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三角さんかく関数かんすう

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正弦せいげんから転送てんそう

三角さんかく関数かんすう(さんかくかんすう、えい: trigonometric function)とは、平面へいめん三角さんかくほうにおける、角度かくどおおきさと線分せんぶんながさの関係かんけい記述きじゅつする関数かんすうぞく、およびそれらを拡張かくちょうしてられる関数かんすう総称そうしょうである。鋭角えいかくあつか場合ばあい三角さんかく関数かんすう対応たいおうする直角ちょっかく三角形さんかっけいへんながさの三角さんかく)である。三角さんかくほう由来ゆらいする三角さんかく関数かんすうというのほかに、単位たんいえんもちいた定義ていぎ由来ゆらいするえん関数かんすう(えんかんすう、circular function)というがある。

三角さんかく関数かんすうには以下いかの6つがある。なお、正弦せいげん余弦よげん正接せいせつの3つのみをして三角さんかく関数かんすう場合ばあいもある。

  • 正弦せいげん(せいげん)sinsine
  • 余弦よげん(よげん)coscosine
  • 正接せいせつ(せいせつ)tantangent
  • せいわり(せいかつ)secsecant
  • わり(よかつ)csc,coseccosecant
  • せっ(よせつ)cotcotangent

とくsin, cos幾何きかがくまとにも解析かいせきがくまとにも性質せいしつをもっているので、様々さまざま分野ぶんやもちいられる。たとえば、なみ信号しんごうなどは正弦せいげん関数かんすう余弦よげん関数かんすうとをわせて表現ひょうげんすることができる。この事実じじつフーリエ級数きゅうすうおよびフーリエ変換へんかん理論りろんとしてられ、音声おんせいなどの信号しんごう合成ごうせい解析かいせき手段しゅだんとして利用りようされている。ベクトルクロスせき内積ないせき正弦せいげん関数かんすうおよび余弦よげん関数かんすうもちいてあらわすことができ、ベクトルを図形ずけい対応たいおうづけることができる。初等しょとうてきには、三角さんかく関数かんすう実数じっすう変数へんすうとする1変数へんすう関数かんすうとして定義ていぎされる。三角さんかく関数かんすう変数へんすう対応たいおうするものとしては、図形ずけいのなす角度かくどや、物体ぶったい回転かいてんかくなみ信号しんごうのような周期しゅうきてきなものにおける位相いそうなどがげられる。

三角さんかく関数かんすうもちいられる独特どくとく記法きほうとして、三角さんかく関数かんすうべきじょうぎゃく関数かんすうかんするものがある。通常つうじょう関数かんすう f(x)累乗るいじょう(f(x))2 = f(x)・f(x)(f(x))−1 = 1/f(x) のようにくが、三角さんかく関数かんすう累乗るいじょうsin2x のようにかれることがおおい。ぎゃく三角さんかく関数かんすうについては通常つうじょう記法きほう (f−1(x)) とおなじく、sin−1x などとあらわす(この文脈ぶんみゃくでは、三角さんかく関数かんすう逆数ぎゃくすう分数ぶんすうもちいて 1/sin x または (sin x)−1 のようにあらわされる)。文献ぶんけんまたは著者ちょしゃによっては、通常つうじょう記法きほう三角さんかく関数かんすうたいする特殊とくしゅ記法きほうとの混同こんどうけるため、三角さんかく関数かんすう累乗るいじょう通常つうじょう関数かんすう同様どうようにすることがある。また、三角さんかく関数かんすうぎゃく関数かんすうとして −1にするわりに関数かんすうあたまarcけることがある(たとえば sinぎゃく関数かんすうとして sin−1わりに arcsinもちいる。Arcけて Arcsinあらわすこともある)。

三角さんかく関数かんすう性質せいしつをもつ関数かんすうとして、指数しすう関数かんすう双曲線そうきょくせん関数かんすうベッセル関数かんすうなどがある。また、三角さんかく関数かんすう利用りようして定義ていぎされる関数かんすうとしてしばしば応用おうようされるものにsinc関数かんすうがある。

定義ていぎ[編集へんしゅう]

直角ちょっかく三角形さんかっけいによるもの[編集へんしゅう]

∠C直角ちょっかくとする直角ちょっかく三角形さんかっけいABC

直角ちょっかく三角形さんかっけいにおいて、1 つの鋭角えいかくおおきさがまれば、三角形さんかっけい内角ないかく180°であることからの 1 つの鋭角えいかくおおきさもまり、3 へんまる。ゆえに、角度かくどたいしてあたり三角さんかく)のあたえる関数かんすうかんがえることができる。

