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心筋しんきんしょう

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心筋しんきんしょう(しんきんしょう、えい: cardiomyopathy)は、しん機能きのう障害しょうがいともな心筋しんきん疾患しっかん肥大ひだいがた拡張かくちょうがた拘束こうそくがた不整脈ふせいみゃくばらせいみぎしつ心筋しんきんしょう分類ぶんるい不能ふのうがた分類ぶんるいされる。心臓しんぞう移植いしょくがこの病気びょうきにとって非常ひじょう有効ゆうこうであることがおおいことから注目ちゅうもくびるようになった疾患しっかんである。

歴史れきし

心筋しんきんしょうすうおおくの名前なまえばれてきたが、最初さいしょ解剖かいぼう症例しょうれい報告ほうこく1891ねんのクレールによるものとされる[1]。その世界せかい保健ほけん機関きかん (WHO) と国際こくさい心臓しんぞう連合れんごう (ISFC) の合同ごうどう委員いいんかいは1980ねん心筋しんきんしょう原因げんいん不明ふめい心筋しんきん疾患しっかん定義ていぎ拡張かくちょうがた (DCM, dilated cardiomyopathy)・肥大ひだいがた (HCM, hypertrophic cardiomyopathy)・拘束こうそくがた (RCM, restrictive cardiomyopathy) に分類ぶんるいし、心筋しんきん疾患しっかんでも原因げんいんまたは全身ぜんしん疾患しっかんとの関連かんれんあきらかなものと厳密げんみつ区別くべつした[2](なお、この分類ぶんるいでも分類ぶんるいしきれないものあるので分類ぶんるい不能ふのう心筋しんきんしょうという項目こうもくもある)。しかし、従来じゅうらい不明ふめいとされた心筋しんきんしょう原因げんいん成因せいいん示唆しさする報告ほうこく相次あいついだため、さき合同ごうどう委員いいんかい心筋しんきんしょうしん機能きのう障害しょうがいともな心筋しんきん疾患しっかんひろ定義ていぎなお従来じゅうらいの3分類ぶんるいくわえ、催不整脈せいみゃくせいみぎしつ心筋しんきんしょう特定とくてい心筋しんきんしょう範疇はんちゅうもうけた[3]

拡張かくちょうがた心筋しんきんしょう (DCM)

しんしつとともにしばしば心房しんぼううち容積ようせき増加ぞうかともなしん拡大かくだい (cardiac enlargement) と収縮しゅうしゅく機能きのう障害しょうがい特徴とくちょうとする心筋しんきん病気びょうきであり、不整脈ふせいみゃくによる突然とつぜん心不全しんふぜんをもたらす。初期しょきにはしん拡大かくだいによってポンプ機能きのう自体じたい正常せいじょう範囲はんいたもたれており、βべーたブロッカーアンギオテンシン変換へんかん酵素こうそ阻害そがいやくあるいはアンギオテンシンII受容じゅようたいブロッカー利尿りにょうやくなどのくすりわせにより進行しんこうおくらせることが可能かのうである。しかし、代償だいしょう破綻はたん末期まっき重症じゅうしょう心不全しんふぜんになると有効ゆうこう治療ちりょうやくはなく心臓しんぞう移植いしょく必要ひつようとする。女性じょせいより男性だんせいのほうがじゅうあつし傾向けいこうがみられる。

日本にっぽんでは、特発とくはつせい拡張かくちょうがた心筋しんきんしょう(とくはつせいかくちょうがたしんきんしょう、Idiopathic DCM)として特定とくてい疾患しっかん治療ちりょう研究けんきゅう事業じぎょう対象たいしょう疾患しっかん指定していされている。

症状しょうじょう所見しょけん

初期しょき段階だんかいでは自覚じかく症状しょうじょうがあまりなく、えき疲労ひろうかん倦怠けんたいかん動作どうさかる動悸どうきこる程度ていどであるため、発見はっけんおくれてしまうケースがある。病状びょうじょう進行しんこうすると浮腫ふしゅ湿性しっせい咳嗽がいそう静脈じょうみゃく怒張どちょうなどの身体しんたい症状しょうじょうともなじゅうあつうっけつせい心不全しんふぜん治療ちりょう抵抗ていこうせい不整脈ふせいみゃくこす。診断しんだんされてからの5ねん生存せいぞんりつは54%、10ねん生存せいぞんりつは36%とされていたが、最近さいきんでは治療ちりょう進歩しんぽにより5ねん生存せいぞんりつは76%と向上こうじょうしている[4]。しかし突然とつぜんもまれではない。はげしい運動うんどう心臓しんぞうおおきな負担ふたんいることとなり、きゅう心臓しんぞう発作ほっさこす可能かのうせいがあるためけるべきとされている。

