(Translated by https://www.hiragana.jp/)
天使 - Wikipedia コンテンツにスキップ

天使てんし

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
エンゼルから転送てんそう
うたうた天使てんしたちウィリアム・アドルフ・ブグロー (1881)。
旧約きゅうやく聖書せいしょエゼキエルしょ』1:4-5に登場とうじょうする天使てんしひだりオファニムメルカバーハシュマル英語えいごばんかれている。キリストきょうほか聖書せいしょ(イザヤしょ41:10、ルカによる福音ふくいんしょ 2:9-10など)では、天使てんし度々どどおそれるな」と一言いちげんえてから登場とうじょうすることから、人間にんげんから一目いちもくおそれられることを自覚じかくしているとかんがえられる。
セラフィム。ヴィクトル・ヴァスネツォフ (1885-1896ごろ作品さくひん)。

天使てんし(てんし、えい: angel[éɪndʒəl] ( 音声おんせいファイル)エィンジェル))は、ユダヤきょうキリスト教きりすときょうイスラム教いすらむきょう[ちゅう 1]聖典せいてん伝承でんしょう登場とうじょうするかみ使つかいである。

語源ごげん[編集へんしゅう]

英語えいごの angel はギリシアのアンゲロス(ἄγγελοςangelos)に由来ゆらいし、その原義げんぎは「伝令でんれい」「使つかいのもの」である。古代こだいギリシア・ローマ世界せかいでは、アンゲロスは生身なまみ人間にんげんとしての伝令でんれいあらわ言葉ことばであると同時どうじに、かみ々と人間にんげん中間ちゅうかん霊的れいてき存在そんざいとしての伝令でんれい言葉ことばでもありた。古代こだいキリスト教徒きりすときょうとネオプラトニストは、アンゲロスをかみ々やダイモーンのようなちょう自然しぜんてき存在そんざいとしてあつかった[1]。また、「密使みっし」を意味いみするペルシアの「アンガロス」や「かみれい」のであるサンスクリットの「アンギラス」も、ギリシアのアンゲロスとともに語源ごげんげられることがある[2]

ユダヤきょうにおける天使てんし[編集へんしゅう]

天使てんしは、ヘブライではマルアハ (םַלְאָךְ [mal’aḵ]) という。これは「つかわす」を意味いみする語根ごこん √l’k の派生はせいである。

ユダヤの伝承でんしょうでは、天使てんしサンダルフォンメタトロンなどが存在そんざいする。サンダルフォンなどはたかさが世界せかいおおきさの半分はんぶんたっするなど、「使つかい」としての天使てんしとはかなりイメージや存在そんざいことなる。

また、ユダヤきょう聖書せいしょ(キリストきょうでいう旧約きゅうやく聖書せいしょ)に明確めいかく記述きじゅつされる天使てんしかんしては、キリストきょう天使てんし認識にんしきはあまりわらない。

キリスト教きりすときょうにおける天使てんし[編集へんしゅう]

キリスト教きりすときょうにおいて天使てんしおも使つかいである。天使てんし (angel) の語源ごげんは「伝令でんれい」(messenger) を意味いみする後期こうきギリシア英語えいごばんἄγγελος (ángelos) である。ヘブライ聖書せいしょ(キリストきょうでいう旧約きゅうやく聖書せいしょ)で天使てんししているヘブライמלאך (mal'akh) もおな意味いみである。

語源ごげんしめすように、旧約きゅうやく新約しんやく双方そうほうにおいて、天使てんしかみのおげをつたえる伝令でんれいとしての役目やくめっている場面ばめんはいくつもえがかれている。また、天使てんしたちは人間にんげんあゆみちすべてでかれらをまもるようかみからめいじられている(91:11)。

しかし、ヨハネが天使てんしよりあたえられた黙示もくしつたえるという体裁ていさいった黙示録もくしろくでは、伝令でんれいわくおさまらないはたらきをしており、天使てんしきならすラッパにより世界せかい災厄さいやくおとずれたり、天使てんしたちがてん悪魔あくまたたかったり(だま12:7-9)している。また マタ25:31-36記述きじゅつから、最後さいご審判しんぱんにも天使てんしかかわるものとかんがえられている。

マタ24:36より、天使てんし全知ぜんちではないとかんがえられ、トマス・アクィナスもこれを支持しじしている [3][4][5]

訳語やくご[編集へんしゅう]

