ホルス

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ホルス
Horus
天空てんくうしん
ウアスつえアンクつホルス
ヒエログリフ表記ひょうき
G5

または
HHr
r
A40
信仰しんこう中心地ちゅうしんち エドフ神殿しんでん
シンボル ウアジェトの、ハヤブサ
配偶はいぐうしん ハトホルイシスなど
おや だいホルス→ラー
しょうホルス→オシリスイシス
子供こども ハトホルとのイヒ
イシスとのホルスの4にん息子むすこ
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ホルス(Horus、エジプトラテン文字もじ転写てんしゃ:Hr, Hru、古代こだいギリシア: Ώρος, Hōros、ホーロス)は、エジプト神話しんわにおける天空てんくうかみ

概要がいよう[編集へんしゅう]

もともとホルスは、同名どうめいかつ神格しんかく役割やくわりことなるかみはしら存在そんざいしたとされる。それらがラー息子むすこオシリスイシス息子むすこであり、やがて同一どういつされ習合しゅうごうされたものだとされている[1]。これ以外いがいにも様々さまざまかみとの習合しゅうごうられる。通常つうじょうは、はやぶさあたま太陽たいようつき両目りょうめ成人せいじん男性だんせいとして表現ひょうげんされる。初期しょきは、はやぶさそのものの姿すがただったが時代じだいとともに人間にんげん姿すがた幼児ようじから成人せいじん)をとるようになる。

エジプトのかみ々のなかもっとふるく、もっと偉大いだいで、もっと多様たようしたかみひとつである[2]地域ちいき時代じだいによってはことなる呼称こしょう神格しんかくち、またおおくのほかかみ々と習合しゅうごうしている。

有名ゆうめいなシンボルである「ウジャト」とは、ホルスののことである。

だいホルス[編集へんしゅう]

初期しょきのホルスは太陽たいようつき両目りょうめ天空てんくうしんとされており、かれ原住民げんじゅうみんかみ習合しゅうごうされてハロエリスHaroeris、「だいホルス」の)または、ハルウェルというひかりかみとなった。ハロエリスは、天空てんくうかぶつきかみでもありびょういやかみとしてびょう患者かんじゃ信仰しんこうあつめた。またハロエリスは、エジプトのきたみなみ両方りょうほうにある聖域せいいき定期ていきてき往復おうふくするとされた。かれはハトホルの息子むすことされた[3]

ホルスを崇拝すうはいする人々ひとびとうえエジプトベフデト(Behdet)にまでひろがるとホルスは、ホルス・ベフデティHorus-Behdeti、「エドフのホルス」の)とばれ、ラー息子むすことされ、オシリスのてきたるセトをたおかみとされた。おも国家こっか守護神しゅごじん外敵がいてきたたかかみとして信仰しんこうされる。その姿すがたは、はやぶさあたまをもつ人間にんげんあるいは、はやぶさあたまけたつえたずさえたたかあたまをもつ人間にんげんとして表現ひょうげんされた[4]

ホルアクティHarakhte、「地平線ちへいせんのホルス」の)のでは、ケプリアトゥム性質せいしつび、はやぶさあたまをもつ人間にんげん姿すがた表現ひょうげんされ、ひかりかみとして毎日まいにちひがしから西にしへと地平ちへいわたり、太陽たいようしんラーと同一どういつされた[5]

ハルマキスHor-em-akhet、「地平線ちへいせんにおけるホルス」の)のでは、スフィンクス姿すがたおも表現ひょうげんされた。太陽たいようとみなされ、復活ふっかつ象徴しょうちょうするものとなり、ケプリとも関連かんれんづけられた。またかれは、おおくの知恵ちえそなえたものとされた[6]

しょうホルス[編集へんしゅう]

おもにオシリス神話しんわにてかたられる。冥界めいかいかみオシリスちちに、豊穣ほうじょう女神めがみイシスははつ。配偶はいぐうしんあい女神めがみハトホルははイシスであり、ハトホルとのあいだ音楽おんがくかみイヒし、イシスとのあいだには「ホルスの4にん息子むすこ」とばれるよんはしらかみ々をした。

