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パニヒダ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
パニヒダだい[1]リティヤだい(Lity tray)とも。ハリストス(キリスト)磔刑たっけいぞうえられ、そのまえ蝋燭ろうそく突起とっき多数たすうもうけられ、ともされた蝋燭ろうそくてられている。信徒しんとはこのように蝋燭ろうそくささげて永眠えいみんしゃのためにいのる。パニヒダはこのだいまえおこなわれることおおい(通夜つやとしてのパニヒダのさいには永眠えいみんしゃかんまえおこなわれることおおく、墓地ぼちでのパニヒダでは墓前ぼぜんおこなわれることおおい)。このだい移動いどうすること可能かのうで、聖堂せいどう中央ちゅうおう移動いどうさせてパニヒダをそのまえおこなこともある。ひだりだい基部きぶまれているのははちはし十字架じゅうじか。(ポーランドビャウィストクにある正教会せいきょうかいせいミコライだい聖堂せいどううち
敗北はいぼく。パニヒダ。』(ロシア: Побежденные. Панихида.ヴァシーリー・ヴェレシチャーギンによる戦争せんそういち場面ばめんえがいた油彩ゆさい膨大ぼうだいかず兵士へいしたち遺体いたいまえに、正教会せいきょうかい司祭しさい香炉こうろりつつ、パニヒダをささげている。[2]
墓地ぼちでの九日ここのかさいパニヒダ』(コンスタンティン・サヴィツキーロシアばん

パニヒダギリシア: Μνημόσυνο, ロシア: Панихи́да, 英語えいご: Memorial service (or panikhída))は正教会せいきょうかいにおいて永眠えいみんしゃためおこなわれるたてまつかみあや永眠えいみんしたひとかみくに安住あんじゅうするためにいのり、かつ永眠えいみんしたひと信仰しんこういでとも永遠えいえんくにあずかれるよう祈願きがんするものである[3]

埋葬まいそうしきもパニヒダも信徒しんとせい教徒きょうとでないもの)のためには通常つうじょうおこなわれないが、信徒しんと永眠えいみんしゃためには「異教いきょうじんパニヒダ」がある[4]

通夜つやいのりとしておこなわれたり、永眠えいみんしゃ死後しご一定いってい時期じき適宜てきぎおこなわれたり、さらにこよみうえさだめられたおこなわれたりする[3]

正教会せいきょうかいのレクイエム」とばれるケースが正教会せいきょうかい聖歌せいかあつか市販しはんのCDとう散見さんけんされるが、パニヒダはカトリック教会きょうかいせい公会こうかいレクイエムとは形式けいしきまったことなるものであり、適切てきせつ表現ひょうげんではない。

語源ごげん語義ごぎ

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日本にっぽん正教会せいきょうかいにおける日本語にほんご表記ひょうき「パニヒダ」は教会きょうかいスラヴ"Панихида" (パニヒダ)に由来ゆらいする。語源ごげんギリシャの「パン(すべて)」と「ニクス(よる)」と「オーデー(うた)」のみっつの言葉ことば合成ごうせいであり、「よるてっしてうたう」「徹夜てつやいのり」を意味いみする[4]。このは、古代こだい教会きょうかいにおいては異教徒いきょうとからの迫害はくがいけるため、かんうえ終夜しゅうやいのり、埋葬まいそうしき夜中よなかおこなわれていたことに由来ゆらいする[5]

ただし現代げんだい正教会せいきょうかいでは夜通よどおいのことほとんおこなわれない[4]。また、語源ごげん徹夜てつやいのりという意味いみであるが、通常つうじょう、パニヒダは日本語にほんごでは徹夜てつやいのりとはばれない。

語源ごげん上記じょうきのようにギリシャであるが、現代げんだいギリシャ正教会せいきょうかいでは"Μνημόσυνο"(ムニモーシノ[6]:「記憶きおく」の)とばれ、パニヒダとはばれない[7]

このことと、先述せんじゅつした語源ごげん語義ごぎほとんおなじであることなどから、日本にっぽん正教会せいきょうかいにおいては埋葬まいそうしきぜんばんおこなわれるパニヒダのことを、仏教ぶっきょうにおいて一般いっぱんてき呼称こしょうである「通夜つや」とぶことがあまり忌避きひされない。ただしパニヒダは埋葬まいそうしきぜんばんだけにおこなわれるものではなく、埋葬まいそうしき永眠えいみんしゃ記憶きおくおこな時期じき適宜てきぎおこなわれるものであり、パニヒダと通夜つやとは完全かんぜんには同義どうぎでない[4]