ギリシア原典げんてんではアンゲロス(の変化へんかがた)となっている箇所かしょは、『しん共同きょうどうやく聖書せいしょとうでは「天使てんし」とやくされているが、1954年版ねんばん日本にっぽん聖書せいしょ協会きょうかい翻訳ほんやく のようにこれを「使つか」とやくしているものもある。

日本にっぽん正教会せいきょうかいではアンゲロスとう訳語やくごとして「天使てんし」、「かみ使」、「かみ使つか」がもちいられる[6]

ただし、旧約きゅうやく聖書せいしょ登場とうじょうする「かみ使つかい」のなかには、かみとしてかれているものもあり、それゆえ天使てんしではなく受肉まえイエス・キリストあらわすものとかんがえられるものもある。[7]

天使てんし姿すがた人格じんかく実在じつざいせい[編集へんしゅう]

天使てんしたちは肉体にくたいつのか、それとも完全かんぜん霊的れいてき (spiritual) なものなのかについては、教父きょうふたちのあいだでも意見いけんかれている。日本にっぽん正教会せいきょうかいは、天使てんし物質ぶっしつてき世界せかいではなく霊的れいてき世界せかいぞくするが[6]、「しばしば人間にんげんえるかたちあらわれたり」するとしている[6]

今日きょう絵画かいがでは天使てんしつばさえがかれることがおおいが、聖書せいしょには天使てんしつばさかんする記述きじゅつすくなく、初期しょき絵画かいがでは天使てんしつばさえがかれないこともあった[8]天使てんしつばさえがかれているなかられているうちで最古さいこのものは、テオドシウス1せい治世ちせい(379ねん–395ねん)につくられた「君主くんしゅ石棺せっかん」である[9]

マルコ12:25から天使てんし性別せいべつはないものとおもわれる。絵画かいがでは天使てんし男性だんせいふうえが場合ばあい女性じょせいふうえが場合ばあいもあるが、19世紀せいきまでは性別せいべつがわからないようにくのが普通ふつうで、女性じょせいえる場合ばあいむねがないのが普通ふつうであった[10]

宗教しゅうきょう改革かいかくしゃジャン・カルヴァンは『キリスト教きりすときょう綱要こうよう』でキリスト教徒きりすときょうとまもるためにつかわされる使つかいについておしえており、今日きょう福音ふくいんにおいても、かみ使つかいとしての人格じんかくをもった天使てんし存在そんざいするとかんがえられている[11][12][13]。ただし、カルヴァンは綱要こうようでローマ・カトリックの天使てんしかんするおしえについて批判ひはんしている。

自由じゆう主義しゅぎ神学しんがく(リベラル)では、天使てんし擬人ぎじんてき表現ひょうげんであるともとらえられ、天使てんし実在じつざいするとはかならずしもかんがえられていない。一方いっぽう福音ふくいんでは、聖書せいしょ天使てんし存在そんざい当然とうぜんとしているのであって、人格じんかくをもった天使てんし存在そんざいすることは聖書せいしょ教理きょうりであるとしんじられている[14]

ラバトーリによる説明せつめい[編集へんしゅう]

2013ねん、ローマ・カトリック教会きょうかいさい上位じょうい天使てんし学者がくしゃであるレンゾ・ラバトーリ神父しんぷは「天使てんし実在じつざいする。だがつばさはない。それはひかりすじのような存在そんざいである。」と発表はっぴょうした。ラバトーリ神父しんぷはさらに、「天使てんし存在そんざいかんじるほどには、その姿すがたることはない」、「クリスタルせい花瓶かびん屈折くっせつした太陽光たいようこうすこている」とかたった[よう出典しゅってん]

天使てんし創造そうぞう[編集へんしゅう]

万物ばんぶつかみによってつくられたものなので (コロ1:16)、天使てんしもまたかみ造物ぞうぶつであるとかんがえられ、カトリック教会きょうかいではおおやけ会議かいぎでそのように規定きていされた(だい4ラテランこう会議かいぎだい1バチカンこう会議かいぎ)。天使てんし創造そうぞう人間にんげん創造そうぞうよりもまえだとされる(だい4ラテラノこう会議かいぎだい1カノンにおける信仰しんこう告白こくはく Firmiter credimusつよくわれらはしんじず……][15])。

