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人頭じんとうぜい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

人頭じんとうぜい(じんとうぜい/にんとうぜい、poll tax、capitation tax)とは、納税のうぜい能力のうりょく関係かんけいなく、すべての国民こくみん1人ひとりにつき一定いっていがく税金ぜいきんである[1]

概要がいよう

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税務ぜいむ調査ちょうさのコストが税制ぜいせいくらべてきわめてちいさいメリットがある。また、シカゴ学派がくはなどの市場いちば機能きのう重視じゅうしする立場たちばからは、人頭じんとうぜい税制ぜいせいくらべて市場いちば機能きのうゆがめることがもっとすくなく、そのてんにおいては理想りそうてきであるとされる。

一方いっぽうとみさい分配ぶんぱい重視じゅうしする立場たちばからは、所得しょとく消費しょうひ資産しさん状況じょうきょうかかわらず一律いちりつ課税かぜいすることはきわめて逆進ぎゃくしんてきであるため問題もんだいとされる。また、収入しゅうにゅう資産しさんもないひとから徴税ちょうぜいすることは現実げんじつてきにできないため、原則げんそくどおりに実施じっしすることは困難こんなんである。

現代げんだい政府せいふおおかれすくなかれさい分配ぶんぱい政策せいさくをとっており、2022ねんれい4ねん現在げんざいではこうした制度せいどっているくにはない。

歴史れきし

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古代こだいから封建ほうけんせいにかけての時代じだいにはおおくのくに導入どうにゅうされていたが、所得しょとくたいして逆進ぎゃくしんせいつよ税制ぜいせいであるため、現在げんざいでは導入どうにゅうしているくにはほとんどない。

所得しょとくくてもそこにんでいるだけで課税かぜいされるため、困窮こんきゅうした庶民しょみん逃亡とうぼうしたりすることもあった。ぎゃくにこれを利用りようして、特定とくてい民族みんぞく排斥はいせきする意図いと導入どうにゅうされることもあり、19世紀せいき後半こうはんカナダでは増加ぞうかした中国ちゅうごくけい排斥はいせき目的もくてき人頭じんとうぜいした事例じれいがある[2]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく南部なんぶでは、19世紀せいきまつから20世紀せいき中頃なかごろまで、人種じんしゅ差別さべつ目的もくてき人頭じんとうぜい支払しはらいを投票とうひょう資格しかく要件ようけんとするしゅうがあった。1964ねん発効はっこう憲法けんぽう修正しゅうせいだい24じょうにより、租税そぜい滞納たいのう理由りゆうとする投票とうひょうけん剥奪はくだつ禁止きんしされた。

古代こだいローマには、人頭じんとうぜい土地とちぜい融合ゆうごうしたカピタティオ・ユガティオスせいがあり、中世ちゅうせいヨーロッパロシアにも存在そんざいしていた。

中国ちゅうごくでは、かつて人頭じんとうぜい相当そうとうするくちさんちからやくがあり、ひとし田制たせいにおいてはちょう単位たんい租庸調そようちょうされていたが、780ねんりょう税法ぜいほうにより資産しさんがくへの課税かぜい移行いこうしている。

イスラームしょ王朝おうちょうでは、ジズヤ(jizya)がられている。ジズヤはムスリム(イスラム教徒きょうとでないもの)にたいして一定いってい程度ていど人権じんけん保障ほしょう見返みかえりとしてせられるもので、ムスリムにたいしイスラームの優位ゆうい誇示こじする効果こうかがあった。ムスリムがイスラームへ改宗かいしゅうした場合ばあいには免除めんじょされた(ウマイヤあさ時代じだいには改宗かいしゅうした場合ばあいでも徴収ちょうしゅうされた)。サウジアラビアなど現代げんだいイスラム教いすらむきょうこくでは国民こくみんにはザカート外国がいこくじんにはザカートと同等どうとう税率ぜいりつのジズヤをしている[3]

イギリスでは、ひゃくねん戦争せんそう戦費せんぴ調達ちょうたつのためされた人頭じんとうぜい反対はんたいして、1381ねんワット・タイラーのらんきた。ちか事例じれいではサッチャー首相しゅしょう1989ねん4がつよりスコットランドで導入どうにゅうし、いで1990ねん4がつからはイングランドとウェールズでも実施じっしされたが国民こくみんもう反発はんぱつ1993ねん3がつ廃止はいしされた。

2014ねんにイラクとシリアの一部いちぶ実効じっこう支配しはいする過激かげき組織そしきISILが、支配しはい地域ちいきないキリスト教徒きりすときょうとたいして人頭じんとうぜい要求ようきゅうした事例じれいがある。これは先述せんじゅつのジズヤとからみ、復古ふっこてきなイスラーム支配しはい目指めざすものと指摘してきされた[4]

日本にっぽん

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日本にっぽん琉球りゅうきゅうでは、薩摩さつま支配しはい琉球りゅうきゅう王国おうこくによりさきとう諸島しょとう宮古みやこ八重山やえやま)において「せいあたま(しょうず)」とばれる15さいから50さいまで(かぞどし)の男女だんじょ対象たいしょう1637ねんから制度せいどされ、年齢ねんれい性別せいべつ身分みぶん居住きょじゅう地域ちいき耕地こうち状況じょうきょうむら)をわせた算定さんていだかもとづくみつぎおさめされた。このせいあたま廃藩置県はいはんちけんこう旧慣きゅうかん温存おんぞんさくにより存続そんぞくしたが、さきとう沖縄おきなわ社会しゃかい運動うんどうにより内務ないむ大臣だいじん井上いのうえかおるうったられ、世論せろん後押あとおしもだい8かい帝国ていこく議会ぎかいにおいて1903ねん明治めいじ36ねん廃止はいし日本にっぽん本土ほんど同様どうよう地租ちそえられた[5]。 なお、琉球りゅうきゅうでは宮古みやふるとう八重山諸島やえやましょとうにのみ人頭じんとうぜいかれたとのせつがあるが、間違まちがいであり、実際じっさいには本島ほんとうでも同様どうよう人頭じんとうぜいかれた[6]

