石器
概説
[石器 の範囲
[「
研究 法
[なお
日本語 の「石器 」という呼称
[歴史
[初期 の石器
[石器 の発展
[アフリカやユーラシアの
最 も古 いとされるホモ属 のホモ・ハビリスは、240万 年 ほど前 に現 れ、オルドワン石器 と呼 ばれる原始 的 な石器 を使用 していた。
遅 くともおよそ170万 年 前 までには登場 したホモ・エレクトスは、それまでよりも精巧 なアシュレアン(Acheulean)石器 を使用 した。
- 40
万 年 ほど前 に登場 したネアンデルタール人 は、ホモ・サピエンスよりも前 にホモ・ハイデルベルゲンシスから枝分 かれした。彼 らはルヴァロア技法 という洗練 された石器 加工 技術 を持 ち、ホモ・サピエンスよりも数 十 万 年 も前 にヨーロッパにまで進出 していた。また、アスファルトなどを使用 し石器 を他 の素材 と接着 して使用 していた痕跡 もある。
- 5~4
万 年 ほど前 、ホモ・サピエンスが遅 れてアフリカから進出 。まもなくネアンデルタール人 は絶滅 するが、ユーラシア大陸 に後 からやってきたホモサピエンスと出会 い(両者 間 の争 いもあっただろうが)、両者 が交 わり子孫 が生 まれるということも起 きていたようで、残 された骨 からDNA解析 したところ、ホモサピエンスの遺伝子 の1~2%程度 がネアンデルタール人 由来 のものと判明 している。[注釈 2])。
石器 の衰退
[1
分類 の体系
石器 は、加工 方法 によって大 きく2種類 に区分 される。石 同士 を打 ち付 けたり、あるいは道具 を使用 して打 ち叩 くことによって、剥 片 をはいで道具 として使用 するのにかなった形 に成形 する打 製 石器 (だせいせっき)と、石 を磨 き上 げた磨 製 石器 (ませいせっき)[8]とがある。- 「
石 核 石器 」(せっかくせっき)[注釈 3]、「剥 片 石器 」(はくへんせっき)[注釈 4]という区分 もある。 石器 製作 の過程 で大小 様々 なカケラが出 てくる。それらを総称 して「石 製 遺物 」という。またそれらは石器 ・剥 片 [注釈 5]、石 核 [注釈 6]、砕片 [注釈 7]などに分類 される。砂岩 や玄武岩 のような礫 状 のものを材料 とした重量 のある大型 石器 と、黒曜石 やサヌカイトなどのような緻密 な材料 の石 の剥 片 を材料 とした軽量 の小型 石器 に分 けることも多 い[5]。前期 ・中期 ・後期 の各 時期 に使用 された石器 に分類 することもある。例 えば、前期 旧石器時代 に主 に使用 された石器 としては、礫 器 (チョッパー、チョッピング・トゥール)、祖 型 ハンドアックス、握 斧 (クリ-ヴァー)、手斧 (ハンドアックス)、尖 頭 石器 、祖 型 彫 器 (プロト・ピュアリン)、叩石(ハンマー・ストーン)、剥 片 、ルヴァロア型 石 核 などがある[9]。
打 製 石器 ・磨 製 石器 ・礫 塊 石器
[打 製 石器
[このうちオルドワン
磨 製 石器
[J.ラボックによって
礫 塊 石器
[主 な石器
[石 刃 、ブレード (blade)後期 旧石器時代 に特徴 的 な石器 の素材 。石 核 から大量 の石 刃 を創 り出 し、これを加工 して石器 にする。日本 では後期 旧石器時代 の最終 末期 に沖縄 を除 き日本 列島 全域 に広 がった細 石 刃 がある。石 核 石器 (core tool)素材 となる石 (母 岩 )を打 ち割 り、形 を整 え、刃 をつけた石器 剥 片 石器 (flake tool)母 岩 から破片 (剥 片 )を割 り取 り(剝離)、剥 片 の形 を整 え、割 れ目 を刃 に利用 した石器 礫 器 (pebble tool)最 も原始 的 な石器 の一 つである。
尖 頭 器 (point)先端 を鋭 く尖 らせた石器 。槍 先 に付 けたと考 えられる。細長 く鋭 く尖 る形 のものが典型 的 だが、それ以外 にも多 くの種類 の尖 頭 器 がある。石 槍 とも言 う。斜 軸 尖 頭 器 という種類 は、狩猟 用 の槍 先 とされ、中期 旧石器時代 (約 12万 、13万 年 前 -約 3万 年 前 、旧人 の時代 )の指標 である。岩手 県 宮守 村 (現在 の遠野 市 )の金 取 遺跡 から出土 している。削 器 、スクレーパー (scraper)- F.ボルドによると