心電図しんでんずではPなみ持続じぞく時間じかん延長えんちょうみとめられる。

原因げんいん発症はっしょうメカニズム

拡張かくちょうがた心筋しんきんしょうは、以前いぜんから、ウイルス、アルコール、毒物どくぶつ免疫めんえき傷害しょうがいなど遺伝いでんてき攻撃こうげきによってもたらされることがられていた。原因げんいん不明ふめいなものは”特発とくはつせい拡張かくちょうがた心筋しんきんしょうばれていたが、サルコメア蛋白質たんぱくしつ細胞さいぼう骨格こっかく蛋白質たんぱくしつすじ形質けいしつまくおよびかくまく蛋白質たんぱくしつ遺伝子いでんし突然変異とつぜんへんい拡張かくちょうがた心筋しんきんしょうおおきな原因げんいんであることが最新さいしん研究けんきゅうあきらかにされている[5]。2013ねん時点じてんで、ほんしょう症例しょうれいのおよそ3わり遺伝子いでんし突然変異とつぜんへんい原因げんいんであると推定すいていされている。遺伝子いでんし突然変異とつぜんへんい拡張かくちょうがた心筋しんきんしょうこすメカニズムをあきらかにするため、サルコメア蛋白質たんぱくしつであるミオシンアクチントロポニントロポミオシンかんして、くみ変異へんい蛋白質たんぱくしつ分子ぶんし遺伝子いでんし改変かいへん動物どうぶつモデルをもちいた研究けんきゅう活発かっぱつおこなわれている。ミオシン変異へんいサルコメア収縮しゅうしゅく機構きこうそのものを傷害しょうがいし(i.e.,アクチン-ミオシン相互そうご作用さよう低下ていかをもたらす)、アクチントロポニントロポミオシン変異へんい心筋しんきん収縮しゅうしゅくのカルシウムによる調節ちょうせつ機構きこう傷害しょうがいする(i.e.,ミオフィラメントカルシウム感受性かんじゅせい低下ていかをもたらす)ことがあきらかにされている[6]一方いっぽう細胞さいぼう骨格こっかく蛋白質たんぱくしつ細胞さいぼうまく貫通かんつう蛋白質たんぱくしつ突然変異とつぜんへんいサルコメア発生はっせいするちから隣接りんせつ心筋しんきん細胞さいぼうへの伝達でんたつ傷害しょうがいし、かくまく蛋白質たんぱくしつ突然変異とつぜんへんい心筋しんきん細胞さいぼうくわわるちからによる遺伝子いでんし発現はつげん機構きこう傷害しょうがいによって拡張かくちょうがた心筋しんきんしょうをもたらすのでないかと推測すいそくされている[7]遺伝いでんせい拡張かくちょうがた心筋しんきんしょう研究けんきゅうからはっきりした重要じゅうようなことは、心筋しんきん細胞さいぼうにはたんにその収縮しゅうしゅく機能きのう内因ないいんてき低下ていかするだけでしん拡大かくだいによって代償だいしょうするメカニズムがはじめからプログラムされているということである。皮肉ひにくなことに、その代償だいしょうメカニズムがはたらくことによって致死ちしてき不整脈ふせいみゃくによる突然とつぜんのリスクがたかまり、その破綻はたんによって末期まっき心不全しんふぜんがもたらされるものと推測すいそくされる。現在げんざい治療ちりょうやくとしてもちいられるβべーたブロッカーアンギオテンシン変換へんかん酵素こうそ阻害そがいやくアンギオテンシンII受容じゅようたいブロッカーは、短期たんきてきには収縮しゅうしゅく機能きのうたかめるが長期ちょうきてきには有害ゆうがいな”細胞さいぼうないcAMPとカルシウムの増加ぞうかかいする”代償だいしょう反応はんのうおさえることでその破綻はたんおくらせているようにえる。細胞さいぼうないcAMPとカルシウムの増加ぞうかによらず収縮しゅうしゅく機能きのう改善かいぜんすることができる新規しんき強心きょうしんやくであるカシウム感受性かんじゅせい増強ぞうきょうやくミオシン活性かっせい増強ぞうきょうやくなどは、このような長期ちょうきてきには有害ゆうがい代償だいしょう反応はんのうプログラムの発動はつどうおさえてよりたか有効ゆうこうせいしめすことが期待きたいされる[8][9]

