(Translated by https://www.hiragana.jp/)
石臼 - Wikipedia コンテンツにスキップ

石臼いしうす

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
挽臼ひきうすから転送てんそう
食材しょくざい製粉せいふんするためネパールじん女性じょせい石臼いしうす使つかっている様子ようす
スコットランド石臼いしうす上石かみいしノース・エアシャーのダルガーヴェンミル民俗みんぞく博物館はくぶつかん
食材しょくざい製粉せいふんするのに使用しようされた、古代こだいネパール石臼いしうす
現代げんだいでも道具どうぐであたりまえの日用にちよう道具どうぐとしてられている石臼いしうす。3セットの石臼いしうすが、かさねていてある。 これらの石臼いしうすはばわずか30cm程度ていどである。(2010ねん中国ちゅうごく海南かいなんしょううみこうにある市場いちばなかにある道具どうぐ店頭てんとうにて。)

石臼いしうす(いしうす、えい: quern-stones[1])とは、いしせいうすのこと。

概要がいよう

[編集へんしゅう]

石臼いしうすは、いしでできたうすであり、さまざまな素材そざいいて[2]製粉せいふんするための道具どうぐである。

石臼いしうすは、上下じょうげいちついのペアで使用しようされる[3]一般いっぱん石臼いしうすでは、下部かぶ静止せいししたいしが「固定こていうす」とばれ、上部じょうぶ可動かどうするいしは「回転かいてんうす」とばれる。中央ちゅうおうあなは「投入とうにゅうこう(ものれ)」とばれるもので、ここから穀物こくもつなどがうす内側うちがわおくられる。また、わきしゅ差込さしこみあながあって回転かいてんうすまわすことができる[4]

歴史れきし

[編集へんしゅう]

こうした石臼いしうすしん石器せっき時代じだい穀物こくもつ粉末ふんまつくために最初さいしょ使用しようされた[5]。この意味いみでは、この時代じだい石臼いしうす考古学こうこがく研究けんきゅう対象たいしょうともなり、(考古学こうこがくてき意味いみでの)「石器せっき」でもある。

しん石器せっき時代じだい後期こうき旧石器時代きゅうせっきじだい人々ひとびとは、石臼いしうす使つかって穀物こくもつ根菜こんさいなどをこなきしてからつくった食品しょくひん消費しょうひしていた[6]後年こうねんになると食品しょくひんだけでなく、顔料がんりょうせいまえ鉱石こうせき粉砕ふんさいする目的もくてきでも石臼いしうすもちいられるようになった。こうした石臼いしうすには「ひきうす」と「つきうす」がある[7][8]

西洋せいよう石臼いしうすは、サドルカーンばれる磨臼すりうす(すりうす、学術がくじゅつてきにはいしさら)からはじまり、やがて上石かみいし手動しゅどう平行へいこう回転かいてんさせるロータリーカーンばれる石臼いしうす出現しゅつげんする[7]。その手動しゅどうではなく動力どうりょくもちいた「碾臼ひきうす」(ひきうす)ことミルストーン開発かいはつされる[7]

日本にっぽん回転かいてんしき石臼いしうす伝来でんらいしたのは『日本書紀にほんしょき』によると7世紀せいきころといわれており、鎌倉かまくら時代ときよから室町むろまち時代ときよにかけて抹茶まっちゃ道具どうぐとして上流じょうりゅう階級かいきゅう普及ふきゅうした[8]石工せっこう技術ぎじゅつ発達はったつとともに江戸えど時代じだいには民衆みんしゅうにも普及ふきゅうした[8][9]

現代げんだいでも石臼いしうす使つかわれつづけており、電力でんりょく供給きょうきゅうをあまりてにできない地域ちいきなどでは石臼いしうすいま製粉せいふんのための主要しゅよう道具どうぐである。また高速こうそく回転かいてんこなにして風味ふうみちてしまうような上質じょうしつ食品しょくひんでは、高速こうそく回転かいてんによって食品しょくひん瞬間しゅんかんてき高温こうおんになってしまうのをけ、あえて石臼いしうすこなにする製法せいほうたか評価ひょうかされることもつづいている。たとえばちゃ名産めいさんの「宇治うじ」の抹茶まっちゃは、現在げんざいでも石臼いしうすによってちゃかれて(「石臼いしうすき」)抹茶まっちゃとなっている。石臼いしうす抹茶まっちゃつくったほうがかおりがく、最高さいこう抹茶まっちゃ石臼いしうすき、という評価ひょうかになっている。むかしとのちがいとっても、動力どうりょく手動しゅどうから電動でんどう電気でんきモーター)になった、というくらいのちがいでしかない。

基本きほん設計せっけい

[編集へんしゅう]