日本にっぽん正教会せいきょうかいも、天使てんしぞくする霊的れいてき世界せかい我々われわれ物質ぶっしつてき世界せかい先立さきだって創造そうぞうされたものであり[6]、よってとく天使てんし人間にんげんよりもまえ創造そうぞうされたとしている[6]

天使てんし階級かいきゅう[編集へんしゅう]

中世ちゅうせい以降いこう天使てんし階級かいきゅうにはさまざまなものが提案ていあんされているが、それらにおいて広範こうはん影響えいきょうあたえたのは神秘しんぴ思想家しそうかにせディオニシウス・アレオパギタ著作ちょさく天上てんじょう位階いかいろん英語えいごばん』が提示ていじした図式ずしきである。

しんプラトン主義しゅぎてき存在そんざい階層かいそう構造こうぞう沿ったせいなる秩序ちつじょ思想しそうしめしたこの著作ちょさくは、天上てんじょう位階いかい(ヒエラルキア)について記述きじゅつし、天上てんじょう存在そんざいしゃさん階層かいそうぐみはいした。これがこう神学しんがくしゃにも引用いんようされ、天使てんしの「てんぐんきゅうたい」または「きゅううたたい」としてひろられるようになった。

なお、ユダヤきょうではこれとはことなる階級かいきゅう想定そうていされている。

上位じょういさんたいちち」のヒエラルキー

中位ちゅういさんたい」のヒエラルキー

下位かいさんたい聖霊せいれい」のヒエラルキー

日本にっぽん正教会せいきょうかいは、この階級かいきゅうひじりつたえとしてみとめている(ただし訳語やくごことなる)[6]

天使てんし名称めいしょう[編集へんしゅう]

天使てんし集会しゅうかい(英語えいごばん) ("Собор Архистратига Михаила"). ななだい天使てんしえがいた正教会せいきょうかいのイコン。ひだりからみぎへとじゅんイェグディエルガブリエルセラフィエルミカエルウリエルラファエルバラキエル中央ちゅうおうにあるキリストのインマヌエルのマンドルラ(全身ぜんしんつつ楕円だえんがたこう[16])のしたに、あおさとし天使てんしあかおき天使てんしえがいている。

聖書せいしょにはだい天使てんし (Archangel) という呼称こしょう登場とうじょうしており(いちテサ4:16ユダ1:9[ちゅう 2])、ミカエルという天使てんしだい天使てんし一人ひとりとしてげられている。

ミカエル以外いがいにも、ダニエルしょには名前なまえのついた天使てんしとしてガブリエル登場とうじょうし、聖書せいしょ外典げてんないしだいせいてんトビト書とがきにはラファエル登場とうじょうする。カトリック教会きょうかいではこの2人ふたりだい天使てんしとみなされている[17]。また、ラファエルは自身じしんを「聖者せいじゃ栄光えいこう御前ごぜんするななにんせいなる天使てんし一人ひとり」(ななだい天使てんし)と表現ひょうげんしている(トビ12:15)。

教父きょうふたちはウリエルという天使てんし頻繁ひんぱん言及げんきゅうしており、キリストきょうではときだい天使てんしとみなされるものの、これは聖書せいしょ外典げてんだいよんエズラしょ登場とうじょうするのみで、聖書せいしょせいてんには登場とうじょうしていない[18]

カトリック教会きょうかいでは聖書せいしょ名前なまえ登場とうじょうするガブリエル、ラファエル、ミカエル以外いがい天使てんし名前なまえをつける行為こうい推奨すいしょうしていない[19]

正教会せいきょうかいひじりつたえでは、せんにんものだい天使てんしがいるとされるものの[20]名前なまえ崇拝すうはいされているのはななだい天使てんしのみである[21]正教会せいきょうかいななだい天使てんし前述ぜんじゅつしたミカエルガブリエルラファエルウリエルセラフィエルイェグディエルバラキエルくわえたものである(8番目ばんめとしてイェレミエルくわえることもある)[22]

一方いっぽう旧約きゅうやく聖書せいしょ続編ぞくへんみとめないプロテスタントは ユダ1:9登場とうじょうするミカエルのみをだい天使てんしとみなし[23][24]ダニ9:21記述きじゅつによりガブリエルを(だい天使てんしではない通常つうじょうの)天使てんしとしている。

守護しゅご天使てんし[編集へんしゅう]

