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軟膏なんこうざい

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軟膏なんこうざい

軟膏なんこうざい(なんこうざい、オイントメント、えい: ointments)、皮膚ひふ外用がいようざい(ひふがいようざい)とは、皮膚ひふ疾患しっかん治療ちりょうひとつである皮膚ひふ外用がいよう療法りょうほう使用しようされる医薬品いやくひんはん固形こけい製剤せいざいである。

有効ゆうこう成分せいぶんワセリンなどのもとざいわせで構成こうせいされており、もとざいなか分散ぶんさんして有効ゆうこう成分せいぶん存在そんざいするかたちになっている。有効ゆうこう成分せいぶんもとざいをそのまま混合こんごうするか、溶媒ようばいかすか加熱かねつ融解ゆうかいさせて混合こんごうしてせいする。チューブプラスチックガラスびんめられて流通りゅうつうしている。

軟膏なんこう」の狭義きょうぎ意味いみでは、ワセリンなどの油脂ゆしせいもとざいもちいたものにかぎられるが、日本にっぽん薬局方やっきょくほう規定きていでは乳剤にゅうざいせいもとざいもちいたクリームざいふくまれている。ここでは、狭義きょうぎ軟膏なんこうかぎらず皮膚ひふ外用がいようする薬剤やくざい一般いっぱんにつき解説かいせつする。

もとざい

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皮膚ひふ付着ふちゃくし、有効ゆうこう成分せいぶんなが皮膚ひふにとどめるはたらきをする。りやすく、皮膚ひふたいする刺激しげきせいがなく、有効ゆうこう成分せいぶん安定あんていせい影響えいきょうしないものがもとめられる。有効ゆうこう成分せいぶんもとざいとの親和しんわせい有効ゆうこう成分せいぶん吸収きゅうしゅう速度そくど影響えいきょうする。おおきく疎水そすいせい親水しんすいせいもとざいけられる。

疎水そすいせいもとざい油脂ゆしせいもとざい

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一般いっぱん軟膏なんこう(なんこう)とばれているものである。狭義きょうぎ意味いみでの「軟膏なんこう」である。みずをはじき皮膚ひふ皮膜ひまく保護ほご作用さよう期待きたいできるが、あらとしにくいという欠点けってんにもなる。鉱物こうぶつ由来ゆらいのワセリンやパラフィンポリエチレン樹脂じゅし流動りゅうどうパラフィンでゲルしたプラスチベース生物せいぶつ由来ゆらいミツロウなどがもちいられる。

  • ワセリンという日本語にほんご商標しょうひょうとして登録とうろくされておらず、一般いっぱんめいとして日本にっぽん薬局方やっきょくほうにも記載きさいされている。しかしこれが英名えいめいの Vaseline だと商標しょうひょうとなるため注意ちゅうい必要ひつよう

親水しんすいせいもとざい

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乳剤にゅうざいせいもとざい
一般いっぱんに「クリーム」とばれている。油脂ゆしみず乳化剤にゅうかざい乳化にゅうかしたもので、乳化剤にゅうかざいとしてはかげイオンがたせっけんるいイオンがたポリエチレングリコールのエステルるいなどがもちいられる。水中すいちゅうあぶらがた(o/wがた)とあぶらちゅうみずがた(w/oがた)にかれる。水中すいちゅうあぶらがた(o/wがた、oil in water)を「親水しんすい軟膏なんこう」、あぶらちゅうみずがた(w/oがた、water in oil)を「吸水きゅうすい軟膏なんこう」ということもある。有効ゆうこう成分せいぶんけるそう外層がいそうとなったほう放出ほうしゅつはやい。o/wがた水分すいぶん蒸発じょうはつするとw/oがたうたてそうする。羊毛ようもうからられるラノリンコレステロールふくむので乳化剤にゅうかざいくわえなくともみず乳化にゅうかする。乳剤にゅうざいせいもとざいは、油脂ゆしせいもとざいくらべると展延てんえんせいがよく、容易よういあらとすことができ使つか勝手がってがよいが、粘膜ねんまくびらんめんなどにもちいると乳化剤にゅうかざい刺激しげきによりかぶれたりすることがある。
水溶すいようせいもとざい
一般いっぱんには水溶すいようせい軟膏なんこう(すいようせいなんこう)とばれる。ポリエチレングリコール(マクロゴール)るいなどをもとざいとしたもの。有効ゆうこう成分せいぶんとの混合こんごう容易よういで、皮膚ひふからの分泌ぶんぴつぶつをよく吸収きゅうしゅうするが、皮膚ひふとの接触せっしょくせいおとり、用法ようほうが『ガーゼにのばして貼付ちょうふする』となっているものがおおい。
かかにごせいもとざい
ゲルゼリージェル名称めいしょう流通りゅうつうしている。吸水きゅうすいして膨潤し軟膏なんこうさま状態じょうたいになるセルロースなどをもとざいとしたもの。粘膜ねんまくやびらんめんによく固着こちゃくするため、創傷そうしょう部位ぶい軟膏なんこうもちいられる。