おこなわれる日時にちじ

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埋葬まいそうしきぜんばんの「通夜つや」、および埋葬まいそうしき適宜てきぎに、永眠えいみんしゃ記憶きおくおこないのりとしておこなわれる。「通夜つや」のさい、パニヒダのいのりをおこなうほか、親族しんぞく友人ゆうじんひじりえい詩篇しへん)を夜通よどおいの習慣しゅうかんがある[4]

正教会せいきょうかいにおいてはひとを「天国てんごくへのくちとしての永眠えいみん」ととらえており、忌避きひすべきものとしてかんがえないため、おおくのたてまつかみあや同様どうように「まつり」として位置付いちづける。それゆえ、パニヒダにも「まつり」のかんした呼称こしょう多数たすう存在そんざいする[4]

正教会せいきょうかいにおいてはパニヒダを永眠えいみんしゃのためにおこなうにあたって奨励しょうれいされる時期じきがある。しかし、諸々もろもろ事情じじょうによって時期じきをずらしておこなわれることがしばしばある。とく九日ここのかさい日本にっぽん正教会せいきょうかいにおいては火葬かそうおこなわれたのちすぐに、聖堂せいどうひとしにおいておこなわれるのが一般いっぱんてきである。

  • 三日みっかさい永眠えいみんしゃ永眠えいみんした三日みっかおこなう。3にちから復活ふっかつしたイイスス・ハリストス(イエス・キリスト)によって永眠えいみんしゃれいすくわれるよういの[8]
  • 九日ここのかさい永眠えいみんしゃ永眠えいみんした九日ここのかおこなう。永眠えいみんしゃれいきゅうかいきゅうある天使てんしとも天上てんじょう教会きょうかいわせられるよういの[8]
  • よんじゅうにちさい永眠えいみんしゃ永眠えいみんしたよんじゅうにちおこなう。復活ふっかつ40にち昇天しょうてんしたイイスス・ハリストスによって、永眠えいみんしゃれい天国てんごくすくわれるようにいの[8]
  • いちねんさい永眠えいみんしていちねんおこな[4]
  • としさい年数ねんすう関係かんけいなく任意にんいに、永眠えいみんしゃ永眠えいみんしたおこな[4]

また、土曜日どようび永眠えいみんしゃとく記憶きおくする曜日ようびとされる[8]。これは土曜日どようびかみ創造そうぞうごうやすんだことが(創世そうせい2:3)、かみくににおける安息あんそくかたどっていると理解りかいされることによる(ヘブライじんへの手紙てがみ 4:9 – 10)[9]

上記じょうき永眠えいみんしゃ個々人ここじん関連付かんれんづけられたもののほかに、以下いかぜん永眠えいみんしゃとく記憶きおくするとされている。

  • だいとき準備じゅんび週間しゅうかんだいさん週間しゅうかん審判しんぱん週間しゅうかん)の土曜日どようび - かみ審判しんぱん記憶きおくするであり、かみ審判しんぱんにおいて永眠えいみんしゃれい義人ぎじんたちれいとも天国てんごくすくわれるのをいのるため[9][10]
  • だいときだい2・だい3・だい4週間しゅうかん土曜日どようび[11]
  • 復活ふっかつ大祭たいさいだいいち週間しゅうかん(フォマの週間しゅうかん)の月曜日げつようびもしくは火曜日かようび - ひと復活ふっかつ本源ほんげんであるイイスス・ハリストスの復活ふっかつたたえあげしかつ記憶きおくするため[10]
  • しゅんさい土曜日どようび - わりにおけるぜん死者ししゃ復活ふっかつ記憶きおくすること、および「凡のれいせいかみ聖霊せいれいにてかつされ(いかされ)云々うんぬん」との祈祷きとうぶんうたわれるため[9][10]
  • 前駆ぜんく授洗イオアン斬首ざんしゅさい(9がつ11にち[11]
  • ソルンのせいディミトリイの記念きねんまえ土曜日どようび[11](11月8にちまえ土曜日どようび[9]

構成こうせい

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概要がいよう

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パニヒダのほとんどの部分ぶぶんは、司祭しさい輔祭えいたいによる永眠えいみんしゃのためのれんいのり聖歌せいかによっておこなわれる[12]。パニヒダの後半こうはんにはリティヤばれる部分ぶぶんがある[4]墓地ぼち祈祷きとう納骨のうこつさいなどにこの部分ぶぶんのみをもちいて祈祷きとうおこなわれることがおおい。

