ウルバヌス2世せい (ローマ教皇きょうこう)

福ぶく者しゃウルバヌス2世せい
第だい159代だいローマ教皇きょうこう
教皇きょうこう就任しゅうにん	1088年ねん3月がつ
教皇きょうこう離任りにん	1099年ねん7月がつ29日にち
先代せんだい	ウィクトル3世せい
次代じだい	パスカリス2世せい
個人こじん情報じょうほう
出生しゅっしょう	1042年ねん フランス王国おうこく、シャンパーニュ伯はく領りょう、ラジュリー
死去しきょ	1099年ねん7月がつ29日にち 神かみ聖きよしロろーマ帝国まていこく、教皇きょうこう領りょう、ローマ
その他たのウルバヌス

ウルバヌス2世せい（Urbanus II, 1042年ねん - 1099年ねん7月がつ29日にち）は、11世紀せいきのローマ教皇きょうこう（在位ざいい：1088年ねん - 1099年ねん）。福ぶく者しゃ。本名ほんみょうラゲリウスのオド（羅ら: Odo Lageriae）またはウード・ド・シャティヨン（仏ふつ: Eudes de Châtillon）。グレゴリウス7世せいによって引ひき立たてられ、その遺志いしをついで教会きょうかい改革かいかくを達成たっせいした。1095年ねんのクレルモン教会きょうかい会議かいぎにおいて、第だい1回かい十字軍じゅうじぐんの派遣はけんを呼よびかけた人物じんぶつとしても知しられる。

生涯しょうがい

ラゲリウスのオドはフランスの地方ちほう貴族きぞくシャティヨン家か（同家どうけからはのちに第だい2回かい十字軍じゅうじぐんに参加さんかしてアンティオキア公こうとなったルノー・ド・シャティヨンが出でている）に生うまれ、聖職せいしょく者しゃになるべく教育きょういくを受うけた。ランスでケルンのブルーノに学まなび、クリュニー修道院しゅうどういんに入はいった。院長いんちょうを務つとめたあと、クリュニーとかかわりがあった教皇きょうこうグレゴリウス7世せいの招まねきでローマに赴おもむき、オスティアの司教しきょう枢機卿すうききょうとなった。

グレゴリウス7世せいのもとで推進すいしんされた教会きょうかいの自己じこ改革かいかく（グレゴリウス改革かいかく）においては教皇きょうこうの右腕うわんとして活躍かつやくし、特とくに教皇きょうこう代理だいりとしてのドイツでの外交がいこう政策せいさくにおいて卓抜たくばつした手腕しゅわんを示しめした。オドが晴はれて教皇きょうこうに選出せんしゅつされたのは、ウィクトル3世せいの死後しごであった。

ウルバヌス2世せいを称しょうした新しん教皇きょうこうは、グレゴリウス7世せいの推おし進すすめた教会きょうかい改革かいかくの路線ろせんを忠実ちゅうじつに踏襲とうしゅうすることを表明ひょうめいし、優すぐれた外交がいこう手腕しゅわんによって実際じっさいに多おおくの改革かいかくを達成たっせいした。自己じこの改革かいかくを進すすめるために、師しのブルーノをローマに招聘しょうへいした。就任しゅうにん当初とうしょこそローマにおける対立たいりつ教皇きょうこうクレメンス3世せいの存在そんざいに悩なやまされていたが、一連いちれんの教会きょうかい会議かいぎで多おおくの司教しきょうの賛同さんどうを集あつめ、アマルフィ、ベネヴェント、トロワといった諸しょ都市としが教皇きょうこうの改革かいかく路線ろせんの成果せいかを支持しじしたことで、対立たいりつ教皇きょうこうの存在そんざいを圧倒あっとうした。聖職せいしょく売買ばいばいの禁止きんし、司祭しさいの独身どくしん制せいの徹底てってい、俗ぞく権けんからの叙任じょにん権けんの奪回だっかい（叙任じょにん権けん闘争とうそう）を教会きょうかい改革かいかくの柱はしらとして強力きょうりょくに推進すいしん、実際じっさいに教会きょうかいの綱紀こうき粛正しゅくせいという目めに見みえる成果せいかを上あげていた。

また、グレゴリウス7世せい以来いらい続つづいていた神聖しんせいローマ皇帝こうていハインリヒ4世せいとの抗こう争そうも継続けいぞくした。ハインリヒ4世せいに対抗たいこうするため、トスカーナ女おんな伯はくマティルダとバイエルン公こう子こヴェルフ5世せいの結婚けっこんをとりもち、ハインリヒ4世せいの妻つまアーデルハイトと長男ちょうなんコンラートのハインリヒ4世せいへの反乱はんらんを支援しえんした。また、離婚りこん問題もんだいからフランス王おうフィリップ1世せいを破門はもんしている。

ウルバヌス2世せいの以上いじょうのような改革かいかく達成たっせいにおける業績ぎょうせきはあまり知しられていないが、1095年ねん11月にクレルモンで行おこなわれたクレルモン教会きょうかい会議かいぎの最終さいしゅう日びに呼よびかけた第だい1回かい十字軍じゅうじぐんの派遣はけんを訴うったえる演説えんぜつは非常ひじょうによく知しられている。1071年ねんのマラズギルトの戦たたかい以降いこうセルジューク朝あさに圧倒あっとうされつつあった東ひがしロろーマ帝国まていこくの皇帝こうていアレクシウス1世せいからの援助えんじょ要請ようせいを奇貨きかとして、1095年ねんのピアチェンツァ教会きょうかい会議かいぎで援軍えんぐんの派遣はけんを提案ていあんしたのであるが、結果けっかとして十字軍じゅうじぐんによる東ひがし地中ちちゅう海域かいいきの侵略しんりゃく・破壊はかい・虐殺ぎゃくさつに道みちを開ひらいた。クレルモン教会きょうかい会議かいぎにおいて、彼かれはフランス人じんたちに対たいして、聖地せいちをサラセン人じんの手てから奪回だっかいしようと呼よびかけ、「乳ちちと蜜みつの流ながれる土地とちカナン」という聖書せいしょ由来ゆらいの表現ひょうげんを引用いんようして軍隊ぐんたいの派遣はけんを訴うったえた。彼かれがフランス人じんに神かみのために武器ぶきをとるようにと呼よびかけると、人々ひとびとは「神かみの御ご心しんのままに!」（Dieu le veult!）と答こたえたという。ウルバヌス2世せいは、教会きょうかい改革かいかくの支持しじ者しゃであり、十字軍じゅうじぐんを呼よびかける演説えんぜつに対たいしても熱狂ねっきょう的てきに応こたえたル・ピュイ司教しきょうアデマールを、十字軍じゅうじぐんを指揮しきする教皇きょうこう使節しせつに任命にんめいした。

ウルバヌス2世せいは、十字軍じゅうじぐんによるエルサレム占領せんりょうの14日にち後ごにこの世よを去さったが、この知しらせを聞きくことはなかった。