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有機ゆうき化合かごうぶつ

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有機ゆうき分子ぶんしから転送てんそう

有機ゆうき化合かごうぶつ(ゆうきかごうぶつ、えい: organic compound)とは、炭素たんそふく化合かごうぶつだい部分ぶぶんをさす[1][2]炭素たんそ原子げんし共有きょうゆう結合けつごうむすびついた骨格こっかくち、分子ぶんしあいだりょくによってあつまることで液体えきたい固体こたいとなっているため、沸点ふってん融点ゆうてんひくいものがおおい。

下記かき歴史れきしてき背景はいけいから、炭素たんそふく化合かごうぶつであっても、一酸化いっさんか炭素たんそ二酸化炭素にさんかたんそ炭酸たんさんしお青酸せいさんシアンさんしおチオシアンさんしおひとし単純たんじゅんなものは例外れいがいてき無機むき化合かごうぶつ分類ぶんるいし、有機ゆうき化合かごうぶつにはふくめない[1][3]例外れいがい慣習かんしゅうてきめられたものであり[ちゅう 1]現代げんだいではたんなる「便宜べんぎじょう区分くぶん」である[4]有機ゆうき物質ぶっしつ(ゆうきぶっしつ、えい: organic substance[5])あるいは有機物ゆうきぶつ(ゆうきぶつ、えい: organic matter[6][5])ともばれる[1][ちゅう 2]

歴史れきし

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18世紀せいきには、生物せいぶつすなわちゆう機体きたい (organisms) に由来ゆらいする化合かごうぶつには生命せいめいりょく宿やどっているため特別とくべつ性質せいしつつとみなされており[7][ちゅう 3]イェンス・ベルセリウス物質ぶっしつ生物せいぶつからられるものと鉱物こうぶつからられるものとにけ、それぞれ「有機ゆうき化合かごうぶつ」「無機むき化合かごうぶつ」と定義ていぎした[8]。そのフリードリヒ・ヴェーラー無機物むきぶつであるシアンさんアンモニウムから有機物ゆうきぶつである尿素にょうそ人工じんこうてきつくすことに成功せいこうすると、この定義ていぎ意義いぎうしなったが[9]以降いこう有機ゆうき化合かごうぶつあつか有機ゆうき化学かがく飛躍ひやくてき発展はってんげることになった[10]

背景はいけい

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はじめて「有機物ゆうきぶつ」という名称めいしょう提唱ていしょうしたのは、19世紀せいきはじめの化学かがくしゃイェンス・ベルセリウスである[11]。ベルセリウスによる有機物ゆうきぶつとの名称めいしょうは、17世紀せいきから18世紀せいき化学かがくしゃゲオルク・エルンスト・シュタール主張しゅちょうした有機ゆうきたい生物せいぶつ)の体内たいないでしか製造せいぞうできない化合かごうぶつという生気せいきろん概念がいねん言語げんごしたものであった。 近代きんだい科学かがく黎明れいめいから有機ゆうき化合かごうぶつ生物せいぶつとはたがいに密接みっせつ関係かんけいにあった。それらにかんする歴史れきしてき経緯けいい生物せいぶつがく有機ゆうき化学かがく年表ねんぴょうにもくわしい。とりわけ、18世紀せいきまでは今日きょうでいう有機ゆうき化合かごうぶつがある意味いみ生物せいぶつ付属ふぞくぶつかんがえられていた。

ところが、1828ねんフリードリヒ・ヴェーラーシアンさんアンモニウム加熱かねつちゅう尿素にょうそ結晶けっしょう生成せいせいしているのを発見はっけんした。この尿素にょうそ合成ごうせいはしはっし、有機物ゆうきぶつ生物せいぶつかならずしも付属ふぞくしたものに限定げんていされないとかんがえられるようになった。ちなみに、無機物むきぶつから有機物ゆうきぶつ尿素にょうそはじめて合成ごうせいしたヴェーラーは「有機物ゆうきぶつ」の提唱ていしょうしゃベルセリウスの弟子でしであった。この発見はっけん以降いこう複数ふくすう種類しゅるい有機ゆうき化合かごうぶつ生物せいぶつ関与かんよなしに化学かがくてき合成ごうせいされるにいたり、生気せいきろんたいする打撃だげきとなった。