∠C直角ちょっかくとする直角ちょっかく三角形さんかっけい ABC において、それぞれのあたりながさを AB = h, BC = a, CA = bあらわす(参照さんしょう)。∠A = θしーたたいして三角形さんかっけいあたり h : a : bまることから、

という 6 つのさだまる。それぞれ正弦せいげんsine; サイン)、余弦よげんcosine; コサイン)、正接せいせつtangent; タンジェント)、せいわりsecant; セカント)、わりcosecant; コセカント)、せっcotangent; コタンジェント)とび、まとめて三角さんかくばれる。ただし cosecながいので csc略記りゃっきすることもおおい。あるかく ∠Aたいする余弦よげんわりせっはそのかく ∠Aかく (co-angle)たいする正弦せいげんせいわり正接せいせつとして定義ていぎされる。

三角さんかく平面へいめん三角さんかくほうもちいられ、巨大きょだいものおおきさや遠方えんぽうまでの距離きょり計算けいさんするさい便利べんり道具どうぐとなる。角度かくど θしーた単位たんいは、通常つうじょうまたはラジアンである。

三角さんかく、すなわち三角さんかく関数かんすう直角ちょっかく三角形さんかっけいもちいた定義ていぎは、直角ちょっかく三角形さんかっけい鋭角えいかくたいして定義ていぎされるため、その定義ていぎいきθしーた が 0° から 90° まで(0 から πぱい / 2 まで)の範囲はんいかぎられる。また、θしーた = 90° (= πぱい / 2)場合ばあい sec, tan が、θしーた = 0°(= 0)場合ばあい csc, cot がそれぞれ定義ていぎされない。これは分母ぶんぼとなるあたりおおきさが 0 になるためゼロ除算じょざん発生はっせいし、その除算じょざん自体じたい数学すうがくてき定義ていぎされないからである。一般いっぱん角度かくどたいする三角さんかく関数かんすうるためには、三角さんかく関数かんすうについてなんらかの定理ていり指針ししんとして、定義ていぎ拡張かくちょうおこな必要ひつようがある。単位たんいえんによる定義ていぎ初等しょとう幾何きかがくにおけるそのような拡張かくちょうれいである。同等どうとう方法ほうほうとして、正弦せいげん定理ていり余弦よげん定理ていりもちいる方法ほうほうなどがある。

単位たんいえんによるもの[編集へんしゅう]

6種類しゅるい三角さんかく関数かんすう単位たんいえんθしーた = 0.7ラジアンの角度かくどたいする直線ちょくせん直線ちょくせんいろわるてん3てんかんがえたとき、1Sec(θしーた)Csc(θしーた)については原点げんてんからかくてんへの線分せんぶんながさをあらわし、Sin(θしーた)Tan(θしーた)1かくてんのy成分せいぶんあらわす。Cos(θしーた)1Cot(θしーた)かくてんの x 成分せいぶんあらわす。
単位たんいえんによる、6つの三角さんかく関数かんすうあらわなが

2 次元じげんユークリッド空間くうかん R2 における単位たんいえん {x(t)}2 + {y(t)}2 = 1 うえてんA = (x(t), y(t)) とする。はん時計とけいまわりをせいきとして、原点げんてん円周えんしゅうむす線分せんぶん OAx じくのなすかくおおきさ xOA媒介ばいかい変数へんすう t としてえらぶ。このとき実数じっすう変数へんすう tたいする三角さんかく関数かんすう以下いかのように定義ていぎされる。

これらはじゅん正弦せいげん関数かんすう (sine function)余弦よげん関数かんすう (cosine function)正接せいせつ関数かんすう(tangent function)ばれる。さらにこれらの逆数ぎゃくすうとして以下いかの 3 つの関数かんすう定義ていぎされる。

これらはじゅんわり関数かんすう (cosecant function)せいわり関数かんすう (secant function)せっ関数かんすう (cotangent function)ばれ、sin, cos, tanわせて三角さんかく関数かんすう総称そうしょうされる。とくcsc, sec, cotわりさんかく関数かんすう(かつさんかくかんすう)とばれることがある。

この定義ていぎ0 < t < πぱい / 2範囲はんいでは直角ちょっかく三角形さんかっけいによる定義ていぎ一致いっちする。

級数きゅうすうによるもの[編集へんしゅう]

