちゅうもくする裁判さいばんとなった。多おおくのマスコミ報道ほうどうはマイケルは有罪ゆうざいであると報道ほうどうし、トム・スネドンら検察けんさつ側がわはマイケルは有罪ゆうざいであると主張しゅちょうした。だが、マイケル・ジャクソン裁判さいばんにおいてその主張しゅちょうには矛盾むじゅん点てんが多おおいことをトーマス・メゼロウらの弁護士べんごしグループは述のべ、2005年ねん6月がつ13日にちに全面ぜんめん無罪むざい判決はんけつが下くだされた。

日本にっぽん[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは1957年ねん9月がつ25日にち、久保くぼ摂と二ににより「近親きんしん相姦そうかんに関かんする研究けんきゅう」という論文ろんぶんが発表はっぴょうされ、これが日本にっぽん初はつの近親きんしん相姦そうかん論文ろんぶんとされる。父ちちと娘むすめ15例れい、母ははと息子むすこ3例れい、兄弟きょうだい姉妹しまい15例れい、その他た3例れいを取とり上あげていた。日本にっぽんでは1881年ねんの旧きゅう刑法けいほうの制定せいてい以来いらい、近親きんしん相姦そうかんに関かんして「道徳どうとくにゆだねるべき」という立場たちばをとってきたが[60]、池田いけだ由子ゆうこは1987年ねんの著ちょ著ちょ『児童じどう虐待ぎゃくたい』で、尊属そんぞく殺ころせ重罰じゅうばつ規定きてい違憲いけん判決はんけつの事案じあんでは父親ちちおやを殺害さつがいしたとされる女性じょせいは明あきらかな性的せいてき虐待ぎゃくたいの被害ひがい者しゃであったという点てんを問題もんだい視しした[61]。なお、この性的せいてき虐待ぎゃくたい事件じけんの被害ひがい者しゃには性的せいてき早熟そうじゅくや知能ちのうの遅おくれは認みとめられなかった。

また、1980年ねんに朝日新聞あさひしんぶんは母子ぼし姦かんを取とり上あげ、川名かわな紀美きみは『密室みっしつの母ははと子こ』という本ほんを出だした。だが、マスコミ報道ほうどうは事実じじつを正確せいかくに伝つたえられず、反発はんぱつが起おこった。1990年代ねんだい、性的せいてき虐待ぎゃくたいを取とり締しまる法律ほうりつが日本にっぽんでは存在そんざいしないことが非難ひなんされ、結果けっか「児童じどう虐待ぎゃくたいの防止ぼうし等とうに関かんする法律ほうりつ（児童じどう虐待ぎゃくたい防止ぼうし法ほう）」が2000年ねん5月がつに可決かけつされた。第だい2条じょうで「児童じどうにわいせつな行為こういをすること又または児童じどうをしてわいせつな行為こういをさせること」として性的せいてき虐待ぎゃくたいを定さだめた。

2004年ねんには、ジャニーズ事務所じむしょ社長しゃちょうのジャニー喜多川きたがわによる、同どう事務所じむしょ所属しょぞく男性だんせいタレントへの性せい加害かがいに対たいする報道ほうどうについての裁判さいばんで、「セクハラ行為こういに関かんする報道ほうどうについては名誉めいよ棄損きそんに当あたらない」とされた。

詳細しょうさいは「ジャニー喜多川きたがわによる性せい加害かがい問題もんだい」を参照さんしょう

日本にっぽんでは児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいに関かんする話はなしが取とり上あげられることは少すくなく、2002年ねん以降いこうのカトリック教会きょうかいの事件じけんや裁判さいばんの話はなしも対岸たいがんの火事かじといった扱こいでほとんど取とり上あげられなかった。この最中さいちゅう、日本にっぽんでは全すべての件けんに関かんし無罪むざいになったマイケル・ジャクソンの話はなしが空回からまわりしていた。また、2006年ねんには中学生ちゅうがくせい日記にっき（「誰だれにも言いえない」）で男性だんせい教師きょうしの少年しょうねんに対たいする性的せいてき虐待ぎゃくたいが扱あつかわれた。

日本にっぽんでは性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけ保護ほごされた児童じどうは施設しせつで養育よういくされることも多おおいのだが、なかには性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた児童じどうが保護ほご施設しせつでさらに性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うける事例じれいも存在そんざいする。また、いわゆるスクールセクハラについて、かつては教師きょうしによる性せい暴力ぼうりょくがタブー的てき存在そんざいとされていた時期じきもあったが、2001年ねん以降いこうは文部もんぶ科学かがく省しょうが厳きびしい姿勢しせいに出でるようになったこともあって実態じったいに改善かいぜんがみられ、行政ぎょうせいや各かく学校がっこうにおいて学校がっこう内ないにおける性的せいてき虐待ぎゃくたいやセクシャルハラスメントの防止ぼうしや対応たいおうに取とり組くんでいる。ただ、裁判さいばん沙汰ざたになる可能かのう性せいもあるため、学校がっこう側がわが確固かっこたる証拠しょうこを求もとめる風潮ふうちょうもより強つよまっており、被害ひがいを訴うったえる側がわからは不満ふまんの声こえもある。

被害ひがい児童じどうのプライバシーの問題もんだいからあまり報道ほうどうされないという事情じじょうもあり、日本にっぽん社会しゃかいにおいて親おやによる性的せいてき虐待ぎゃくたいに対たいする認知にんち度どは低ひくかった。だが、2019年ねんに父親ちちおやからの性的せいてき虐待ぎゃくたいが疑うたがわれていた女児じょじが自宅じたくに帰宅きたくした後のちに遺体いたいとなって発見はっけんされた事件じけん（野田のだ小しょう4女児じょじ虐待ぎゃくたい事件じけん。女児じょじの死亡しぼう後ごになって父親ちちおやが傷害しょうがい容疑ようぎで逮捕たいほされた。）については、せっかく児童じどう相談そうだん所しょで保護ほごしたのに一時いちじ保護ほごを解除かいじょしてよかったのかと第三者だいさんしゃ委員いいん会かいで検討けんとうされることが決定けっていする事態じたいとなった（女児じょじの遺体いたい発見はっけん日びは1月がつ24日にちだったが、この経緯けいいが公開こうかいされたのは5月14日にちのことだった）[62]。