有機物ゆうきぶつというかたり現在げんざいでももちいられている。しかし、「生物せいぶつ由来ゆらい」という概念がいねん内包ないほうしていたベルセリウスによる有機物ゆうきぶつ名称めいしょうとは意味いみ変化へんかしてきており、上述じょうじゅつした有機ゆうき化合かごうぶつ区分くぶんと(ベルセリウスによる)有機物ゆうきぶつ区分くぶん厳密げんみつにいうならば完全かんぜんには一致いっちしていない。そして実際じっさいにも、生物せいぶつかいさず化学かがくてき合成ごうせいされた多数たすう化合かごうぶつ有機ゆうき化合かごうぶつ物質ぶっしつぐんふくまれている。現在げんざいでは、「生物せいぶつ由来ゆらい有機ゆうき化合かごうぶつ」という意味いみで、「天然てんねんぶつ」あるいは「天然てんねん化合かごうぶつ」という用語ようご使用しようされることもある。

応用おうよう

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化学かがく工業こうぎょう

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20世紀せいきはいると有機ゆうき化合かごうぶつ構造こうぞう物性ぶっせいとの関連かんれんについて理解りかいすすみ、分子ぶんし構造こうぞう改変かいへんすることで物質ぶっしつ機能きのうをデザインするということがおぼろげながらも可能かのうになってきた。最初さいしょ染料せんりょう分野ぶんやはじまったこのながれは、医薬いやくあるいは繊維せんい分野ぶんや波及はきゅう化学かがく工業こうぎょうという産業さんぎょう分野ぶんや勃興ぼっこうした。

1950年代ねんだい以前いぜん石炭せきたんガス副産物ふくさんぶつであるコールタール化学かがく工業こうぎょう主要しゅよう資源しげんであったが、1950年代ねんだい以降いこう急速きゅうそく発展はってんした石油せきゆ化学かがく工業こうぎょう石油せきゆ由来ゆらいする多量たりょう多様たよう有機ゆうき化合かごうぶつ原料げんりょう提供ていきょうするようになった。それにより高分子こうぶんし化学かがく製品せいひんである様々さまざまプラスチックはじめとして、ころもしょくじゅうなど人間にんげん生活せいかつ様々さまざま局面きょくめんに、機能きのう設計せっけいされた多種たしゅ多様たよう有機ゆうき化合かごうぶつ活用かつようされるようになった。

有機ゆうき化合かごうぶつ生命せいめいたい構成こうせい分子ぶんしとの類似るいじせいたか自然しぜんかい開放かいほうされると生命せいめい吸収きゅうしゅうされるなど、金属きんぞくなどの無機物むきぶつよりも比較的ひかくてき毒性どくせいつよく、環境かんきょう側面そくめんでの影響えいきょうおおきいため様々さまざま対策たいさくおこなわれてきている。

機能きのうせい分子ぶんし

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19世紀せいき以来いらい有機ゆうき化合かごうぶつ希少きしょう天然てんねん産物さんぶつ大量たいりょう生産せいさんしたり、天然てんねん産物さんぶつ模倣もほうによる機能きのう改善かいぜんなど、生物せいぶつあるいは天然てんねんぶつ意識いしきした化合かごうぶつ化学かがくとしてその研究けんきゅう展開てんかいしていった。シクロデキストリンクラウンエーテルなどつつみせっ化合かごうぶつ研究けんきゅうはしはっして、1980年代ねんだい以降いこうコンピュータいちじるしい能力のうりょく向上こうじょう計算けいさん化学かがく発展はってん相応そうおうして、機能きのう天然てんねんぶつもとめることなく分子ぶんし構造こうぞうから想定そうていされる物理ぶつりがくてき作用さようもとづいた機能きのう設計せっけいにより、新規しんき有機ゆうき化合かごうぶつされるようになった。そのような有機ゆうき化合かごうぶつれいとして、機能きのうせい分子ぶんしあるいはちょう分子ぶんしげられる。