角度かくどあたりながさといった幾何きかがくてき概念がいねんへの依存いぞんけるため、また定義ていぎいき複素数ふくそすう拡張かくちょうするために、級数きゅうすう定義ていぎ採用さいようした三角さんかく関数かんすうテイラー展開てんかい一致いっちする)をもちいて定義ていぎすることもできる。この定義ていぎ実数じっすう範囲はんいでは単位たんいえんによる定義ていぎ一致いっちする。以下いか級数きゅうすうともしめされる収束しゅうそくえんない収束しゅうそくする。

微分びぶん方程式ほうていしきによるもの[編集へんしゅう]

じつ関数かんすう f(x)かい線型せんけい常微分じょうびぶん方程式ほうていしき初期しょき問題もんだい

(1)

かいとして cosx定義ていぎし、sinxd (cosx)/dx として定義ていぎできる[1][2]上記じょうきしきを 1 かい連立れんりつ常微分じょうびぶん方程式ほうていしきえると、g(x) = f '(x) として、

(2)

および初期しょき条件じょうけん f(0) = 1, g(0) = 0 となる。

定義ていぎ[編集へんしゅう]

このほかにもてい積分せきぶんによる(ぎゃく三角さんかく関数かんすうもちいた)定義ていぎ複素ふくそ平面へいめんかく回転かいてんによる定義ていぎなどがられている[1][3][4][5][6][7]

性質せいしつ[編集へんしゅう]

周期しゅうきせい[編集へんしゅう]

せいえんよりられる cosθしーたsinθしーた
sinxcosx のグラフ。これらの関数かんすう周期しゅうきせい確認かくにんできる。

x じくせい部分ぶぶんとなすかく

あらわすことができ、θしーたへんかくt一般いっぱんかくという。

一般いっぱんかく t2πぱい すすめばてん P(cost, sint)単位たんい円上えんじょうを1しゅうもと位置いちもどる。したがって、

すなわち三角さんかく関数かんすう cos, sin周期しゅうき 2πぱい周期しゅうき関数かんすうである。

ほぼ同様どうように、tan, cot周期しゅうき πぱい周期しゅうき関数かんすうsec, csc周期しゅうき 2πぱい周期しゅうき関数かんすうである。

また、cosθしーた, sinθしーたのグラフのかたち正弦せいげんである。

三角さんかく関数かんすうのグラフ: Sine(あお実線じっせん)、 Cosine(みどり実線じっせん)、 Tangent(あか実線じっせん)、 Cosecant(あお点線てんせん)、 Secant(みどり点線てんせん)、 Cotangent(あか点線てんせん

相互そうご関係かんけい[編集へんしゅう]

単位たんい円上えんじょうてん座標ざひょう関数かんすうであることから、三角さんかく関数かんすうあいだには多数たすう相互そうご関係かんけい存在そんざいする。

基本きほん相互そうご関係かんけい[編集へんしゅう]

三角さんかく関数かんすうあいだもっと基本きほんてき恒等こうとうしきの 1 つとして

げられる。これはピタゴラスの基本きほんさんかく関数かんすう公式こうしき (Fundamental Pythagorean trigonometric identity)ばれている[8]

上記じょうきしき変形へんけいして整理せいりすれば、以下いかしきみちびかれる。

まけかくかく補角ほかく公式こうしき[編集へんしゅう]

まけかく
かく
補角ほかく

加法かほう定理ていり[編集へんしゅう]

証明しょうめい[編集へんしゅう]

ピタゴラス基本きほん三角さんかく公式こうしき[編集へんしゅう]

三角さんかく関数かんすうおよび指数しすう関数かんすうべき級数きゅうすうによって定義ていぎされているものとすると、まけかく公式こうしき指数しすう法則ほうそくおよびオイラーの公式こうしきより

である。

まけかく[編集へんしゅう]

sin および cos については、べき級数きゅうすうによる表示ひょうじからあきらかである。また

である。

加法かほう定理ていり[編集へんしゅう]

オイラーの公式こうしき

Euler's formula

まけかく公式こうしきから

て、指数しすう法則ほうそく

もちいれば sin, cos加法かほう定理ていりられる。これらから三角さんかく関数かんすうについての加法かほう定理ていりられる。

PQみどり線分せんぶんながさ)をもとめる。

また、ピタゴラスの定理ていりから加法かほう定理ていりしめ方法ほうほうげられる。この方法ほうほうでは、円周えんしゅうじょう任意にんいの 2 てんあいだ距離きょりを 2 とおりの座標ざひょうけいについてもとめることで、両者りょうしゃひとしいことから加法かほう定理ていりみちびく。2 てんあいだ距離きょりもとめるのにさん平方へいほう定理ていりもちいる。以下いかでは単位たんいえんのみをあつかうが、えん半径はんけいによらずこの方法ほうほうから加法かほう定理ていりることができる。