守護しゅご天使てんし(しゅごてんし)は、キリスト教徒きりすときょうと一人ひとりいちにんって信仰しんこうまもみちび天使てんしのこと[25]かみ人間にんげんにつけた天使てんしで、その守護しゅごする対象たいしょうたいしてぜんすすあく退しりぞけるようそのしんみちびくとされる[26]カトリック教会きょうかい参照さんしょう)。 守護しゅご天使てんし存在そんざいカトリック教会きょうかい肯定こうていされている(『おおやけきょう要理ようり』、『カトリック教会きょうかいのカテキズム』)。

イスラム教いすらむきょうにおける天使てんし[編集へんしゅう]

イスラム教いすらむきょうでは、天使てんし存在そんざい信徒しんとムスリム)が信仰しんこうすべきろくしんのひとつである。アラビア単数たんすうがたマラク (مَلَك [malak]) でヘブライからの借用しゃくようとみられるが、通例つうれい複数ふくすうがたのマラーイカ ( مَلائِكة [malā'ika])、マラーイク ( مَلائِك [malā'ik]) でばれる。マラーイカは唯一ゆいいつかみであるアッラーフ創造そうぞうした存在そんざいであるが、かみ人間にんげんあいだ仲立なかだちをつとめる、霊的れいてきかみ人間にんげん中間ちゅうかん存在そんざいであるとされる。イスラム教いすらむきょうでの天使てんしもユダヤきょう、キリストきょうでの天使てんしとほぼおなじである。

ジブリールから啓示けいじける預言よげんしゃムハンマド(しゅうより)。

マラーイカは数多かずおお存在そんざいするが、その頂点ちょうてんにあるのがジブリール (جبرئيل‎ [Jabra'īl]、جبرائيل‎ [Jabrā'īl, Jibrā'īl]、جبريل‎ [Jibrīl])、ミーカーイール ( ميكائيل‎ [Mīkā'īl])、イズラーイール ( عزرائيل‎ [`Izrā'īl])、イスラーフィール ( اسرافيل‎ [Isrāfīl]) のよんだい天使てんしである。ジブリールとミーカーイールはクルアーン登場とうじょうする。クルアーンには名前なまえ役割やくわりあきらかな天使てんしはそれほど登場とうじょうしないが、ハディースなどの伝承でんしょうにおいて天使てんしかんする様々さまざま言及げんきゅう存在そんざいする。それによれば、天使てんしかみひかりから創造そうぞうした存在そんざいで、おも天上てんじょうにあってかみたすける役割やくわりびている。

ジブリールはクルアーンに3言及げんきゅうされており (Q 2:28-29, 66:4)、天使てんし筆頭ひっとうとされる。イスラムの預言よげんしゃムハンマド啓示けいじおしえた存在そんざいとしてとく重要じゅうようされている。キリストきょうでの教義きょうぎ同様どうようにイエス(イーサー)のははマリア(マルヤム)に受胎じゅたい告知こくちおこなった天使てんしであり、またアブラハム(イブラーヒーム)がイサク(イスハーク)を犠牲ぎせいささげようとしたときに、かみ命令めいれいによってこれを制止せいしした天使てんしもジブリールとされている。ミーカーイールはクルアーンでいちだけ「ミーカール ( مِيكَال‎ [Mīkāl])」と表記ひょうきされてジブリールとならんでるが (Q 2:98)、イスラムしょ文献ぶんけんではジブリールにくらべると言及げんきゅうされる頻度ひんどはあまりおおくない。イズラーイールはクルアーンにも言及げんきゅうされている「天使てんし ( ملك المَوْت‎ [malak al-mawt])」(Q 32:11) のこととかんがえられており、つかさど天使てんしとされている。たましいはな役割やくわりにない、人間にんげん世界せかいのいついかなる場所ばしょにあっても予定よていされたときかならあらわれてをもたらす存在そんざいであるという。ただし、個人こじん予定よていについてはかみめるため、イズラーイール自身じしんにはからないという。イスラーフィールは終末しゅうまつ審判しんぱんときに、その到来とうらいげるラッパを天使てんしとされる。あたまてんたっあしいたるというほどの巨体きょたいであるという。終末しゅうまつ天使てんしがラッパをくことはクルアーンでべられているが、イスラーフィールというず、ハディースなどでその名前なまえられている。