上石かみいし一般いっぱんてきめん形状けいじょうで、下石おろじとつめん形状けいじょうである。ふるいゲールことわざに「回転かいてんうすへこんでいるとき石臼いしうす最高さいこう成果せいかをあげる」[10]とあり、うえは凹面でした凸面とつめんというのがのぞましい形状けいじょうである。時々ときどきリンズ木片もくへん(またはべつ素材そざい)として存在そんざいし、中央ちゅうおう軸受じくう機構きこうとして機能きのうしつつも[11]穀物こくもつなどを粉砕ふんさいめん供給きょうきゅうできるようになっている。上石かみいしには、ものれの周囲しゅうい隆起りゅうきした縁取へりとりのはいじょう領域りょういきがあるものもあった[12]大半たいはん回転かいてんうすには上面うわつらしゅあながあり、利用りようしゃぼう垂直すいちょくてて使つかうことで、うす回転かいてんさせることが可能かのうとなる[13]

ものれに投入とうにゅうされた素材そざいは、上石かみいし下石おろじ接触せっしょくめん回転かいてんによる摩擦まさつくだかれる[8][3]日本にっぽんでは佐渡さど地方ちほうなどをのぞいてはん時計とけいまわりのうすである[8]接触せっしょくめんには4から8ふんきざまれており、うえうすの「ものれ」から投入とうにゅうされた原料げんりょう円周えんしゅう外側そとがわかってすすみながらせんだん摩擦まさつにより粉砕ふんさいされる[3]関東かんとう九州きゅうしゅうでは6ふん西日本にしにほんには8ふんのものがおお[8]

材質ざいしつ

[編集へんしゅう]

石臼いしうす最適さいてきなタイプのいし玄武岩げんぶがんのような火成岩かせいがんである。これらには自然しぜんあら表面ひょうめんがあるが、穀物こくもつ容易ようい分離ぶんりしないので粉末ふんまつになる素材そざいあらつぶにならない。しかし、そのような岩石がんせきつね利用りようできるわけではなく、砂岩さがん珪岩石灰せっかいいわふく多種たしゅ多様たよう岩石がんせきから石臼いしうす製造せいぞうされている。

みなみレヴァントでは玄武岩げんぶがん石臼いしうす岩石がんせきから製造せいぞうされたものよりもこのまれたことが、ラターの調査ちょうさにより判明はんめいしている。かれ主張しゅちょうによると、玄武岩げんぶがん石臼いしうす長距離ちょうきょり輸送ゆそうされたものだったので、日々ひび実用じつようてき機能きのうにもかかわらずステータスシンボルとしても使つかわれていたという[14]

用途ようと

[編集へんしゅう]

穀物こくもつ

[編集へんしゅう]
カーンの上石かみいしホウィットホーン博物館はくぶつかん

石臼いしうすは、世界中せかいじゅうおおくの文明ぶんめい材料ざいりょう製粉せいふんするために使用しようされ、なかでも欧米おうべいではパンづくりよう小麦粉こむぎこつくるために穀物こくもつくカーンストーン(きの石臼いしうす)がもっと重要じゅうようだった。機械きかいされたかたち製粉せいふんとく水車みずぐるま風車かざぐるま出現しゅつげんしたときにそれらは一般いっぱんてきにミルストーン(碾臼ひきうす)とわり、動物どうぶつ碾臼ひきうす操作そうさするのにも使用しようされた。 しかしながら、西洋せいよう以外いがい文化ぶんか地域ちいきではきの石臼いしうす現在げんざいでも製造せいぞうされて普通ふつう使用しようされていることもおおく、世界せかい各地かくちにて機械きかいへの転換てんかんがなされるのは20世紀せいきごろである。

マヤ文明ぶんめい初期しょきに、ニシュタマリゼーション工程こうていは、かたくてじゅくしたトウモロコシみず石灰せっかいてん特徴とくちょうてきだった。そのようにしてニシュタマリを製造せいぞうし、それをメタテとばれるいしさらうえすりせき使つかってつぶすことにより、ひらたいパンケーキよう発酵はっこう生地きじつくった[15]

すくなくとも1まんねんまえ中国ちゅうごくでは小麦こむぎ小麦粉こむぎこ製粉せいふんするのにきの石臼いしうす使つかわれた。手動しゅどう小麦こむぎをこすることによる小麦粉こむぎこ製造せいぞうには数時間すうじかんかかった[16]中国ちゅうごくではしん石器せっき時代じだいにサドルカーンがられていたが、回転かいてんしき石臼いしうす戦国せんごく時代じだい (中国ちゅうごく)まで出現しゅつげんしなかった[17]

穀物こくもつ以外いがい

[編集へんしゅう]