全国ぜんこく統一とういつダイヤルで受うけ付つける子こどもの電話でんわ相談そうだん「チャイルドライン」で、宮城みやぎ県内けんないから2017年度ねんどに発信はっしんされた児童じどう虐待ぎゃくたいの相談そうだん52件けんのうち、性的せいてき虐待ぎゃくたいが53.8%（28件けん）を占しめていた。被害ひがい者しゃは主おもに小学生しょうがくせいから高校生こうこうせいの女子じょしで、特とくに中学生ちゅうがくせいが多おおく加害かがい者しゃの多おおくは実父じっぷとみられる[63]。性せい暴力ぼうりょくを受うけたときに相談そうだんできるワンストップ支援しえんセンターの大阪おおさか支部しぶでは、2010年度ねんど～18年度ねんどに来所らいしょし、受診じゅしんにつながった者もののうち19歳さい以下いかの子こどもは1285人にんで6割わりを占しめている。また17、18年度ねんど、家族かぞくからの性せい暴力ぼうりょくを訴うったえた子こどもは161人ひとりとなり、実父じっぷからが36%、実兄じっけい・義兄ぎけいからが18%を占しめ、そのほか母ははの恋人こいびと・祖父そふ・いとこが加害かがい者しゃの事例じれいもある[64]。

イスラーム諸国しょこく[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「イスラームと児童じどう性愛せいあい」および「イスラーム世界せかいの性せい文化ぶんか」を参照さんしょう

イスラーム諸国しょこくでも、伝統でんとう的てきに児童じどうに当あたる年齢ねんれいの人間にんげんに対たいする性的せいてき行為こういを必かならずしも「虐待ぎゃくたい」としてはこなかった。前ぜん近代きんだいイスラーム社会しゃかいの根幹こんかん法ほうであったシャリーア（古典こてんイスラーム法ほう）が定さだめる女性じょせいの最低さいてい婚姻こんいん年齢ねんれい（したがって、性行為せいこういが社会しゃかい的てきに容認ようにんされる年齢ねんれい）は、一般いっぱん的てきな解釈かいしゃくでは9歳さい、その他たの解釈かいしゃくでは初潮しょちょうの開始かいし年齢ねんれいか明確めいかくな制限せいげんなしとなっており、男性だんせいも13歳さい程度ていどで結婚けっこんできた。これはイスラームの預言よげん者しゃムハンマドの妻つま・アーイシャの結婚けっこん年齢ねんれいが9歳さいであったというハディースに基もとづいている。一方いっぽう結婚けっこん当初とうしょのムハンマドは既すでに50歳さいを越こえていた。

そのためとりわけ女児じょじに対たいする性的せいてき行為こういは、たとえその内容ないようが客観きゃっかん的てきに見みれば虐待ぎゃくたいと思おもわれるものであっても、正常せいじょうな婚姻こんいんの結果けっかとして容認ようにんされた。また家父長制かふちょうせいの存在そんざいにより、そのような女児じょじが被害ひがいを訴うったえることはきわめて困難こんなんであった。預言よげん者しゃムハンマドとアーイシャとの婚姻こんいんに関かんしても、その初期しょきの性行為せいこういは児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいではないかという主張しゅちょうがある[65][66]。

これに対たいして、前ぜん近代きんだいの人類じんるい社会しゃかいでは有力ゆうりょく家系かけいの子女しじょが10歳さい前後ぜんこうで結婚けっこんすることはありふれており、このこと自体じたいは歴史れきし的てき事実じじつとして確認かくにんされている、という反論はんろんがある。豊臣とよとみ秀吉ひでよしは10歳さいの幼女ようじょを側室そくしつにしたことなど、歴史れきし上じょうの人物じんぶつは、ほとんどがこの例れいに倣ならっており、ムハンマドだけを攻撃こうげきする理由りゆうが不明ふめいである。その場合ばあいは結婚けっこんしてもおおよそ初潮しょちょう後ごの適齢てきれいになるまでセックスは行おこなわないのが通例つうれいであった。インドのイスラーム学者がくしゃマウラナ・ムハンマド・アリーはアーイシャがムハンマドと初夜しょやを迎むかえた年齢ねんれいは15歳さいであったと主張しゅちょうしている[67]。

また前ぜん近代きんだいのイスラーム社会しゃかいでは、同性愛どうせいあいを問題もんだい視しする厳格げんかくな宗教しゅうきょう家かの存在そんざいにもかかわらず、少年しょうねん愛あいが流行りゅうこうしたが、この中なかには客観きゃっかん的てきに見みて性的せいてき虐待ぎゃくたいととれる事例じれいも存在そんざいしたとされている。

しかし19世紀せいき末まつから20世紀せいきにかけてシャリーアが近代きんだい的てきな家族かぞく法ほうに取とって代がわり、現在げんざいでは多おおくのイスラーム諸国しょこくで結婚けっこん最低さいてい年齢ねんれいは15 - 18歳さいの間あいだである。よって児童じどうに対たいする性行為せいこういは、性的せいてき虐待ぎゃくたいとして広ひろく認知にんちされている。