単位たんいえんしゅうじょうに 2 てん P = (cosp, sinp), Q = (cosq, sinq)る。P と Q をむす線分せんぶんながさを PQ として、その 2 じょう PQ2 を 2 とおりの方法ほうほうもとめることをかんがえる(みぎ参照さんしょう)。

P と Q の x 座標ざひょうy 座標ざひょうから、さん平方へいほう定理ていりもちいて PQ2もとめる。

(1)

つぎQ = (cos0, sin0) = (1, 0) となるような座標ざひょうけいり、同様どうようさん平方へいほう定理ていりから PQ2もとめる。この座標ざひょうけいたいする操作そうさは、x じくおよび y じく角度かくど q だけ回転かいてんさせる操作そうさ相当そうとうするので、P = (cos(pq), sin(pq)) となる。したがって、

(2)

となる。

(1)(2)右辺うへんたがいにひとしいことから、つぎcosかんする加法かほう定理ていりられる。

(3)

三角さんかく関数かんすうほか性質せいしつ利用りようすることで、(3) から sin加法かほう定理ていりなどもみちびくことができる。

不動点ふどうてん[編集へんしゅう]

cos の不動点ふどうてん以下いかしきたし、ドッティすうとよばれる。

微積分びせきぶん[編集へんしゅう]

三角さんかく関数かんすう微積分びせきぶんは、以下いかひょうのとおりである。ただし、これらの結果けっかには様々さまざまな(一見いっけんおなじにはえない)表示ひょうじ存在そんざいし、このひょうにおける表示ひょうじはいくつかのれいであることに注意ちゅういされたい。

なお、以下いかひょうC積分せきぶん定数ていすうln(·)自然しぜん対数たいすうである。

微分びぶん  不定ふてい積分せきぶん 

ただし、gd−1xグーデルマン関数かんすうぎゃく関数かんすうである。 (gd-1x = ln|sec x + tan x|)

三角さんかく関数かんすう微分びぶんでは、つぎ極限きょくげん

成立せいりつ基本きほんてきである。このとき、sinxしるべ関数かんすうcosx であることは加法かほう定理ていりからしたがう(が、後述こうじゅつのようにこれは循環じゅんかん論法ろんぽうであると指摘してきされる)。さらにかく公式こうしき cosx = sin (πぱい/2x) から cosxしるべ関数かんすう−sinx である。すなわち、sinx微分びぶん方程式ほうていしき y''(x) + y(x) = 0特殊とくしゅかいである。また、三角さんかく関数かんすうしるべ関数かんすうも、うえ事実じじつから簡単かんたんみちびける。

sinx/xx → 0 における極限きょくげん[編集へんしゅう]

sinx/xx → 0 における極限きょくげんが 1 であることを証明しょうめいするときに、中心ちゅうしんかく x ラジアンの扇形せんけい面積めんせきを2つの三角形さんかっけい面積めんせきではさんだり[9]ちょう線分せんぶんながさではさんだりして[10][11]、いわゆるはさみうちの原理げんりから証明しょうめいする方法ほうほうがある。これは一般いっぱんてき日本にっぽん高校こうこう教科書きょうかしょ[12][13]にもっているものであるが、循環じゅんかん論法ろんぽうであるため論理ろんり破綻はたんしているという主張しゅちょうがなされることがある[14][15]。ここで問題もんだいとなるのは、証明しょうめい面積めんせきやラジアン、ちょう利用りようされていることである。たとえば面積めんせきについてえば、面積めんせき積分せきぶんによって定義ていぎされるものであるとすると、扇形せんけい面積めんせきもとめるには三角さんかく関数かんすう積分せきぶん必要ひつようとなる。三角さんかく関数かんすう積分せきぶんをするには三角さんかく関数かんすう微分びぶんができなければならないが、三角さんかく関数かんすう微分びぶんするにはもとの極限きょくげん必要ひつようになる。このことが循環じゅんかん論法ろんぽうばれているのである。