剥 片 の先端 部分 を打 ち欠 いて刃 をつけた石器 。- 掻器、
端 削 器 、エンド・スクレーパー (end scraper) 削 器 、側 削 器 、サイド・スクレーパー (side scraper)
- 掻器、
彫 器 、刻 器 、グレーバー、ビュラン (graver,フランス語 : burin)- バックド=ブレード (backed blade)
石 錐 錐 状 に尖 らせた石器 。皮革 などに穴 をあけるために使用 したと思 われる。石 錘 漁網 や釣 り糸 の下部 に付 けておもりとして使用 した石器 。織物 を張 る際 にも使用 したと考 えられる。- ナイフ
形 石器 (knife blade) 石 刃 から創 り出 した石器 の一種 。東 アジアの他 の地域 には見 られない日本 独自 の石器 である。後期 旧石器時代 の中盤 から後半 にかけて発達 した。地方 によって様々 な型式 が見 られる- ノッチ、
抉 入 石器 (notched tool) 尖 頭 器 木葉 形 で東日本 を中心 に発達 した。ナイフ形 石器 に後続 する主要 石器 である。細 石器 (microlith)石 匙 携帯 に便利 なように工夫 された、日本 の石器 。石斧 英 米 では刃 が柄 と平行 なものを平行 刃 斧 axe(ax), hatchet、刃 が柄 と直交 しているものを直交 刃 斧 adze(adz) と呼 ぶ。後者 は比較的 小型 軽量 で、片手 で使 えるものを指 すことが多 い。局部 磨 製 石斧 石 篦 石鏃 石 銛磨 石 - 凹石
石 皿 台形 様 石器 後期 旧石器時代 の初 め頃 に出現 する打 製 石器 。九州 から北海道 まで広範囲 に分布 する。台形 状 または長方形 状 に仕上 げた小型 の剥 片 石器 。柄 を付 けて付 けて刺 突具または切削 器 に使用 したと推定 される。台形 様 石器 の一部 はペン先 形 をしており、槍 先 として使用 されたものと推定 されている。石 棒 男性 器 を石 で象 った推測 されるもので、女性 を表現 したとみられる土偶 と対照 的 なもので、祭祀 のための縄文 時代 の遺物 である。その出現 は前期 初頭 である。中期 になって類例 が増 える。出土 範囲 は、中部 高地 を中心 に関東 地方 西部 から北陸 地方 までである。造形 は、出現 時 には小 さな川原 石 を細長 く整形 したものであったが、中期 になると頭部 に鍔 (つば)を巡 らせ、その上下 に円 や三角形 の文様 を彫 り込 むものが出現 している。この時期 に長 さが1メートルを超 えるものも出現 している。その背景 として、縄文 社会 の祭祀 が集団 化 し、集落 から地域 へと大 規模 化 していったことが考 えられる[14]。石 冠 冠 に似 ている石 製品 。縄文 時代 前期 の北海道 の物 と、中部 地方 西部 を中心 に近畿 地方 や東北 地方 に分布 する縄文 時代 晩期 の物 がある。石 冠 を模 した土器 が東北 地方 から出土 している。岩 偶石偶 ともいう。石 製 の人形 で、土偶 と同 じように信仰 と関係 があるものと考 えられている。
石器 の製作
[石材
[北海道 地方 -東部 に遠軽 町 白滝 黒曜石 原産地 、西部 に赤井川 黒曜石 原産地 がある。東北 地方 -広 く硬質 頁岩 が分布 。関東 地方 -太平洋 沖 には神津島 黒曜石 原産地 がある中部 地方 -中部 山岳 地帯 には和田 峠 の黒曜石 原産地 がある。近畿 ・中 四国 地域 - サヌカイトは奈良 県 二上山 および香川 県 五色 台 、坂出 市 にある金山 などで産出 する。
※この
石 核 と剥 片
[脚注
[注釈
[- ^
石臼 は新 石器 時代 から使 われて始 めたと推定 されているが、現代 でも現役 の道具 として使 われ続 けている。 - ^ ドイツのマックスプランク