民族みんぞくてき証拠しょうこメソポタミア文書ぶんしょによると、穀物こくもつはもちろんだが種子しゅし果物くだもの野菜やさい、ハーブ、香辛料こうしんりょうにく樹皮じゅひ色素しきそ粘土ねんどなど様々さまざま食品しょくひん無機むき物質ぶっしついしのひきうすやつきうす使つかって加工かこうされたことがしめされている[18]。さらに、石臼いしうす分析ぶんせきしたある研究けんきゅうで、一部いちぶうすがそれらのもとになった岩石がんせきとはことなり、砒素ひそビスマス痕跡こんせきがあったり、アンチモンのレベルがいわのものより10ばいたかいことがしめされた。これはおそらく、医薬品いやくひん化粧けしょうひん染料せんりょう製造せいぞう、または合金ごうきん製造せいぞうにおいてさえも石臼いしうす使用しようしていたためだと、その著者ちょしゃたちは結論けつろんけた[19]

採鉱さいこう採掘さいくつ金属きんぞく鉱石こうせき粉砕ふんさいには石臼いしうすひろ使用しようされた。 その目的もくてきは、精錬せいれんまえたとえば洗浄せんじょうによって分離ぶんりさせることが可能かのう微細びさい鉱石こうせき粒子りゅうし遊離ゆうりさせることにあった。 そのため古代こだいかね採掘さいくつでそれらがひろもちいられた。

偶発ぐうはつてき使用しよう

[編集へんしゅう]

暴力ぼうりょくもちいられたれいが、記載きさいされている(9:53; NRSV):「その女性じょせいアビメレクあたまうえ碾臼ひきうす上石かみいしげつけ、頭蓋骨ずがいこつくだいた」。

西洋せいよう石臼いしうす進化しんか

[編集へんしゅう]

ノッキングストーン(en)は少量しょうりょうのシリアル製造せいぞう使用しようされたものだが、最初さいしょ形態けいたいのサドルカーンに該当がいとうするものとされる。 これまででもっとむかしのものはシリアテル・アブ・フレイラ紀元前きげんぜんやく9000ねんさかのぼるものが発見はっけんされている[5]。その発展はってん回転かいてんしきうすであり、いくつかの形状けいじょうがある。

サドルカーン

[編集へんしゅう]

サドルカーンは日本にっぽんで「くらかたちせきさら」とやくされ、石臼いしうすというよりもいしさら範疇はんちゅうである[20]すりせききする平行へいこうゆらどうまたはてんどうにより(中央ちゅうおうがすりって)くらのようにえる形状けいじょうになる。古代こだいもっとひろ使用しようされたタイプであり、紀元前きげんぜん5世紀せいきから4世紀せいきにもっと効率こうりつてきなロータリーカーン(回転かいてんしきうす)にわっていった[21] 。サドルカーンようすりせきは、一般いっぱんてきにはだいたい円筒えんとうがた両手りょうて使用しようされるか、または半球はんきゅうがた片手かたて使用しようされる。これはつぶ動作どうさだけでなく粉砕ふんさい運動うんどう提供ていきょうし、小麦こむぎなど麦芽ばくがつぶ粉砕ふんさいするのによりてきしている。 麦芽ばくがけいではない穀物こくもつでサドルカーンから粉末ふんまつ製造せいぞうすることは容易よういではない。

ロータリーカーン

[編集へんしゅう]

その名前なまえしめすように、ロータリーカーンは材料ざいりょうつぶすのに円運動えんうんどう利用りようしており、これは上石かみいし下石おろじ両方りょうほう一般いっぱんてき円形えんけいだったことをしめしている。ロータリーカーンの上石かみいしはサドルカーンのすりせきよりはるかにおもく、麦芽ばくが以外いがい穀物こくもつ粉末ふんまつつぶすのに必要ひつよう重量じゅうりょう提供ていきょうしている。場合ばあいによっては、いし研削けんさくめんたがいにぴったりっており、上石かみいしはわずかに凹状で、したのものはとつじょうになっている。

はちがた

[編集へんしゅう]
はちがた回転かいてんうすと、(したがわには)サドルストーンの展示てんじ。キースリー (ウェスト・ヨークシャー)のクリフ・キャッスル博物館はくぶつかん

このタイプでは上石かみいしはん球形きゅうけいまたはパンのかたちをしていて、研削けんさくめんまであなからちてくる穀物こくもつ保持ほじするための円錐えんすいホッパー(ものれ)を中央ちゅうおうそなえている。それはそこせき中央ちゅうおうあなうピボット(回転かいてんじくとなる支点してん)でてい位置いち保持ほじされる。またうえせきには、傾斜けいしゃがきついめん水平すいへいふか差込さしこみあながあり、そこに上石かみいし回転かいてんまたは振動しんどうさせるためのしゅとして使つかわれるくぎえられる。これがブリテン諸島しょとうあらわれたロータリーカーンの最初さいしょがたである。それは鉄器てっき時代じだいなかば(紀元前きげんぜん400-300ねんごろ)にイギリスに到着とうちゃくし、おそらく紀元前きげんぜん2世紀せいきしばらくのちにスコットランドからアイルランドのきた半分はんぶんひろがった[22]