すなわち、機能きのうせい分子ぶんしナノテクノロジーたいする有機ゆうき化学かがくてきアプローチである。

種類しゅるい

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有機ゆうき化合かごうぶつ種類しゅるい色々いろいろ観点かんてん分類ぶんるいされ色々いろいろ名称めいしょうびあらわされる。以下いかにその種類しゅるい分野ぶんやあるい上位じょうい下位かい概念がいねんごとにりまとめた。(リストのだんけは上位じょうい概念がいねん細分さいぶんしめ場合ばあいと、上位じょうい概念がいねん関連かんれんのある区分くぶん列挙れっきょした場合ばあい双方そうほう場合ばあいがある)

  1. 構造こうぞうあるいは官能かんのうもと分類ぶんるいされる種類しゅるい
    IUPAC命名めいめいほうもとづく種類しゅるい記事きじ IUPAC命名めいめいほうくわしい。
    官能かんのうもとべつ化合かごうぶつめいもとづく種類しゅるい記事きじ 有機ゆうき化学かがくくわしい。
  2. 研究けんきゅう分野ぶんや分類ぶんるいされる種類しゅるい
  3. 用途ようと分類ぶんるいされる種類しゅるい
  4. 法規ほうきせい分類ぶんるいされる種類しゅるい

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 『デジタル大辞泉だいじせん[1]には、「炭素たんそふく化合かごうぶつ総称そうしょう。ただし、二酸化炭素にさんかたんそ炭酸たんさんしおなどの簡単かんたん炭素たんそ化合かごうぶつ習慣しゅうかん無機むき化合かごうぶつとしてあつかうためふくめない。」とかれている。
  2. ^ あくまでべつ単語たんごであり、同一どういつ概念がいねんではない。
  3. ^ これは生気せいきせつばれる。一般いっぱんに、生物せいぶつがく機械きかいろん立場たちば採用さいようしており、生気せいきせつみとめられていない。

出典しゅってん

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  1. ^ a b c 山口やまぐち良平りょうへい山本やまもと行男いくお田村たむらるい『ベーシック有機ゆうき化学かがく』(だい2はん化学かがく同人どうじん、2010ねん、1ぺーじISBN 4759814396 
  2. ^ 岩波いわなみ 理化学りかがく辞典じてん岩波書店いわなみしょてん
  3. ^ 宮本みやもとしんさとし斉藤さいとう正治しょうじ大学だいがくへの橋渡はしわた有機ゆうき化学かがく化学かがく同人どうじん、2006ねん、45ぺーじISBN 4759810218 
  4. ^ 広辞苑こうじえんだいはん(はん岩波書店いわなみしょてん)
  5. ^ a b しん英和大えいわだい辞典じてん研究けんきゅうしゃ
  6. ^ 『ジーニアス和英かずひで辞典じてん大修館書店たいしゅうかんしょてん
  7. ^ ロバート・J・ウーレット『ウーレット有機ゆうき化学かがく高橋たかはし知義ともよしわけ)、橋元はしもと親夫ちかおわけ)、堀内ほりうちあきらわけ)、須田すだ憲男のりおわけ)、化学かがく同人どうじん、2002ねん、1ぺーじISBN 4759809147 
  8. ^ パウラ・Y・ブルース『ブルース有機ゆうき化学かがくじょう大船おおふな泰史やすしわけ)、香月かつきつとむわけ)、西郷さいごう和彦かずひこわけ)、富岡とみおかきよしわけ)(だい5はん)、化学かがく同人どうじん、2009ねん、2ぺーじISBN 4759811680 
  9. ^ 川端かわばたじゅん『ビギナーズ有機ゆうき化学かがく化学かがく同人どうじん、2000ねん、3ぺーじISBN 4759808582 
  10. ^ あおやま隆幸たかゆき『Quizでわかる化学かがく』ベレ出版しゅっぱん、2005ねん、178ぺーじISBN 4860640799 
  11. ^ ベルセリウスちょ田中たなか豊助とよすけ原田はらだ紀子のりこやく)『化学かがく教科書きょうかしょ』6ぺーじ 内田うちだろうづるISBN 4-7536-3108-7

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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