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ホルスの4にん息子むすこ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ホルスの4にん息子むすこひだりからイムセティ、ドゥアムトエフ、ハピ、ケベフセヌエフ。

ホルスの4にん息子むすこ(ホルスのよにんのむすこ)とは、エジプト神話しんわの4はしらかみ々で、本質ほんしつてきには4つのカノプスつぼ人格じんかくしたもので、身体しんたいミイラになっている[1]

概要がいよう

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古代こだいエジプトにおいてひとは、死後しごバーカーわかれ、肉体にくたい保存ほぞんされていればかえるとかんがえた。そのための保存ほぞん方法ほうほうミイラである。このとき内臓ないぞうのこっているとミイラがくさってしまうため、されカノプスつぼ保存ほぞんされた。

このカノプスつぼまもるのが「ホルスのよんにん息子むすこ」、「おうかん守護しゅごしゃたち」、「ホルスの化身けしん」とばれたかみ々である。

かれらの姿すがたは、つぼぶた部分ぶぶん装飾そうしょくあらわされる。各々おのおの担当たんとうする内臓ないぞう方角ほうがくかれらを守護しゅごする女神めがみがいる。

  • イムセティ (Imsety) は、人間にんげん姿すがたをしており肝臓かんぞうまもる。またイシスまもられる。みなみき。
  • ドゥアムトエフ (Duamutef) は、ジャッカルの姿すがたをしておりまもる。またネイトまもられる。ひがしき。
  • ハピ (Hapi) は、ヒヒの姿すがたをしておりはいまもる。またネフティスまもられる。きたき。
  • ケベフセヌエフ (Qebehsenuef) は、ハヤブサの姿すがたをしておりちょうまもる。またセルケトまもられる。西向にしむ[2][3]

解説かいせつ

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ツタンカーメンのカノプスつぼおさめたはこ四方しほう女神めがみまもっている。

当時とうじ心臓しんぞうにはたましい宿やどるとされたため、ミイラつくさい身体しんたいのこされた。また心臓しんぞうは、死者ししゃ審判しんぱんにおいて必要ひつよう部位ぶいしんじられた。

のうは、鼻水はなみずなど様々さまざま粘液ねんえき発生はっせいげんなされていたため、はなからぼうみ、かきぜて液状えきじょうにしてげててた。

カノプスつぼ保存ほぞんされるのは、(とちょう一部いちぶ)と肝臓かんぞうちょうだい部分ぶぶんはいである。これらを切除せつじょして防腐ぼうふ処理しょりをし、それぞれ別々べつべつつぼ保管ほかんした。この方式ほうしきから逸脱いつだつしたミイラがつくられた時代じだいもあった。だい21王朝おうちょう時代じだいには、防腐ぼうふ処理しょりした内臓ないぞうをミイラの体内たいないもどしてから包帯ほうたいき、カノプスつぼ象徴しょうちょうとしてそらのままかれた[1]。ただからびた内臓ないぞう正確せいかく判別はんべつすることは困難こんなんであり、不明ふめいてんおおい。

ホルスの4にん息子むすこについての初期しょき記述きじゅつは、ピラミッド文書ぶんしょ英語えいごばんられる[4]かれらはそのおう友人ゆうじんであり、はしごを使つかっておうたましい東方とうほうてんのぼるのをたすけるとされていた[5]当時とうじ、ファラオがぬとラーが梯子はしごろしてれい太陽たいようふねむかえ、冥界めいかいたびするとかんがえられた。

かれらがホルスむすけられたのはエジプト王国おうこく時代じだいで、たん息子むすこであるだけでなくホルスのたましいだとされていた。おうまたはファラオはホルスの現世げんせい姿すがたであり、またホルスにまもられているとされていた。しかし、んだファラオはあらたなファラオのちちであることからホルスのちちオシリスなされ、その内臓ないぞうはホルスの一部いちぶあるいはむしろホルスのなされた[6]。そしてイシスかれらのははなされた[7]

にん息子むすこ対応たいおうするよっつカノプスつぼは、男女だんじょ双対そうつい原則げんそくからそれぞれ特定とくていよんはしら女神めがみ守護しゅごするとされた。これが死者ししゃ守護しゅごするよんはしら女神めがみで、イシス、ネフティス、ネイト、セルケトである。

またかれらは4方位ほういにも対応付たいおうづけられており、ハピはきた、イムセティはみなみ、ドゥアムトエフはひがし、ケベフセヌエフは西にしとされた[8]

エジプトちゅう王国おうこく時代じだい古典こてんてきなホルスの4にん息子むすこ描写びょうしゃとしては、かん東側ひがしがわめんにイムセティとドゥアムトエフをえがき、かん西側にしがわめんにハピとケベフセヌエフをえがいていた。東側ひがしがわ側面そくめんには一対いっついえがかれることがあり、かんなかのミイラも方角ほうがくであるひがしくようにかれており、そちらがかん正面しょうめんとされることがある。