単位たんいえんばん面積めんせきπぱい であることを自明じめい概念がいねんかんがえてしまえば循環じゅんかん論法ろんぽうにはならないが、これはいくつかのめられた公理こうり定義ていぎから論理ろんりてき演繹えんえきのみによって証明しょうめいされたものだけをただしいとかんがえる現代げんだい数学すうがく思想しそうとは相反あいはんするものである。循環じゅんかん論法ろんぽう回避かいひする方法ほうほうの 1 つは、正弦せいげん関数かんすう余弦よげん関数かんすう上述じょうじゅつのような無限むげん級数きゅうすう定義ていぎするものである(これは三角さんかく関数かんすう標準ひょうじゅんてき定義ていぎの 1 つである。また、この無限むげん級数きゅうすう収束しゅうそく半径はんけい無限むげんだいである(すなわち任意にんい実数じっすう複素数ふくそすう収束しゅうそくする))。この定義ていぎもとづいて

しめすことができる。

しかしながら、このように定義ていぎされた三角さんかく関数かんすうが、本来ほんらいつべき幾何きかがくてき性質せいしつゆうしているかどうかはまったあきらかなことではない。これをたしかめるためには、三角さんかく関数かんすうしょ公式こうしき周期しゅうきせいやピタゴラスの基本きほんさんかく関数かんすう公式こうしきとう)を証明しょうめいし、また円周えんしゅうりつは、余弦よげん関数かんすうせい最小さいしょうれいてん(つまり、cosx = 0 となるせい最小さいしょう)の存在そんざいしめし、その 2 ばい定義ていぎする。すると、区間くかん [0, 2πぱい) から単位たんい円周えんしゅうへの(「はん時計とけいまわりの」)ぜんたんしゃであることをしめすことができる。(連続れんぞく微分びぶん可能かのうな)曲線きょくせんながさを積分せきぶんによって定義ていぎすれば、単位たんい円周えんしゅうながさが 2πぱい であることなどがわかり、うえのように定義ていぎされた三角さんかく関数かんすう円周えんしゅうりつは、初等しょとう幾何きかでの三角さんかく関数かんすう円周えんしゅうりつ素朴そぼく定義ていぎおなじものであることがかった [注釈ちゅうしゃく 1][16]


無限むげんじょうせき展開てんかい[編集へんしゅう]

三角さんかく関数かんすう以下いかのように無限むげんじょうせきとしてける。

部分ぶぶん分数ぶんすう展開てんかい[編集へんしゅう]

三角さんかく関数かんすう以下いかのように部分ぶぶん分数ぶんすう展開てんかいされる。

ぎゃく三角さんかく関数かんすう[編集へんしゅう]

三角さんかく関数かんすう定義ていぎいき適当てきとう制限せいげんしたもののぎゃく関数かんすうぎゃく三角さんかく関数かんすう(ぎゃくさんかくかんすう、えい: inverse trigonometric function)とぶ。ぎゃく三角さんかく関数かんすうぎゃく関数かんすう記法きほうのっとり、もと関数かんすう記号きごう−1右肩みぎかたしてあらわす。たとえばぎゃく正弦せいげん関数かんすう(ぎゃくせいげんかんすう、えい: inverse sine; インバース・サイン)は sin−1x などとあらわす。arcsin, arccos, arctan などの記法きほうもよくもちいられる。数値すうち計算けいさんなどにおいては、これらのぎゃく関数かんすうはさらに asin, acos, atan などとあらわされる。

である。ぎゃく関数かんすう逆数ぎゃくすうではないので注意ちゅういしたい。逆数ぎゃくすうとの混乱こんらんけるために、ぎゃく正弦せいげん関数かんすう sin−1xarcsinx流儀りゅうぎもある。一般いっぱん周期しゅうき関数かんすうぎゃく関数かんすうあたい関数かんすうになるので、通常つうじょうぎゃく三角さんかく関数かんすう一価いっか連続れんぞくなるえだ制限せいげんしてかんがえることがおおい。たとえば、便宜べんぎてきおもばれるえだ

のようにえらぶことがおおい。またこのとき、制限せいげんがあることを強調きょうちょうするために、Sin−1x, Arcsin x のように頭文字かしらもじ大文字おおもじにした表記ひょうきがよくもちいられる。

複素ふくそ関数かんすうとして[編集へんしゅう]

exp z, cos z, sin z級数きゅうすうによる定義ていぎから、オイラーの公式こうしき exp (iz) = cos z + i sin zみちびくことができる。この公式こうしきから下記かきの 2 つの等式とうしき