ただしイランやサウジアラビアのような国くにでは、いまだにシャリーアに基もとづく家族かぞく法ほうが効力こうりょくを有ゆうしており、9歳さいの少女しょうじょとの結婚けっこん・セックスも合法ごうほうである。またそれ以下いかの年齢ねんれいの少女しょうじょとの結婚けっこんが認みとめられている事例じれいもあり、借金しゃっきんのかたとして8歳さいの少女しょうじょが結婚けっこんさせられた事例じれいがある[68]。またイエメンでは、女児じょじの結婚けっこん最低さいてい年齢ねんれいを法律ほうりつで定さだめておらず、9歳さい未満みまんの女児じょじとの結婚けっこん・セックスも合法ごうほうである[69]。サウジの高位こうい聖職せいしょく者しゃ評議ひょうぎ会かいの議長ぎちょうアブドゥル・アズィーズ・アル・シェイフは、シャリーアでは10歳さいの少女しょうじょでも結婚けっこん・セックスの対象たいしょうとすることができ、むしろシャリーアに対たいする批判ひはんを行おこなう側がわこそ少女しょうじょたちへの不ふ正義せいぎを行おこなっていると述のべた[70]。

結婚けっこん最低さいてい年齢ねんれいに関かんしてイスラーム法ほうではなく、近代きんだい法ほうを施行しこうしている国くにでも、イスラーム法ほうが慣習かんしゅうとして隠然いんぜんたる権威けんいを持もっている場合ばあい、両者りょうしゃの矛盾むじゅんが問題もんだいとなることがある。モロッコでは、世俗せぞく法ほうに基もとづき女子じょしの結婚けっこん最低さいてい年齢ねんれいは18歳さいであるが、原理げんり主義しゅぎ的てきなイスラーム法学ほうがく者しゃムハンマド・アルマグラーウィーが9歳さいの少女しょうじょとの結婚けっこん・セックスを合法ごうほうとするファトワーを出だしたために、この問題もんだいに対たいして近代きんだい的てきな見解けんかいを示しめす国王こくおう直属ちょくぞくのウラマー達たちや世俗せぞく知識ちしき人じんから、児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいを正当せいとう化かするものであると批判ひはんされた[71]。

また、インドネシアでも、イスラーム法学ほうがく者しゃが12歳さいの少女しょうじょと結婚けっこん・セックスし、さらに7歳さいと6歳さいの女児じょじとも結婚けっこんしようとした事例じれいが報告ほうこくされ、警察けいさつの捜査そうさの対象たいしょうとなっている。この法学ほうがく者しゃは、イスラーム法ほうにおける結婚けっこん最低さいてい年齢ねんれいを初潮しょちょうの開始かいし時じとする解釈かいしゃくをとり、女児じょじたちは皆みなこの条件じょうけんを満みたしているとして、この結婚けっこん・セックスは合法ごうほうであると主張しゅちょうしている[72]。

影響えいきょう[編集へんしゅう]

心理しんり的てき影響えいきょう[編集へんしゅう]

児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいは、被害ひがい者しゃに、その後ごの人生じんせいにおいて心しん的てき外傷がいしょうを含ふくめた、短期たんき的てきおよび長期ちょうき的てきな負まけの影響えいきょうを与あたえる [15][73][74]。症状しょうじょうとしては、うつ病びょう[10][73][75][76]、不安ふあん[12][73]、摂食せっしょく障害しょうがい[77]、自尊心じそんしんの欠如けつじょ[73][77]、身体しんたい化か障害しょうがい[76]、睡眠すいみん障害しょうがい[78][79]、心しん的てき外傷がいしょう後ごストレス障害しょうがいを含ふくむ解離かいり性せい同一どういつ性せい障害しょうがいおよび不安ふあん障害しょうがい[11][80]があげられる。

性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた子こどもにおいて顕著けんちょによく現あらわれれる症状しょうじょうは、性的せいてき行動こうどう、過度かどな性的せいてき知識ちしきおよび関心かんしんであり、これを特とくに性せい化か行動こうどう（Child Sexual Behavior）という[81][82][83] 例れいとしては友達ともだちに対たいしてエッチごっこを行おこなうことなどが挙あげられる。こうした行為こういに至いたるメカニズムは3つ考かんがえられており、1つ目めは大人おとなとの関係かんけいをそれ以外いがいの手法しゅほうで知しらないため、2つ目めは子供こどもにとって性的せいてき行為こういがどんな意味いみを持もつのか分わからないため必死ひっしに理解りかいしようと努力どりょくするため、そして3つ目めはそういった行為こういを繰くり返かえすことで自身じしんのトラウマを乗のり越こえようとするためである[84]。

他たの短期たんき的てきな症例しょうれいとしては、学校がっこうや社会しゃかい活動かつどうからの引びきこもり[81]、動物どうぶつ虐待ぎゃくたい[85][86][87][88]、注意ちゅうい欠陥けっかん・多た動どう性せい障害しょうがい（ADHD）、行為こうい障害しょうがい、反抗はんこう挑戦ちょうせん性せい障害しょうがい（ODD）[77]、10代の出産しゅっさんや思春期ししゅんきでのハイリスクな性せい行動こうどう [89]など、様々さまざまな学習がくしゅう・行動こうどう上じょうの問題もんだいを示しめすことがある。また児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいの被害ひがい者しゃは、自じ傷きず行為こういの発生はっせい率りつが約やく4倍ばい高たかいと報告ほうこくされる[90]。10代の間あいだに受うける性的せいてき暴行ぼうこうは、メンタルヘルスの問題もんだい、社会しゃかい的てき排除はいじょ、学業がくぎょう成績せいせきの悪化あっかに繋つながることが示しめされている[91][92]。