イスラム教いすらむきょうではのち創造そうぞうされたものであるほどすぐれているというかんがえがあり、アッラーフは天使てんしに、最初さいしょ人間にんげんであるアーダム礼拝れいはいするようにめいじた。天使てんしかみたたえさんしてまぬ存在そんざいで、かみ唯一ゆいいつせい(タウヒード)や啓示けいじ真正しんせいさを確証かくしょうする存在そんざいでもあるとされる。そのため、かみ啓示けいじ預言よげんしゃたちにつたえる役割やくわりにない、終末しゅうまつにはラッパをらし、死者ししゃ生前せいぜん善行ぜんこう悪行あくぎょうなどおこないのすべてについてやその判決はんけつ記録きろくするものともされている。おおくはかみてん玉座ぎょくざまわりをかみたたえうつくしながら幾重いくえにもめぐっているといい、てん楽園らくえん番人ばんにんたちも天使てんし役割やくわりとされている。また、場合ばあいによっては個人こじん救済きゅうさいのためにあらわれることもある。そうじて、イスラム教いすらむきょう天使てんしは、かみ補佐ほさやくとして様々さまざま役割やくわり遂行すいこうする存在そんざいである。

その天使てんし[編集へんしゅう]

聖書せいしょにせてんにおける天使てんし[編集へんしゅう]

アダムの家系かけい天使てんし[編集へんしゅう]

旧約きゅうやくにせてんヨベルしょ」によれば、アダム子孫しそん代々だいだい天使てんし人間にんげんあいだまれたむすめ結婚けっこんし、その一族いちぞくエノクメトシェラノアなどがまれたという。

堕天使だてんし[編集へんしゅう]

創世そうせいノアの洪水こうずい部分ぶぶん旧約きゅうやく聖書せいしょにせてんエチオピア正教会せいきょうかいせいてんエノクしょによれば、天使てんし一部いちぶグリゴリ(200めい)が人間にんげんむすめまじわりネフィリムてんからちてきたものたちの意味いみ通常つうじょう巨人きょじんやくされている)をみだすという事件じけんこしたが、だい洪水こうずいノアの方舟はこぶね以外いがいのネフィリムをふく人間にんげんえている。キリストきょうにおけるヨハネの黙示録もくしろくによる学説がくせつでは、天使てんし一部いちぶかみ反逆はんぎゃく堕天使だてんしとなり、そのちょうもと天使てんしちょうあかつき天使てんしルシファーで、あらそいにやぶれて地獄じごくちょうとなったとされる。

ヘレニズムのユダヤきょうセクトクムラン教団きょうだん破壊はかいをもたらすやみ天使てんしとされたベリアルは、新約しんやく聖書せいしょ時代じだいには悪魔あくま固有名詞こゆうめいしとしてあつかわれるようになった[27]コリントの信徒しんとへの手紙てがみでは、ベリアルがキリストと反対はんたい位置いちにあることがしめされている[28]

『バルクのしょ』の天使てんし[編集へんしゅう]

ヒッポリュトスの『ぜん異端いたん反駁はんばく』の報告ほうこくするところでは、グノーシス主義しゅぎナハシュへび)の『バルクのしょ』には以下いかのような神話しんわふくまれていたという。

だい男性だんせい原理げんりエロヒム万物ばんぶつちち)とだいさん女性じょせい原理げんりエデンまたはイスラエルからだ女性じょせいあしへび)のあいだに24の天使てんしまれた。この天使てんしをモーゼはパラダイスんだ。エロヒムとエデンには各々おのおのに12の天使てんしつかえた。エロヒムの天使てんしがエデンの人身じんしんからアダムとイヴのからだつくった。エロヒムがてんのぼったのでおこったエデンはナハスアフロディテ(バベル)により人間にんげんれいくるしめさせた。エロヒムの天使てんしバルクはモーゼや預言よげんしゃヘラクレスなどにはたらきかけて人間にんげんれい天上てんじょうのぼらせすくおうとするもモーゼ・預言よげんしゃはナハス、ヘラクレスはアフロディテの誘惑ゆうわくやぶれる。バルクはイエスにすべてをはなし、ついにイエスのれい天上てんじょうのぼ後続こうぞく人間にんげんすくわれた[29]

オカルティズムにおける天使てんし[編集へんしゅう]

ダイアン・フォーチュンは、心霊しんれい現象げんしょうから自分じぶん防衛ぼうえいする必要ひつようがあるとき魔法まほうえんえがいて天使てんしいの方法ほうほう紹介しょうかいしている[30]。 また、「天使てんしうらない」といううらなおこなわれている[31][32]

