電気でんきしゃ速度そくど制御せいぎょ

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電気車の例動力を伝える台車
機関士による制御速度計

電気でんきしゃ速度そくど制御せいぎょ(でんきしゃのそくどせいぎょ)は、電気でんき機関きかんしゃ電車でんしゃなど電気でんき動力どうりょくとする鉄道てつどう車両しゃりょう電気でんきしゃ)を対象たいしょうとした速度そくど制御せいぎょ方法ほうほうである。ほんこうでは電気でんきしゃもちいられる電動でんどう特性とくせい、および起動きどう加速かそく出力しゅつりょく制御せいぎょについて、ていトルク制御せいぎょいきてい出力しゅつりょく制御せいぎょいき特性とくせい領域りょういきばれる速度そくど領域りょういきけて解説かいせつする。

概要がいよう[編集へんしゅう]

基本きほん用語ようご

1879ねんシーメンスドイツ)が電車でんしゃ試験しけん運行うんこう実施じっしして以来いらい電気でんき動力どうりょくとした鉄道てつどう電気でんき鉄道てつどう)は発展はってんつづけ、現代げんだいでは鉄道てつどうしゅたる方式ほうしきとなっている。

国内外こくないがいわず一般いっぱんてき電気でんきしゃ構成こうせい下図したずのとおりである。パンタグラフとうしゅうでん装置そうちによって外部がいぶより電力でんりょくれ、運転うんてんせきからの指令しれいによってしゅ制御せいぎょ走行そうこうてきした電力でんりょく変換へんかんし、台車だいしゃたいわく車体しゃたいのいずれかにそうしたしゅ電動でんどう電力でんりょくおくられ、トルクすなわち回転かいてんりょくはっする。

電気でんきしゃのうち、一般いっぱんてき電車でんしゃ構成こうせい表現ひょうげんした
牽引けんいんりょく駆動くどうりょく)と速度そくど関係かんけい表現ひょうげんした

電動でんどうから車輪しゃりん伝達でんたつされたトルクは牽引けんいんりょくとなり、走行そうこうにともなって発生はっせいする列車れっしゃ抵抗ていこうくと、電気でんきしゃ加速かそくりょくられる(みぎ)。

電気でんきしゃにおいて特徴とくちょうてき部分ぶぶんは、レシプロエンジンガスタービンエンジン機械きかいてき駆動くどうりょくとして利用りようする鉄道てつどう車両しゃりょう自動車じどうしゃのように、複雑ふくざつ変速へんそく装置そうちった機構きこう必要ひつようとしないことである[註 1]。すなわちギア固定こていであり、かつトルクコンバータクラッチなどの機構きこうゆうすることなく、起動きどうから高速こうそく走行そうこうまで対応たいおうしている。この実現じつげんのため、始動しどうトルクがおおきい電動でんどう採用さいようしたうえで、速度そくどおうじて電動でんどう制御せいぎょする。起動きどうから低速ていそくいきでは一定いっていおおきなトルクをはっし、ちゅうそくいきたっすると出力しゅつりょく最大さいだいたもったまま加速かそくする制御せいぎょもちいられている。

以下いか電気でんきしゃしゅ電動でんどうもちいられる電動でんどう特性とくせいについてべ、その代表だいひょうれいとしてちょくまき整流せいりゅう電動でんどうかごがたさんそう誘導ゆうどう電動でんどうについて解説かいせつする。さらに、しゅ電動でんどう特性とくせい電化でんか方式ほうしき技術ぎじゅつ変遷へんせんによって分類ぶんるいされるさまざまな制御せいぎょ方式ほうしきを、従来じゅうらい抵抗ていこう制御せいぎょよわ界磁制御かいじせいぎょから最新さいしんインバータ制御せいぎょいたるまでその機構きこうについて説明せつめいする。

電気でんきしゃ電動でんどう[編集へんしゅう]

電気でんきしゃもとめられる電動でんどう特性とくせい[編集へんしゅう]

鉄道てつどう車両しゃりょう停止ていし状態じょうたいから高速こうそくいきまで幅広はばひろ速度そくど走行そうこうし、勾配こうばい牽引けんいん重量じゅうりょう変化へんかにより負荷ふか変動へんどうすることから、電気でんきしゃ動力どうりょくげんとして電動でんどうにはつぎのような特性とくせいもとめられる。

  • 起動きどうのトルクがおおきいこと。
  • 速度そくど向上こうじょうとともにトルクが減少げんしょうしていくこと。
  • 幅広はばひろ速度そくどいき性能せいのう発揮はっきでき、速度そくど制御せいぎょ容易よういであること。

産業さんぎょうよう電動でんどう、たとえば送風そうふうポンプ起動きどう負荷ふかちいさく、速度そくどとともに負荷ふか上昇じょうしょうするものがおおい。しかし、鉄道てつどう車両しゃりょう始動しどう牽引けんいん重量じゅうりょう出発しゅっぱつ抵抗ていこうといったおおきな負荷ふか作用さようするため、起動きどうおおきなトルクが必要ひつようである。

また、一般いっぱん鉄道てつどうは、レールと車輪しゃりんしょうじる摩擦まさつによって駆動くどうりょく(トルク)を伝達でんたつする。これを粘着ねんちゃくぶが、てつ同士どうしちいさな摩擦まさつであることから、登坂とさか区間くかん雨天うてんなどにおいて空転くうてんこす。ここで、電動でんどう速度そくど向上こうじょうとともにトルクが減少げんしょうする特性とくせいっていれば、空転くうてんおこした車輪しゃりん回転かいてん速度そくど急激きゅうげきがることでトルクをうしない、さい粘着ねんちゃくして空転くうてん収束しゅうそくしやすい。

このほか、負荷ふか電圧でんあつ変動へんどうえられることや、複数ふくすう電動でんどうもちいても負荷ふか均衡きんこうしょうじにくいことなどが必要ひつようとされる。

直流ちょくりゅう整流せいりゅう電動でんどう[編集へんしゅう]

直流ちょくりゅう交流こうりゅう
整流せいりゅう電動でんどう動作どうさ外側そとがわ配置はいちされるさかい磁と、内側うちがわ回転かいてんする電機でんきによる構成こうせい手前てまえ整流せいりゅうとブラシ。

電動でんどう回転かいてんするじく回転子かいてんしと、回転子かいてんしとの相互そうご作用さようによりトルクを発生はっせいさせる固定こていから構成こうせいされる。電気でんきしゃには、回転子かいてんし電機でんき固定こていさかいばれる電磁石でんじしゃくをそれぞれ配置はいちした直流ちょくりゅう整流せいりゅう電動でんどう電磁石でんじしゃくかい磁形整流せいりゅう電動でんどう)がふるくからもちいられてきた。この電動でんどうは、電機でんき回転かいてんおうじて極性きょくせいえるための整流せいりゅうやブラシを必要ひつようとするが、始動しどうトルクがおおきい、速度そくど制御せいぎょ容易よういなどの利点りてんつ。

さらに直流ちょくりゅう整流せいりゅう電動でんどうは、さかい磁と電機でんき並列へいれつ接続せつぞくするぶんまき直列ちょくれつ接続せつぞくするちょくまき、これら双方そうほうわせふくまき分類ぶんるいされ、下表かひょうのように特性とくせいことなる。このほかかい磁を別電べつでんげんとする励方しきもあり、その特性とくせいぶんまき類似るいじする。

直流ちょくりゅう整流せいりゅう電動でんどう種類しゅるい特性とくせい

ちゅう - M-電機でんき ・ f-さかい
種別しゅべつ ぶんまき電動でんどう ちょくまき電動でんどう ふくまき電動でんどう
さかい 電機でんき並列へいれつ
-A)
電機でんき直列ちょくれつ
-B)
並列へいれつおよび直列ちょくれつ
-C)
特性とくせい トルクは負荷ふか電流でんりゅう比例ひれい
てい速度そくど特性とくせい
始動しどうトルクだい
トルクは電流でんりゅうの2じょう比例ひれい
負荷ふかおう速度そくど変化へんか
ぶんまきちょくまきなかあいだ特性とくせい

上記じょうきなかでは、始動しどうトルクがおおきく速度そくど変化へんか容易よういちょくまき電動でんどう電気でんきしゃ電動でんどうとしててきしており、黎明れいめいから搭載とうさい活用かつようされた。また、さかい磁の制御せいぎょがしやすいふくまき電動でんどうも、てい速度そくど制御せいぎょ回生かいせいブレーキを目的もくてき採用さいようされた製品せいひん存在そんざいする。

ちょくまき整流せいりゅう電動でんどうにおける回転かいてん速度そくどよこじく)と発生はっせいトルク(たてじく)の関係かんけいえがいた相対そうたい関係かんけい

ここで、ちょくまき電動でんどう特性とくせいについて整理せいりしておく。整流せいりゅう電動でんどうにおいてトルク()は、さかい磁による磁束じそく)と電機でんき電流でんりゅう)のせき比例ひれいする。

また、磁束じそくさかい磁電りゅう)に比例ひれいし、ちょくまき電動でんどうではさかい磁電りゅう電機でんき電流でんりゅう一致いっちすることから、磁束じそく電機でんき電流でんりゅう比例ひれいする。したがって、ちょくまき電動でんどうのトルクは電機でんき電流でんりゅうの2じょう比例ひれいする。

(ここに任意にんい定数ていすう

一方いっぽう電動でんどう発電はつでん基本きほん構造こうぞうおなじであり、さかい磁のなか電機でんき回転かいてんすると起電きでんりょく発生はっせいする。これは電動でんどうあたえる電圧でんあつぎゃくきに作用さようするため、ぎゃく起電きでんりょくばれる。ぎゃく起電きでんりょく回転かいてんすう磁束じそくせき比例ひれいして増加ぞうかすることから、回転かいてんすうがると電機でんき電流でんりゅうながれにくくなりトルクが低下ていかする。

これらの結果けっかをまとめると、ちょくまき電動でんどう特性とくせいは、

  • 電流でんりゅう回転かいてんすう反比例はんぴれいする。
  • トルクは回転かいてんすうの2じょう反比例はんぴれいする。

となり、みぎしめ性能せいのう曲線きょくせんられ、電気でんきしゃもとめる特性とくせい合致がっちしたものとなる。

さんそう交流こうりゅう電動でんどう[編集へんしゅう]

たんしょう交流こうりゅうさんそう交流こうりゅう
単相交流 三相交流
たんしょう交流こうりゅう さんそう交流こうりゅう
かごがたさんそう誘導ゆうどう電動でんどう
固定こていさんそう交流こうりゅうながすと、誘導ゆうどう電流でんりゅうしょうじた回転子かいてんし回転かいてん

前項ぜんこうでは直流ちょくりゅう電源でんげんによる電動でんどうについてべたが、さらに交流こうりゅう電源でんげん使用しようする電動でんどうについて解説かいせつくわえる。

整流せいりゅう電動でんどう交流こうりゅう電源でんげん使用しよう可能かのうであるが、交流こうりゅう電源でんげんには誘導ゆうどう電動でんどう同期どうき電動でんどう一般いっぱんひろ使つかわれる。整流せいりゅう電動でんどう整流せいりゅうとブラシにより極性きょくせいえて回転かいてんするのにたいし、これらの電動でんどう電圧でんあつきが周期しゅうきてき変化へんかする交流こうりゅう電源でんげん同期どうきして回転かいてんするものである。

これらの電動でんどう回転かいてん速度そくど電源でんげん周波数しゅうはすう依存いぞんするため、こまかな速度そくど制御せいぎょむずかしく、鉄道てつどう車両しゃりょうのような使用しよう速度そくどいきひろ電動でんどうには不向ふむきとされてきた。しかし、20世紀せいき後半こうはんのパワーエレクトロニクスの発展はってんによって、電圧でんあつ周波数しゅうはすう自在じざい制御せいぎょできるインバータ開発かいはつされると、一気いっき電気でんきしゃ電動でんどうとして採用さいようすすんだ。

とりわけ電気でんきしゃ採用さいようおおいのは、かごがたさんそう誘導ゆうどう電動でんどうである。この電動でんどうさんそう交流こうりゅうなが固定こていと、かごがた構造こうぞう回転子かいてんしにより構成こうせいされる。固定こてい電流でんりゅうながすと、さんそう交流こうりゅう波形はけいおうじた回転かいてん磁界じかい発生はっせいし、かごがた回転子かいてんし誘導ゆうどう電流でんりゅうながれて回転かいてんする仕組しくみである。整流せいりゅう電動でんどうとはことなり、回転子かいてんし誘導ゆうどう電流でんりゅう回転かいてん磁界じかいによって自然しぜんしょうじるものであり、回転子かいてんし電流でんりゅうながすための整流せいりゅう・ブラシを必要ひつようとしないことから、小型こがた軽量けいりょうはかれるとともにこう回転かいてんこう出力しゅつりょく容易ようい保守ほしゅせいにもすぐれる。