長期ちょうき的てきな負まけの影響えいきょうとしてよく認みとめられるのは、思春期ししゅんきや成人せいじん期きにおいて被害ひがい者しゃが追加ついか的てきに被こうむる、あるいは繰くり返かえされる悪影響あくえいきょうである。 [14][93]小児しょうに期きの性的せいてき虐待ぎゃくたい被害ひがいと、犯罪はんざい、自殺じさつ、アルコール依存いぞん症しょう、薬物やくぶつ依存いぞんなど様々さまざまな成人せいじんの精神せいしん病理びょうりとの間あいだに因果いんが関係かんけいがみられる[28][93][94][95][96][97][98][99][100]。児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけたのが男性だんせいの場合ばあいは、メンタルヘルスの臨床りんしょうよりも刑事けいじ司法しほう制度せいどに現あらわれることが多おおくなる。[81]また2001年ねん厚生こうせい労働省ろうどうしょうによる刑務所けいむしょ収監しゅうかん者しゃ調査ちょうさによれば、女性じょせい受刑じゅけい者しゃでも7割わり以上いじょうが18歳さいまでに性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけており、3割わりはレイプなどの深刻しんこくな被害ひがい、2割わりが近親きんしん姦かんであった[101][102]。児童じどう虐待ぎゃくたいを受うけた中年ちゅうねん女性じょせいと、そうでない女性じょせいとを比較ひかくした研究けんきゅうでは、前者ぜんしゃの医療いりょう費ひが有為ゆういに高たかい傾向けいこうがある。[76][103]また世代せだいを超こえた負まけの影響えいきょうも指摘してきされており、児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいの被害ひがい者しゃの子こどもは、そうでない同年代どうねんだいの子こどもよりも、行動こうどう面めん、友人ゆうじん面めん、感情かんじょう面めんで多おおくの問題もんだいを示しめす[104]。

児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいと各かく症状しょうじょうとの間あいだに特徴とくちょう的てきなパターンは見みいだせていないが[105]、因果いんが関係かんけいについては幾いくつかの仮説かせつがある[10][73][106][107]。例たとえば、性的せいてき虐待ぎゃくたいの最中さいちゅうに虐待ぎゃくたい者しゃによって行おこなわれる問題もんだいの否認ひにん・矮小わいしょう化か・ごまかし・責任せきにんのなすりつけ・侮辱ぶじょくなどの結果けっかであると考かんがえる仮説かせつもある。[73]

調査ちょうさによると、性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた子こどもの51％から79％が心理しんり的てき症状しょうじょうを示しめしている[96][108][109][110][111]。さらに虐待ぎゃくたい者しゃが親族しんぞくである場合ばあいや、虐待ぎゃくたいが性交せいこうまたは性交せいこう未遂みすいを伴ともなう場合ばあい、あるいは脅迫きょうはくや暴力ぼうりょくが用もちいられた場合ばあい、心しん的てき外傷がいしょうのリスクはより高たかくなる。[112] また、心しん的てき外傷がいしょうの程度ていども、挿入そうにゅう、虐待ぎゃくたいの期間きかんと頻度ひんど、暴力ぼうりょくの使用しようなどの要因よういんによっても影響えいきょうを受うける。[15][74][113][114] 児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいの被害ひがい者しゃに対たいする社会しゃかい的てきな偏見へんけんがある場合ばあい、被害ひがい児童じどうの心しん的てき外傷がいしょうを悪化あっかさせる傾向けいこうがある[114][115]。しかし逆ぎゃくに、支援しえん的てきな家族かぞく環境かんきょうにある被害ひがい児童じどうは、このリスクが低減ていげんする[116][117]。

身体しんたい的てき影響えいきょう[編集へんしゅう]

身体しんたい傷害しょうがい[編集へんしゅう]

被害ひがい児童じどうの年齢ねんれいや体格たいかく、力ちからの程度ていどによっては、児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいにより、体内たいないの裂傷れっしょうや出血しゅっけつを起おこすことがある。重症じゅうしょうの場合ばあい、内臓ないぞうの損傷そんしょうが起おこり、場合ばあいによっては死しに至いたることもある。[118]

感染かんせん症しょう[編集へんしゅう]

児童じどうの性的せいてき虐待ぎゃくたいは、感染かんせん症しょうや性せい感染かんせん症しょうを引ひき起おこすことがあり、膣ちつ炎えんも報告ほうこくされている。子こどもの年齢ねんれいや体格たいかくによっては、膣ちつ分泌ぶんぴつ液えきも十分じゅうぶんでないため、感染かんせん症しょうにかかる可能かのう性せいも高たかい。[119]

神経しんけい学がく的てき損傷そんしょう[編集へんしゅう]

性的せいてき虐待ぎゃくたいによるストレスを含ふくむ外傷がいしょう性せいストレスは、脳のうの機能きのうや発達はったつに顕著けんちょな変化へんかをもたらし、重度じゅうどの児童じどう性せい虐待ぎゃくたいが脳のうの発達はったつに悪影響あくえいきょうを及およぼしうる。[120][121] 1998年ねんItoらは「虐待ぎゃくたいを受うけた被験者ひけんしゃでは半球はんきゅうの非対称ひたいしょう性せいが逆転ぎゃくてんし、脳のうの左ひだり半球はんきゅうのコヒーレンスが大おおきくなる」ことを見出みいだし[122]、1993年ねん Teicherらは虐待ぎゃくたいを受うけた被験者ひけんしゃでは「発作ほっさ性せい側がわ頭あたま葉はてんかん様さま症状しょうじょう」の発症はっしょう率りつが高たかくなるとした[123]。2002年ねん Andersonらは、小児しょうに期きに性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた成人せいじんの小脳しょうのう頂いただき部ぶではMRIでT2緩和かんわ時間じかんが長ながくなることを見出みいだした[124]。斎藤さいとう学まなぶ (2001) によると、父親ちちおやに身体しんたい的てき虐待ぎゃくたいを加くわえられ、かつ性的せいてきな境界きょうかい侵犯しんぱんもあった女性じょせいが健忘けんぼう症状しょうじょうを呈ていした症例しょうれいにおいて、MRIで海馬かいば領域りょういきの萎縮いしゅくとグリア性せい瘢痕はんこん化か、SPECTでは両りょう側側そくそく頭あたまの血ち流りゅう不全ふぜんを確認かくにんした[125]。2002年ねん Teicherらは、児童じどうの性的せいてき虐待ぎゃくたいが脳のう梁はりの面積めんせき減少げんしょうや左ひだり海馬かいばの容積ようせき減少げんしょうとの関連かんれんを、複数ふくすうの研究けんきゅう報告ほうこくを基もとに示しめした[126]。1993年ねん伊藤いとうらは性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた児童じどうに電気でんき生理学せいりがく的てき異常いじょうが増加ぞうかすることを見出みいだした[127]。