円盤えんばんがた

[編集へんしゅう]

調節ちょうせつ可能かのう円盤えんばんがたのロータリーカーンは、はちがたよりおおきくてたいらで円盤えんばんじょう石臼いしうすである。下石おろじ完全かんぜんあなけられ、上石かみいし上面うわつらにあるあさ差込さしこみあなれたながしゅ回転かいてんした。それらは2500ねんまえスペインまれたとかんがえられており[23]紀元前きげんぜん200ねんごろにスコットランドに到着とうちゃくしたようである。この鉄器てっき時代じだいがたは、有史ゆうし時代じだいにもまだ使つかわれていた調整ちょうせい可能かのうハイランド石臼いしうすによくている[24]

石臼いしうす右側みぎがわ女性じょせいのエラセイド(ハイランド地方ちほう民族みんぞく衣装いしょう)のうえにあるのは、おそらく穀物こくもつるため。彼女かのじょ自分じぶんひだりにあるボウルから穀物こくもつ石臼いしうす供給きょうきゅうする。トマス・ペナント1772ねん書籍しょせき『スコットランド旅行りょこう』からの木版もくはん

ガーネットは1800ねんのスコットランド旅行りょこうで、石臼いしうす使用しようについてつぎのように説明せつめいしている。「うす直径ちょっけいやく20インチの、一般いっぱんてき砂岩さがんまたは花崗岩かこうがんの2つの円形えんけいいしでできている。下石おろじにはいただきまるまったくぎがあり、このうえにある上石かみいし上部じょうぶおおきいあな固定こていされた木片もくへんによってしたのものとまさにれあうよう上手うまくバランスがとれており、しかしそれはあなめてはおらず、じょう供給きょうきゅうするための空間くうかんがそれぞれのがわのこされている。石臼いしうすはとてもくバランスがれていて、なかにトウモロコシがないときだと、ふたつのいし接触せっしょくから若干じゃっかん摩擦まさつがあるが、それでも非常ひじょうちいさい運動うんどうりょういく回転かいてんする。トウモロコシが乾燥かんそうすると、二人ふたり女性じょせい地面じめんすわり、二人ふたり女性じょせいあいだうすかれた。一方いっぽうがトウモロコシを投入とうにゅうして、もう一方いっぽう石臼いしうすまわす。ケルトのきょくをずっとうたいながら、時々ときどきたがいにわった。」[25]

ミニチュアがた

[編集へんしゅう]

直径ちょっけい200mm以下いかで、大雑把おおざっぱ外見がいけんから丁寧ていねい仕上しあげまでと多彩たさい垂直すいちょくしゅ差込さしこみあなそなえていることがおおく、過去かこにはおもりなどとして見過みすごされてきたあたらしい階級かいきゅううす確認かくにんされている。あらゆるてんで、それらはフルサイズの石臼いしうすのようであり、それらは少量しょうりょう種子しゅし鉱物こうぶつ、ハーブをつぶすために使用しようされたことをしめ典型てんけいてき摩耗まもう兆候ちょうこうられる。それらが玩具おもちゃとしてつくられた可能かのうせいについてはひくいとられている[26]

ミルストーン

[編集へんしゅう]
ホルゲート風車かざぐるま(en)内部ないぶにある一対いっついのミルストーン

ミルストーンは、小麦こむぎ穀物こくもつくために動力どうりょくもちいた回転かいてんしき石臼いしうすで、日本語にほんごでは「碾臼ひきうす」としるされる。回転かいてんうす固定こていうすからなるペア構造こうぞう特性とくせいおよび用途ようときのロータリーカーンと同様どうようである。ただしミルストーンの回転かいてんうすは、その駆動くどう機構きこう風力ふうりょく水力すいりょくうしおつとむなど)とつながっている主軸しゅじくまたはスピンドルのいただきにある「メイスヘッド」に固定こていされた、リンズという十字じゅうじがた金属きんぞくへんささえられている(後段こうだん名称めいしょう参照さんしょう)。

ミルストーンをつくるのにもっとてきしたいし種類しゅるいは、ブーアストン(buhrstone)とばれる珪質いわ、ざらついた質感しつかん多孔たこうしつだがかたくてきめこまかい砂岩さがん、あるいは珪した化石かせきふくんだ石灰岩せっかいがんである。