かごがたさんそう電動でんどうのトルク()は、電源でんげん電圧でんあつ)、電源でんげん周波数しゅうはすう)、回転かいてん磁界じかい回転かいてん速度そくど)、回転子かいてんし回転かいてん速度そくど)と、

関係かんけいにある。ここに、すべりはすべり周波数しゅうはすうばれるもので、すべりは磁界じかい回転子かいてんし回転かいてん速度そくどであり、回転子かいてんし励電りゅうしょうじさせ誘導ゆうどう電動でんどうにトルクをあたえるものである。うえしきから、誘導ゆうどう電気でんき特性とくせいは、

  • トルクは電圧でんあつの2じょう比例ひれいし、電源でんげん周波数しゅうはすうの2じょう反比例はんぴれいする。
  • トルクはすべり周波数しゅうはすう比例ひれいする。
  • 電圧でんあつ周波数しゅうはすう比例ひれいさせれば≡電圧でんあつ周波数しゅうはすう一定いってい加速かそくすればていトルクがられる。

となり、ここで電源でんげん電圧でんあつおよびすべり周波数しゅうはすう一定いっていとすれば、ちょくまき電動でんどう同様どうように『トルクが回転かいてんすうの2じょう反比例はんぴれい』の特性とくせいられる。

最近さいきんでは、誘導ゆうどう電動でんどうわってうめこみ構造こうぞう永久えいきゅう磁石じしゃく同期どうき電動でんどう (IPMSM)採用さいようえている。回転子かいてんし永久えいきゅう磁石じしゃくんだくうげきのあるつね磁性じせいからだもちいた電動でんどうで、誘導ゆうどう電動でんどうくらなんらかの損失そんしつすくなく、たか効率こうりつられることが特長とくちょうである。また、稼働かどう放熱ほうねつちいさいことから密閉みっぺい構造こうぞうとすることができ、騒音そうおん軽減けいげん電動でんどう内部ないぶへの粉塵ふんじん浸入しんにゅう抑制よくせい容易よういである。このような特長とくちょうから、電気でんき自動車じどうしゃハイブリッドカーではIPMSMの採用さいよう目立めだっている。一方いっぽうで、永久えいきゅう磁石じしゃくくさり磁束じそくによって固定こていにおけるてつそんさそえ起電きでんあつ発生はっせいするため、必要ひつようおうじて負荷ふか(惰行運転うんてん)にもよわ磁束じそく制御せいぎょ手動しゅどうおこなうほか、インバータの故障こしょう短絡たんらく電流でんりゅう遮断しゃだんする機器きき必要ひつようである。また同期どうき電動でんどうとしての特性とくせいじょう複数ふくすうのモーターを一括いっかつ制御せいぎょすることは不可能ふかのうであり、個別こべつ制御せいぎょ必須ひっすとなり構造こうぞう複雑ふくざつになる。


速度そくど制御せいぎょ基本きほん[編集へんしゅう]

電気でんきしゃにおける速度そくど制御せいぎょ[編集へんしゅう]

本来ほんらい速度そくど制御せいぎょとは電動でんどうあたえる特性とくせい調整ちょうせいして、負荷ふかとつり回転かいてん速度そくどることを用語ようごである。しかし、鉄道てつどう車両しゃりょうはあらゆる負荷ふかおおきく、目標もくひょうとする速度そくどたっするまで相応そうおう時間じかんようすることから、ことなる手法しゅほうられる。

一般いっぱん電気でんきしゃでは、かく速度そくど領域りょういきにおける可能かのうかぎりの出力しゅつりょくて、目標もくひょうとなる速度そくどまでいちはや加速かそくするよう制御せいぎょする。目標もくひょう速度そくどたっすると、電動でんどう出力しゅつりょくってしまい(ノッチオフという)惰性だせい走行そうこうするか、もしくは出力しゅつりょく低減ていげんして速度そくど維持いじするといった手法しゅほうられる。このように、電気でんきしゃにおいては、出力しゅつりょく制御せいぎょおこなった結果けっかとしてられる速度そくどを、慣例かんれいてき速度そくど制御せいぎょんでいる。

電動でんどう電気でんきしゃにおける速度そくど制御せいぎょちが
電動でんどう速度そくど制御せいぎょ 電気でんきしゃ速度そくど制御せいぎょ
電圧でんあつさかい磁を制御せいぎょ

負荷ふかとつり速度そくどてい回転かいてん
電圧でんあつさかい磁を制御せいぎょ
最大さいだい加速かそくりょく

目標もくひょう速度そくどたっする

加速かそくめ惰行運転うんてん
またはてい速度そくど制御せいぎょ
A - 速度そくど制御せいぎょかんがかた
低速ていそくいきではトルクをおさえ、高速こうそくいきではトルクを向上こうじょうさせる
B - 速度そくどおうじて特性とくせい曲線きょくせん細線さいせん)をえ、太線ふとせん沿った制御せいぎょおこなう。

前述ぜんじゅつのとおり電気でんきしゃ電動でんどう始動しどうトルクおおきく、速度そくどとともにトルクが低下ていかする特性とくせいもとめられる。しかしながら、このような特性とくせい電動でんどう速度そくどひくいほどトルクや電流でんりゅうおおきくなるため、てい速度そくどから所定しょてい特性とくせい発揮はっきさせると、粘着ねんちゃくりょく以上いじょうのトルクを発生はっせいして空転くうてんこしたり、過剰かじょう電流でんりゅうながれて電動でんどう焼損しょうそんするといった問題もんだいしょうじる。また、速度そくどがるにつれて急速きゅうそくにトルクが低下ていかするため、高速こうそく障害しょうがいとなりかねない。

そこでおおくの場合ばあい低速ていそくいきでは電流でんりゅうおよびトルクを抑制よくせいしていち定値ていちたもち、高速こうそくいきではトルクがあまり低下ていかしないよう制御せいぎょおこなう。Aはこの制御せいぎょかんがかたをグラフにしめしたものであり、回転かいてんすうひくいときはトルクをおさえてT1たもち、回転かいてんすうV1えると低下ていかするトルクの向上こうじょうはかる。これを実現じつげんするため、速度そくどおうじて電圧でんあつさかい磁等を変化へんかさせ、ことなる特性とくせい曲線きょくせんBの細線さいせん)をてトルクの制御せいぎょおこなう。

具体ぐたいてき特性とくせい設計せっけい基準きじゅんとなるかんがかたとしては、レールと車輪しゃりん粘着ねんちゃくりょく限界げんかい前提ぜんていに、降雨こううなど一般いっぱんてき悪条件あくじょうけん空転くうてん滑走かっそうこさない範囲はんい加速かそく減速げんそくトルクを設定せっていすることが実用じつようじょう最大さいだい加速度かそくど最大限さいだいげん速度そくど基本きほんになる。

一般いっぱんてきにはてい加速かそくてい減速げんそく制御せいぎょおもわれているおう荷重かじゅう装置そうちも、動作どうさ実態じったい粘着ねんちゃくりょく限界げんかいない制御せいぎょ装置そうちであり、けい荷重におもではそれにおうじてトルクをげんじて、空転くうてん滑走かっそうこさない限界げんかいない動作どうささせる装置そうちである。このかんがかただとちょくまき電動でんどうである必要ひつようはなく、ぶんまき電動でんどう誘導ゆうどう電動でんどう同期どうき電動でんどう鉄道てつどう車両しゃりょう使つかうことができる。

粘着ねんちゃくりょく速度そくどがるにれて減少げんしょうするが、制御せいぎょけい速度そくど情報じょうほうまないシステムでは速度そくどV1以下いかていトルクであるが、速度そくど情報じょうほうんで低速ていそくではだいトルクとして引張ひっぱちからげることが可能かのうで、近年きんねん新幹線しんかんせん車両しゃりょうなどは粘着ねんちゃくりょく速度そくど特性とくせい想定そうていして速度そくどおうじてトルクをえている。

以下いかBを参照さんしょうしながら速度そくどいきごとに制御せいぎょ方法ほうほう概説がいせつする。

ていトルク制御せいぎょ[編集へんしゅう]

起動きどうから低速ていそくいき範囲はんいにおいては、必要ひつようとする以上いじょうのトルクを電動でんどう発生はっせいするため、電流でんりゅう抑制よくせいして一定いっていのトルクにたもつ。しゅとして電動でんどうへの電圧でんあつえることで制御せいぎょする。起動きどう電圧でんあつをごくひくくしておき、Bにおける左端ひだりはし細線さいせん特性とくせいる。速度そくどがるとトルクは低下ていかするため、これにわせ徐々じょじょ電圧でんあつげていくと、特性とくせい曲線きょくせんじゅんみぎ移動いどうしていき、トルクをほぼ一定いっていたもつことができる。このとき、電動でんどう電流でんりゅう一定いってい制御せいぎょされ、出力しゅつりょく速度そくどとともに増加ぞうかする。この制御せいぎょ電圧でんあつ最大さいだいとなる回転かいてんすうV1までおこなう。

鉄道てつどう車両しゃりょう走行そうこう抵抗ていこう一般いっぱんちいさく、低速ていそく領域りょういきでは速度そくどにかかわらずおおきな変化へんかはないことから、電動でんどう発生はっせいトルクが一定いっていであれば、ほぼ一定いってい加速度かそくどられる。このことから、ていトルク制御せいぎょおこな速度そくど領域りょういきてい加速度かそくど領域りょういきぶことがある。

てい出力しゅつりょく制御せいぎょ[編集へんしゅう]

電動でんどうあたえる電圧でんあつ印加いんか電圧でんあつ)が最大さいだいとなる(=回転かいてんすうV1たっする)と、そのままでは後述こうじゅつ特性とくせい領域りょういきとして電動でんどう特性とくせいにより速度そくど反比例はんぴれい電流でんりゅう低下ていかし、トルクが速度そくどの2じょう反比例はんぴれいして急激きゅうげき低下ていかする。ここでさらに加速かそくをしたい場合ばあいは、電圧でんあつ制御せいぎょ以外いがい方法ほうほう電流でんりゅうやトルクの低下ていか抑制よくせいする制御せいぎょ方法ほうほうられる。すなわち印加いんか電圧でんあつはそのままに、最大さいだい電圧でんあつ到達とうたつ以降いこう一定いってい電流でんりゅう加速かそくつづけると一定いってい入力にゅうりょく電力でんりょく(=一定いってい電圧でんあつ×一定いってい電流でんりゅう)となり、一定いってい出力しゅつりょくになる。これをてい出力しゅつりょく制御せいぎょぶ。整流せいりゅう電動でんどうではさかい磁をよわめる制御せいぎょ誘導ゆうどう電動でんどうではすべり周波数しゅうはすうやす制御せいぎょおこなって、その制御せいぎょ限界げんかいまで電流でんりゅう一定いっていたもつよう制御せいぎょする。これにより、トルクは速度そくど反比例はんぴれいするようになり、速度そくどの2じょう反比例はんぴれいする特性とくせい領域りょういきとしてそのまま運転うんてんするよりもトルク低下ていかふせいで加速かそくりょく確保かくほできる。

てい出力しゅつりょく制御せいぎょかならおこなわれるものではなく、かつてはじゃく界磁制御かいじせいぎょをしない車両しゃりょう普通ふつうだったし、ていトルク制御せいぎょ領域りょういきひろり、そのまま特性とくせい領域りょういき移行いこうする方式ほうしきもある。交流こうりゅう電化でんか専用せんよう車両しゃりょうでは変圧へんあつ次第しだい印加いんか電圧でんあつ制御せいぎょはばひろれるため、このようなケースがしばしばられる。

特性とくせい領域りょういき[編集へんしゅう]

速度そくどがり最大さいだい電圧でんあつたっすると(回転かいてんすうV1)、あるいはてい出力しゅつりょく制御せいぎょ限界げんかいたっすると(回転かいてんすうV2)、これ以上いじょう速度そくど向上こうじょう電動でんどう特性とくせい依存いぞんする。すなわち、速度そくど反比例はんぴれいして電流でんりゅう低下ていかし、トルクは速度そくどの2じょう反比例はんぴれいして低下ていかしていく。