エジプトだい18王朝おうちょうまで、カノプスつぼぶたはそのおう頭部とうぶぞうになっていたが、それ以降いこう動物どうぶつ頭部とうぶぞうになった。たいしてかん石棺せっかんえがかれるホルスの4にん息子むすこは、当初とうしょから動物どうぶつかたちえがかれるのが一般いっぱんてきだった。

ハピ (Hapi)
ヒエログリフ表示ひょうじ
HAa5
p
ii

ハピは、ヒヒあたまち、死者ししゃはいまもり、一方いっぽう女神めがみネフティス守護しゅごされる。そのヒエログリフあらわしたなかにはふねかじ関係かんけいふかいとられる部分ぶぶんがあるが、正確せいかくなところは不明ふめいである。このためハピを航海こうかい航法こうほう)とむすびつけることもあったが、初期しょき記述きじゅつでは「偉大いだい走者そうしゃ」とされている。

「おまえ偉大いだい走者そうしゃだ。おまえらのなかもっとおおきいのだから、ちち N とともにあり、ハピのしたはなれずにいよ」とホルスはった。[9]

死者ししゃしょだい151しょうでは、ハピがつぎのような言葉ことばはっするとされている。

わたしはあなたをまもるためにた。わたしはあなたのあたまからだ包帯ほうたいき、あなたのてきたおし、またあなたのあたま永遠えいえんまもる。[10]

シューの4つのてん支柱しちゅうの1つとして、また天国てんごくへの4つの梯子はしごの1つとして、ハピはきた対応たいおうする。これについてはとく死者ししゃしょだい148しょう記述きじゅつがある。

なお、"Hapi" はナイルがわかみハピつづりの1つとまったおなじだが、ことなるかみである。

イムセティ

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イムセティ (Imsety)
ヒエログリフ表示ひょうじ
iim
z
tii

イムセティは、人間にんげんあたまち、死者ししゃ肝臓かんぞうまもり、一方いっぽう女神めがみイシス守護しゅごされる。ホルスからは、「げろ」とめいじられており、死者ししゃ復活ふっかつさせるのをたすける役目やくめになっていたとられる。

「おまえは N のところにた。ちち N をげてそのしたにあり、イムセティのしたはなれずにいよ」[11]

がることはきていることを意味いみし、よこたわっていることは意味いみするとられる。

死者ししゃしょだい151しょうでは、イムセティがつぎのような言葉ことばはっするとされている。

わたしはあなたをまもるためにた。わたしはプタハのいのちしたがい、またラーのいのちしたがい、あなたのいえながさかえさせる。[10]

ここでもいえさかえさせるという暗喩あんゆよみがえらせることをしめしている。ここでは、プタハラー権威けんいもとづいてそれをおこなうことになっている。

死者ししゃしょだい148しょうでホルスの4にん息子むすこと4方位ほうい対応たいおうけされている。イムセティはみなみ対応たいおうする。

ドゥアムトエフ

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ドゥアムトエフ (Duamutef)
ヒエログリフ表示ひょうじ
N14G14t
f
orN14
D37
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f

ドゥアムトエフは、ジャッカルあたまち、死者ししゃまもり、一方いっぽう女神めがみネイト守護しゅごされる。かれ役目やくめ死者ししゃ礼拝れいはいすることとられ、その意味いみは「はは礼拝れいはいするもの」である。コフィン・テキストかんかれた文書ぶんしょ)では、ホルスがつぎのようにびかけている。

わたしのためにちち N を礼拝れいはいせよ。ちょうどあなたがドゥアムトエフののもとにははイシスを礼拝れいはいしたように」[12]

ここにあきらかになったようにイシスには2つの役割やくわりがあり、若干じゃっかん混乱こんらんさせられる。一般いっぱんにイシスはオシリスつまホルスははだが、同時どうじにホルスの配偶はいぐうしゃでもあり、したがってホルスの息子むすこたちのははでもある。ドゥアムトエフは、ホルスではなくオシリスをちちぶようになり、さらに曖昧あいまいとなっていった。

死者ししゃしょだい151しょうでは、ドゥアムトエフがつぎのような言葉ことばはっするとされている。

わたしちちオシリスをきずつけるものからまもるためにた。[10]

この文書ぶんしょでは、オシリスをきずつけるのがだれなのかあきらかにされていないが、かんがえられる候補こうほは2にんいる。まず1人ひとりセトで、実際じっさいにオシリスをころしたという神話しんわがある。ははであるイシスを礼拝れいはいする息子むすこは、どういうわけかセトにたすけになるとされている。べつ候補こうほはヘビの姿すがたをした悪魔あくまアペプで、太陽たいよう運行うんこうさまたげることからオシリスの復活ふっかつさまたげるということになる。いずれにしてもドゥアムトエフは、イシスを礼拝れいはいすることで死者ししゃまもちからったとられる。

かれもシューのてん支柱しちゅうの1つ、天国てんごく梯子はしごの1つとされており、ひがし対応付たいおうづけられている。

ケベフセヌエフ

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ケベフセヌエフ (Qebehsenuef)
ヒエログリフ表示ひょうじ
W15snsnsnf