治療ちりょう

心臓しんぞう移植いしょく
1967ねん世界せかいはじめてヒトからヒトへの心臓しんぞう移植いしょくおこなわれ、現在げんざいでは安定あんていした成果せいかしめしている。そのため、ほん疾患しっかん根本こんぽん治療ちりょうとされる。おも有用ゆうようてん以下いかとおり。
  • 唯一ゆいいつ根本こんぽん治療ちりょうである。
  • 長年ながねん研究けんきゅう成果せいかにより技術ぎじゅつ安定あんていしている。
  • 劇的げきてき回復かいふくのぞめる。
しかし、とく日本にっぽん国内こくないにおいて以下いか理由りゆうにより移植いしょく実施じっしすくない。
  • 世界せかいてき心臓しんぞう提供ていきょうするドナーが心臓しんぞう移植いしょく必要ひつようとする患者かんじゃくらべてすくない。
  • 心臓しんぞう移植いしょく条件じょうけんとして心臓しんぞう提供ていきょうしゃ脳死のうし絶対ぜったい条件じょうけんとされるが、現在げんざいもまだ脳死のうしをヒトのとするかはひとによりことなる。
  • 臓器ぞうき移植いしょくほう改正かいせいされたことにより、子供こどもからの心臓しんぞう提供ていきょう法的ほうてき可能かのうとなった。しかし、子供こども臓器ぞうき提供ていきょうすることにたいする戸惑とまどいは依然いぜんとしてつよく、心臓しんぞう提供ていきょうけることが非常ひじょうむずかしい。
  • 移植いしょく成功せいこうしても一生いっしょう免疫めんえき抑制よくせいざい摂取せっしゅしなくてはならず、免疫めんえきりょく低下ていか感染かんせんしょうにかかりやすくなる。
  • 医療いりょう保険ほけん対象たいしょうがい
内科ないかてき療法りょうほう
近年きんねんアンジオテンシン変換へんかん酵素こうそ阻害そがいやくACE阻害そがいやく)、アンジオテンシン受容じゅようたい阻害そがいやくベータ遮断しゃだんやくなどが適用てきようされ効果こうかげている。遠隔えんかく生存せいぞんりつ比較的ひかくてきたかい。しかし、体質たいしつ症状しょうじょう進行しんこう状態じょうたいにより上記じょうきくすり期待きたいした効果こうかげない場合ばあいもある。また、これらは根治こんじ療法りょうほうではなく進行しんこうおくらせることしかできない。
補助ほじょ人工じんこう心臓しんぞう使用しよう
心臓しんぞう移植いしょくまでの症状しょうじょう維持いじ目的もくてきとするみと、心臓しんぞう移植いしょく待機たいき目的もくてきとせず補助ほじょ人工じんこう心臓しんぞう使つかつづけていく目的もくてきでのみの2とおりの治療ちりょうおこなわれる。心臓しんぞう移植いしょくまでの症状しょうじょう維持いじとしての補助ほじょ人工じんこう心臓しんぞう2004ねん医療いりょう保険ほけん適用てきようとなった。移植いしょく目的もくてきでなく補助ほじょ人工じんこう心臓しんぞう使つかつづける選択せんたくは、おも高齢こうれいのため手術しゅじゅつえうる体力たいりょくがない患者かんじゃたいしてとられることがおおい。補助ほじょ人工じんこう心臓しんぞう使つかつづける目的もくてきでの世界せかいはつ手術しゅじゅつは、1995ねん10月にイギリス高齢こうれいのため移植いしょく手術しゅじゅつおこなうことが困難こんなんとされた患者かんじゃほどこされた。
バチスタ手術しゅじゅつ
ブラジルじんランダス・J・V・バチスタによって1980年代ねんだい考案こうあんされた心臓しんぞう外科げか手術しゅじゅつで、正式せいしきには「ひだりしつ縮小しゅくしょう形成けいせい手術しゅじゅつ」とばれる。直接ちょくせつ肥大ひだいした心臓しんぞうひだり心房しんぼうの3ぶんの1程度ていど切除せつじょ心臓しんぞうかたちととのえるじゅつである。心臓しんぞう移植いしょく比較ひかくして以下いか有効ゆうこうてんがある。
  • 患者かんじゃ自身じしん心臓しんぞう使つかつづけるので、心臓しんぞう移植いしょく最大さいだい問題もんだいであるドナーの不足ふそくがまったく影響えいきょうしない。また、免疫めんえき抑制よくせいざい不要ふようであるため免疫めんえきりょく低下ていかがない。