以下いかひょうかく速度そくど領域りょういきにおける速度そくど上昇じょうしょう印加いんか電圧でんあつ電流でんりゅう発生はっせいトルク、出力しゅつりょく関係かんけいについてしめす。

ひょう - かく速度そくど領域りょういきにおける速度そくど上昇じょうしょう特性とくせい関係かんけい
速度そくど領域りょういき ていトルク制御せいぎょいき てい出力しゅつりょく制御せいぎょいき 特性とくせい領域りょういき
起動きどうから低速ていそくいき ちゅうそくいき 高速こうそくいき
電圧でんあつ 増加ぞうか
速度そくど比例ひれい
一定いってい最大さいだい 一定いってい最大さいだい
電流でんりゅう 一定いってい 一定いってい 低下ていか
速度そくど反比例はんぴれい
トルク 一定いってい 低下ていか
速度そくど反比例はんぴれい
急激きゅうげき低下ていか
速度そくどの2じょう反比例はんぴれい
出力しゅつりょく 増加ぞうか
速度そくど比例ひれい
一定いってい 低下ていか
速度そくど反比例はんぴれい

速度そくどやトルクを制御せいぎょする方法ほうほう[編集へんしゅう]

電動でんどう印加いんか電圧でんあつえる方法ほうほう[編集へんしゅう]

整流せいりゅう電動でんどう速度そくど制御せいぎょおこなうにあたってもっとも効果こうかてき方法ほうほうは、電動でんどう作用さようする電圧でんあつ印加いんか電圧でんあつ)をえることである。速度そくどやトルクの制御せいぎょ容易よういで、ひろ速度そくど範囲はんい制御せいぎょできるため、ていトルク領域りょういきもちいられる。

下図したず速度そくど変化へんか電圧でんあつ制御せいぎょについて概念がいねんしめしたものである。

  1. 回転かいてん速度そくどひくいときはぎゃく起電きでんりょくちいさく、たか電圧でんあつ電動でんどうにかけると過大かだい電流でんりゅうながれることから、ひく電圧でんあつ起動きどうする(ちゅうだいいち段階だんかい)。
  2. やがて回転かいてん速度そくどがってくると、電機でんきぎゃく起電きでんりょく増加ぞうかし、電機でんき電流でんりゅう減少げんしょうして発生はっせいトルクがってゆく(ちゅうだい段階だんかい)。
  3. そこで印加いんか電圧でんあつげ、電機でんき電流でんりゅう確保かくほする(ちゅうだいさん段階だんかい)。

この要領ようりょう速度そくど上昇じょうしょうとともに電圧でんあつげ、電機でんき電流でんりゅうとトルクを一定いっていたもちながら制御せいぎょおこなうのが、電圧でんあつによる速度そくど制御せいぎょである。

図解ずかい - 速度そくど変化へんか電圧でんあつ制御せいぎょ
だいいち段階だんかい だい段階だんかい だいさん段階だんかい
起動きどうぎゃく起電きでんりょくちいさいので、印加いんか電圧でんあつひくくして起動きどうする。 回転かいてん速度そくどがるにつれ、ぎゃく起電きでんりょく増加ぞうかして電機でんき電流でんりゅう減少げんしょうする。 そこで、印加いんか電圧でんあつげて、電機でんき電流でんりゅう確保かくほする。

電圧でんあつ変動へんどうさせる手法しゅほうには、黎明れいめいから採用さいようされてきた簡便かんべん手法しゅほうから最新さいしん技術ぎじゅつのパワーエレクトロニクスをもちいた手法しゅほうまで、さまざまな手法しゅほうもちいられてきた。以下いかにその方法ほうほう概説がいせつする。

抵抗ていこう制御せいぎょ
電動でんどう始動しどうには始動しどう抵抗ていこう電動でんどう直列ちょくれつ配置はいちし、過大かだい電流でんりゅうふせぐことがしばしばおこなわれる。抵抗ていこう制御せいぎょ始動しどう抵抗ていこう段階だんかいてき用意よういし、速度そくど制御せいぎょ応用おうようしたものである。簡便かんべん方法ほうほうであり、電気でんきしゃ速度そくど制御せいぎょとしてふるくからひろもちいられている。一方いっぽうで、抵抗ていこうによる電流でんりゅう損失そんしつ放熱ほうねつけられないこと、抵抗ていこうえるさいすすむだん)に車体しゃたい全体ぜんたい衝撃しょうげきあたえるためなめらかな加速かそくができないことが欠点けってんとしてげられる。
ちょく並列へいれつ組合くみあわ制御せいぎょ
複数ふくすう電動でんどう配列はいれつを、直列ちょくれつ並列へいれつえることによって、かく電動でんどう印加いんか電圧でんあつえる方法ほうほうである。こまかな制御せいぎょはできないが、抵抗ていこう制御せいぎょわせることで、抵抗ていこう損失そんしつらしたり、制御せいぎょ段数だんすうやしてすすむだん衝撃しょうげきをある程度ていどやわらげる効果こうかがある。
電圧でんあつ制御せいぎょ
電源でんげん電圧でんあつ直接ちょくせつ変化へんかさせる方法ほうほうで、制御せいぎょ応答おうとうはや効率こうりつてきであるが、直流ちょくりゅう電圧でんあつ制御せいぎょするのはむずかしく、装置そうちおおがかりで高価こうかとなりやすい。
この方法ほうほう交流こうりゅう電化でんかから発展はってんられた。ワードレオナード制御せいぎょ交流こうりゅう電源でんげん電動でんどう発電はつでんわせたもので、発電はつでん界磁制御かいじせいぎょによって出力しゅつりょく電圧でんあつ制御せいぎょする方式ほうしきである。電圧でんあつ自在じざい制御せいぎょでき、直流ちょくりゅうへの整流せいりゅう同時どうじおこなえるが、電動でんどう発電はつでん別途べっと必要ひつようなことから、重量じゅうりょうおおきく設備せつび高額こうがくとなることが欠点けってんで、電気でんきしゃにおいてしゅたる方式ほうしきとはならなかった。また、交流こうりゅう変圧へんあつもちいて電圧でんあつ簡単かんたんえることができることから、変圧へんあつ巻数かんすう可変かへんとして出力しゅつりょく電圧でんあつ制御せいぎょし、直流ちょくりゅう整流せいりゅうする仕組しくみがタップ制御せいぎょである。さらに、整流せいりゅう制御せいぎょ電極でんきょくわせると、連続れんぞくてき電圧でんあつ変化へんかできる位相いそう制御せいぎょ可能かのうである。当初とうしょ水銀すいぎん整流せいりゅうもちいられ、そのシリコン整流せいりゅう制御せいぎょ電極でんきょくもうけたサイリスタ登場とうじょうによって、接点せってんサイリスタ連続れんぞく位相いそう制御せいぎょへと発展はってんした。位相いそう制御せいぎょ交流こうりゅう波形はけい一部分いちぶぶんし、パルスじょう電源でんげん平均へいきん電圧でんあつ制御せいぎょするものである。
一方いっぽう直流ちょくりゅう電化でんかでは、サイリスタを直流ちょくりゅう電源でんげん適用てきようしたサイリスタチョッパ制御せいぎょ電機でんきチョッパ制御せいぎょ)がある。直流ちょくりゅう電源でんげんたい高速こうそくでスイッチオン・オフをおこない、平均へいきん電圧でんあつ制御せいぎょするもので、連続れんぞく制御せいぎょ可能かのうとなり、安定あんていした回生かいせいブレーキもられる。このような方式ほうしきパルスはば変調へんちょう(PWM)う。その一方いっぽう交流こうりゅうとはことなりスイッチをオフにするための機構きこう別途べっと必要ひつようで、装置そうち高価こうかであった。
電圧でんあつ制御せいぎょ方式ほうしき
方式ほうしき ワードレオナード タップ制御せいぎょ 位相いそう制御せいぎょ チョッパ制御せいぎょ
動作どうさ 交流こうりゅう直流ちょくりゅう可変かへん電圧でんあつ)・交流こうりゅう可変かへん電圧でんあつ 直流ちょくりゅう直流ちょくりゅう可変かへん電圧でんあつ
概念がいねん ワードレオナード方式 タップ制御 位相制御 チョッパ制御
特徴とくちょう 電動でんどう発電はつでんもちいて、出力しゅつりょく電圧でんあつ連続れんぞく制御せいぎょ 変圧へんあつまきせん比率ひりつえて、出力しゅつりょく電圧でんあつ制御せいぎょ スイッチング素子そしにより、導通どうつう時間じかん電気でんきなが時間じかん)をえ、平均へいきん電圧でんあつ連続れんぞく制御せいぎょ

さかい磁を制御せいぎょする方法ほうほう[編集へんしゅう]

さかい磁がつよいときの状態じょうたいぎゃく起電きでんりょくおおきく、ながれる電流でんりゅうちいさい。
さかい磁がよわいときの状態じょうたいぎゃく起電きでんりょくちいさくなり、たくさんの電流でんりゅうながれる。

整流せいりゅう電動でんどうさかい調整ちょうせいけ、さかい磁束じそく調整ちょうせいしてトルクを制御せいぎょする方法ほうほうである。さかい磁の制御せいぎょは、印加いんか電圧でんあつ制御せいぎょする方法ほうほうくら効果こうかちいさいが、電流でんりゅう一部いちぶのみをあつかうため装置そうち小型こがた費用ひようおさえられる。そこで、電圧でんあつによる制御せいぎょ限界げんかいたっしたちゅうそくいきから高速こうそくいきにおいて、加速かそく特性とくせい向上こうじょう目指めざしたてい出力しゅつりょく制御せいぎょひろもちいられる。

さて、直流ちょくりゅう整流せいりゅう電動でんどうふし前述ぜんじゅつのとおり、整流せいりゅう電動でんどうにおいてトルク()はさかい磁による磁束じそく)と電機でんき電流でんりゅう)のせきあらわされることから、一見いっけんするとトルクはさかい磁に比例ひれいするようにえる。

しかしながら実際じっさいにはぎゃくで、回転かいてんする電動でんどうにおいてトルクはさかい磁のつよさに反比例はんぴれいする特性とくせいつ。電機でんき回転かいてんするとぎゃく起電きでんりょくしょうじ、電機でんき電流でんりゅうながれにくくなる。一方いっぽうぎゃく起電きでんりょく回転かいてんすうさかい磁のつよさに比例ひれいするため、さかい磁がつよいと電機でんき電流でんりゅうちいさくなり、ぎゃくさかい磁をよわめるとおおくの電流でんりゅうながれるようになる。結果けっかとして、電機でんき電流でんりゅうおおきい後者こうしゃほうが、トルクはおおきくなる。このように、さかい磁をよわめることでトルクを増加ぞうかさせる方法ほうほうよわ界磁制御かいじせいぎょぶ。よわ界磁制御かいじせいぎょなか高速こうそくいきでのトルク特性とくせい改善かいぜんもちいられる。電圧でんあつ制御せいぎょとはことなり、速度そくど上昇じょうしょうにともなうトルクの低下ていかそのものはまぬかれないものの、低下ていかはば抑制よくせいし、出力しゅつりょく(=回転かいてん速度そくど×トルク)を一定いっていたもつことができる。

速度そくどともに上昇じょうしょうするぎゃく起電きでんりょく着目ちゃくもくし、電圧でんあつ制御せいぎょ比較ひかくすると、

  • 電圧でんあつ制御せいぎょ - ぎゃく起電きでんりょくわせ印加いんか電圧でんあつ制御せいぎょする
  • さかい磁の制御せいぎょ - ぎゃく起電きでんりょくそのものを制御せいぎょする

このようにいいかえられる。

この特性とくせいかし、ふくまき電動でんどうもちいてさかい磁を制御せいぎょするとじょうそく運転うんてん可能かのうとなる。これは、速度そくど上昇じょうしょうするとぎゃく起電きでんりょくげて速度そくどげ、速度そくどがりすぎるとぎゃく起電きでんりょく低下ていかさせて速度そくどげる機構きこうである。

このほかかい磁の制御せいぎょ方法ほうほうとして、ふくまき電動でんどうもちいたさかい磁チョッパ制御せいぎょさかい磁位しょう制御せいぎょや、ちょくまき電動でんどう対象たいしょうとしたさかい添加てんか励磁れいじ制御せいぎょなどがある。これらは、比較的ひかくてき高価こうかチョッパ制御せいぎょ位相いそう制御せいぎょを、装置そうち小型こがた界磁制御かいじせいぎょ適用てきようし、ひく製造せいぞう費用ひよう回生かいせいブレーキ可能かのうとしたものである。加速かそく制御せいぎょにおいては、よわかい磁と原理げんりおおきなはない。