小児しょうににおける性的せいてきまたは身体しんたい的てき虐待ぎゃくたいが、未み発達はったつの大脳だいのう辺べ縁えん系けいの過剰かじょう興奮こうふんに繋つながる可能かのう性せいを示しめす研究けんきゅうもある[126]。 1993年ねんTeicherらは、"Limbic System Checklist-33（LSCL-33）"（辺べ縁えん系けいチェックリスト-33）を用もちいて、成人せいじん253人にんの発作ほっさ性せい側がわ頭あたま葉はてんかん様さま症状しょうじょうを測定そくていした。児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいの経験けいけん者しゃのLSCL-33は得点とくてんにして49％上昇じょうしょうした。これは身体しんたい的てき虐待ぎゃくたいの経験けいけん者しゃよりも11％高たかいものであった。さらに身体しんたい的てき虐待ぎゃくたいと性的せいてき虐待ぎゃくたいの両方りょうほうの経験けいけん者しゃでは113％の上昇じょうしょうとなった。男女だんじょともに同様どうようであった。[123][128]

2006年ねんNavaltaらは、児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいを繰くり返かえし受うけた女性じょせいでは、数学すうがくのSATスコアが有意ゆういに低ひくく、逆ぎゃくに言語げんごのSATスコアが高たかいことを確認かくにんした。これは「半球はんきゅう統合とうごうの欠陥けっかんに由来ゆらいするのではないか」と考察こうさつしている。また、テストされたすべてのカテゴリ（言語げんご、視覚しかく、およびグローバル）の短期たんき記憶きおく障害しょうがいと虐待ぎゃくたいの期間きかんとの間あいだに強つよい関連かんれんがあることも、併あわせて見出みいだした。[129]

対人たいじん関係かんけいにおける影響えいきょう[編集へんしゅう]

フェレンツィ・シャーンドルが1933年ねんの著書ちょしょ『大人おとなと子供こどもの間あいだの言葉ことばの混乱こんらん』で書かき残のこしたように、性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた場合ばあい「優やさしさ」と「激情げきじょう」を表あらわす言葉ことばの間あいだに混乱こんらんが生しょうじることも知しられている。性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた人ひとたちが「セックス」「愛情あいじょう」「慈いつくしみ」「親愛しんあい」「虐待ぎゃくたい」といったものに対たいする感覚かんかくの混同こんどうをきたしてしまうと、結果けっかとして人間にんげん関係かんけいにおける経験けいけんを誤認ごにんしてしまい、性的せいてきかつ虐待ぎゃくたい的てきなものがそのまま愛情あいじょうとして認識にんしきされたり、逆ぎゃくに喜よろこばしい関係かんけい性せいが虐待ぎゃくたい的てきだと感かんじるような歪いがんだ認識にんしきが生うまれるのである[130]。

児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいの悪影響あくえいきょうの広範こうはん性せいや強度きょうどに関かんする議論ぎろん[編集へんしゅう]

Bruce Rind,et al.(1998)は大学生だいがくせいサンプルを対象たいしょうとした59の研究けんきゅうをメタ分析ぶんせきする事ことにより、児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいが性別せいべつに関係かんけいなく、一般いっぱんの人々ひとびとに広範こうはんかつ深刻しんこくな被害ひがいを生しょうじるという信念しんねんを検証けんしょうした所ところ、家庭かてい環境かんきょう因子いんしを調整ちょうせいすると、児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいとその後ごの心理しんり的てき適応てきおうの関係かんけいは一般いっぱんに有意ゆういではなくなる事ことを発見はっけんし、児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいの悪影響あくえいきょうとされていたものは、そのほとんどが家庭かてい環境かんきょうに起因きいんする物ものであり、児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいの被害ひがいは広範こうはんでも典型てんけい的てきに深刻しんこくなものでもないと結論けつろんした。[131]この研究けんきゅうは、マスコミ、メディアによって繰くり返かえし報道ほうどうされ、一般いっぱんに信しんじられている児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいは典型てんけい的てきに子供こどもに深刻しんこくな心理しんり的てき不適ふてき応おうを引ひき起おこすという信念しんねんを真まっ向こうから否定ひていする結論けつろんを導みちびき出だした事ことで発表はっぴょう後ご、激はげしい論争ろんそうを引ひき起おこし、米国べいこく下院かいん議会ぎかいが非難ひなん決議けつぎを行おこなう前代未聞ぜんだいみもんの事態じたいに発展はってんした（詳くわしくは、en:Rind et al. controversy）。しかしアメリカ心理しんり学会がっかいから論文ろんぶんの独立どくりつ審査しんさを依頼いらいされた米国べいこく科学かがく振興しんこう協会きょうかいは「論文ろんぶんの著者ちょしゃの側がわの不適切ふてきせつな方法ほうほう論ろんや疑うたがわしい実践じっせんの証拠しょうこは見当みあたらない」と結論けつろんし、政治せいじ家かやマスコミ・メディアによって行おこなわれた批判ひはんの多おおくが、著者ちょしゃにより示しめされている分析ぶんせきを理解りかい出来できておらず、論文ろんぶんの発見はっけんについて誤あやまった批判ひはんを繰くり返かえしている事ことについて懸念けねんを表明ひょうめいした。また心理しんり学がくと科学かがく哲学てつがくの専門せんもん家かであるスコット・リリエンフェルドは、Rindらの論文ろんぶんへの批判ひはんの多おおくは、統計とうけい学がくや科学かがく的てき方法ほうほう論ろんに関かんする無知むちや理解りかい不足ふそくに起因きいんし、多おおくの基本きほん的てきな論理ろんり的てき誤謬ごびゅうを犯おかしている事ことを指摘してきしている。[132]