  • 15さい未満みまんの患児にたいしてもおこなうことができる。
  • 医療いりょう保険ほけん対象たいしょうであり安価あんかにすむ。
しかし、以下いか問題もんだいてんがある。
  • 世界せかいてきおこなわれるようになったのは心臓しんぞう移植いしょくくらべてごく最近さいきんであり、研究けんきゅう途上とじょうである。
  • 手術しゅじゅつひだり心房しんぼうふたた拡大かくだいするかどうか、またどの程度ていど期間きかんをおいてさい拡大かくだいこるのかは統計とうけい不足ふそくであり不明ふめいである。
  • 手術しゅじゅつ自体じたい非常ひじょうむずかしくリスクがたかい。
  • 遠隔えんかく生存せいぞんりつ心臓しんぞう移植いしょくくらべて若干じゃっかんひくい。
確定かくてい要素ようそおおいが、心臓しんぞう移植いしょく代替だいたい手術しゅじゅつとしては有効ゆうこうという見解けんかい一般いっぱんてきである。日本にっぽん国内こくないでは1996ねん12月2にち心臓しんぞう外科げか須磨すまひさぜんによってはじめて実行じっこうされた。
ひだりしつ縮小しゅくしょう手術しゅじゅつ (Overlapping cardiac volume reduction operation)
バチスタ手術しゅじゅつ遠隔えんかく心不全しんふぜん回避かいひりつひくく、術後じゅつご3ねん心不全しんふぜん回避かいひりつは25%前後ぜんご報告ほうこくされている。[よう出典しゅってん]ひだり心室しんしつ切除せつじょしてしまうため、しん機能きのう低下ていかしてしまうのがその原因げんいんとされる。そこで、バチスタ手術しゅじゅつ改良かいりょうして発案はつあんされた手術しゅじゅつひだりしつ縮小しゅくしょう手術しゅじゅつである。これは左前ひだりまえぎょうえだ沿ってひだり心室しんしつ切開せっかいし、それをひだりこころかべかたちわせる手術しゅじゅつである。心臓しんぞう提供ていきょうするドナーがすくない日本にっぽんでは今後こんごバチスタ手術しゅじゅつならんで研究けんきゅうすすめられていくものと予想よそうされる。しかし、症例しょうれいすうがごくわずかで経過けいかについては心臓しんぞう移植いしょくにくらべて不明ふめいてんおおい。また、心臓しんぞう外科げか要求ようきゅうされる技術ぎじゅつレベルは非常ひじょうたかく、手術しゅじゅつにおける危険きけん治療ちりょうほうくらべてたかい。
  • バチスタ手術しゅじゅつたいする、患者かんじゃ編成へんせい部位ぶい特定とくていようする時間じかんはぶいたりすることができるオーバーラッピングほうというじゅつしき存在そんざいするがアメリカでは禁止きんしされている。
遺伝子いでんし治療ちりょう
現在げんざい動物どうぶつ実験じっけん段階だんかいである。ヒトへの治療ちりょうおこなわれた症例しょうれい報告ほうこくされていない。特発とくはつせい拡張かくちょうがた心筋しんきんしょう先天的せんてんてき原因げんいん治癒ちゆしようというこころみである。積極せっきょくてき治療ちりょうほう心臓しんぞう移植いしょく)をおこなうことがむずかしい患者かんじゃへの応用おうよう期待きたいされている。
心筋しんきんシート
患者かんじゃ自身じしん筋肉きんにくを5 - 10g程度ていど摘出てきしゅつし、それを培養ばいようしてシートじょうにして患部かんぶひだり心室しんしつ)にける治療ちりょうほうである。その心筋しんきんシートをもちいてよわった心臓しんぞうのポンプ機能きのう回復かいふくしようというこころみである。動物どうぶつ実験じっけんではポンプ機能きのう回復かいふくされることが確認かくにんされている。欧米おうべいではすでに実施じっしされているが、じゅうあつし不整脈ふせいみゃくなどの副作用ふくさよう報告ほうこくされている。日本にっぽん国内こくないでは2007ねん5がつに、大阪大おおさかだいさわ芳樹よしき教授きょうじゅによって実施じっしされた。