英国えいこく使用しようされたミルストーンにはいくつかの種類しゅるいがある。

  • 一塊ひとかたまりいしからした灰色はいいろかた砂岩さがんダービーシャー・ピークストーンは、大麦おおむぎくのに使用しようされた[27] 。この模造もぞうひんはピーク地方ちほう国立こくりつ公園こうえん(en)の境界きょうかいにて道標どうひょうかざりとして使用しようされている。ダービーシャー・ピークストーンはすぐに磨耗まもうして小麦粉こむぎこなかいしへん粉末ふんまつのこってしまうため、人間にんげん消費しょうひするための小麦粉こむぎこつくるにはのぞましいものではなく、一般いっぱんてきには動物どうぶつ飼料しりょうくのに使用しようされた。
  • フレンチ・ブーアストーンはこまかい研削けんさく使用しようされた。フレンチ・ブーアはフランス北部ほくぶマルヌ渓谷けいこく(en)からている。その石臼いしうす一塊ひとかたまりいしからされるのではなく、石膏せっこうでの裏打うらうちやてつバンドでのしょうきばめ固定こていをすることで石英せきえい部材ぶざいからてられる。イングランド南部なんぶでは、材料ざいりょういわ部材ぶざいとして輸入ゆにゅうされ、地元じもと工房こうぼう完全かんぜんなミルストーンにてられるだけだった[28]。なお、完成かんせいした回転かいてんうす軽量けいりょうがわほどこされたなまりおもさとのバランスをとる必要ひつようがあった[27]
  • エメリーこう部材ぶざいからつくられたコンポジット・ストーンは19世紀せいき導入どうにゅうされた。補助ほじょエンジンが採用さいようされたときに、利用りよう可能かのう高速こうそく研削けんさくによりてきしていることが判明はんめいした[27]

ヨーロッパでは、さらにべつ種類しゅるい石臼いしうす使用しようされた(こちらは英国えいこくでは一般いっぱんてきでなかった)。

みぞのパターン

[編集へんしゅう]
ミルストーンの基本きほんてきみぞ。これは回転かいてんうすで、固定こていうすにはリンズをささえる「スペイン十字じゅうじ(Spanish Cross)」がない。

碾臼ひきうす表面ひょうめんは、しゅみぞばれるふかみぞによって「ぶん」とばれる別々べつべつひらたい領域りょういき分割ぶんかつされている。しゅみぞからはなれていくとふくみぞばれるちいさなみぞがある。みぞは(材料ざいりょうくための)刃先はさき役目やくめをするとともに、いたこな石臼いしうすから地面じめんかわせやすくしている。

みぞぶんは「」とばれるかえしのパターンで配列はいれつされる。典型てんけいてき碾臼ひきうすは、6または8のぶんとなっている[31]かくうす表面ひょうめんにはのパターンがかえされている。それらがかいわせでかれる場合ばあい、そのパターンが一種いっしゅの「わせ」運動うんどうって、いしのせんだん研削けんさくといった作用さようす。つね日頃ひごろから使つか場合ばあいいし定期ていきてきみぞりをする必要ひつようがあり、すなわち切断せつだんめんするどたもつためのなおしをおこなう。

碾臼ひきうす均等きんとうにバランスをとる必要ひつようがあり、そしてうす同士どうしただしい隙間すきま(ふくみ)をることが品質ひんしつ小麦粉こむぎこすためには肝心かんじんである。

ミルストーンでの製粉せいふん

[編集へんしゅう]
1. ホッパー(投入とうにゅうこう) 2. シュー(くつがたざら) 3. クルックストリング(かぎつる) 4. シューハンドル 5. ダムゼル(撹拌かくはん) 6. アイ(中心ちゅうしんあな) 7. 回転かいてんうす 8. 固定こていうす 9. リンズ 10. メイス 11. ストーンスピンドル(軸受じくうせき) 12. 碾臼ひきうす支持しじだい 13. 木造もくぞうはり 14. そとわく (テンタリングギアは表示ひょうじされていない)

穀物こくもつ重力じゅうりょくによってホッパーから供給きょうきゅうシューに供給きょうきゅうされる。シューは軸受じくうせきうえにある撹拌かくはん(ダムゼル)のかいがわにあるシューハンドルによってうごかされ、そのシャフトが回転かいてんうすうごかす。この機構きこうは、供給きょうきゅう回転かいてんうす速度そくど依存いぞんさせることによって、ミルストーンへの穀物こくもつ供給きょうきゅう調整ちょうせいしている。穀物こくもつ供給きょうきゅうシューから回転かいてんうす中央ちゅうおうのアイとばれるあなとおってち、回転かいてんうす固定こていうすあいだかれる。かれたこなよこにあるうす同士どうし隙間すきまからてくる。うすそとわくゆか小麦粉こむぎこちるのをふせぎ、わりにふくろめやつぎなる処理しょりができる場所ばしょちゅう出口でぐちけられている。