学者がくしゃ見解けんかい

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経済けいざい学者がくしゃスティーヴン・ランズバーグは「ぜいはほとんどつねぜんよりもあくである。1ドル徴収ちょうしゅうするには、だれかから1ドルげなければならない。政策せいさくぜんよりあくをなすほうおおきい場合ばあい、それは効率こうりつでありなげかわしいことである。理論りろんてきにはエコノミストはだれもが一定いっていがく納税のうぜいする人頭じんとうぜいこのましいとするが、現実げんじつには効率こうりつ解決かいけつさくとしては極端きょくたんぎるとかんがえる」と指摘してきしている[7]

日本にっぽん

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経済けいざい学者がくしゃ竹中たけなか平蔵へいぞう人頭じんとうぜい導入どうにゅう言及げんきゅうしているが、一方いっぽう政策せいさくてきには実現じつげん不可能ふかのうだともべている[8]

国民こくみん年金ねんきん保険ほけんりょう実質じっしつてき人頭じんとうぜいになっているという批判ひはんがある[9]経済けいざい学者がくしゃ飯田いいだ泰之やすゆきは「日本にっぽん国民こくみん年金ねんきん保険ほけんりょうは、経済けいざい状況じょうきょう関係かんけいなくまってしまう。年金ねんきんシステムは逆進ぎゃくしんてきである」と指摘してきしている[10]

その

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  • 沖縄おきなわけん宮古島みやこじま平良たいらには「人頭じんとうぜいせき」という石柱せきちゅうがあり、このいしたかさ(142 - 145センチメートル)にまで島民とうみん成長せいちょうすると人頭じんとうぜいされたという伝承でんしょうがある[11]年齢ねんれいではなく身長しんちょうによる課税かぜい伝承でんしょう)が、このいわゆる「人頭じんとうぜいせき」は「ブバカリ(りょういし」とばれたために、人頭じんとうぜいむすけられたものであるが、近年きんねんでは天空てんくうじょう物体ぶったい計測けいそくするためのいしであるとされ、完全かんぜん否定ひていされている[12]


脚注きゃくちゅう

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  1. ^ "人頭じんとうぜい". ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん しょう項目こうもく事典じてん. コトバンクより2022ねん2がつ2にち閲覧えつらん
  2. ^ 黒沢くろさわじゅん (2014ねん4がつ19にち). 中国人ちゅうごくじんコミュニティー動揺どうよう カナダ、富裕ふゆう外国がいこくじんへの移民いみんプログラム大幅おおはば見直みなおし”. 産経新聞さんけいしんぶん. https://web.archive.org/web/20140419012753/http://sankei.jp.msn.com/world/news/140419/amr14041910060006-n1.htm 2014ねん4がつ29にち閲覧えつらん 
  3. ^ 税制ぜいせい | サウジアラビア - 中東ちゅうとう - くに地域ちいきべつる - ジェトロ”. www.jetro.go.jp. 2021ねん7がつ26にち閲覧えつらん
  4. ^ “「イスラムこく」が殺害さつがい示唆しさキリスト教徒きりすときょうと脱出だっしゅつ. 読売新聞よみうりしんぶん. (2014ねん7がつ19にち). https://web.archive.org/web/20140725154023/http://www.yomiuri.co.jp/world/20140719-OYT1T50113.html 2014ねん7がつ19にち閲覧えつらん 
  5. ^ 高良こうら倉吉くらよし人頭じんとうぜい」(『国史こくしだい辞典じてん 15』(吉川弘文館よしかわこうぶんかん、1996ねんISBN 978-4-642-00515-9
  6. ^ 定額ていがく人頭じんとうはいがたみつぎ制度せいど宮古みやこ八重山やえやま悲惨ひさん要因よういん” (PDF). p. 62. 2022ねん2がつ23にち閲覧えつらん
  7. ^ スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済けいざいがく-日常にちじょう生活せいかつなぞをやさしくかす』 日本経済新聞社にほんけいざいしんぶんしゃ日経にっけいビジネス人文じんぶん〉、2004ねん、106ぺーじ
  8. ^ 経済けいざいってそういうことだったのか会議かいぎだい3しょう 1999ねん日経にっけいビジネス人文じんぶん
  9. ^ 日本にっぽん経済けいざい余命よめい3ねんだい3しょう 社会しゃかい保障ほしょうをどうすべきか PHP研究所けんきゅうじょ (2011)
  10. ^ 飯田いいだ泰之やすゆき雨宮あまみやしょりんだつ貧困ひんこん経済けいざいがく筑摩書房ちくましょぼう〈ちくま文庫ぶんこ〉、2012ねん、99ぺーじ
  11. ^ 詳説しょうせつ 日本にっぽん図録ずろく だい5はん山川やまかわ出版しゅっぱんしゃ 2011ねん 214ぺーじ
  12. ^ 上原うえはらけんぜん貿易ぼうえき展開てんかい」『しん琉球りゅうきゅう近世きんせいへんうえ)』148 ぺーじ(琉球新報りゅうきゅうしんぽうしゃ、1989)。

関連かんれん項目こうもく

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