出典 しゅってん : フリー百科 ひゃっか 事典 じてん 『ウィキペディア(Wikipedia)』
炭酸 たんさん 鉄 てつ (II) (たんさんてつ)は、鉄 てつ の炭酸 たんさん 塩 しお で、化学 かがく 式 しき FeCO3 で表 あらわ される。菱 ひし 鉄鉱 てっこう の主成分 しゅせいぶん 。鉄 てつ の炭酸 たんさん 塩 しお には他 た に炭酸 たんさん 鉄 てつ (III) がある。密度 みつど は3.8-4.0g/cm3
硫酸 りゅうさん 鉄 てつ (II) など鉄 てつ (II)塩 しお 水溶液 すいようえき に酸素 さんそ を遮断 しゃだん して炭酸 たんさん ナトリウム あるいは炭酸 たんさん 水素 すいそ ナトリウム水溶液 すいようえき を加 くわ えると灰白色 かいはくしょく の沈殿 ちんでん が生成 せいせい する。一方 いっぽう で、鉄 てつ (III)塩 しお 水溶液 すいようえき に炭酸 たんさん 塩 しお 水溶液 すいようえき を加 くわ えても、加水 かすい 分解 ぶんかい により水 みず 和 わ 酸化 さんか 鉄 てつ (III) (水酸化 すいさんか 鉄 てつ (III)とも表現 ひょうげん される)の沈殿 ちんでん を生 しょう じるのみで炭酸 たんさん 鉄 てつ (III)の沈殿 ちんでん は得 え られない[ 4] 。
Fe
2
+
+
CO
3
2
−
⟶
FeCO
3
(
s
)
{\displaystyle {\ce {Fe^{2+}\ + CO3^{2-}-> FeCO3(s)}}}
鉄 てつ (II)塩 しお 濃厚 のうこう 水溶液 すいようえき に酸素 さんそ を遮断 しゃだん して濃 こ 炭酸 たんさん カリウム水溶液 すいようえき を過剰 かじょう に加 くわ えると、錯体 さくたい である無色 むしょく のジカルボナト鉄 てつ (II)酸 さん カリウム K2 [Fe(CO3 )2 ] を生成 せいせい する。このジカルボナト鉄 てつ (II)酸 さん カリウムは水溶液 すいようえき 中 ちゅう で分解 ぶんかい して炭酸 たんさん 鉄 てつ (II)を沈殿 ちんでん する[ 1] 。
Fe
2
+
+
2
CO
3
2
−
⟶
[
Fe
(
CO
3
)
2
]
2
−
{\displaystyle {\ce {Fe^{2+}\ + 2 CO3^{2-}->\ [Fe(CO3)2]^{2-}}}}
[
Fe
(
CO
3
)
2
]
2
−
⇄
FeCO
3
(
s
)
+
CO
3
2
−
{\displaystyle {\ce {[Fe(CO3)2]^{2-}\ \rightleftarrows \ FeCO3(s)\ +CO3^{2-}}}}
乾燥 かんそう 空気 くうき 中 ちゅう では安定 あんてい であるが、湿 しめ った空気 くうき 中 ちゅう では酸化 さんか されて褐色 かっしょく あるいは黒 くろ 味 あじ を帯 お びる。濃 こ 炭酸 たんさん 水素 すいそ ナトリウム水溶液 すいようえき に錯体 さくたい を生成 せいせい して溶 と け、希 まれ 塩酸 えんさん 、希 まれ 硫酸 りゅうさん には二酸化炭素 にさんかたんそ を発生 はっせい して溶解 ようかい し鉄 てつ (II)塩 しお を生 しょう じる。
加熱 かねつ によって200℃辺 あた りから分解 ぶんかい が始 はじ まり、490℃で二酸化炭素 にさんかたんそ の解離 かいり 圧 あつ が1気圧 きあつ に達 たっ し、同時 どうじ に分解 ぶんかい 生成 せいせい 物 ぶつ である二酸化炭素 にさんかたんそ と酸化 さんか 鉄 てつ (II) の反 はん 応 おう も進行 しんこう して四 よん 酸化 さんか 三 さん 鉄 てつ を生成 せいせい する[ 1] 。
FeCO
3
⟶
FeO
+
CO
2
{\displaystyle {\ce {FeCO3 -> FeO\ + CO2}}}
3
FeO
+
CO
2
⟶
Fe
3
O
4
+