天使てんし概念がいねん[編集へんしゅう]

つかえるれい」としての「み使つかい」はしゅう以降いこう観念かんねんであるとかんがえられている。ふる文書ぶんしょ、とりわけモーセしょ登場とうじょうする「ヤハウェの使つかい」はむしろヤハウェの特別とくべつ顕現けんげんないし密接みっせつ関係かんけいにある高次こうじれいかんがえられた。セラフィムケルブ・ケルビム、あるいはオファニムなども、「み使つかい」の意味いみでの天使てんしとはかんがえられていなかった。かれらは、かみヤハウェと密接みっせつ関係かんけい高次こうじれいではあるが、なに異質いしつものかんがえられていた(このかんがえはまた、初期しょきキリスト教きりすときょう神学しんがくしゃたちもかんじていた)。

バビロンしゅう以降いこうかみ多数たすうれいつかえられているとする観念かんねんまれた。この「てん宮廷きゅうてい」にバビロニア神話しんわ影響えいきょうをみるものもいる。またおのおののくににはそれをつかさど天使てんしくにきみ)がいるというかんがかたまれた。

天使てんしかみ[編集へんしゅう]

多数たすう羽根はねつケルビム。作者さくしゃしょう (1156)。

3宗教しゅうきょう聖典せいてんであるモーセしょにおける「かみ使つかい」「ヤハウェの使つかい」は、ヤハウェ顕現けんげんたいであり、ときにヤハウェと同一どういつされるが、天使てんしはこれとことなり、「つかえるれい」として描写びょうしゃされる。旧約きゅうやく聖書せいしょにおける「つかえるれい」「てん軍勢ぐんぜい」としての天使てんしへの言及げんきゅう比較的ひかくてきあたらしく、ユダヤじんバビロンしゅう以降いこう成立せいりつした概念がいねんかんがえられている。ミカエルラファエルなど固有こゆう名前なまえをもった天使てんしは、しゅう以後いご成立せいりつした文書ぶんしょにはじめてあらわれる。3世紀せいきラビ・シメオン・ベン・ラキシュはこのことを指摘してきし、これらの天使てんしバビロニア王国おうこくしゅうされていた時代じだい由来ゆらいするとのせつをたてた。

ここから、天使てんし概念がいねんは、アブラハムの宗教しゅうきょうひろまり、民族みんぞくんでイスラエル民族みんぞく成立せいりつしていく過程かていで、宗教しゅうきょうかみを、唯一ゆいいつかみによって創造そうぞうされた下位かい存在そんざいとしてんでいったとするかんがえがある。またゾロアスターきょうかみ組織そしきのありかたに、天使てんし組織そしきのありかた類似るいじしており、天国てんごく地獄じごく概念がいねん善悪ぜんあく天使てんしかれてたたか戦争せんそう概念がいねんはゾロアスターきょうかんがかたから影響えいきょうがあるとわれている。しかし、天使てんし本来ほんらいっている霊的れいてき神学しんがくてき概念がいねんしめ最古さいこのものは、古代こだい世界せかいとはほとんど関係かんけいく、すべては旧約きゅうやく聖書せいしょ新約しんやく聖書せいしょむすびついている。

2種類しゅるい天使てんし[編集へんしゅう]

天使てんしおもふたつのるいかれる。だいいちは「み使つかい」とばれる天使てんしである。だいは、セラフィム(おき天使てんし)、ケルビム(さとし天使てんし)、オファニム(天使てんし)がそうであるが、多数たすうち、多数たすうつばさとうった姿すがた天使てんしである。これらは一般いっぱんてき天使てんしのイメージとはほどとお怪物かいぶつてきなイメージで表現ひょうげんされている。

だいいち天使てんしは、『旧約きゅうやく聖書せいしょ』『新約しんやく聖書せいしょ』においては、姿すがたえないか、つばさなどたず普通ふつうひとわらない、成人せいじんわか青年せいねん姿すがたあらわれる。(なお、ガブリエルミカエル下級かきゅう天使てんし位階いかいであるだい天使てんしとされるが[33]上級じょうきゅう天使てんしであるおき天使てんしさとし天使てんし位階いかいにあるとされる場合ばあいもある。これは、キリストきょう天使てんし位階いかいろんじて、かれらを最高さいこう天使てんしとしたためである。かれらは、怪物かいぶつのような姿すがたではかんがえられていない)。