子供こどもの心理しんりの関連かんれん[編集へんしゅう]

加害かがい者しゃと被害ひがい者しゃが成人せいじんである場合ばあい大抵たいていは身体しんたい的てきもしくは精神せいしん的てき強要きょうようがあるのが普通ふつうであるが、子供こどもが虐待ぎゃくたいされている場合ばあいには一見いっけんすると同意どういしているような場合ばあいも少すくなくない。

菅原すがわら昭秀あきひで (1990) は大阪おおさか府ふ児童じどう相談そうだん所しょで扱あつかった女児じょじ39人にん（加害かがい者しゃはうち37人にんが継父けいふや養父ようふを含ふくむ父親ちちおや、叔父おじが1人ひとり、母親ははおやが1人ひとり）のうち33人にんが性的せいてき虐待ぎゃくたいに対たいし拒否きょひ的てきな反応はんのうを示しめしてはいたが、その虐待ぎゃくたい者しゃ本人ほんにんに対たいして否定ひてい的てきな反応はんのうを示しめしていたのは18人にんに過すぎなかったという報告ほうこくをしている。残のこりの21人にんのうち、5人にんは拒否きょひをしつつも同情どうじょう的てきな態度たいど、13人にんは曖昧あいまいな態度たいど、3人にんは肯定こうてい的てきな態度たいどをとっていたという[133]。

近親きんしん姦かんの体験たいけん者しゃは虐待ぎゃくたいの犠牲ぎせいになったという認識にんしきそのものは正ただしいが、その心しんの深層しんそうには緊密きんみつで複雑ふくざつなアンビバレントな関係かんけいがある。多おおくの子供こどもは虐待ぎゃくたい者しゃに対たいし愛情あいじょうと憎にくしみが複雑ふくざつに絡からみ合あった感情かんじょうを抱いだくが、これは性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた人ひとに激はげしい混乱こんらんをもたらす。憎にくしみか愛情あいじょうのどちらかの面めんを取とり解決かいけつしようとすることも多おおいが、この場合ばあい突然とつぜん愛情あいじょうが憎にくしみに変かわったり、憎にくしみしか感かんじることができなくなったりする。

また、こうした被害ひがいを受うけた人ひとをさらなる混乱こんらんに陥おとしいれているのは文化ぶんか的てきな問題もんだいによるところも大おおきい。もともと近代きんだい文明ぶんめいはそういった現象げんしょうを抑圧よくあつし続つづけてきたため、必然ひつぜん的てきに性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた場合ばあい社会しゃかいから阻害そがいされてしまうような感覚かんかくに襲おそわれてしまうことが多おおい。こうした場合ばあい、性的せいてき虐待ぎゃくたいが存在そんざいしないことを想定そうていされて作つくられた文化ぶんか的てき価値かち観かんを内面ないめん化かしていればいるほど心理しんり的てきな被害ひがいは大おおきくなってしまう。こうした社会しゃかいのメッセージによる子供こどもの心理しんり的てき反応はんのうのことをFinkelhor and Browne (1985) は「烙印らくいん押おし (stigmatization)」と呼よんだ[134]。

性的せいてき虐待ぎゃくたいのトラウマの度合どあいは、その個人こじんの主観しゅかん的てき体験たいけんに依存いぞんする。そのため、ある人ひとは外部がいぶ的てきに見みればひどくトラウマティックな体験たいけんをしてもトラウマにならなかったり、ある人ひとは外部がいぶ的てきには大たいしたことでなくともトラウマになる。そのため、まれではあるものの性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけているにもかかわらずトラウマになっていない場合ばあいも存在そんざいする。だが、だからといってその行動こうどうそのものが虐待ぎゃくたい的てきでなかったということにはならない。さらに、男性だんせいに多おおいが明あきらかに性的せいてき虐待ぎゃくたいによる重度じゅうどのトラウマ症状しょうじょうを呈ていしているのにもかかわらず、自身じしんのトラウマを否認ひにんしている場合ばあいが多おおく存在そんざいすることも知しられている。

また、刺激しげきに対たいして身体しんたいが反応はんのうしてしまう場合ばあいが少すくなくない。こうした場合ばあい、女性じょせいの場合ばあいは快感かいかんを持もったことで自分じぶん自身じしんが罪深つみぶかいのではないかと思おもうことが多おおく、さらに男性だんせいの場合ばあいには自分じぶんの身体しんたいの勃起ぼっきや射精しゃせいとかいうものは自分じぶんの力ちからでコントロール出来できるものであるという自信じしんがそのまま打うち砕くだかれる。人間にんげんの身体しんたいは生理学せいりがく的てきにそのように出来できているため、これは自然しぜんな反応はんのうなのであるが、本人ほんにんたちにとって見みればこうした現象げんしょうはそのまま自己じこへの不信ふしんへと繋つながるのである。