回転かいてんうすは、スピンドル軸受じくうじょう十字じゅうじがたをした金属きんぞくせいリンズでささえられている。スピンドルは、テンタリングギア(レバーシステムを形成けいせいする1くみはり)またはスクリュージャッキによって保持ほじされ、それによって回転かいてんうすをわずかに上下じょうげさせることができ、うす同士どうし隙間すきま調整ちょうせいすることができる[32]回転かいてんうす重量じゅうりょうはかなりのもの(最大さいだい1500kg)で、この重量じゅうりょう多孔たこうしつせき起因きいんする切削せっさく作用さようおよび粉砕ふんさいプロセスをこすみぞパターンとわさっていく。

水力すいりょくうごかす一部いちぶ碾臼ひきうすPeirce Millなど)はやく125rpmで回転かいてんする[33]

古代こだいフィリピンのGilingang batoというべいよう碾臼ひきうすパンパンガしゅうミナリン

とく風力ふうりょくうごかす碾臼ひきうす場合ばあい回転かいてん速度そくど不規則ふきそくになる可能かのうせいがある。高速こうそくになるほどよりおおくの穀物こくもつ供給きょうきゅうシューからうす供給きょうきゅうされて、そのはや回転かいてん速度そくどのためよりはや穀物こくもつうすてくることになる。碾部ではうす同士どうしあいだ隙間すきまらす必要ひつようがあり、回転かいてんうすのよりおおきなおもさが穀物こくもつげ、かつ研削けんさく作用さようたかめてとぎつぶあらくなりぎるのをふせぐ。そのことが碾臼ひきうす負荷ふかたかめ、それできをおそくできるという利点りてんくわわる。ぎゃく穀物こくもつがあまりにも徹底てっていして製粉せいふんされてしまう場合ばあい適当てきとうなら回転かいてんうすげなければならないこともある。いずれにせよ、粉砕ふんさい最中さいちゅう石臼いしうすにはけっしてれるべきではなく、それをやるとうす急速きゅうそく摩耗まもうする原因げんいんとなる。回転かいてんうす上昇じょうしょう下降かこうさせる工程こうていは、はばし(テンタリング)などとばれる。 おおくの風車かざぐるまでは、テンタリングギアに遠心えんしん調しらべそく追加ついかすることで自動じどうがされている。

粉砕ふんさいされる穀物こくもつ種類しゅるいおよび利用りよう可能かのうちからおうじて、供給きょうきゅうシューの攪拌りょう変更へんこうしたりホッパー出口でぐちのサイズを調整ちょうせいすることにより、ミルストーンはうすおくりこむ穀物こくもつ供給きょうきゅうりょう事前じぜん調整ちょうせいすることが可能かのうである。ミルストーンによる製粉せいふんは、製粉せいふん段階だんかいおこなわれる現代げんだい大量たいりょう生産せいさんにおけるローラミル[注釈ちゅうしゃく 1]とは対照たいしょうてきに、1段階だんかい工程こうていである。

種類しゅるい石臼いしうす

[編集へんしゅう]

石臼いしうすほか形状けいじょうにはホッパー=ラバー(hopper-rubber)やポンペイのうすがあり、いずれも古代こだいローマひと使用しようされた。大型おおがた回転かいてんしき石臼いしうす通常つうじょう上石かみいしけられた延長えんちょうアームをかいしてロバやうまによってうごかされた。

装飾そうしょく碑文ひぶん

[編集へんしゅう]

追加ついか彫刻ちょうこくほどこされたおおくの上石かみいし発見はっけんされているが、装飾そうしょくかならずしも実用じつようてき機能きのう目的もくてきはなせるほど単純たんじゅんではない。デザインは円運動えんうんどう上石かみいし外観がいかんそそまれており、種子しゅし粉末ふんまつえる(あるしゅ変容へんよう魔法まほうのような)石臼いしうす機能きのうがこの家庭かていよう物品ぶっぴん敬意けいいとステータスの両方りょうほうしょうじさせているのかもしれない[35]。アイルランドで発見はっけんされた3つのはちがた石臼いしうすにはラ・テーヌ調しらべ装飾そうしょくられており[22]、イングランドやウェールズ出土しゅつどひんにもそのれいがある[36]差込さしこいた石臼いしうすおおくは、ものれやしゅ差込さしこみあなかこむモチーフの基本きほんパターンに沿った装飾そうしょくとなっている。一部いちぶにはものれをかこ不規則ふきそくパターンの装飾そうしょくがされた石臼いしうすもある[4]