CO
{\displaystyle {\ce {3FeO\ + CO2 -> Fe3O4\ + CO}}}
溶解 ようかい 度 ど 積 せき は 3.5×10−11 程度 ていど である[ 2] 。
FeCO
3
(
s
)
⇄
Fe
2
+
(
aq
)
+
CO
3
2
−
(
aq
)
,
{\displaystyle {\ce {FeCO3(s)\ \rightleftarrows \ Fe^{2+}(aq)\ +CO3^{2-}(aq)\ ,}}}
K
s
p
=
3.5
×
10
−
11
{\displaystyle K_{sp}=3.5\times 10^{-11}}
20℃において1気圧 きあつ で二酸化炭素 にさんかたんそ を飽和 ほうわ した水 みず には炭酸 たんさん 水素 すいそ 鉄 てつ (II) Fe(HCO3 )2 を生 しょう じて、1リットル当 あた り約 やく 1g溶解 ようかい し、この炭酸 たんさん 水素 すいそ 鉄 てつ (II)は天然 てんねん 鉱泉 こうせん 中 なか にも存在 そんざい する。炭酸 たんさん 水素 すいそ 鉄 てつ (II)は固体 こたい 結晶 けっしょう としては単 たん 離 はな されていない[ 1] 。
FeCO
3
+
CO
2
+
H
2
O
⇄
Fe
2
+
+
2
HCO
3
−
{\displaystyle {\ce {FeCO3\ +CO2\ +H2O\ \rightleftarrows \ Fe^{2+}\ +2HCO3^{-}}}}
三 さん 方 ぽう 晶 あきら 系 けい の方解石 ほうかいせき 型 かた 構造 こうぞう をとり、その格子 こうし 定数 ていすう はa = 5.82Å 、α あるふぁ = 47°46′である[ 1] 。
水田 すいでん 土壌 どじょう 中 ちゅう における生成 せいせい [ 編集 へんしゅう ]
湛 たたえ 水 すい 状態 じょうたい におかれた水田 すいでん 土壌 どじょう 中 ちゅう にはしばしば炭酸 たんさん 鉄 てつ (II)の結核 けっかく が形成 けいせい され、0.5-1.5cm程度 ていど の大 おお きさの灰白色 かいはくしょく の果 はて 粒状 りゅうじょう のものが見出 みいだ される。これは空気 くうき に触 ふ れると酸化 さんか されて青黒 あおぐろ -黒褐色 こっかっしょく に変化 へんか する[ 5] 。
炭酸 たんさん 鉄 てつ には、二 に 価 か の炭酸 たんさん 鉄 てつ (II)だけではなく、三 さん 価 か の炭酸 たんさん 鉄 てつ (III) もあるとされる。炭酸 たんさん 鉄 てつ (III)は、鉄 てつ (III)塩 しお 水溶液 すいようえき に炭酸 たんさん アンモニウム水溶液 すいようえき を反応 はんのう させたときに生 しょう じる赤色 あかいろ 沈殿 ちんでん だとされるが、それが、炭酸 たんさん 鉄 てつ (III)であるかは確 たし かではない。
^ a b c d e 『化学 かがく 大 だい 辞典 じてん 』 共立 きょうりつ 出版 しゅっぱん 、1993年 ねん
^ a b 日本 にっぽん 化 か 学会 がっかい 編 へん 『化学 かがく 便覧 びんらん 基礎 きそ 編 へん 改訂 かいてい 4版 はん 』 丸善 まるぜん 、1993年 ねん
^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).
^ F.A. コットン, G. ウィルキンソン著 ちょ , 中原 なかはら 勝 まさる 儼 げん 訳 やく 『コットン・ウィルキンソン無機 むき 化学 かがく 』 培風館 ばいふうかん 、1987年 ねん
^ 岩佐 いわさ 安 やすし (1959), CiNii 岩佐 いわさ 安 やすし (1959): 水田 すいでん 土壌 どじょう 中 ちゅう の灰白色 かいはくしょく 炭酸 たんさん 鉄 てつ 結核 けっかく について, ペドロジスト, 3 (2), 53-58.