診療しんりょう

肥大ひだいがた心筋しんきんしょう (HCM)

心筋しんきんしょう
概要がいよう
診療しんりょう 循環じゅんかんがく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10 I42.1-I42.2
ICD-9-CM 425.4
OMIM 192600
DiseasesDB 6373
MedlinePlus 000192
eMedicine med/290 ped/1102 radio/129
Patient UK 心筋しんきんしょう
MeSH D002312

500にん1人ひとり発症はっしょうするよくある病気びょうきであり、わかいアスリートなど若者わかもの突然とつぜんしん停止ていしによくある原因げんいんである。男女だんじょられない。 心筋しんきん細胞さいぼう肥大ひだいのため心室しんしつかべあつくなるが心室しんしつのサイズはしばしば正常せいじょうである。ほんしょう心筋しんきん肥大ひだいによるひだり心室しんしつ拡張かくちょう障害しょうがい主体しゅたいである。拡張かくちょう短縮たんしゅくすることにより、心室しんしつ血液けつえき充分じゅうぶんながまなくなる。その結果けっか全身ぜんしんながれる血液けつえきりょう不足ふそくしたり、心室しんしつ心房しんぼうへの逆流ぎゃくりゅうこることによりひいてははい水腫すいしゅいたって呼吸こきゅう困難こんなんていしたりする。病態びょうたい進行しんこうするとしばしば拡張かくちょうがた心筋しんきんしょうさまになることがあり、拡張かくちょうしょう肥大ひだいがた心筋しんきんしょうばれる。

心房しんぼうほそどう合併がっぺいおおい。

分類ぶんるい

大動脈だいどうみゃくべん付近ふきんかべ肥厚ひこうによる閉塞へいそくせい肥大ひだいがた心筋しんきんしょう (HOCM) と、こころとんがかべ肥厚ひこうによる閉塞へいそくせい肥大ひだいがた心筋しんきんしょう (HNCM) に分類ぶんるいされる。HOCMの基本きほん病態びょうたいは、しん流出りゅうしゅつ狭窄きょうさくによる心拍しんぱくりょう低下ていかであり、一方いっぽう、HNCMの基本きほん病態びょうたいは、心室しんしつすじ肥大ひだいによるひだりしつ拡張かくちょうのう低下ていかおよび不整脈ふせいみゃくである。欧米おうべいでは前者ぜんしゃおおいが、日本にっぽんでは後者こうしゃ比較的ひかくてきおおい。また、肥大ひだいしんとんが限局げんきょくしたapical HCMばれる病態びょうたい報告ほうこくされている。はつ報告ほうこく日本にっぽんでなされており、また日本人にっぽんじんおおいとされている。

これらの研究けんきゅう結果けっか現在げんざいでは、心筋しんきん異常いじょう肥大ひだいこそがHCMの本質ほんしつであり、かく分類ぶんるいは、その肥大ひだいする部位ぶいによって、ひだりしつ流出りゅうしゅつ狭窄きょうさくきるかかにぎないと認識にんしきされるようになっている。

症状しょうじょう所見しょけん (HCM)