永遠えいえん記憶きおく

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正教会せいきょうかいのパニヒダと埋葬まいそうしきは、輔祭(輔祭がない場合ばあい司祭しさい)が永眠えいみんしゃれい(たましい)の安息あんそくねが祈祷きとうぶん朗誦ろうしょうしたのち、「永遠えいえん記憶きおく永遠えいえん記憶きおく永遠えいえん記憶きおく」とさんかいうたわれる聖歌せいかもっ終結しゅうけつする。ひとかす、かみによる永遠えいえん記憶きおく永眠えいみんしゃあたえられるように祈願きがんする祈祷きとうぶんである[13]

香炉こうろ

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たてまつかみあや同様どうよう正教会せいきょうかいのパニヒダにおいては香炉こうろ多用たようされる。ほとんどの場合ばあい乳香にゅうこうもちいられ、独特どくとくかおりをともなけむりはっする。ただし、この香炉こうろもちいるのは輔祭司祭しさいであって、信徒しんとれることく、信徒しんとまいりいのりしゃによる焼香しょうこう習慣しゅうかんい。

とうめし

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モルドヴァ正教会せいきょうかいでのとうめし地域ちいきによっては葡萄ぶどうなどを十字架じゅうじかかたちってかざる。

とうめし(とうはん)とばれる食物しょくもつ用意よういされ、パニヒダの終了しゅうりょうまいりいのりしゃきょうされることがある。

とうめしとは、むぎもちまいといった穀物こくもついたものを、みつ砂糖さとうあまくしたもの。穀物こくもつもちいるのはイオアンによる福音ふくいんしょ(ヨハネによる福音ふくいんしょ)の12しょう24せつにある一粒ひとつぶむぎたとえに由来ゆらいし、あまくするのはさるいのち6しょう3せつにあるような「ちちみつながれる」と表現ひょうげんされた天国てんごくあじわいをかたどるとされる。

さらまるけられ、そのうえ葡萄ぶどうなどを十字架じゅうじかかたちかざことおおい。

パニヒダでうたわれる正教会せいきょうかい聖歌せいか

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大体だいたいにおいてひろもちいられる簡明かんめい旋律せんりつ伴奏ばんそううたわれることほとんどであるが(正教会せいきょうかい聖歌せいか伴奏ばんそう歌唱かしょう基本きほんである)、ごくまれロシア正教会せいきょうかいセルビア正教会せいきょうかい作曲さっきょくによってつくられた聖歌せいかもちいられることもある。日々ひびのパニヒダにおいてこれらがもちいられるケースはきわめてすくないが、CDとう各種かくしゅ録音ろくおん媒体ばいたいにおいて、これらの作品さくひん録音ろくおんこと出来できる。また、パニヒダの全曲ぜんきょくもしくはだい部分ぶぶん網羅もうらする作曲さっきょくおこなわずとも、一部いちぶきょくけをおこなった作曲さっきょく多数たすう存在そんざいする。

パニヒダに作曲さっきょくおこなった正教会せいきょうかい聖歌せいか作曲さっきょく

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 用語ようご出典しゅってんティピコン1-8今月こんげつ神父しんぷさまのおはなし
  2. ^ Vasily Vereshchagin. Defeated. Servise for the dead.
  3. ^ a b 正教せいきょう要理ようり』170ぺーじ - 171ぺーじ日本にっぽんハリストス正教会せいきょうかい教団きょうだん 1980ねん
  4. ^ a b c d e f g h i かたち-しょたてまつかみあや日本にっぽん正教会せいきょうかい The Orthodox Church in Japan - 日本にっぽん正教会せいきょうかい公式こうしきサイト
  5. ^ ミハイル・ソコロフ、木村きむら薩阿かつ、p236
  6. ^ 現代げんだいギリシャみにのっとった転写てんしゃ
  7. ^ ΜΝΗΜΟΣΥΝΟ
  8. ^ a b c d おおやけ祈祷きとう講話こうわ、p139
  9. ^ a b c d Hieromonk Job (Gumerov). Why are the Dead Commemorated on Saturdays? / OrthoChristian.Com
  10. ^ a b c おおやけ祈祷きとう講話こうわ、p139 - p140
  11. ^ a b c ミハイル・ソコロフ、木村きむら薩阿かつ、p244 - p245
  12. ^ パニヒダ - 祈祷きとうぶん現在げんざい日本にっぽん正教会せいきょうかいおこなわれている一般いっぱんてき形式けいしきのほぼ全文ぜんぶん
  13. ^ OCA - The Orthodox Faithアメリカ正教会せいきょうかい公式こうしきページ)

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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