国家こっか代理だいり官かん

国家こっか代理だいり官かん（こっかだいりかん、独どく: Reichsstatthalter）は、1933年ねんから1945年ねんまで存在そんざいしたナチス・ドイツの行政ぎょうせい機関きかんである。国家こっか代理だいり官かん府ふはドイツ国内こくないの各かく州しゅうや地域ちいきの総督そうとく府ふとして機能きのうしており、行政ぎょうせい区域くいきは現行げんこうの州しゅうの区域くいきにほぼ対応たいおうしていた^[1]。また、この行政ぎょうせい区くは帝国ていこく大だい管区かんくと同等どうとうの権限けんげんを有ゆうしていた。

概説がいせつ[編集へんしゅう]

国家こっか代理だいり官かんは、政府せいふ中枢ちゅうすうの代表だいひょう者しゃとして、州しゅうの監督かんとく、管理かんりを委託いたくされ、1933年ねん 3月31日にちに暫定ざんてい的てきに公布こうふされた全国ぜんこく調整ちょうせい法ほうのもと、各かく地域ちいきにおける強制きょうせい的てき同一どういつ化かを担当たんとうした。彼かれらの政治せいじ的てき地位ちいは国くにの首相しゅしょうあるいは州しゅう首相しゅしょうに相当そうとうしており、場合ばあいによっては個人こじんの独断どくだんでその権力けんりょくを行使こうししていた。

日本語にほんごでは、「国家こっか代理だいり官かん」以外いがいにも、「ライヒ代官だいかん」、「州しゅう総督そうとく」、「帝国ていこく総督そうとく」、「帝国ていこく州しゅう知事ちじ」、「国家こっか地方ちほう長官ちょうかん」などの訳語やくごがある。

権力けんりょく機構きこう[編集へんしゅう]

任命にんめいされた国家こっか代理だいり官かんは、ドイツ国こく首相しゅしょう兼けん総統そうとうであるアドルフ・ヒトラーによって作成さくせいされた政策せいさくが遵守じゅんしゅされることを保証ほしょうする任務にんむを負おい、以下いかの権限けんげんを有ゆうしていた。

州しゅう政府せいふ議長ぎちょうの任命にんめいと解任かいにん権けん
州しゅう議会ぎかいの解散かいさんと選挙せんきょの決定けってい
州法しゅうほうの起草きそうと公布こうふ
州しゅうの役人やくにんと裁判官さいばんかんの任免にんめん権けん
恩赦おんしゃの実施じっし

プロイセン州しゅう[編集へんしゅう]

当時とうじのプロイセン州しゅうでは、国家こっか宰相さいしょう（ドイツ国こく首相しゅしょう）が国家こっか代理だいり官かんを兼任けんにんしていた。これにより、プロイセンの二に重じゅう権力けんりょく的てきな機構きこうは終おわりを迎むかえるはずと見みなされており、州しゅうの大だい部分ぶぶんは最終さいしゅう的てきに国家こっかに統一とういつされるものとされた。プロイセンにおける国家こっか代理だいり官かんの地位ちいは、1933年ねん4月がつ10日とおかにヒトラーによって、州しゅう首相しゅしょうのヘルマン・ゲーリングに委任いにんされた。

1934年ねん11月27日にち以降いこう、プロイセンでは「国家こっかの再編さいへん」が完遂かんすいされるまで、上級じょうきゅう大統領だいとうりょう（Oberpräsident）が帝国ていこく政府せいふ（Reichsregierung）の常任じょうにん代表だいひょうに任命にんめいされた。彼かれらは、国くにおよび各州かくしゅう当局とうきょくに優先ゆうせんするほどの権力けんりょくを有ゆうしており「政策せいさくに関かんする問題もんだいの最終さいしゅう的てきな措置そち」を行使こうしすることができた。さらに、緊急きんきゅうの場合ばあいには一時いちじ的てきに命令めいれいの発令はつれいが許可きょかされていた。

ザールプファルツとヴェストマルク[編集へんしゅう]

1935年ねん3月1日にち、ザール地域ちいきの再編さいへんの後のち、ザールブリュッケンに新あたらしい行政ぎょうせい当局とうきょくが設置せっちされ、ザール＝プファルツ大だい管区かんくの大だい管区かんく指導しどう者しゃでバイエルン・プファルツ（ドイツ語ご版ばん）国家こっか代理だいり官かんであるヨーゼフ・ビュルケルが統治とうちにあたった。1944年ねん9月28日にちにビュルケルが亡なくなった後のち、大だい管区かんく宣伝せんでん指導しどう者しゃ（Gaupropagandaleiter）のヴィリー・シュテーア（ドイツ語ご版ばん）が一時いちじ的てきにこれを引ひき継つぎ、1945年ねん1月がつ30日にちに正式せいしきに後任こうにんとして任命にんめいされた。

当局とうきょくの名称めいしょうは何なん度どか変更へんこうされた。

1935年ねん2月がつ11日にち：ザール地域ちいき再編さいへんのための国家こっか弁務べんむ官かん（Reichskommissar für die Rückgliederung des Saargebiets）
1936年ねん6月17日にち：ザールラント国家こっか弁務べんむ官かん（Reichskommissar für das Saarland）
1940年ねん4月がつ8日にち：ザールプファルツ国家こっか弁務べんむ官かん（Reichskommissar für die Saarpfalz）（ザールラントとプファルツのバイエルン行政ぎょうせい区くの暫定ざんてい的てきな合併がっぺいによる）
1941年ねん3月11日にち：ヴェストマルク国家こっか代理だいり官かん府ふ（Reichsstatthalter in der Westmark）（ザールラント、バイエルン・プファルツ行政ぎょうせい区く、アルザス＝ロレーヌ地域ちいきの共同きょうどう行政ぎょうせい区くの暫定ざんてい的てき合併がっぺい）

その他たの各州かくしゅう・地域ちいき[編集へんしゅう]

国家こっか代理だいり官かん府ふは、プロイセンを除のぞく全国ぜんこくの主要しゅよう地域ちいきに設立せつりつされた。人口じんこう200万まん人にん未満みまんの地域ちいきでは、他たの隣接りんせつ地域ちいきと合併がっぺいされた（オルデンブルクとブレーメン、メクレンブルクとリューベック、リッペとシャウムブルク＝リッペなど）。

ほとんどの場合ばあい、ヒトラーはナチ党とうの大だい管区かんく指導しどう者しゃを国家こっか代理だいり官かんに任命にんめいしていたが、例外れいがいとして、プロイセン州しゅうのゲーリングとバイエルン州しゅうのフランツ・フォン・エップの両りょう名なは大だい管区かんく指導しどう者しゃの地位ちいを有ゆうしていなかった。

これらの国家こっか代理だいり官かんや大だい管区かんく指導しどう者しゃによる州しゅう政府せいふへの介入かいにゅうは、ナチ党とうによる強制きょうせい的てき同一どういつ化かに重要じゅうような役割やくわりを担になっていた^[2]。しかし、これは同時どうじに国家こっか代理だいり官かんと大だい管区かんく指導しどう者しゃとの間あいだの権力けんりょく闘争とうそうをもたらす要因よういんとなった。