臨床りんしょう症状しょうじょう

各種かくしゅ検査けんさ所見しょけん

閉塞へいそくせい肥大ひだいがた心筋しんきんしょうにおいては、下記かきのような所見しょけんられる。

聴診ちょうしん
胸骨きょうこつひだりえん だい3、4肋間ろっかんからしんとんが中心ちゅうしんとして、収縮しゅうしゅく せい雑音ざつおん、IVおん聴取ちょうしゅする。
心電図しんでんず
ひだりしつ肥大ひだい異常いじょうQなみ、ST-T変化へんか巨大きょだい陰性いんせいTなみ(apical HCMの特徴とくちょう)がられる。ただし、HCMに特有とくゆう所見しょけんはなく、むしろ、自覚じかく症状しょうじょうとぼしいわりに、心電図しんでんずじょう変化へんか派手はでであることが、HCMの特徴とくちょうえる。
頚動脈けいどうみゃく
みねせいみゃく(pulsus bisferiens:spike and domeがた)がみとめられる。大動脈だいどうみゃくべん閉鎖へいさ不全ふぜんしょうみねせいみゃくとはことなる。急激きゅうげきがりのあと、収縮しゅうしゅく中期ちゅうきから後期こうきにゆるやかな2つみね形成けいせいする。
しんエコー
非対称ひたいしょうせいしんしつちゅうへだた肥厚ひこう (ASH)
そうぼうべんまえとんが収縮しゅうしゅく前方ぜんぽう運動うんどう (SAM)
大動脈だいどうみゃくべん収縮しゅうしゅく中期ちゅうき はん閉鎖へいさ
などがられる。
心臓しんぞうカテーテル検査けんさ
ひだりしつ拡張かくちょう末期まっきあつ (LVEDP) の上昇じょうしょう特徴とくちょうてきである。
ひだりしつ流入りゅうにゅう流出りゅうしゅつ収縮しゅうしゅくあつ較差かくさ(20mmHg以上いじょう)がみとめられる。
病理びょうりがく検査けんさ
肥大ひだいした心筋しんきん細胞さいぼうられる。これらの配列はいれつにおいては、えだじょうぶんえだ渦巻うずまじょうなどの錯綜さくそう配列はいれつ特徴とくちょうてきである。錯綜さくそう配列はいれつは、肥大ひだいしたしんしつちゅうへだた中心ちゅうしん分布ぶんぷする。

原因げんいん発症はっしょうメカニズム (HCM)

通常つうじょう遺伝いでんせいであり、ほんしょう症例しょうれいのおよそ7わりつね染色せんしょくたい優性ゆうせい遺伝いでん形式けいしきをとる遺伝子いでんし変異へんい原因げんいんである。拡張かくちょうがた心筋しんきんしょう同様どうようミオシンアクチントロポニントロポミオシンをはじめとするサルコメア蛋白質たんぱくしつ遺伝子いでんし突然変異とつぜんへんいあきらかにされている[10]カルシウムによる収縮しゅうしゅく制御せいぎょかかわるトロポニントロポミオシン遺伝子いでんし突然変異とつぜんへんいミオフィラメントカルシウム感受性かんじゅせい増加ぞうかさせる。これは、これらの遺伝子いでんしにおける拡張かくちょうがた心筋しんきんしょうこす変異へんいがカルシウム感受性かんじゅせい低下ていかさせることとぎゃくであり、ミオフィラメントカルシウム感受性かんじゅせい増加ぞうかによる収縮しゅうしゅく機能きのう亢進こうしんあるいは弛緩しかん機能きのう低下ていか肥大ひだいがた心筋しんきんしょうをもたらしているとかんがえられる[11][12]高血圧こうけつあつよわいによっても時間じかんをかけて発症はっしょうし、糖尿とうにょうびょう甲状腺こうじょうせん疾患しっかんなどのほか病気びょうき原因げんいんとなる。

治療ちりょう (HCM)

最大さいだい問題もんだいである、突然とつぜん予防よぼうさい重点じゅうてんとなる。

過激かげき運動うんどうけ、また、心筋しんきん拡張かくちょうのう改善かいぜんするためと、心筋しんきん負荷ふか軽減けいげんするために、βべーた遮断しゃだんやく使つかわれる。しかし、喘息ぜんそく合併がっぺいしている場合ばあいのようにβべーた遮断しゃだんやく禁忌きんき症例しょうれいにはカルシウム拮抗きっこうざいなどがもちいられる。大動脈だいどうみゃくべん狭窄きょうさくそうぼうべん逆流ぎゃくりゅう高度こうど場合ばあいには、しんしつちゅうへだた切除せつじょじゅつなどの外科げかてき手術しゅじゅつおこなう。場合ばあいによっては突然とつぜん予防よぼうのためがたじょほそどう必要ひつようになる。