天使てんしぞう変遷へんせん[編集へんしゅう]

初期しょきキリスト教きりすときょうでは、天使てんしは(現在げんざい一般いっぱんてき天使てんしイメージとはことなり)つばさたない姿すがたえがかれることもあったが、聖書せいしょちゅうには4つのつばさつケルビム[34] と6つのつばさつセラフィム[35]記述きじゅつ存在そんざいする。このうち、ケルビムの描写びょうしゃつばさした人間にんげんがあるとされ、現在げんざいひろられている天使てんし容姿ようし合致がっちする内容ないようである。聖書せいしょ内容ないよう一部いちぶ共有きょうゆうするクルアーンにおいても、天使てんしは2つい、3つい、または4ついつばさ存在そんざいであるとされている[36]天使てんしゆうつばさ姿すがたであると普及ふきゅうするようになるのは、オリエントペルシア天使てんし精霊せいれいのイメージなどが混合こんごうされてきたことも一因いちいんであるとかんがえられる。

中世ちゅうせいヨーロッパにおいては、絵画かいがからうかがえるかぎりでは、天使てんしゆうつばさで、当時とうじ西欧せいおうじん衣装いしょうをまとい、「てん聖歌せいかたい」を構成こうせいする天使てんしたちは美少年びしょうねん姿すがたに、あくたたか使命しめいったミカエルなどは、よろいをまといけんびた、雄々おおしい戦士せんし姿すがたえがかれていた。

近世きんせい以降いこう無垢むく子供こども姿すがたや、女性じょせい姿すがた、やさしい男性だんせい姿すがたって表現ひょうげんされることがおおくなった。これはルネサンスローマ神話しんわクピド女神めがみウェヌスであるあいかみ)からイメージをりたとされる。場合ばあいによっては童子どうじかおつばさだけで身体しんたいたない姿すがたえがかれることもある。

2013ねんローマ・カトリック教会きょうかいレンツォ・ラヴァトーリ神父しんぷは、ローマでおこなわれた天使てんし美術びじゅつかんする討論とうろんのなかで、つばさえたどもとしてえがかれる天使てんしぞうしん姿すがたではなく、天使てんしにはえないが、たとえるならばクリスタルガラスの花瓶かびんとおすことでひとうつ姿すがたいがませる陽光ようこうのようなものだと主張しゅちょうした[37]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ これらさん宗教しゅうきょう比較ひかく宗教しゅうきょうろんうえ共通きょうつうてんゆうし、総称そうしょうしてアブラハムの宗教しゅうきょうばれる。
  2. ^ リンクさきではそれぞれ「天使てんしのかしら」、「使つかいのかしら」