られるから、これを連立れんりつさせてくことにより、正弦せいげん関数かんすう余弦よげん関数かんすう指数しすう関数かんすうもちいた表現ひょうげん可能かのうとなる。すなわち、

つ。この事実じじつにより、級数きゅうすうによらずこの等式とうしきをもって複素数ふくそすう正弦せいげん余弦よげん関数かんすう定義ていぎとすることもある。また、

つ。ここで cosh z, sinh z双曲線そうきょくせん関数かんすうあらわす。この等式とうしき三角さんかく関数かんすう双曲線そうきょくせん関数かんすう関係かんけいしきとらえることもできる。複素数ふくそすう zz = x + iy (x, yR)表現ひょうげんすると、加法かほう定理ていりより

つ。

三角さんかく関数かんすうcscz = 1 / sinz, secz = 1 / cosz, tanz = sinz / cosz, cotz = cosz / sinz によって定義ていぎできる。

球面きゅうめん三角さんかくほう[編集へんしゅう]

球面きゅうめん三角形さんかっけい ABC の内角ないかくa, b, c, かく頂点ちょうてん対辺たいへんかんするたま中心ちゅうしんかくαあるふぁ, βべーた, γがんま とするとき、つぎのような関係かんけい成立せいりつする。余弦よげん公式こうしき正弦せいげん余弦よげん公式こうしきしき対称たいしょうせいによりかく記号きごうえたものも成立せいりつする。

正弦せいげん公式こうしき
sina : sinb : sinc = sinαあるふぁ : sinβべーた : sinγがんま
余弦よげん公式こうしき
cosa = −cosb cosc + sinb sinc cosαあるふぁ
余弦よげん公式こうしき
cosαあるふぁ = cosβべーた cosγがんま + sinβべーた sinγがんま cosa
正弦せいげん余弦よげん公式こうしき
sina cosβべーた = cosb sinc − sinb cosc cosαあるふぁ

語源ごげん [編集へんしゅう]

三角さんかく関数かんすう英語えいご名称めいしょう語源ごげんについてしるす。

sineはもとはchord-half(はんつる)を意味いみするサンスクリット jya ̄-ardha起源きげんであり、省略形しょうりゃくけいji ̄va ̄がアラビア音訳おんやくされてjibaとなったが、1145ねんチェスターのロバートフワーリズミーヒサーブ・アル=ジャブル・ワル=ムカーバラ英語えいごばんラテン語らてんご翻訳ほんやくするさいに、jaibと混同こんどうしたことむねわん意味いみのsinusと翻訳ほんやくされた[17][18]

tangentは”touching”を意味いみするラテン語らてんごtangens由来ゆらいで、secantは”cutting”を意味いみするラテン語らてんごsecans由来ゆらいである[19]

cosine、cotangent、cosecantはそれぞれ接頭せっとうのco-がついたかたちであり、co-はcofunction英語えいごばん共通きょうつうし、これはcompliment angle英語えいごばん(直角ちょっかく三角形さんかっけい直角ちょっかくでないもうひとつのかくかく)にたいするsine、tangent、secantという意味いみである。cosine、cotangentがはじめてかれたかたち確認かくにんされるのは1620ねんエドマンド・ガンターによる”Canon triangulorum”のなかである。ラテン語らてんごのcosinusとして登場とうじょうし、これはsinus complementiのりゃくである[20]

日本語にほんご正弦せいげん余弦よげんかんしては、じょひかりけいらが編纂へんさんした『たかしただしれきしょ』のなかで、みやびたに英語えいごばんが1631ねんあらわした『測量そくりょうぜん』のはちせんのうちにられる[21][22]。「ただし」の漢字かんじには、「真向まむかいの」「おもとなるもの」という意味いみがある[23]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 三角さんかく関数かんすう円周えんしゅうりつ曲線きょくせんながとう定義ていぎ仕方しかたは、複数ふくすう流儀りゅうぎがある。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 山口やまぐちかく三角さんかく関数かんすう研究けんきゅう」『教授きょうじゅがく探究たんきゅうだい7ごう北海道大学ほっかいどうだいがく教育きょういく学部がくぶ教育きょういく方法ほうほうがく研究けんきゅうしつ、1989ねん3がつ、1-23ぺーじISSN 0288-3511NAID 120000962860 
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  9. ^ 面積めんせきによる不等式ふとうしきからの証明しょうめい”. 2015ねん1がつ20日はつか閲覧えつらん
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参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]