拘束こうそくがた心筋しんきんしょう (RCM)

心室しんしつ収縮しゅうしゅく機能きのう正常せいじょうだがひだり心室しんしつかたく、拡張かくちょう問題もんだいがある。このてんでは肥大ひだいがた心筋しんきんしょうているが肥大ひだい拡大かくだいとうられないてんことなる。アクチンミオシントロポニン遺伝子いでんし突然変異とつぜんへんい発症はっしょう関与かんよしていることがわかっている[13]

不整脈ふせいみゃくばらせいみぎしつ心筋しんきんしょう

みぎ心室しんしつ心筋しんきん脱落だつらくし、脂肪しぼう組織そしきまたは線維せんい脂肪しぼう組織そしき置換ちかんする。

分類ぶんるい不能ふのうがた心筋しんきんしょう

上記じょうき4がたのいずれにも分類ぶんるいされない。

  • たこつぼ心筋しんきんしょう
    • ストレスなどにより、ひだりしつこころとんが収縮しゅうしゅくしなくなり、ひだりしつが「たこつぼ」のような形態けいたいていするもの。良好りょうこうなものがおおい。カテコラミンとの関与かんよ示唆しさされている。

脚注きゃくちゅう

  1. ^ Krehl L. Beitrag zur Kenntnis der idiopathischen Herzumuskelerkrankungen. Dtsch Arch Klin Med 1891;48:414-431.
  2. ^ Report of WHO/ISFC taskforce on the definition and classification of cardiomyopathies. Brit Heart J 1980;44:672-673. PMID 7459150
  3. ^ Richardson P, et al. Report of the 1995 World Health Organization/International Society and Federation of Carrdiology task force on the definition and classification of cardiomyopathies. Circulation 1996;93:841-842. PMID 8598070
  4. ^ 難病なんびょう情報じょうほうセンター|特発とくはつせい拡張かくちょうがた(うっけつがた心筋しんきんしょう公費こうひ対象たいしょう
  5. ^ Clinical Cardiogenetics, Baars, H.F.; van der Smagt, J.J. (Eds.) Springer, 2011.
  6. ^ Morimoto S. Sarcomeric proteins and inherited cardiomyopathies. Cardiovasc Res. 2008; 77: 659–666. PMID 18056765
  7. ^ Fatkin D, Graham RM. Molecular mechanisms of inherited cardiomyopathies. Physiol Rev 2002;82:945–980. PMID 12270949
  8. ^ R. John Solaro. Translational medicine with a capital T, troponin T, That is. Circulation Research, 2007; 101: 114-115. PMID 17641232
  9. ^ Teerlink et al., Dose-dependent augmentation of cardiac systolic function with the selective cardiac myosin activator, omecamtiv mecarbil: a first-in-man study. Lancet, 2011; 378(9792):667-675. PMID 21856480
  10. ^ Clinical Cardiogenetics, Baars, H.F.; van der Smagt, J.J. (Eds.) Springer, 2011.
  11. ^ Fatkin D, Graham RM. Molecular mechanisms of inherited cardiomyopathies. Physiol Rev 2002;82:945–980. PMID 12270949
  12. ^ Morimoto S. Sarcomeric proteins and inherited cardiomyopathies. Cardiovasc Res. 2008; 77: 659–666. PMID 18056765
  13. ^ Clinical Cardiogenetics, Baars, H.F.; van der Smagt, J.J. (Eds.) Springer, 2011.

参考さんこう文献ぶんけん

  • 河合かわい忠一ただかず心筋しんきんしょうはなし中央公論ちゅうおうこうろんしんしゃ 2003ねん ISBN 4-12-101722-6
  • 日本にっぽん獣医じゅうい病理びょうり学会がっかいへん動物どうぶつ病理びょうりがく各論かくろんぶんえいどう出版しゅっぱん 1998ねん ISBN 4-8300-3162-X
  • 日本にっぽん獣医じゅういない科学かがくアカデミーへん獣医じゅういない科学かがくしょう動物どうぶつへん)』 ぶんえいどう出版しゅっぱん 2005ねん ISBN 4-8300-3200-6

関連かんれん項目こうもく

外部がいぶリンク

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