スコットランドのドゥナドでは上石かみいし十字架じゅうじかられた石臼いしうす発見はっけんされた。 その十字架じゅうじかは、起源きげんをさかのぼると最終さいしゅうてきには5世紀せいきや6世紀せいきのローマおよびビザンチン前身ぜんしん形状けいじょう由来ゆらいがある。この石臼いしうすは「コスト」を反映はんえいして、その象徴しょうちょうてき価値かちおよび社会しゃかいてき意義いぎたかめたこう品質ひんしつ仕上しあがりがされている。 この十字架じゅうじかは、トウモロコシや結果けっかしょうじる粉末ふんまつサビキン麦角ばっかくきんなどの悪者わるものから「保護ほごする(魔除まよけてきな)」ためだった可能かのうせいがある。

様々さまざま伝説でんせつ石臼いしうす奇跡きせきてきちからあたえて、埋葬まいそうよう石棺せっかん墓石はかいしとしてさい利用りようされたものがいくつかつかっている。石臼いしうす埋葬まいそう関係かんけいは、生活せいかつ主食しゅしょくであるパンづくりの工程こうてい使用しようされることにおそらく理由りゆうがあり、そのためこわれたり使つかわれていない石臼いしうす象徴しょうちょうなされた可能かのうせいがある[37]。アイルランドオファリーけんアスローン近辺きんぺんのクロンマクノイズ(en)では、墓石はかいしつくえられた石臼いしうす発見はっけんされ、そこには装飾そうしょくのほか人物じんぶつめいSechnasachが西暦せいれき928ねん死去しきょられていた[38]。アイルランドにあるスカー湖上こじょう住居じゅうきょ(クランノグ)で大型おおがた石臼いしうす発見はっけんされた。

不思議ふしぎなモシュリンの石臼いしうす

[編集へんしゅう]