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Luck, Georg. Arcana Mundi - Magic and the Occult in the Greek and Roman Worlds. The Johns and Hopkins University Press
  2. ^ グスタフ・デイヴィッドスン 『天使てんし辞典じてん
  3. ^ Thomas Aquinas. “46”. Summa contra Gentiles. 2. http://dhspriory.org/thomas/ContraGentiles2.htm#46 
  4. ^ トマス・アクィナス. Summa Theologica. Newadvent.org. http://www.newadvent.org/summa/1050.htm 
  5. ^ Aquinas, Thomas. De substantiis separatis. Josephkenny.joyeurs.com. オリジナルの2010ねん12月12にち時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20101212112433/http://www.josephkenny.joyeurs.com/CDtexts/SubstSepar.htm 
  6. ^ a b c d e f 日本にっぽん正教会せいきょうかい天使てんし悪魔あくま
  7. ^ 60ふんでわかる旧約きゅうやく聖書せいしょ(6)「ヨシュア”. メッセージステーション. 2019ねん9がつ9にち閲覧えつらん。 “Ⅱ.カナンの征服せいふく( 5 : 13 ~ 12 : 24 )1.(3)① *この人物じんぶつは、受肉まえのイエス・キリストである。”
  8. ^ Proverbio (2007), pp. 81–89; cf. review in La Civiltà Cattolica, 3795–3796 (2–16 August 2008), pp. 327–328.
  9. ^ Proverbio, Cecilia (2007). La figura dell'angelo nella civiltà paleocristiana (in Italian). Assisi, Italy: Editrice Tau. p. 66.
  10. ^ en:Angels in art[出典しゅってん無効むこう]
  11. ^ ビリー・グラハム天使てんしいのちのことばしゃ
  12. ^ ヘンリー・シーセン組織そしき神学しんがく聖書せいしょ図書としょ刊行かんこうかい
  13. ^ マーティン・ロイドジョンズ 『キリストしゃたたかい』 いのちのことばしゃ
  14. ^ 尾山おやまれいひとし聖書せいしょ教理きょうり』「かみつくられたれきてき世界せかい」。
  15. ^ Internet History Sourcebooks Project: Twelfth Ecumenical Council: Lateran IV 1215(2015ねん11がつ20日はつか閲覧えつらん
  16. ^ コトバンク「mandorla」
  17. ^ en:Archangel[出典しゅってん無効むこう]
  18. ^ Souvay, Charles. "Esdras." The Catholic Encyclopedia. Vol. 5. New York: Robert Appleton Company, 1909. 5 Aug. 2013”. Newadvent.org (1909ねん5がつ1にち). 2014ねん3がつ11にち閲覧えつらん
  19. ^ Congregation for Divine Worship and Discipline of the Sacraments, "Directory on Popular Piety and the Liturgy", §217
  20. ^ anaphora, Divine Liturgy of St. John Chrysostom
  21. ^ The World of The Angels Holy Transfiguration Russian Orthodox Church, Baltimore MD
  22. ^ Nicholai Velimirovic, November 8 Archived 2008ねん12月7にち, at the Wayback Machine. Prologe From Ochrid
  23. ^ ビリー・グラハム (1995) Angels Thomas Nelson Inc, ISBN 9780849938719, p. PT31
  24. ^ Graham (1995) p. PT32
  25. ^ 岩波いわなみ キリスト教きりすときょう辞典じてん』541ぺーじ宮崎みやざき正美まさみ守護しゅご聖人せいじん守護しゅご天使てんし
  26. ^ カトリック要理ようりとも だい 天使てんし しんのともしび運動うんどう本部ほんぶへん
  27. ^ 南條なんじょうたけそく悪魔あくまがく入門にゅうもん講談社こうだんしゃ、2010ねん
  28. ^ しん共同きょうどうやく聖書せいしょコリントだい 6しょう15せつ
  29. ^ 荒井あらいけんじやく 『ナグ・ハマディ文書ぶんしょ救済きゅうさい神話しんわ岩波書店いわなみしょてん、1997ねん
  30. ^ ダイアン・フォーチュン心霊しんれいてき自己じこ防衛ぼうえい国書刊行会こくしょかんこうかい、pp.187-189。
  31. ^ かがみリュウジ天使てんしのしあわせはこび 』 二見ふたみ書房しょぼう
  32. ^ かがみリュウジ天使てんしうらない』 小学館しょうがくかん
  33. ^ 岩波いわなみ キリスト教きりすときょう辞典じてん』 p.780
  34. ^ 旧約きゅうやく聖書せいしょ エゼキエルしょ10しょう21せつ
  35. ^ 旧約きゅうやく聖書せいしょ イザヤしょ6しょう2せつ
  36. ^ クルアーン35しょう1せつ
  37. ^ Angels Exist But Have No Wings, Says Church(2015ねん7がつ13にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

一般いっぱん[編集へんしゅう]

  • グスタフ・デイヴィッドスン天使てんし辞典じてんそうもとしゃ、2004ねんISBN 4422202294
  • マルコム・ゴドウィン 『天使てんし世界せかい青土おうづちしゃ、2004ねんISBN 4791761030
  • ジョン・ロナー 『天使てんし事典じてん―バビロニアから現代げんだいまで』 かがみリュウジわけ柏書房かしわしょぼう
  • パオラ・ジオベッティ 『天使てんし伝説でんせつかがみリュウジわけ柏書房かしわしょぼう

神話しんわがく美術びじゅつ[編集へんしゅう]

  • 吉田よしだ敦彦あつひこ世界せかいはじまりの物語ものがたり 天地てんち創造そうぞう神話しんわはいかにつくられたか』 大和やまと書房しょぼう
  • ローラ・ウォード/ウィル・スティーズ 『天使てんし姿すがた絵画かいが彫刻ちょうこく天使てんし物語ものがたりしん紀元きげんしゃ、2005ねんISBN 4775304186

哲学てつがく神学しんがく[編集へんしゅう]

キリスト教きりすときょう神学しんがく[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]