特殊とくしゅざいがた

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のりあぶら(リニメント)
どろじょう外用がいようざいで、微細びさいくだいた有効ゆうこう成分せいぶんグリセリンなどとともみずぜてせいする。みずりょうやし液状えきじょうにするとかかにごせいローションざいになる。使つかいにくいので現在げんざいではあまりもちいられない。フェノール・亜鉛あえんはなリニメント(カチリ)ふるくからよくられている。
どろあぶら(パスタ)
軟膏なんこう類似るいじ製剤せいざいであるが、軟膏なんこうよりかたく、皮膚ひふ直接ちょくせつ塗布とふするのではなく、ガーゼなどにひろげて貼付ちょうふしてもちいる。「イソジン・シュガー・パスタ」などがある。
従来じゅうらい滲出しんしゅつえきおお創傷そうしょう熱傷ねっしょうには、やむをえず含水りょうすくなく、吸水きゅうすいせいのあるパスタ製剤せいざい使つかうこともおおかったが、近年きんねんでは吸水きゅうすいせいポリマーをふく創傷そうしょう被覆ひふくざい開発かいはつにより、細胞さいぼう傷害しょうがいせいのある薬剤やくざい使つかわれない傾向けいこうにある。[1]
硬膏こうこう
どろあぶらよりもさらにかた固形こけいちかいもの。スピールあぶら代表だいひょうれい皮膚ひふってもちいる。
ローション・スプレー
粉末ふんまつざい液体えきたい混合こんごうしたもの。ヒルドイド・ローションやニゾラール・ローション(こうきんやく)、トプシム・ローション(ステロイド外用がいようざい)などがある。

特殊とくしゅ製剤せいざい

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口腔こうくうよう軟膏なんこうざい
口腔こうくう粘膜ねんまくによく付着ふちゃく唾液だえきなどでながされにくいことがもとめられる。疎水そすいせいもとざいセルロースるいパラフィンなどをくわえて粘着ねんちゃくせいたかめてある。
軟膏なんこうざい
鋭敏えいびん粘膜ねんまく使用しようするため、無菌むきんであること、粘膜ねんまく刺激しげきがないこと、から吸収きゅうしゅうされないこと、すべりがよいことなどがもとめられる。もとざいとしては、軟稠せい眼科がんかようワセリン(プロペトなど)、プラスチベースがよくもちいられる。有効ゆうこう成分せいぶん固形こけいのまま微粉びふんまつにして分散ぶんさんさせる場合ばあいには流動りゅうどうパラフィン、液状えきじょう場合ばあいには精製せいせいラノリンがもちいられる。

保存ほぞんざい

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軟膏なんこうざいとく乳剤にゅうざいせい軟膏なんこうざい微生物びせいぶつ汚染おせんけやすいため、パラオキシ安息香あんそくこうさんエステルデヒドロ酢酸さくさんなどを防腐ぼうふざいとしてくわえる。また油性ゆせいもとざい酸化さんかしやすいので、ジブチルヒドロキシトルエントコフェロールアスコルビンさんなどをこう酸化さんかざいとしてくわえる。

薬効やっこう成分せいぶん

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薬効やっこうしめ成分せいぶんである。ビタミンざいステロイドざいNSAIDs抗生こうせい物質ぶっしつこうきんざい免疫めんえき抑制よくせいざいなど、多種たしゅ多様たよう種類しゅるいがある。

出典しゅってん

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  1. ^ 夏井なついあつし創傷そうしょう被覆ひふくざい各論かくろん

関連かんれん項目こうもく

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