電圧でんあつ周波数しゅうはすう制御せいぎょする方法ほうほう[編集へんしゅう]

インバータによる交流こうりゅう出力しゅつりょく波形はけいてい回転かいてんいきでは電圧でんあつ周波数しゅうはすう比例ひれいてき増加ぞうかさせ、高速こうそくいきでは周波数しゅうはすうのみをす。

回転子かいてんし電機でんき回転かいてん磁界じかいって回転かいてんする誘導ゆうどう電動でんどう同期どうき電動でんどう速度そくど制御せいぎょする場合ばあいは、その単体たんたい特性とくせいしたが印加いんか電圧でんあつ周波数しゅうはすう比例ひれいてきえる必要ひつようがある(みぎ前半ぜんはん)。電動でんどうさそえおこり起電きでんあつにインピーダンス降下こうかくわえた電圧でんあつ供給きょうきゅうして任意にんい速度そくどでの運転うんてんおこなう。これは直流ちょくりゅう電動でんどう起動きどうおなじであるが、交流こうりゅうだから周波数しゅうはすう一致いっち位相いそう関係かんけい問題もんだいになる。

初期しょき電気でんきしゃでは、機械きかいてきかい転変てんぺんりゅう車内しゃない設置せっちし、電圧でんあつ周波数しゅうはすう可変かへんとしたさんそう交流こうりゅうつくることをこころみたが、かならずしも成功せいこうとはえず、ひろ普及ふきゅうするにはいたらなかった。

その、パワーエレクトロニクスの進歩しんぽによりPWMをもちいたインバータ開発かいはつされると、接点せってんによるVVVF制御せいぎょ可変かへん電圧でんあつ可変かへん周波数しゅうはすう制御せいぎょ=V/f一定いってい制御せいぎょ:V-f比例ひれい制御せいぎょ)が可能かのうとなり、旧来きゅうらい整流せいりゅう電動でんどう凌駕りょうがするようになった。

制御せいぎょ方式ほうしき変遷へんせんかく制御せいぎょ方式ほうしき詳説しょうせつ[編集へんしゅう]

本節ほんぶしでは、実際じっさいもちいられる代表だいひょうてき制御せいぎょ方法ほうほう変遷へんせんとともにしめし、かく速度そくど領域りょういきにおける制御せいぎょ実際じっさいについてべる。まず、下表かひょうにおもな速度そくど制御せいぎょ手法しゅほうについて、一覧いちらんしめした。速度そくど制御せいぎょ名称めいしょう特徴とくちょうてき部分ぶぶんしたものとなっているが、実際じっさい速度そくど領域りょういきによって複数ふくすう制御せいぎょ方法ほうほう併用へいようしているものがある。たとえば、界磁制御かいじせいぎょ特徴とくちょうのあるものは、ていトルク領域りょういきでは大半たいはん抵抗ていこう制御せいぎょ採用さいようしている。

ひょう - おもな制御せいぎょ方式ほうしきかく領域りょういきでのじつ制御せいぎょ
制御せいぎょ方式ほうしき 電化でんか方式ほうしき 電動でんどう 速度そくど制御せいぎょ方法ほうほう 回生かいせいブレーキ 摘要てきよう
ていトルク制御せいぎょいき てい出力しゅつりょく制御せいぎょいき
抵抗ていこう制御せいぎょ 直流ちょくりゅう・(交流こうりゅう)* ちょくまき 抵抗ていこう制御せいぎょ(+組合くみあわ制御せいぎょ 分流ぶんりゅう回路かいろによるよわかい 一般いっぱん不可ふか[註 2]
チョッパ制御せいぎょ
電機でんきチョッパ)
チョッパ装置そうちによる電圧でんあつ制御せいぎょ
界磁制御かいじせいぎょ
さかい磁チョッパ制御せいぎょ
ふくまき 抵抗ていこう制御せいぎょ(+組合くみあわ制御せいぎょ ぶんまきかい磁の制御せいぎょによるよわかい
さかい添加てんか励磁れいじ制御せいぎょ ちょくまき 位相いそう制御せいぎょ電流でんりゅう添加てんかによるよわかい磁(※) さかい磁の位相いそう制御せいぎょ別途べっとさんそう交流こうりゅう電源でんげん必要ひつよう
タップ制御せいぎょ 交流こうりゅう ちょくまき 変圧へんあつのタップせつかわによる電圧でんあつ制御せいぎょ 分流ぶんりゅう回路かいろによるよわかい磁(※) 不可ふか ていトルク制御せいぎょのみとする場合ばあいもあり。
無電むでんタップせつかわ タップせつかわ位相いそう制御せいぎょ併用へいようによる電圧でんあつ制御せいぎょ
ようサイリスタインバータ)
サイリスタ位相いそう制御せいぎょ 位相いそう制御せいぎょによる電圧でんあつ制御せいぎょ
VVVFインバータ制御せいぎょ 直流ちょくりゅう・(交流こうりゅう)* IM
PMSM
可変かへん電圧でんあつ可変かへん周波数しゅうはすう制御せいぎょ すべり周波数しゅうはすう制御せいぎょ

*電化でんか方式ほうしきの『(交流こうりゅう)』は、交流こうりゅうでも可能かのうであるが、いったん直流ちょくりゅう整流せいりゅうしてから制御せいぎょするものをしめす。

古典こてんてき直流ちょくりゅう電気でんきしゃ制御せいぎょ[編集へんしゅう]

ジーメンス(左)とスプレイグ(右) ジーメンス(左)とスプレイグ(右)
ジーメンス(ひだり)とスプレイグ(みぎ

電気でんき鉄道てつどうはじまりはドイツ電気でんき技術ぎじゅつしゃヴェルナー・フォン・ジーメンスによるものであった。ジーメンスは1879ねんベルリンひらかれた商業しょうぎょう博覧はくらんかい電気でんき機関きかんしゃ展示てんじ電車でんしゃ試験しけん運行うんこう実施じっしし、その2ねん1881ねん、ベルリン・リヒターフェルデあいだにおいて路面ろめん電車でんしゃ営業えいぎょう運転うんてん開始かいしした。この電車でんしゃ小型こがたじくしゃであり、2ほんレールから直流ちょくりゅう電源でんげん走行そうこうする方式ほうしきであった。一方いっぽうアメリカでは、電気でんき駆動くどうちちばれるフランク・スプレイグ1888ねんリッチモンド (バージニアしゅう)路面ろめん電車でんしゃ運行うんこう開始かいしするとともに、架線かせんしゅうでんよわかい磁、総括そうかつ制御せいぎょといった直流ちょくりゅう電気でんきしゃ基本きほんシステムを確立かくりつした。

この直流ちょくりゅう電化でんかちょくまき電動でんどう駆動くどうする手法しゅほうは、電圧でんあつ制御せいぎょ損失そんしつともな課題かだいかかえているものの、変圧へんあつ整流せいりゅう不要ふようであり、構造こうぞう簡便かんべんかつやす製造せいぞう費用ひよう構成こうせいできる利点りてんゆうしていた。このことから、さまざまな改良かいりょうくわえながらも、基本きほん構造こうぞうはインバータ制御せいぎょ普及ふきゅうする20世紀せいきすえまでひろもちいられた。

抵抗ていこう制御せいぎょ[編集へんしゅう]

抵抗ていこう制御せいぎょ回路かいろ速度そくど上昇じょうしょうとともに抵抗ていこうらし、電圧でんあつげていく。
抵抗ていこう制御せいぎょにおける回転かいてん速度そくど電流でんりゅう関係かんけいれい。1N(ぜん抵抗ていこう状態じょうたい)から5N(抵抗ていこうなし)まであかせんをたどって制御せいぎょする。

ふるくからもちいられてきた直流ちょくりゅう電気でんきしゃ制御せいぎょは、以下いか基本きほんとする。

電化でんか方式ほうしき 直流ちょくりゅう電化でんかすうひゃくボルトからすうせんボルト)
電動でんどう ちょくまき整流せいりゅう電動でんどう
ていトルク制御せいぎょ 抵抗ていこう制御せいぎょちょく並列へいれつ組合くみあわ制御せいぎょ
てい出力しゅつりょく制御せいぎょ よわ界磁制御かいじせいぎょ

ここで基本きほんとなるのは抵抗ていこう制御せいぎょである。ちょくまき整流せいりゅう電動でんどう電流でんりゅう回転かいてん速度そくど反比例はんぴれいすることから、停止ていし状態じょうたい電源でんげん電圧でんあつをそのまま作用さようさせると、過大かだい電流でんりゅうなが電動でんどう焼損しょうそんしたり、過大かだいトルクはっして車輪しゃりん空転くうてんこしてしまう。そこで、みぎしめすように抵抗ていこう電動でんどう直列ちょくれつ配置はいちして起動きどうする。これによって電流でんりゅうひくおさえられ、電源でんげん電圧でんあつ抵抗ていこうおうじて電動でんどう抵抗ていこう分配ぶんぱいされる。起動きどうでは、電動でんどう抵抗ていこう相当そうとうするぎゃく起電きでんりょくはほぼゼロであるため、電源でんげん電圧でんあつ大半たいはん抵抗ていこう作用さようする。

やがて回転かいてん速度そくどがってくると、電動でんどうには印加いんか電圧でんあつぎゃくきのぎゃく起電きでんりょく増加ぞうかし、これにともなって電流でんりゅう減少げんしょう発生はっせいトルクもがっていく。ここで抵抗ていこう一部いちぶ短絡たんらくすると、電動でんどう印加いんか電圧でんあつ上昇じょうしょうするとともに、電流でんりゅうとトルクが回復かいふくする。この要領ようりょうで、回転かいてん速度そくどおうじて電流でんりゅう変化へんかする電動でんどう特性とくせいわせ、段階だんかいてき抵抗ていこうらし、電流でんりゅうとトルクをほぼ一定いっていたもつのが抵抗ていこう制御せいぎょである。

抵抗ていこうえをすすむだんび、機関きかんしゃでは機関きかん電流でんりゅうけいながら手動しゅどう操作そうさし、電車でんしゃでは制御せいぎょ装置そうち電流でんりゅう検出けんしゅつして自動じどうしんだんする方法ほうほう主流しゅりゅうである。このときの電流でんりゅうきりりゅうという。また、抵抗ていこう電流でんりゅうながすとねつはっするため、すすむだんせずに電流でんりゅうながつづけると過熱かねつして損傷そんしょうする。したがって、抵抗ていこう制御せいぎょ速度そくどげるための過渡かとてき制御せいぎょであり、すみやかにすすむだんしてすべての抵抗ていこう短絡たんらくしなければならない。速度そくど制限せいげんのあるのぼ勾配こうばいなど、すすむだん途中とちゅう速度そくど維持いじしたまま力行りっこうおこな場合ばあいは、運転うんてんのノッチ操作そうさにより電源でんげんのオン・オフをかえす『ノコギリ運転うんてん[註 3]おこな必要ひつようがある。

抵抗ていこう制御せいぎょのひとつの問題もんだいとして、段階だんかい制御せいぎょであることがげられる。抵抗ていこうすすむだんおこな瞬間しゅんかん電流でんりゅうがり、これにともなってトルクが急変きゅうへんする。抵抗ていこう制御せいぎょ電気でんきしゃ発車はっしゃしてしばらくのあいだ加速かそく段階だんかいてき衝動しょうどうともなうのはこのためである。トルクの急変きゅうへん心地ごこちそこねるばかりでなく、空転くうてんこす原因げんいんともなることから、すすむ段段だんだんすうおおくして影響えいきょうおさえることがのぞましい。図示ずし事例じれいでは4抵抗ていこうじゅん短絡たんらくする5段階だんかい制御せいぎょしめしたが、抵抗ていこうことなる抵抗ていこう用意よういし、これらをわせれば多段ただんかい抵抗ていこうられる。たとえば、抵抗ていこうことなる4くみ抵抗ていこう用意よういすれば、理論りろんじょうられる抵抗ていこうわせは16とおりとなる。しかし、このような方法ほうほうそのままではスイッチの開閉かいへい回数かいすう極端きょくたんおおくなり、また、かくスイッチが電流でんりゅう遮断しゃだんする能力のうりょく必要ひつようがあるので、製品せいひん寿命じゅみょうみじかさや製造せいぞう費用ひようかさむといった課題かだいがある。さらに空転くうてんたいして条件じょうけんきびしい貨物かもつよう電気でんき機関きかんしゃなどでは、かず段階だんかいの「ふく抵抗ていこう」を別途べっと用意よういし、すすむだん小刻こきざみな制御せいぎょだん挿入そうにゅうして電流でんりゅうほろ調整ちょうせい可能かのうとするものがあり、これをちょう多段ただん制御せいぎょ、またはノギスふくしゃくバーニヤ)にたとえてバーニア抵抗ていこう制御せいぎょぶ。