ケベフセヌエフは、ハヤブサあたまち、死者ししゃちょうまもり、一方いっぽう女神めがみセルケト守護しゅごされる。その役目やくめ死者ししゃ元気げんきあたえることとられ、そのは「同胞どうほうけんじさけするもの」を意味いみする。ホルスは、かれつぎのようにめいじている。

ちち元気げんきけよ。ケベフセヌエフののもとにかれつかえよ。あなたはて、かれのためにすずしさをすだろう」[13]

けんじしゅつめたいみずをかけることは、古代こだいエジプトでの伝統でんとうてき礼拝れいはい形式けいしきだった。ファラオがかみけんじさけする様子ようすえがいた多数たすう存在そんざいする。これには、浄化じょうか元気げんきけという2つの意味いみがあった。

死者ししゃしょだい151しょうでは、ケベフセヌエフがつぎのような言葉ことばはっするとされている。

わたしはあなたのほねあつめ、内臓ないぞうあつめ、心臓しんぞうをもたらし、それをあなたのからだのその場所ばしょくためにた。[10]

セトオシリスころしたのち、その死体したいかくすためにきざナイルがわのデルタ地帯ちたいにそれをばらまいた。古代こだいエジプトでは、これは復活ふっかつさまたげるのろいであり、ケベフセヌエフが身体しんたい部分ぶぶんあつめるとっている背景はいけいには、そのかんがかたがある。

ケベフセヌエフは西にし対応付たいおうづけられている。

ジャッカル、ヒヒ、ハヤブサ、人間にんげん

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ホルスの4にん息子むすこ頭部とうぶ形状けいじょうをしたぶたカノプスつぼだいえい博物館はくぶつかん

ホルスの息子むすこたちに4種類しゅるい動物どうぶつ関連付かんれんづけられた理由りゆうさだかではないが、ここでは、それらの動物どうぶつのエジプト神話しんわでどういう意味いみっているかを解説かいせつする。

ヒヒつきトート関係かんけいふかい。トートは知恵ちえ知識ちしきかみである。またヒヒは、のときに太陽たいようかってげてくとされており、それが礼拝れいはいしているようにえるとされていた。

ジャッカルまたはくろけんアヌビス防腐ぼうふ処理しょり関係かんけいふかい。またおなじくジャッカルの姿すがたえがかれる「みちひらものウプウアウトは、死者ししゃたましいみちびくとされた。

ハヤブサはホルス自身じしん関係かんけいふかく、セケルというミイラの姿すがたをした冥界めいかいかみとも関係かんけいふかい。

そして人間にんげんはオシリス自身じしんか、狩猟しゅりょうしんオヌリスと関係かんけいするとられる。

ホルスの4にん息子むすこは、たんなるカノプスつぼ守護しゅごしゃという役目やくめえた属性ぞくせいっている。死者ししゃしょだい148しょうでは天国てんごくへの4つの梯子はしごとして言及げんきゅうされており、おなじくだい17しょうでは、アヌビスがした7つのてん精霊せいれいのうちの4つとして言及げんきゅうされており、この記述きじゅつとおして北極星ほっきょくせい周辺しゅうへんおおぐまほしともむすけられている。

脚注きゃくちゅう

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出典しゅってん

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  1. ^ a b Aufderheide 2003, p. 258.
  2. ^ Aufderheide 2003, p. 237.
  3. ^ British Museum, Synopsis of the Contents of the British Museum, R. & A. Taylor 1855, pp.201ff.
  4. ^ Assmann 2005, p. 357.
  5. ^ Eyma 2003, p. 218.
  6. ^ Assmann 2005, p. 467.
  7. ^ Griffiths 1961, p. 49.
  8. ^ Lurker 1974, p. 104.
  9. ^ Faulkner 2004, p. 521.
  10. ^ a b c d Faulkner 2004.
  11. ^ Faulkner 2004, p. 520.
  12. ^ Faulkner 2004, p. 522.
  13. ^ Faulkner 2004, p. 523.

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Aufderheide, Arthur C. (2003), The Scientific Study of Mummies, Cambridge University Press 
  • Assmann, Jan (2005), Death And Salvation In Ancient Egypt, Cornell University Press 
  • Eyma, Aayko (2003), A Delta-Man in Yebu: Occasional Volume of the Egyptologists' Electronic Forum No. 1, Universal-Publishers 
  • Griffiths, John Gwyn (1961), The Conflict of Horus and Seth from Egyptian and Classical Sources: A Study in Ancient Mythology, Liverpool University Press 
  • Lurker, Manfred (1974), Lexikon der Götter und Symbole der alten Ägypter, Scherz 
  • Faulkner, Raymond Oliver (2004), The Ancient Egyptian Coffin Texts, David Brown Book Company 
  • Raymond Oliver Faulkner, The Egyptian Book of the Dead: The Book of Going Forth by Day, Chronicle Books 2000

関連かんれん項目こうもく

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