また、大抵たいてい子供こどもは「自分じぶんに責任せきにんがある」と思おもいやすく、性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた子供こどもが親おやがおかしいことを訴うったえることはそのまま自分じぶんを訴うったえることとほぼ同おなじことになる。フロレンス・ラッシュ (1980) は「被害ひがい者しゃが加害かがい者しゃを告発こくはつすれば、自分じぶん自身じしんをも告発こくはつする事ことになる。だからこそ児童じどう性せい虐待ぎゃくたいは世界せかいでもっともよく守まもられている秘密ひみつなのである」と述のべている[135][136]。子供こどもが話はなすだろうと思おもう人ひとも多おおいが、近親きんしん姦かん（的てき行為こうい）を受うけた子供こどもの多おおくはこのために自分じぶんの受うけた被害ひがいのことを話はなすことはない。

虐待ぎゃくたいの連鎖れんさ[編集へんしゅう]

児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいは必かならず連鎖れんさするわけではないが、ベッカーの調査ちょうさによると性せい犯罪はんざいの加害かがい者しゃの52%は自分じぶん自身じしんも性せい被害ひがい者しゃであるとされている。また、同どう調査ちょうさでは中学生ちゅうがくせい時代じだいに異常いじょう行動こうどうをきたすケースは性せい犯罪はんざい者しゃの60%とされた[137]。Lisak D, Hoppre J, and Song Pの報告ほうこく (1996) では、23%の男性だんせいが自分じぶんに身体しんたい的てき・性的せいてき虐待ぎゃくたいの加害かがい体験たいけんがあることを認みとめているが、身体しんたい的てき・性的せいてき虐待ぎゃくたいの男性だんせい加害かがい者しゃの79%が身体しんたい的てき・性的せいてき虐待ぎゃくたいの被害ひがい者しゃであるとされるが、全体ぜんたいの数かずから見みれば身体しんたい的てき・性的せいてき虐待ぎゃくたいの男性だんせい被害ひがい者しゃが加害かがい者しゃになる率りつは19%であった[138]。David Skuse (2003) は、幼少ようしょう期きに性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた男児だんじ224人にんを調査ちょうさしたが、性的せいてき虐待ぎゃくたいを行おこなったのはそのうち26人にんで、また、性的せいてき虐待ぎゃくたいの加害かがい率りつを高たかめるのは「幼年ようねん期きの少すくない監督かんとく」「女性じょせいによる虐待ぎゃくたい」「家庭かてい内ないの暴力ぼうりょく」の3つの要素ようそであった[139]。

医学いがく・治療ちりょう[編集へんしゅう]

精神せいしん医学いがく[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「複雑ふくざつ性せいPTSD」を参照さんしょう

現在げんざいトラウマによる後遺症こういしょう全般ぜんぱんがPTSDという言葉ことばで流通りゅうつうしているが、性的せいてき虐待ぎゃくたいの後遺症こういしょうは愛着あいちゃくの持もち方かた、人格じんかく形成けいせいなど広範こうはんな影響えいきょうが認みとめられ、『精神せいしん障害しょうがいの診断しんだんと統計とうけいマニュアル』(DSM-IV)に載のっていたPTSDとは明あきらかに異ことなっていた。そのため、DSM-IVに載のっている戦争せんそうや事故じこなどによるものは単純たんじゅん性せいPTSDと通称つうしょうし、それに対たいしレイプ体験たいけんなど複雑ふくざつな体験たいけんによるものは複雑ふくざつ性せいPTSDと呼よぶことを治療ちりょう者しゃらは提唱ていしょうした（DSM-IV-TRでは一いち症状しょうじょうとして取とり上あげられた）。もしくはこれを指さしてDESNOS（Disorder of Extreme Stress not otherwise specified）と呼よぶ研究けんきゅう者しゃもいる。研究けんきゅう者しゃはジュディス・ハーマンやベッセル・ヴァン・デア・コークがいる。

治療ちりょう[編集へんしゅう]

精神せいしん疾患しっかん、解離かいり性せい同一どういつ性せい障害しょうがい、深刻しんこくな人格じんかく障害しょうがいのある人ひとは現実げんじつを見失みうしなっているケースもあり、治療ちりょうは困難こんなんを極きわめる。解離かいりした記憶きおくや感情かんじょうが蘇よみがえってくることや、長期ちょうきの鬱うつ、不安ふあん反応はんのうや性的せいてき強迫きょうはく観念かんねんを抑おさえるためには睡眠薬すいみんやくや抗こううつ薬やくが非常ひじょうに役やくに立たつ。

心理しんり療法りょうほうでは、外傷がいしょう的てき解離かいりの働はたらきによって未いまだ言語げんご的てきにコード化かされていない記憶きおく情報じょうほうをコード化かさせる作業さぎょうが行おこなわれる。この方法ほうほうにおいては、患者かんじゃが治療ちりょう者しゃに性的せいてき感覚かんかくを感かんじる転移てんい及および治療ちりょう者しゃが患者かんじゃに性的せいてき感覚かんかくを感かんじる逆ぎゃく転移てんいの問題もんだい、コード化かされる際さいのトラウマの再演さいえんの問題もんだいもあるが、方法ほうほう自体じたいとして間違まちがっているというのではなく、それらは治療ちりょうの手てがかりとなる。

一方いっぽう、女性じょせいのグループ治療ちりょうはジュディス・ハーマン (1992) が提唱ていしょうしている。その目標もくひょうは最初さいしょは現在げんざいの安全あんぜんを確立かくりつする事こと、その次つぎに自みずからのトラウマに焦点しょうてんを当あてる事こと、最後さいごが自己じこや他者たしゃに繋つながりを持もたせる事ことであるとしている。