ちょく並列へいれつ組合くみあわ制御せいぎょ[編集へんしゅう]

抵抗損失 上段 - 組合せ制御なし 下段 - 組合せ制御あり
抵抗ていこう損失そんしつ
上段じょうだん - 組合くみあわ制御せいぎょなし
下段げだん - 組合くみあわ制御せいぎょあり

抵抗ていこう制御せいぎょにおけるもうひとつの問題もんだいとして、抵抗ていこう損失そんしつがある。抵抗ていこう制御せいぎょ電動でんどう印加いんか電圧でんあつおさえるため、余分よぶんとなる電圧でんあつ抵抗ていこうにかけ、電力でんりょく一部いちぶねつとしててる方法ほうほうである。起動きどう大半たいはん抵抗ていこう消費しょうひされ、すすむだんにともなってそのりょうっていくが、すべての抵抗ていこう短絡たんらくするまでに消費しょうひする電力でんりょく半分はんぶんねつ損失そんしつとなってしまう(みぎ上段じょうだん)。この損失そんしつ抵抗ていこう制御せいぎょではけられないが、これを低減ていげんする手法しゅほうとして組合くみあわ制御せいぎょ併用へいよう一般いっぱんおこなわれる。

一般いっぱん電気でんきしゃでは単一たんいつではなく、複数ふくすう電動でんどうもちいられる。組合くみあわ制御せいぎょは、これら複数ふくすう電動でんどう配列はいれつ直列ちょくれつ並列へいれつえることで、個々ここ電動でんどうへの印加いんか電圧でんあつえるものである。たとえば4電動でんどうについてかんがえてみると、4直列ちょくれつ場合ばあい電動でんどうには電源でんげん電圧でんあつの4ぶんの1しか作用さようしないが、そのうち2ずつを並列へいれつにつなぎえると電源でんげん電圧でんあつの2ぶんの1が電動でんどう作用さようする(下図したずひだり)。この特性とくせい利用りようすると、起動きどうには直列ちょくれつとして印加いんか電圧でんあつおさえ、速度そくどがった段階だんかい並列へいれつ印加いんか電圧でんあつ起動きどうの2ばいにすることができる。

この方法ほうほう電動でんどう個数こすう組合くみあわせにかぎりがあることから、2段階だんかいないし3段階だんかい程度ていど大雑把おおざっぱ電圧でんあつ制御せいぎょしかできないが、抵抗ていこう制御せいぎょ併用へいようすることで抵抗ていこう損失そんしつらすことができる。たとえば2段階だんかい組合くみあわ制御せいぎょたいし、直列ちょくれつおよび並列へいれつでそれぞれ抵抗ていこう制御せいぎょおこなうと、みぎ下段げだんしめすように抵抗ていこう損失そんしつ半分はんぶんにすることができる。さらに、制御せいぎょ段数だんすうやすことができ、すすむだん衝撃しょうげきちいさくする効果こうかられる。

また、抵抗ていこう制御せいぎょ抵抗ていこう過熱かねつけるためすすむだん途中とちゅう速度そくど維持いじ制限せいげんされるが、組合くみあわ制御せいぎょ併用へいようすることによって、途中とちゅう段階だんかい速度そくど維持いじ可能かのうとなる。下図したずみぎしめ直列ちょくれつ最終さいしゅうだん抵抗ていこう使用しようしないため、連続れんぞく使用しよう可能かのうである。

直列と並列
電源でんげん電圧でんあつ E
印加いんか電圧でんあつ - 1/4E(直列ちょくれつ)・1/2E(並列へいれつ
抵抗制御と組合せ制御による速度と電流の関係
2だん組合くみあわれい上段じょうだん直列ちょくれつ下段げだん並列へいれつ
並列へいれつ直列ちょくれつの2ばい電圧でんあつ電動でんどう作用さようする。
抵抗ていこう制御せいぎょ組合くみあわ制御せいぎょによる速度そくど電流でんりゅう関係かんけい直列ちょくれつおよび並列へいれつ最終さいしゅうだんは、抵抗ていこうもちいないので連続れんぞく使用しよう可能かのう

よわ界磁制御かいじせいぎょ[編集へんしゅう]

さかい磁をよわめると(あおせん)、回転かいてん速度そくどnにおけるトルクはT1からT2に増加ぞうかする。

抵抗ていこう制御せいぎょ組合くみあわ制御せいぎょ最終さいしゅうだんたっすると、電動でんどう印加いんか電圧でんあつ最大さいだいとなり、これ以上いじょう電圧でんあつ向上こうじょうはできなくなる(下図したずだいいち段階だんかい)。この状態じょうたい回転かいてん速度そくどをさらにげていくとぎゃく起電きでんりょく増加ぞうかし、回転かいてん速度そくど反比例はんぴれいして電機でんき電流でんりゅう)が低下ていかする(下図したずだい段階だんかい)。また、ちょくまき電動でんどう電機でんきさかい直列ちょくれつとしていることから、電機でんき電流でんりゅうがそのままかい磁電りゅうとなり、磁束じそく)・電機でんき電流でんりゅうとも低下ていかし、結果けっかとしてトルク()は回転かいてんすうの2じょう反比例はんぴれいして急激きゅうげき低下ていかしてしまう(みぎあかせん)。

ここでトルクの低下ていか抑制よくせいするにはよわかいもちいる。下図したずだいさん段階だんかいしめすように、さかい磁電りゅう一部いちぶ短絡たんらくしたりべつ回路かいろながすことでさかい磁をよわめると、ぎゃく起電きでんりょく低下ていか電機でんき電流でんりゅう回復かいふくする。このときかい磁束じそくちいさくなるためトルクの低下ていかまぬかれないものの、電機でんき電流でんりゅう確保かくほすることで速度そくど上昇じょうしょうにともなうトルクの低下ていかはば抑制よくせいできる(みぎあおせん)。

さかい磁をよわめる方法ほうほうとして、さかい磁の中間ちゅうかんにタップをもうけてさかい磁の一部いちぶ短絡たんらくする方法ほうほうさかい磁タップ制御せいぎょまたは部分ぶぶんかい磁式)や、さかい磁と並列へいれつ抵抗ていこう配置はいちしてさかい磁電りゅう一部いちぶをバイパスさせる方法ほうほうさかい分流ぶんりゅう制御せいぎょまたはぶんみちかい磁式)がある。いずれも段階だんかいてきさかい磁を制御せいぎょする方法ほうほうられ、ほぼ電機でんき電流でんりゅう一定いっていとなるように制御せいぎょする。これにより出力しゅつりょく(=トルク×回転かいてん速度そくど)を一定いっていたもったまま、加速かそくすることができる。さかい磁タップ制御せいぎょ電動でんどうさかい磁巻せんそのものにタップ端子たんしもうける必要ひつようがあり、さかい磁束じそく制御せいぎょ段数だんすうさかい分流ぶんりゅう制御せいぎょほどおおくできないという欠点けってんがある。

図解ずかい - よわ界磁制御かいじせいぎょ
だいいち段階だんかい だい段階だんかい だいさん段階だんかい
回転かいてん速度そくどがり、印加いんか電圧でんあつ最大さいだいとなった状態じょうたい さらに回転かいてん速度そくどげると、ぎゃく起電きでんりょく上昇じょうしょう電流でんりゅう減少げんしょうする。電圧でんあつはこれ以上いじょうげられない。 さかい磁電りゅうをの一部いちぶをバイパスしてさかい磁をよわめると、ぎゃく起電きでんりょく低下ていかし、電流でんりゅう確保かくほできる。

よわかい磁は電圧でんあつえることなくなか高速こうそくいきのトルク特性とくせい向上こうじょうできるが、際限さいげんなくさかい磁をよわめていくと電機でんき反作用はんさようにより磁束じそくみだれ、整流せいりゅう不良ふりょうこしてしまうことから、一般いっぱんぜんさかい磁(よわかい磁をもちいない状態じょうたい)の35%程度ていどにまでよわめることが限界げんかいとされる。さらにさかい磁をよわめる場合ばあいは、電機でんき反作用はんさようおさえる補償ほしょうまきせんさかい磁に付与ふよすることで25%程度ていどまで可能かのうとなる。

また、よわかい磁はトルク向上こうじょう手段しゅだんとしてもちいられる以外いがいに、ぎゃくにトルクを抑制よくせいする目的もくてき使つかわれる場合ばあいもある。ぎゃく起電きでんりょく回転かいてん速度そくど比例ひれいするため、回転かいてん速度そくどがごくひく起動きどうはほとんど発生はっせいしない。したがって起動きどうさかい磁をよわめた場合ばあいぎゃく起電きでんりょく影響えいきょうはごくちいさく、電機でんき電流でんりゅうはほとんど増加ぞうかしない一方いっぽうで、さかい磁束じそくのみがちいさくなることから、トルクはおさえられる方向ほうこう作用さようする。この特性とくせい利用りようして起動きどうのトルクをひくおさえ、発車はっしゃ衝動しょうどう抑制よくせいする方式ほうしきよわかい起動きどうぶ。

交流こうりゅう電気でんきしゃ制御せいぎょ[編集へんしゅう]

世界初の交流電化。スイスのユングフラウ鉄道。
世界せかいはつ交流こうりゅう電化でんか。スイスのユングフラウ鉄道てつどう
交流電化を採用する日本の新幹線。
交流こうりゅう電化でんか採用さいようする日本にっぽん新幹線しんかんせん

黎明れいめい電気でんき鉄道てつどうは、市街しがい電車でんしゃ都市とし近郊きんこう路線ろせんなど近距離きんきょり運行うんこう鉄道てつどうもちいられた。これらは直流ちょくりゅう電化でんかによるものであったが、長距離ちょうきょり路線ろせん電化でんか計画けいかくされると交流こうりゅう方式ほうしき送電そうでんめん優位ゆういかんがえられるようになり、19世紀せいきまつにはスイスで世界せかいはつ交流こうりゅう電化でんかおこなわれている。その国土こくどひろいヨーロッパやアメリカを中心ちゅうしん採用さいようされたほか、だい世界せかい大戦たいせん交流こうりゅう電気でんきしゃ技術ぎじゅつ発展はってんすすみ、日本にっぽん新幹線しんかんせん交流こうりゅう電化でんか採用さいようしている。

交流こうりゅう直流ちょくりゅうくら電圧でんあつ制御せいぎょ容易よういであり、こう電圧でんあつもちいることで送電そうでん損失そんしつちいさく、変電へんでんしょなどの地上ちじょう設備せつび費用ひようひく利点りてんそなえるほか、電気でんきしゃ制御せいぎょめんにおいてもてい損失そんしつ粘着ねんちゃくりょく向上こうじょうなどの利点りてんゆうしている。

交流こうりゅう電気でんきしゃ電動でんどう[編集へんしゅう]

交流こうりゅう電気でんきしゃ交流こうりゅう電化でんか区間くかん走行そうこうする電気でんきしゃすもので、かならずしも電動でんどうとして交流こうりゅう電動でんどう使用しようするわけではない。電化でんか方式ほうしき電動でんどう組合くみあわせとして、つぎしめ方式ほうしきがある。