この場合ばあいのホルスは、ハルシエシスHarsiesis、「イシスの息子むすこホルス」の)とばれた。これは、オシリスへの信仰しんこうたかまるにつれ、その息子むすこのホルスに太陽たいようしんホルスの一部いちぶ同化どうかしたものとかんがえられている[7]。オシリス3かみ一員いちいんとして崇拝すうはいされたほか、イシス信仰しんこう発展はってんするにつれて、子供こども姿すがた表現ひょうげんされるハルポクラテスHar-pa-khered または Heru-pa-khered、「子供こどものホルス」の)として崇拝すうはいされた[8]。ハルポクラテスに授乳じゅにゅうするイシスへの崇拝すうはいが、初期しょきキリスト教徒きりすときょうと聖母子せいぼし熱烈ねつれつ信仰しんこうする一因いちいんであったとかんがえるひともいる[9]。ハルポクラテスは、またははしんイシスのひざった幼児ようじホルサイセ・ハルポクラテス)として表現ひょうげんされることもあった。

宿敵しゅくてきセトとたたかい、勝利しょうりしたホルスはホルス・ベフデティばれ、ラーがかく神殿しんでんつばさのある太陽たいよう円盤えんばんかせたことからホルス・ベフデティは、その太陽たいよう円盤えんばん姿すがた表現ひょうげんされることになり、さらに戦場せんじょうのファラオの戦車せんしゃうえぶ、王権おうけん殻竿からざおなどをもつはやぶさとしても表現ひょうげんされた。ここにいたってホルスとラーは同一どういつされ[5]習合しゅうごうしたラー・ホルアクティRa-Harakhte、「地上ちじょうのホルスたるラー」の)となった。

外見がいけん[編集へんしゅう]

通常つうじょうは、はやぶさあたま太陽たいようつき両目りょうめ成人せいじん男性だんせいとして表現ひょうげんされる。初期しょきは、はやぶさそのものの姿すがただったが、かみ々との習合しゅうごう時代じだいうつわりとともに人間にんげん姿すがた幼児ようじから成人せいじん)をとるようになった。

名前なまえ由来ゆらい[編集へんしゅう]

「ホルス」(Hōrus)という語形ごけいエジプトḥr(.w)がギリシャHōrosを経由けいゆしてラテン語らてんごしたものだが、さらにさかのぼった由来ゆらいとして、エジプトの「かお」を意味いみするかたり「ホル」や「うえにあるもの」を意味いみするかたり「ホル」が由来ゆらいだとするせつがある[10]。いずれにせよ「ホルス」のは、リビアからうえしたりょうエジプト大半たいはん征服せいふくした民族みんぞく地域ちいきしんとなっていたはやぶさかみ名前なまえであり、おおくのはやぶさしん吸収きゅうしゅうするほど有力ゆうりょくかみであった[11]

ファラオとの関連かんれん[編集へんしゅう]

古代こだいエジプトにおいてホルスは、「おうそのもの」であり、ファラオは、ホルスの化身けしん地上ちじょうきるかみ現人神あらひとがみ)で現世げんせい統治とうちしゃとらえられた。ファラオは、様々さまざまかみ名前なまえ自分じぶん即位そくいめいんでいった。ホルスも同時どうじ様々さまざま姿すがたわった。まさにホルスとファラオは、一体いったいだったのである。 初期しょき王朝おうちょう時代じだいのファラオはホルスの化身けしん名乗なのり、絶対ぜったいてき権力けんりょく獲得かくとくした。この思想しそう反映はんえいされたのが「ホルスめい」である。 王国おうこく時代じだいになると、だい4王朝おうちょうジェドエフラーは「ラーの息子むすこ」を名乗なのった。それにより、ホルスはラーの息子むすことなり、ファラオはかみ化身けしんという思想しそうくずれた。

備考びこう[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

太陽たいよう円盤えんばんあたませたラー・ホルアクティ。そのうえには2つのウジャトがえがかれている。(ルーヴル美術館びじゅつかんぞう
  1. ^ 『エジプト神話しんわ』31-32ぺーじ
  2. ^ 図説ずせつ エジプトのかみ事典じてん』(新装しんそうばん) 71ぺーじ
  3. ^ 『エジプト神話しんわ』132ぺーじ
  4. ^ 『エジプト神話しんわ』134、137ぺーじ
  5. ^ a b 『エジプト神話しんわ』137、139ぺーじ
  6. ^ 『エジプト神話しんわ』139ぺーじ
  7. ^ 『エジプト神話しんわ』140ぺーじ
  8. ^ 『エジプト神話しんわ』140-141、149ぺーじ
  9. ^ 『エジプト神話しんわ』293ぺーじ
  10. ^ 『エジプト神話しんわ』130ぺーじ
  11. ^ 『エジプト神話しんわ』16-17ぺーじ

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

しょうホルス
だいホルス