また、多おおくの被害ひがいを受うけた人ひとはその回復かいふく過程かていで全すべてを虐待ぎゃくたいのせいにしようとするが、実際じっさいには全すべてが虐待ぎゃくたいのせいであるとはいえない。こういった考かんがえはトラウマに対たいし少年しょうねん少女しょうじょが多種たしゅ多様たような反応はんのうを示しめす事ことを無視むししている。さらに、トラウマがすでに過去かこのものになっている以上いじょうはそこから癒いえるということもありえない。出来できる事ことはトラウマに対応たいおうしとり続つづけている態度たいどの改善かいぜんである。

子供こどもの回復かいふく力りょく[編集へんしゅう]

幼児ようじ期きのトラウマ的てきな体験たいけんは生涯しょうがいにわたってその人ひとの人生じんせいに影響えいきょうを与あたえ続つづけるわけではない。実際じっさいに、強姦ごうかん犯はんや精神病せいしんびょうを患わずらっている人ひと、犯罪はんざいを犯おかした人ひとにこうした過去かこがある人ひとが多おおいのも事実じじつであるが、性的せいてき虐待ぎゃくたいの被害ひがいから回復かいふくする人ひとはいる。

Conte, J. R. (1985) は性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた369人にん（76%が少女しょうじょ、24%が少年しょうねん）について調しらべたが、性的せいてき虐待ぎゃくたいに伴ともなう症状しょうじょうを示しめすのは79%と多おおかった。しかし残のこりの21%は起おきておらず、どうして問題もんだいが起おこらなかったかについて調しらべられたが、その重要じゅうような因子いんしは虐待ぎゃくたいの事実じじつを認みとめ支ささえてあげた大人おとなが一人ひとりでも存在そんざいしていた事ことであった[140]。

この他ほかにも、多おおくの研究けんきゅうで秘密ひみつを打うち明あける能力のうりょくと回復かいふく力りょくとが比例ひれい関係かんけいにあることが分わかっている。

ジェンダー論ろん[編集へんしゅう]

女児じょじ・少女しょうじょに対たいする性的せいてき虐待ぎゃくたい[編集へんしゅう]

Graham (1994) は、男性だんせいに強つよく依存いぞんしながらも男性だんせいに対たいして恐怖きょうふを抱いだくような社会しゃかい一般いっぱんに考かんがえられている女性じょせい像ぞうというのは、性的せいてき虐待ぎゃくたいなどのトラウマを長期ちょうきにわたり受うけてきた女性じょせいの特徴とくちょうとも合致がっちすると主張しゅちょうし、人質ひとじち事件じけんの被害ひがい者しゃが犯人はんにんに愛着あいちゃくを示しめしてしまうストックホルム症候群しょうこうぐんの概念がいねんはより広範こうはんに当あてはまるとして「社会しゃかい的てきストックホルム症候群しょうこうぐん」と名付なづけている[141]。

Perry BD (2000) によると生物せいぶつ学がく的てきに男児だんじの場合ばあいはトラウマを負おった場合ばあい過か覚醒かくせい状態じょうたいを起おこす可能かのう性せいが女児じょじより高たかいのに対たいし、女児じょじの場合ばあいは男児だんじよりも解離かいりを起おこしやすいと報告ほうこくしている[142]。

男児だんじ・少年しょうねんに対たいする性的せいてき虐待ぎゃくたい[編集へんしゅう]

「少年しょうねんへの性的せいてき虐待ぎゃくたい」および「女性じょせいによる性的せいてき虐待ぎゃくたい」も参照さんしょう

男性だんせいが性せい被害ひがいに遭あう率りつは女性じょせいよりも少すくないが、女性じょせい以上いじょうに被害ひがいに対たいして認識にんしきしようとしていないケースが多おおく見みられる。このため、彼かれらは本当ほんとうにトラウマを負おっていないのか、それともただ否認ひにんしているだけなのか、多おおく疑うたがわれる。また、男性だんせい女性じょせい双方そうほうから多おおく被害ひがいを受うける（Lisak.et.alの報告ほうこくでは、加害かがい者しゃは男おとこ：女おんな＝2：1）が、男性だんせいからの方ほうが報告ほうこくされやすい傾向けいこうがある。

加害かがい者しゃの更生こうせいと更生こうせいプログラムの効果こうか[編集へんしゅう]

性せい犯罪はんざい者しゃの調査ちょうさとしては、2004年ねん3月がつのカナダの研究けんきゅう結果けっかで、1980年代ねんだいの性せい犯罪はんざい者しゃのうち治療ちりょうプログラムを行おこなった人ひとの累犯るいはん率りつは約やく21.1%で、参加さんかしていない場合ばあいは21.8%であった[143]。だが、1994年ねんにアメリカの15の州しゅうの調査ちょうさによると、3年ねん以内いないにおける性せい犯罪はんざい以外いがいの再さい逮捕たいほ率りつは69%なのに対たいし、性せい犯罪はんざい者しゃの再さい逮捕たいほ率りつは43%であって、性せい犯罪はんざい率りつに限かぎった場合ばあいならば約やく4倍ばいではあるが、性せい犯罪はんざい者しゃの累犯るいはん率りつ自体じたいは他たの犯罪はんざいと比くらべ突出とっしゅつして高たかいわけではない[144]。また、1994年ねんに刑務所けいむしょより釈放しゃくほうされた15の州しゅうでの児童じどう性せい虐待ぎゃくたい者しゃ約やく4300人にんが再ふたたび児童じどう性せい虐待ぎゃくたいで逮捕たいほされた例れいは3年ねん以内いないで約やく3.3%である[145]。

事例じれい[編集へんしゅう]

「Category:児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたい事件じけん」および「Category:児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいで有罪ゆうざい判決はんけつを受うけた人物じんぶつ」も参照さんしょう

脚注きゃくちゅう・出典しゅってん[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
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