さんそう交流こうりゅうれ、交流こうりゅう誘導ゆうどう電動でんどう駆動くどうするもの。
初期しょき電化でんか方式ほうしきもちいられた方法ほうほうさんそう交流こうりゅうもちいることから電力でんりょく設備せつびあつまりでん設備せつび複雑ふくざつであり、誘導ゆうどう電動でんどう速度そくど制御せいぎょむずかしかったことから、ひろ普及ふきゅうするにはいたらなかった。
たんしょう交流こうりゅうれ、交流こうりゅうのまま整流せいりゅう電動でんどう駆動くどうするもの。
20世紀せいき前半ぜんはんにアメリカやドイツで採用さいようされた方式ほうしきさかい磁に電磁石でんじしゃくもちいた整流せいりゅう電動でんどうはユニバーサルモーターともばれ、直流ちょくりゅうだけでなく交流こうりゅうでも使用しよう可能かのうである。ただし、周波数しゅうはすうたか商用しょうよう電力でんりょく(50Hzへるつや60Hzへるつ)では整流せいりゅう不良ふりょうこすため、16 2/3Hzへるつ(16.7Hzへるつ、50Hzへるつの3ぶんの1)など特殊とくしゅ周波数しゅうはすう電化でんかおこなわれた。
たんしょう交流こうりゅう直流ちょくりゅう変換へんかんし、整流せいりゅう電動でんどう駆動くどうするもの。
1950年代ねんだいフランス中心ちゅうしん実用じつようされた方法ほうほう電気でんきしゃ整流せいりゅうそなえ、れた交流こうりゅう直流ちょくりゅう変換へんかんしてから、直流ちょくりゅう整流せいりゅう電動でんどう駆動くどうする。電化でんかには商用しょうよう電力でんりょくをそのまま使用しようでき、ひろ普及ふきゅうした。
たんしょう交流こうりゅうをコンバータ・インバータによりさんそう交流こうりゅう変換へんかんし、交流こうりゅう電動でんどう誘導ゆうどう電動でんどう同期どうき電動でんどう)を駆動くどうするもの。
20世紀せいき後半こうはんからもちいられる現在げんざい標準ひょうじゅん方式ほうしき可変かへん電圧でんあつ可変かへん周波数しゅうはすう制御せいぎょ(VVVFインバータ)により、さんそう交流こうりゅう電動でんどう制御せいぎょする方法ほうほう。インバータの動作どうさ直流ちょくりゅう電源でんげん必要ひつようとするため、いったんコンバータにより直流ちょくりゅう変換へんかんおこなう。

ここではしゅとして、たんしょう交流こうりゅう直流ちょくりゅう変換へんかんし、整流せいりゅう電動でんどう駆動くどうする電気でんきしゃについてべる。交流こうりゅう電化でんかでは1まんボルト以上いじょうたか電圧でんあつもちいられていることから、電動でんどうてきしたすうひゃくボルトまで電圧でんあつげ、さらに直流ちょくりゅう電動でんどう駆動くどうするため交流こうりゅう直流ちょくりゅう整流せいりゅうする必要ひつようがある。

電化でんか方式ほうしき 交流こうりゅう電化でんか(1まんすうせんボルトからすうまんボルト) 交流電気車の電圧制御には、電圧を直接制御するタップ制御と、波形の一部を取り出す位相制御が用いられる
タップ制御せいぎょ位相いそう制御せいぎょ
電動でんどう ちょくまき整流せいりゅう電動でんどう
ていトルク制御せいぎょ タップ制御せいぎょ位相いそう制御せいぎょ
てい出力しゅつりょく制御せいぎょ よわ界磁制御かいじせいぎょ
特記とっき事項じこう 変圧へんあつによる降圧こうあつ直流ちょくりゅうへの整流せいりゅう必要ひつよう

交流こうりゅう変圧へんあつもちいて電圧でんあつ簡単かんたんえられる特性とくせいっており、変圧へんあつ可変かへんとして電圧でんあつ制御せいぎょするタップ制御せいぎょ利用りようできるほか、波形はけい一部いちぶ平均へいきん電圧でんあつ制御せいぎょする位相いそう制御せいぎょ可能かのうである。このふたつの電圧でんあつ制御せいぎょ幅広はばひろ速度そくど制御せいぎょ応用おうようでき、抵抗ていこう制御せいぎょ代表だいひょうされる直流ちょくりゅう電化でんかくら損失そんしつすくなく、粘着ねんちゃく性能せいのうにおいても有利ゆうりである。

タップ制御せいぎょ[編集へんしゅう]

こうあつタップ制御せいぎょ回路かいろ
低圧ていあつタップ制御せいぎょ回路かいろ
交流こうりゅう直流ちょくりゅうみゃくりゅう)への整流せいりゅうと、波形はけい平滑へいかつえがいた説明せつめい

変圧へんあつ入力にゅうりょくがわの1まきせん出力しゅつりょくがわの2まきせんから構成こうせいされ、1まきせん交流こうりゅうながすと電磁でんじ誘導ゆうどうにより2まきせん電流でんりゅうながれる仕組しくみである。2まきせん出力しゅつりょく電圧でんあつは1まきせんと2まきせん巻数かんすう比率ひりつ比例ひれいすることから、すうまんボルトおよ架線かせん電圧でんあつまきせん比率ひりつ調整ちょうせいすることによって、電動でんどうてきした電圧でんあつせんすうひゃく - すうひゃくボルト)にげることができる。

ここで、まきせんタップもうけて巻数かんすう可変かへんとすれば、タップのえによってことなる出力しゅつりょく電圧でんあつられる。これを電動でんどう電圧でんあつ制御せいぎょ応用おうようしたのがタップ制御せいぎょである。こうあつがわぜんおけしたたんまき変圧へんあつのタップでえをおこなってから降圧こうあつ変圧へんあつ降圧こうあつするものをこうあつタップ制御せいぎょ、2まきせんたいしておこなうものを低圧ていあつタップ制御せいぎょぶ。こうあつタップ制御せいぎょはタップであつか電流でんりゅうちいさく、段数だんすうおおれる利点りてんゆうしているが、ぜんおけたんまき変圧へんあつでタップせつかわおこなうため、変圧へんあつ大型おおがたとなり重量じゅうりょう増加ぞうかする。このため、たんまき変圧へんあつ降圧こうあつ変圧へんあつ鉄心てっしん一部いちぶせん磁路じろ)を共用きょうようにして軽量けいりょうはかったが、一見いっけんトランスのいちがわをタップせつかわするようにえて一部いちぶ技能ぎのうしゃ鉄道てつどうファンに誤解ごかいひろがった。こうあつタップしきでは水銀すいぎん整流せいりゅうによる整流せいりゅうをセンタータップしき回路かいろにして、運転うんてん管理かんり必要ひつよう陰極いんきょく共通きょうつう電位でんいにして簡素かんそはかっても電圧でんあつせつかわいちくみんだことで初期しょきには主流しゅりゅうだったが、だい容量ようりょうシリコン整流せいりゅう出現しゅつげんで、電圧でんあつ機構きこういちくみむブリッジ整流せいりゅう回路かいろ採用さいよう整備せいびめんにおいては利便りべんせいたかく、以降いこう低圧ていあつがわでの制御せいぎょ主流しゅりゅうとなった。みぎ中段ちゅうだん低圧ていあつタップ制御せいぎょ事例じれいである。電動でんどう回転かいてん速度そくどわせタップをえ、電動でんどう印加いんか電圧でんあつ制御せいぎょする。

一方いっぽう変圧へんあつのタップ制御せいぎょられるのは交流こうりゅうであり、ちょくまき電動でんどう駆動くどうするためには、整流せいりゅうもちいて直流ちょくりゅう変換へんかんする必要ひつようがある。初期しょき交流こうりゅう電気でんきしゃでは水銀すいぎん整流せいりゅうもちいられた。水銀すいぎん整流せいりゅう位相いそう制御せいぎょ可能かのうであったが、振動しんどう対策たいさくあつかいがむずかしく、のち開発かいはつされた半導体はんどうたい素子そしによるシリコン整流せいりゅう移行いこうした。また、元々もともと交流こうりゅう正弦せいげんであり、整流せいりゅうられる電流でんりゅう周期しゅうきてきなみったみゃくりゅうとなることから、平滑へいかつ回路かいろ挿入そうにゅうしてなだらかな直流ちょくりゅうとする(みぎ下段げだん)。変圧へんあつのタップ制御せいぎょは、抵抗ていこう制御せいぎょとはことなり電流でんりゅう損失そんしつがほとんどなく、電圧でんあつ制御せいぎょはば自由じゆうたかいことが特長とくちょうである。

ところで、"タップ制御せいぎょしゃ空転くうてんつよい"という俗説ぞくせつがある。タップ制御せいぎょでは”電動でんどう並列へいれつ接続せつぞくされ抵抗ていこうがないため空転くうてん収束しゅうそくしやすくさい粘着ねんちゃくせいすぐれる”などという解説かいせつちまたにあふれているが、これは全面ぜんめんてきただしいとはがたい(すくなくとも上記じょうきの「理由りゆう」は明確めいかく間違まちがいである)。空転くうてん発生はっせいした場合ばあい当然とうぜんにモーターによるぎゃく起電きでんりょく急増きゅうぞうし、回路かいろ電流でんりゅうる。自動じどうしんだん制御せいぎょ場合ばあいはこれをおぎな制御せいぎょおこなわれ(抵抗ていこう制御せいぎょちょく並列へいれつ組合くみあわ制御せいぎょ場合ばあい抵抗ていこうかれ)トルクがもどり、ますます空転くうてんするという状態じょうたいかえす。すすむだんをしなければ回路かいろ電流でんりゅうつづけやがて空転くうてんおさまるはずであるが、さい粘着ねんちゃく回転かいてんることでぎゃく起電きでんりょく減少げんしょうするためモーターにかかる電圧でんあつげんじないかぎ再度さいど空転くうてんするはずである。よって空転くうてんこさない程度ていどまで回路かいろ電流でんりゅうらして(ノッチをもどして)維持いじしなければ空転くうてんおさまらず運転うんてん継続けいぞくできないが、抵抗ていこう制御せいぎょ場合ばあい抵抗ていこうがすべてけた直列ちょくれつちょく並列へいれつ、あるいは並列へいれつ最終さいしゅうだん以外いがいにおいて抵抗ていこう熱容量ねつようりょうによる制限せいげん連続れんぞく運転うんてんができない。 これにたいし、印加いんか電圧でんあつ直接ちょくせつ制御せいぎょするタップ制御せいぎょでは、どのノッチでも連続れんぞく運転うんてん可能かのうであるため、空転くうてんしない最大さいだい出力しゅつりょくをかけて運転うんてんすることが容易よういである。このてんはタップ制御せいぎょ(サイリスタ位相いそう制御せいぎょでも同様どうようではある)の利点りてんであるが、空転くうてん検知けんち能力のうりょくがなく自動じどうしんだんそなえたタップ制御せいぎょしゃ仮定かていすると、上述じょうじゅつとお空転くうてんはじまった場合ばあいには自動じどうしんだん抵抗ていこう制御せいぎょしゃ同様どうようおさまる見込みこみはない。しかしながら、国鉄こくてつ製造せいぞうした交流こうりゅう専用せんよう機関きかんしゃ全車ぜんしゃ手動しゅどうしんだんであるから、空転くうてん勝手かってすすむだんしてしまうこともない。すなわち、空転くうてんつよいという理由りゆう半分はんぶん手動しゅどうしんだんであることにっているわけである。

位相いそう制御せいぎょ無電むでんタップせつかわ[編集へんしゅう]

位相制御による電圧連続制御。制御極に信号電流(トリガ)を流すと整流器がオンになることを利用することで制御している。
位相いそう制御せいぎょによる電圧でんあつ連続れんぞく制御せいぎょ制御せいぎょきょく信号しんごう電流でんりゅう(トリガ)をながすと整流せいりゅうがオンになることを利用りようすることで制御せいぎょしている。
サイリスタによる無電弧タップ制御。2組のサイリスタ (T1,T2) を用いて、タップ間の電圧を連続制御する。サイリスタのほか磁気増幅器でも可。
サイリスタによる無電むでんタップ制御せいぎょ。2くみのサイリスタ (T1,T2) をもちいて、タップあいだ電圧でんあつ連続れんぞく制御せいぎょする。サイリスタのほか磁気じき増幅器ぞうふくきでも

タップ制御せいぎょ電力でんりょく効率こうりつさい粘着ねんちゃく性能せいのうすぐれる一方いっぽうで、有限ゆうげんのタップせつかわによる段階だんかい制御せいぎょであることから、抵抗ていこう制御せいぎょ同様どうようせつかわときのトルク急変きゅうへんともない、空転くうてんそのものが発生はっせいしにくいわけではない。また、タップせつかわときにはおおきな電流でんりゅうりするため、タップにでん(アーク放電ほうでん)をしょうじやすく、変圧へんあつ損傷そんしょうしやすい危険きけんせいかかえている。