9世紀せいきにウェールズの修道しゅうどうネンニウス同国どうこく歴史れきしブリトンじん歴史れきし』をあらわし、そこでかれ英国えいこくの13の不思議ふしぎげており、そのなか日曜日にちようび以外いがいえず製粉せいふんする「モシュリン石臼いしうす」がある。それは地下ちか作業さぎょうしているとこえてくるもので、現地げんち名前なまえ「Auchenbrain」(ゲールより翻訳ほんやくすると「うす平原へいげん」)はそれをとなえたものかもしれない[39]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
注釈ちゅうしゃく
  1. ^ てつ盤上ばんじょう直径ちょっけい1-2mの鉄製てつせいローラ-をいくつか旋転せんてんさせ、圧砕あっさい砕により穀物こくもつつぶ岩石がんせきつぶ粉砕ふんさいする粉砕ふんさいのこと[34]
出典しゅってん
  1. ^ うえしたいしふたつをわせて使つかうのでquern-stonesと「s」をつけて複数ふくすうがたもちいる用語ようごである。
  2. ^ いて」は「ひいて」とむ。「こなく(こなにひく)」などとう。
  3. ^ a b c 赤尾あかおつよしはやし弘通ひろみち安口はだかす正之まさゆき食品しょくひん工学こうがく基礎きそ講座こうざ 固体こたいこなたい処理しょり光琳こうりん、1988ねん、36ぺーじ
  4. ^ a b McLaren D, Hunter F (2008). “New aspects of rotary querns in Scotland”. Proc Soc Antiq Scot 113: 106. ISSN 0081-1564. 
  5. ^ a b Explore/Highlights: Quern stone for making flour”. London: The British Museum. 2009ねん4がつ21にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2019ねん5がつ16にち閲覧えつらん
  6. ^ Revedin, A構文こうぶんエラー:「etal」を認識にんしきできません。 (2010). “Thirty thousand-year-old evidence of plant food processing”. Proc Natl Acad Sci U S A 107 (44): 18815-18819. Bibcode2010PNAS..10718815R. doi:10.1073/pnas.1006993107. PMC 2973873. PMID 20956317. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2973873/. 
  7. ^ a b c 三輪みわ茂雄しげおこな法政大学ほうせいだいがく出版しゅっぱんきょく、2005ねん、48ぺーじ
  8. ^ a b c d e f 石臼いしうす 青森あおもり県立けんりつ郷土きょうどかん
  9. ^ 石臼いしうすこう 大野城おおのじょう教育きょういく委員いいんかい
  10. ^ Burnet, Graeme Macrae (2015). His Bloody Project (First ed.). Glasgow: Contraband. p. II. ISBN 9781910192146 
  11. ^ 石臼いしうすなぞ木下きのした製粉せいふんHP。2019ねん5がつ31にち閲覧えつらん。リンズについても若干じゃっかん説明せつめいされている。
  12. ^ McLaren D, Hunter F (2008). “New aspects of rotary querns in Scotland”. Proc Soc Antiq Scot 138: 106. ISSN 0081-1564. 
  13. ^ McLaren D, Hunter F (2008). “New aspects of rotary querns in Scotland”. Proc Soc Antiq Scot 138: 112. ISSN 0081-1564. 
  14. ^ Rutter, Graham (2003). Basaltic-rock procurement systems in the southern Levant. PhD thesis, University of Durham. p. 236. http://0lem.wordpress.com/2011/06/16/basalt-procurement/ 2014ねん3がつ12にち閲覧えつらん 
  15. ^ Coe, Michael D. (1999). The Maya (Sixth ed.). New York: Thames & Hudson. p. 13. ISBN 0-500-28066-5 
  16. ^ Greenberger, Robert (2005). The Technology of Ancient China. Rosen Publishing Group. pp. 10. ISBN 978-1404205581 
  17. ^ Huang, H.T. (2000). Science and Civilisation in China: Volume 6, Biology and Biological Technology, Part 5, Fermentations and Food Science. 6. Cambridge University Press (November 30, 2000発行はっこう). p. 463. ISBN 978-0521652704 
  18. ^ Wright 1992:87f
  19. ^ Lease et al. 2001:235
  20. ^ いしさらとは」コトバンク、世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん だいはん解説かいせつより。
  21. ^ McLaren D, Hunter F (2008). “New aspects of rotary querns in Scotland”. Proc Soc Antiq Scot 138: 105. ISSN 0081-1564. 
  22. ^ a b J.T. Koch, An Atlas for Celtic Studies (2007), p. 150.
  23. ^ Ritti, Grewe & Kessener 2007, p. 159
  24. ^ E.W. MacKie, The broch cultures of Atlantic Scotland: origins, high noon and decline: part 2: The Middle Iron Age: high noon and decline c.200 BC - AD 550, Oxford Journal of Archaeology, vol. 29, no 1. (2010), pp. 89-117 (100).
  25. ^ Garnett, T. Observations on a Tour through the Highlands and part of the Western Isles of Scotland, particularly Staff and Icolmkill. Pub. T. Cadell. The Strand. P. 155.
  26. ^ McLaren D, Hunter F (2008). “New aspects of rotary querns in Scotland”. Proc Soc Antiq Scot 138: 119 - 122. ISSN 0081-1564. 
  27. ^ a b c Freese, Stanley (27 May 2011). Windmills and millwrighting. Cambridge University Press. p. 14. ISBN 9781107600133 
  28. ^ Wood, Geoff (2003). Thorrington Tide Mill. Essex County Council. p. 13. ISBN 185281-232-X 
  29. ^ Peak District Millstones”. Stephen N Wood. 2010ねん4がつ10日とおか閲覧えつらん
  30. ^ Aikin, Arthur (1838). “On Corn Mills”. Transactions (Royal Society of Arts) 51: 121. 
  31. ^ みぞ)の種類しゅるい」、佐藤さとう工房こうぼう、2019ねん7がつ26にち閲覧えつらん
  32. ^ Wood (2003) p 19
  33. ^ NPS publication "Peirce Mill" GPO: 2004--304-337/00145 Reprint 2004
  34. ^ ローラミル」コトバンク、ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん しょう項目こうもく事典じてん解説かいせつより。
  35. ^ McLaren D, Hunter F (2008). “New aspects of rotary querns in Scotland”. Proc Soc Antiq Scot 119: 106. ISSN 0081-1564. 
  36. ^ McLaren D, Hunter F (2008). “New aspects of rotary querns in Scotland”. Proc Soc Antiq Scot 113: 117. ISSN 0081-1564. 
  37. ^ Ewan Campbell, A cross-marked quern from Dunadd and other evidence for relations between Dunass and Iona, Proceedings of the Society of Antiquaries of Scotland, vol. 5, no. 117 (1987), pp. 105 - 117.
  38. ^ Janet and Colin Bord, Mysterious Britain (Garnstone 1973), ISBN 0-85511-180-1. P. 62.
  39. ^ Watson, William J. (1926). The History of the Celtic Place-Names of Scotland. Edinburgh : William Blackwood & Sons Ltd., p.187
参考さんこう文献ぶんけん
  • Lease, N., Laurent, R., Blackburn, M. and Fortin, M. (2001) Caractérisation pétrologie d’artefact en basalte provenant de Tell ‘Atij et de Tell Gudeda en Syrie de Nord (3000-2500 av J-C), In Serie archéométrie 1:227-240.
  • Ritti, Tullia; Grewe, Klaus; Kessener, Paul (2007), “A Relief of a Water-powered Stone Saw Mill on a Sarcophagus at Hierapolis and its Implications”, Journal of Roman Archaeology 20: 138–163 
  • Wright, K. (1992) Ground stone assemblage variations and subsistence strategies in the Levant, 22,000 to 5,500 bp, unpublished PhD thesis, Yale University.