研究所 が2010年 、クロアチアで発見 されたネアンデルタール人 の骨 からDNAの再現 に成功 し、それとホモサピエンスのDNAを比較 してみたところ、ホモサピエンス(のユーラシア大陸 に住 む人々 、つまりヨーロッパ人 やアジア人 など)のDNAにネアンデルタール人 由来 のDNAが1~2%程度 まで含 まれていることが判明 した。それを発表 したところ、それまでネアンデルタール人 とホモサピエンスは「あくまで枝分 かれして、別 の存在 、無関係 」と考 えられていたので、世界 の学者 ・科学 者 に衝撃 が走 った。「白人 」の肌 が白 いのはネアンデルタール人 由来 とも判明 。(なお、アフリカに留 まりそこで生 き続 けた人類 、つまり現在 のアフリカ人 のDNAにはネアンデルタール人 由来 のDNAが含 まれていないことも判明 した。)NHK『コズミックフロント☆NEXT』「ネアンデルタール人 はなぜ絶滅 したのか?」の放送 回 でも、近年 の研究 により明 らかになったことが紹介 されている。 - ^
石塊 (せっかい)の芯 の部分 を石器 とする - ^
石塊 から剥 ぎ取 られた剥 片 を細部 加工 した石器 - ^
石器 の素材 となったり、石 核 形状 を整 えるため剥離 されたりしたカケラ - ^
石 核 とは剥 片 が剥 がされた残 りの石塊 - ^
砕片 とは、石器 の細部 加工 時 に飛 び散 った微細 なカケラ - ^
東 アフリカのゴナ遺跡 から発見 された250万 年 前 の石器 が世界 最古 とされている
出典
[- ^ a b c d e f g h i 『
日本 大 百科全書 (ニッポニカ)』「石器 」。松沢 亜 生 執筆 。 - ^ “
石器 (せっき)の意味 ”. goo国語 辞書 . 2020年 11月5日 閲覧 。 - ^ a b c d e f g h i j k l m
大原 昌宏 「分類 学者 の養成 : パラタクソノミスト養成 講座 について(<特集 >分類 学者 は生物 多様 性 条約 にどう関 わっていくべきか?)」『昆蟲 .ニューシリーズ』第 13巻 第 2号 、日本 昆虫 学会 、2010年 、83-92頁 、doi:10.20848/kontyu.13.2_83、ISSN 1343-8794、NAID 110009859999。 - ^
松藤 和人 ・門田 誠一 編著 『よく分 かる考古学 』ミネル ヴァ書房 <やわらかアカデミズム>・<わかる>シリーズ 2010年 p.10-11 - ^ a b c
岡村 道雄 「石器 」(田中 琢 ・佐原 真 編集 『日本 考古学 事典 』三省堂 2006年 p.490-495) - ^ 3.3-million-year-old stone tools from Lomekwi 3, West Turkana, Kenya『ネイチャー』521, pages 310-315 (21 May 2015) 2018
年 12月29日 閲覧 。 - ^
松藤 和人 著 『日本 列島 人類 史 の起源 -「旧 石器 の狩人 」たちの挑戦 と葛藤 -』雄山閣 2014年 p.50 - ^
刃 を鋭 くするため、儀式 に使用 するため、などといった理由 で磨 いた。 - ^
松藤 和人 著 『日本 列島 人類 史 の起源 -「旧 石器 の狩人 」たちの挑戦 と葛藤 -』雄山閣 2014年 p.49 - ^
堤 隆 「石器 」小林 達雄 編 『考古学 ハンドブック』新書 館 2007年 1月 101ページ - ^
小田 静夫 「旧石器時代 の磨 製 石斧 」 - ^
小田 静夫 「磨 製 石斧 」『図解 日本 の人類 遺跡 』東京大学 出版 会 1992年 20-21頁 - ^
佐原 真 『斧 の文化 史 』UP考古学 選書 6東京大学 出版 会 1994年 - ^
原田 昌幸 「石 棒 、玉 類 などの分布 からみた交易 」(独立 行政 法人 文化財 研究所 ・奈良 文化財 研究所 監修 『日本 の考古学 -ドイツで開催 された「曙光 の時代 」展 』小学館 2005年 )67-68ページ
参考 文献
[永原 慶 二 監修 、石上 栄一 他 編集 『岩波 日本 史 辞典 』岩波書店 1999年 ISBN 4-00-080093-0小林 達雄 編 『考古学 ハンドブック』新書 館 2007年 1月 ISBN 978-4-403-25088-0