これらの問題もんだいは、えるタップの電圧でんあつ連続れんぞくてき制御せいぎょして、トルクの急変きゅうへんでん発生はっせい解消かいしょうすることで解決かいけつできる。これをでんしょうじないことから無電むでんタップ制御せいぎょ、またはタップあいだ連続れんぞく電圧でんあつ制御せいぎょび、電圧でんあつ連続れんぞく制御せいぎょには位相いそう制御せいぎょもちいる。整流せいりゅう制御せいぎょごく(ゲート)をもうけると、特定とくていのタイミングで整流せいりゅうをオンにできる。この特性とくせい利用りようし、交流こうりゅう電流でんりゅう波形はけいわせてオンするタイミングをずらすことにより、平均へいきん電圧でんあつ連続れんぞくてき制御せいぎょするのが位相いそう制御せいぎょ仕組しくみである(右上みぎうえ)。

位相いそう制御せいぎょ歴史れきし比較的ひかくてきふるく、1935ねん昭和しょうわ10ねん)には水銀すいぎん整流せいりゅうによる格子こうし位相いそう制御せいぎょ組合くみあわ制御せいぎょ併用へいようした電気でんき機関きかんしゃドイツ試作しさくされている。そのだい世界せかい大戦たいせんはさんで、1950年代ねんだいから交流こうりゅう電気でんきしゃ技術ぎじゅつ開発かいはつ活発かっぱつし、水銀すいぎん整流せいりゅうによってタップあいだ電圧でんあつ連続れんぞくてき制御せいぎょできる車両しゃりょう開発かいはつされる。この当時とうじは、トランジスタ発明はつめいされ真空しんくうかんってわっていった時代じだいであり、ほどなく水銀すいぎん整流せいりゅう半導体はんどうたい素子そしであるシリコン整流せいりゅうへと移行いこうし、安定あんていした性能せいのうられるようになった。その一方いっぽうで、シリコン整流せいりゅう位相いそう制御せいぎょができなかったため、無電むでんタップせつかわおこなうには磁気じき増幅器ぞうふくき併用へいよう必要ひつようとした。その制御せいぎょ極付きわめつきのシリコン整流せいりゅうであるサイリスタ開発かいはつされ、1960年代ねんだいから電気でんきしゃ位相いそう制御せいぎょもちいられるようになった。

みぎ下図したずは、サイリスタをくみもちいて無電むでん低圧ていあつタップせつかわおこな場合ばあい概念がいねんしめしたものである。1だんのタップを投入とうにゅうするとき、サイリスタT1をてん出力しゅつりょくゼロ)の状態じょうたいにしておくと、タップに電流でんりゅうながれないためでんしょうじない。つぎに、サイリスタT1によって位相いそう制御せいぎょおこない、1だんのタップ電圧でんあつをゼロから最大さいだいまで制御せいぎょしたのち、2だんのタップをサイリスタT2に投入とうにゅう同様どうよう連続れんぞく位相いそう制御せいぎょおこなう。サイリスタT2の電圧でんあつ最大さいだいたっすると、T1はすべてT2に包含ほうがんされ電流でんりゅうながれなくなるため、1だんのタップをってもでんはやはりしょうじない。この要領ようりょうで、くみのサイリスタを交互こうごもちいることにより、タップせつかわでんしょうじることなく連続れんぞくてき電圧でんあつ制御せいぎょ可能かのうとなる。れいではサイリスタをもちいたが、くみ磁気じき増幅器ぞうふくきもちいても同様どうよう制御せいぎょおこなえる。

サイリスタによる連続れんぞく位相いそう制御せいぎょ[編集へんしゅう]

サイリスタ連続位相制御(4分割、混合ブリッジ)の回路(上)と動作(下)。サイリスタT1からT4まで順に位相制御し、電圧を連続制御する。
サイリスタ連続れんぞく位相いそう制御せいぎょ(4分割ぶんかつ混合こんごうブリッジ)の回路かいろうえ)と動作どうさした)。サイリスタT1からT4までじゅん位相いそう制御せいぎょし、電圧でんあつ連続れんぞく制御せいぎょする。
JR九州783系電車のサイリスタ連続位相制御(純ブリッジ)回路。界磁制御回路付き。
JR九州きゅうしゅう783けい電車でんしゃのサイリスタ連続れんぞく位相いそう制御せいぎょじゅんブリッジ)回路かいろ界磁制御かいじせいぎょ回路かいろき。

サイリスタの技術ぎじゅつ開発かいはつによって小型こがた軽量けいりょう半導体はんどうたい素子そしによる連続れんぞく電圧でんあつ制御せいぎょ可能かのうとなると、さらにかんがかたいちすすめて、タップせつかわうつわえてなくしてしまうことがかんがえられた。タップせつかわ機械きかいてきスイッチによっておこなわれるが、これをサイリスタにえて完全かんぜん接点せってん実現じつげんし、機器きき構成こうせい簡素かんそ軽量けいりょう整備せいびせい向上こうじょうはかるものである。この方式ほうしき一般いっぱんサイリスタ連続れんぞく位相いそう制御せいぎょ、あるいはたんサイリスタ制御せいぎょぶ。

みぎはサイリスタ連続れんぞく位相いそう制御せいぎょ構成こうせいしめしたものである。変圧へんあつの2まきせん分割ぶんかつしてそれぞれにサイリスタを配置はいちし、ダイオードブリッジかいして接続せつぞくするダイオードブリッジにえ、サイリスタをじゅん位相いそう制御せいぎょすれば、みぎ下段げだんのように出力しゅつりょく電圧でんあつ連続れんぞくてき変化へんかさせることができる。ほん方式ほうしきにおいて、サイリスタは分割ぶんかつされた2がわ出力しゅつりょく位相いそう制御せいぎょおこなうとともに、タップスイッチの役目やくめねており、故障こしょう原因げんいんとなりやすい機械きかいてきなスイッチをまったくもちいないことが特長とくちょうである。は4分割ぶんかつ事例じれいしめしたが、容量ようりょうおうじて6分割ぶんかつとしたり、出力しゅつりょくちいさい電車でんしゃでは2分割ぶんかつれいもある。

また、サイリスタをもちいた交流こうりゅう電気でんきしゃ制御せいぎょ回路かいろぎゃくにして、比較的ひかくてき簡単かんたん電力でんりょく回生かいせいブレーキ使用しようできる。整流せいりゅう電動でんどう直流ちょくりゅう発電はつでんとしてもちい、サイリスタブリッジでインバータ回路かいろ構成こうせいして、られた交流こうりゅう電力でんりょく架線かせんもど構造こうぞうである。回生かいせいブレーキを使用しようする構成こうせい場合ばあいしゅ回路かいろとはべつさかい磁用の位相いそう制御せいぎょ回路かいろみ、ぶんまき電動でんどうもちいてさかい磁を励とすることがある。電機でんき電流でんりゅうとはべつに、さかい磁を連続れんぞく制御せいぎょすることによって、安定あんていした回生かいせいブレーキや勾配こうばいそもそもそくブレーキにおけるじょうそく制御せいぎょ実現じつげんしている。

サイリスタ制御せいぎょすぐれた特性とくせい一方いっぽう位相いそう制御せいぎょなめらかな正弦せいげん(サインカーブ)を途中とちゅうでカットする方法ほうほうであり、出力しゅつりょく電圧でんあつ不連続ふれんぞくみだれた状態じょうたいになる。これによって交流こうりゅう電源でんげん周波数しゅうはすうとはことなる高調こうちょうしょうじ、変電へんでんしょ信号しんごう設備せつびなどの地上ちじょう設備せつび有害ゆうがい誘導ゆうどう障害しょうがいこすことがある。位相いそう制御せいぎょおこな無電むでんタップせつかわ同様どうようであるが、タップ段数だんすうくらべてサイリスタ制御せいぎょの2まきせん分割ぶんかつすうすくなく、波形はけいみだれがおおきい後者こうしゃ問題もんだいはとりわけ顕著けんちょである。これを防止ぼうしするため、車両しゃりょう地上ちじょう設備せつびにフィルタをもうけるなどの処置しょち必要ひつようとする。

またブリッジ(整流せいりゅう回路かいろ)にはサイリスタとダイオードで構成こうせいされたサイリスタ・ダイオード混合こんごうブリッジと、ブリッジがすべてサイリスタで構成こうせいされたサイリスタじゅんブリッジとがあり、後者こうしゃ位相いそう制御せいぎょ整流せいりゅうをまとめておこな方式ほうしきであり、じゅんサイリスタ制御せいぎょともばれる[註 4]

交流こうりゅう電気でんきしゃよわかい磁の組合くみあわ[編集へんしゅう]

直流ちょくりゅう電気でんきしゃ交流こうりゅう電気でんきしゃ速度そくど-牽引けんいんりょく特性とくせいれいしめした事例じれい

抵抗ていこう制御せいぎょもちいた直流ちょくりゅう電気でんきしゃでは印加いんか電圧でんあつ最大さいだいたっするとよわ界磁制御かいじせいぎょによりちゅう高速こうそくいきのトルク特性とくせい改善かいぜんするが、同様どうよう直流ちょくりゅう整流せいりゅう電動でんどうもちいる交流こうりゅう電気でんきしゃでもよわかい磁をもちいることは可能かのうである。しかしながら、電源でんげん電圧でんあつ電動でんどう個数こすう組合くみあわせで最大さいだい印加いんか電圧でんあつ決定けっていする直流ちょくりゅう電気でんきしゃとはことなり、交流こうりゅう電気でんきしゃでは変圧へんあつ設定せってい幅広はばひろ電圧でんあつ制御せいぎょ可能かのうであることから、かならずしもよわかい磁を必要ひつようとしない場合ばあいがある。

みぎは、抵抗ていこう制御せいぎょよわ界磁制御かいじせいぎょもちいた直流ちょくりゅう電気でんきしゃあおせん)と、交流こうりゅう電気でんきしゃあかせん)の速度そくど牽引けんいんりょく関係かんけいしめした事例じれいである。一般いっぱん直流ちょくりゅう電気でんきしゃていトルク領域りょういき抵抗ていこう制御せいぎょ)がひく速度そくど頭打あたまうちとなり、よわかい磁によりてい出力しゅつりょく制御せいぎょおこなってちゅう高速こうそくいきのトルク特性とくせいおぎなうのにたいし、交流こうりゅう電気でんきしゃでは比較的ひかくてきたか速度そくどまでていトルク(電圧でんあつ制御せいぎょ)で制御せいぎょできる。したがって、とくによわかい磁を利用りようしなくても、あるいはわずかにさかい磁をよわめるだけで十分じゅうぶん高速こうそく性能せいのうられる。初代しょだい新幹線しんかんせん車両しゃりょうである0けいていトルク領域りょういきを167km/hの高速度こうそくどまで設定せっていし、よわかい磁をもちいない設計せっけいであった。一方いっぽう、さらなる高速こうそく性能せいのう確保かくほしたい場合ばあいは、よわかい磁の併用へいよう有効ゆうこうである[註 5]

直流ちょくりゅう電気でんきしゃへのサイリスタの適用てきよう[編集へんしゅう]

位相いそう制御せいぎょひだり)とチョッパ制御せいぎょみぎ

サイリスタ登場とうじょうは、直流ちょくりゅう電気でんきしゃではこれまで一般いっぱん不可能ふかのうであった、連続れんぞく電圧でんあつ制御せいぎょによる粘着ねんちゃくりょく特性とくせい改善かいぜんてい損失そんしつ接点せってん、また安定あんていした回生かいせいブレーキの使用しよう可能かのうとした。本節ほんぶしでは、サイリスタに代表だいひょうされる半導体はんどうたい素子そし直流ちょくりゅう電気でんきしゃ速度そくど制御せいぎょ適用てきようした事例じれいについてべる。

直流ちょくりゅう電気でんきしゃたいしゅとしてもちいられる制御せいぎょ方式ほうしきチョッパ制御せいぎょである。これはサイリスタのスイッチング作用さよう直流ちょくりゅう電源でんげん適用てきようしたもので、交流こうりゅう電気でんきしゃにおける位相いそう制御せいぎょ同様どうように、連続れんぞくてきにかつ接点せってん電圧でんあつ制御せいぎょおこなうことが可能かのうである。また、直流ちょくりゅう電気でんきしゃにおいても、容量ようりょうちいさいながら制御せいぎょよう交流こうりゅう電源でんげんゆうしており、これを位相いそう制御せいぎょすることによってさかい磁を制御せいぎょし、速度そくど制御せいぎょ回生かいせいブレーキに応用おうようする方式ほうしきもちいられる。

電化でんか方式ほうしき 直流ちょくりゅう電化でんかすうひゃくボルトからすうせんボルト)
制御せいぎょ方式ほうしき 電機でんきチョッパ制御せいぎょ さかい磁チョッパ制御せいぎょ さかい磁位しょう制御せいぎょ さかい添加てんか励磁れいじ制御せいぎょ 高周波こうしゅうはぶんまきチョッパ
電動でんどう ちょくまき電動でんどう ふくまき電動でんどう ちょくまき電動でんどう ぶんまき電動でんどう
ていトルク制御せいぎょ チョッパ制御せいぎょ 抵抗ていこう制御せいぎょちょく並列へいれつ組合くみあわ制御せいぎょ チョッパ制御せいぎょ
てい出力しゅつりょく制御せいぎょ よわ界磁制御かいじせいぎょ さかい磁チョッパ制御せいぎょ さかい磁の位相いそう制御せいぎょ さかい磁チョッパ制御せいぎょ

チョッパ制御せいぎょ仕組しく[編集へんしゅう]

チョッパ制御せいぎょ概念がいねん高速こうそくでスイッチのオンオフをおこない、オン時間じかんながさで平均へいきん電圧でんあつ制御せいぎょ

チョッパとは『きざむ』ことを意味いみするchop由来ゆらいし、電流でんりゅうきざむことによって電圧でんあつ制御せいぎょおこな方法ほうほうである。みぎ降圧こうあつチョッパ概念がいねんしめしたもので、一定いってい電圧でんあつ供給きょうきゅうされる直流ちょくりゅう電源でんげんたいし、高速こうそくでスイッチのオン・オフをおこない、スイッチオンとオフの時間じかん比率ひりつえることによって、任意にんい電圧でんあつとすことができる。すなわち、オンの時間じかんみじかれば平均へいきん電圧でんあつひくくなり、ぎゃくにオンの時間じかんながくするとたか平均へいきん電圧でんあつられる。このように一定いってい周期しゅうきなかで、オンオフの時間じかんえて電圧でんあつ制御せいぎょする方法ほうほうを、パルスはば変調へんちょう (PWM) とう。

ここでスイッチの役目やくめたすのが、サイリスタをはじめとする半導体はんどうたい素子そしであり、接点せってん高速こうそくなスイッチングをおこなう。チョッパ制御せいぎょは、交流こうりゅうにおける位相いそう制御せいぎょ同様どうよう作用さようち、電圧でんあつ連続れんぞくてき制御せいぎょできる利点りてんゆうしている。

その一方いっぽうで、サイリスタはスイッチオンの動作どうさのみをち、電流でんりゅうがゼロになるまでスイッチオンを維持いじする特性とくせいがある。交流こうりゅうもちいた位相いそう制御せいぎょでは周期しゅうきてき電流でんりゅうがゼロになることから、自然しぜんにスイッチがオフとなるのにたいし、直流ちょくりゅうもちいるチョッパ制御せいぎょでは強制きょうせいてきにスイッチオフとするための回路かいろ別途べっと必要ひつようとなる。このため、だい電流でんりゅうあつかうチョッパ装置そうちは、回路かいろ構成こうせい複雑ふくざつ高価こうかなものとなりがちであった。のちにPWMをおこな素子そしとして登場とうじょうしたGTOサイリスタIGBTは、スイッチオンにくわスイッチオフの動作どうさわせ半導体はんどうたい素子そしである。

電機でんきチョッパ制御せいぎょ[編集へんしゅう]

電機子チョッパ制御の力行時回路。
電機でんきチョッパ制御せいぎょ力行りっこう回路かいろ
同回生ブレーキ時。回路を昇圧チョッパに組み替える。
どう回生かいせいブレーキ回路かいろ昇圧しょうあつチョッパにえる。

電機でんきチョッパ制御せいぎょしゅ回路かいろにチョッパ制御せいぎょれた構造こうぞうで、電機でんき電流でんりゅう電圧でんあつ制御せいぎょをチョッパでおこな方式ほうしきである。旧来きゅうらい抵抗ていこう制御せいぎょちょく並列へいれつ組合くみあわ制御せいぎょによりっていた、電動でんどうへの印加いんか電圧でんあつ制御せいぎょ降圧こうあつチョッパえ、連続れんぞくてき電圧でんあつ制御せいぎょするものである。抵抗ていこうもちいないことから損失そんしつちいさく、電圧でんあつ連続れんぞくてき制御せいぎょできるため空転くうてんこしにくく、粘着ねんちゃく性能せいのうすぐれる。

また、電機でんきチョッパ制御せいぎょでは回生かいせいブレーキ有効ゆうこう利用りようできる利点りてんゆうしている。回生かいせいブレーキは電動でんどうをブレーキ発電はつでんとして利用りようし、られた電力でんりょく電車でんしゃせん架線かせんひとし)に返還へんかんするブレーキ方式ほうしきであり、回生かいせい電圧でんあつ架線かせん電圧でんあつ上回うわまわ必要ひつようがある。ちょくまき整流せいりゅう電動でんどう起電きでんりょく回転かいてん速度そくど比例ひれいするため、回転かいてん速度そくどひくいときは十分じゅうぶん電圧でんあつられず、旧来きゅうらい抵抗ていこう制御せいぎょとうによる方法ほうほうではひろ速度そくどいき回生かいせいブレーキを利用りようすることが困難こんなんであった。これにたい電機でんきチョッパ制御せいぎょでは、力行りっこう降圧こうあつチョッパ回路かいろを、ひく電圧でんあつたかくする昇圧しょうあつチョッパえることが可能かのうであり、低速ていそく起電きでんりょくひく場合ばあいでも電圧でんあつげて架線かせんもどすことが可能かのうとなった。

一方いっぽうで、電機でんきチョッパは、パワーエレクトロニクス発展はってん途上とじょうにあった1960年代ねんだいから1970年代ねんだい実用じつようされたため、

  • 電機でんきながれるおおきな電流でんりゅう制御せいぎょすることから、装置そうちおおがかりで製造せいぞう費用ひようたかい。
  • 位相いそう制御せいぎょ同様どうよう高調こうちょうしょう誘導ゆうどう障害しょうがいこすことがある。

などの問題もんだいゆうしていた。

また、昇圧しょうあつチョッパの利用りようによって低速ていそくいきまで回生かいせいブレーキが使用しようできる反面はんめん高速こうそくいきでは電動でんどう起電きでんりょく架線かせん電圧でんあつおおきくえ、回生かいせいブレーキの使用しようむずかしくなる問題もんだいかかえていた。このため、電機でんきチョッパ制御せいぎょでは一般いっぱんちょく並列へいれつ組合くみあわ制御せいぎょおこなわないが、たかすぎる回生かいせい電圧でんあつ制御せいぎょするためにブレーキちょく並列へいれつえをおこな構造こうぞう搭載とうさいした車両しゃりょうもある。

このように、ほん方式ほうしき粘着ねんちゃく性能せいのうすぐれており、しかも電流でんりゅう抵抗ていこう損失そんしつしょうじない一方いっぽうで、高速こうそくいき回生かいせいブレーキになんのある方式ほうしきであった。このため、高速こうそく運転うんてんおこなわないが、たか加速度かそくどたか粘着ねんちゃく性能せいのう)を必要ひつようとし、トンネルない温度おんど上昇じょうしょう抑制よくせいする必要ひつようのあった地下鉄ちかてつ車両しゃりょうにしばしばもちいられた。

界磁制御かいじせいぎょへの適用てきよう[編集へんしゅう]

界磁制御かいじせいぎょ方式ほうしき特徴とくちょう
利点りてん
  • 回生かいせいブレーキ利用りよう可能かのう
  • じょうそく制御せいぎょ可能かのう
  • 製造せいぞう費用ひよう比較的ひかくてきひくい。
  • 高調こうちょう励磁れいじおん発生はっせいちいさい。
欠点けってん
  • 抵抗ていこう制御せいぎょ基本きほんのため抵抗ていこう損失そんしつがあり、粘着ねんちゃく性能せいのうおとる。
  • 停止ていしまでの回生かいせいブレーキが不可ふかり)。

電機でんきチョッパとの比較ひかく

しゅ回路かいろにチョッパ制御せいぎょ適用てきようした電機でんきチョッパ制御せいぎょは、直流ちょくりゅう電気でんきしゃ性能せいのう変革へんかくをもたらしたが、だい電流でんりゅうあつか制御せいぎょ装置そうち高価こうかなことが問題もんだいであった。そこで、しゅ回路かいろよりもあつか電流でんりゅうちいさいさかい調整ちょうせいたいし、サイリスタとう半導体はんどうたい素子そし適用てきようする方式ほうしき開発かいはつされた。すなわち、起動きどうにおけるていトルク制御せいぎょ旧来きゅうらい抵抗ていこう制御せいぎょ踏襲とうしゅうして製造せいぞう費用ひようおさえる一方いっぽうよわ界磁制御かいじせいぎょやブレーキにおいてさかい磁を積極せっきょくてき制御せいぎょし、幅広はばひろ速度そくどいきでの回生かいせいブレーキ使用しようてい速度そくど制御せいぎょ可能かのうとするものである。

さて、回生かいせいブレーキをあつか場合ばあい電動でんどうはっする電圧でんあつひくいと回生かいせい電力でんりょく架線かせんもどすことができず、たかすぎる電圧でんあつ電力でんりょく施設しせつ損傷そんしょうしてしまう。このため、電動でんどうはっする電圧でんあつ一定いっていはば制御せいぎょしなくてはならない。電動でんどうからられる電圧でんあつ)は、さかい磁束じそく)および回転かいてんすう)と以下いか関係かんけいにある。

すなわち、回生かいせい電圧でんあつさかい磁のつよさ(さかい磁束じそく)と速度そくど回転かいてんすう)に比例ひれいするため、速度そくどちるにつれて回生かいせい電圧でんあつ低下ていかしてやがて失効しっこうする。電機でんきチョッパでは低下ていかした電圧でんあつ昇圧しょうあつチョッパによってたかめることで、ひく速度そくどでの回生かいせいブレーキに対応たいおうしていた。これにたいさかい磁を制御せいぎょする方法ほうほうでは、回転かいてんすう)の増減ぞうげんわせて、さかい磁束じそく)をえることで回生かいせいブレーキを実現じつげんする。つまり、速度そくどたかいときはさかい磁をよわめ、速度そくどひくくなるとさかい磁をつよめて、幅広はばひろ速度そくどいき一定いっていはば電圧でんあつる。ただし、さかい磁の制御せいぎょだけでは限界げんかいがあり、ある速度そくど一般いっぱんに15km/hから30km/h程度ていど)を下回したまわると十分じゅうぶん回生かいせい電圧でんあつられなくなり、空気くうきブレーキとうえられる。

さかい磁を自由じゆう変化へんかさせるには、電機でんきさかい磁が直列ちょくれつちょくまき電動でんどうよりも、電機でんきさかい磁が独立どくりつしたぶんまき電動でんどうてきしている。その一方いっぽうで、起動きどうから力行りっこうにいたる速度そくど制御せいぎょにはちょくまき電動でんどうてきしているため、ちょくまきぶんまき特性とくせいわせふくまき電動でんどうもちいたり、力行りっこう回生かいせいさかい磁の特性とくせいちょくまきふんまき使つかける制御せいぎょなどがおこなわれる。またちょくまき電動でんどうさかい磁を別電べつでんげん駆動くどう制御せいぎょすれば電気でんきてきにはぶんまき特性とくせいたり、ぜん電圧でんあつ印加いんかする元々もともとぶんまきコイルよりもインダクタンスが桁外けたはずれにひくく、とき定数ていすうちいさくなるので制御せいぎょけいとしては高速こうそく応答おうとうになり安定あんてい動作どうさとなる。

代表だいひょうてき方式ほうしきとして、つぎの3方式ほうしきげられる。これらの方式ほうしき抵抗ていこう制御せいぎょ基本きほんとするため抵抗ていこう損失そんしつけられないが、安価あんか回生かいせいブレーキを実現じつげんできるため、おおくの電車でんしゃ採用さいようされた。

さかい磁位しょう制御せいぎょ回路かいろ
さかい磁チョッパ制御せいぎょ回路かいろ
さかい磁位しょう制御せいぎょ
電動でんどうとしてちょくまきかい磁とぶんまきかい磁のふたつをふくまき電動でんどう[註 6]使用しようし、ぶんまきかい磁は補助ほじょ電源でんげんによって励方しきとするのが特徴とくちょうである。このため界磁制御かいじせいぎょともばれる。補助ほじょ電源でんげんは、制御せいぎょ機器きき動作どうさ空調くうちょう機器ききなどに使つかわれるもので、直流ちょくりゅう電気でんきしゃであっても一般いっぱんさんそう交流こうりゅう供給きょうきゅうされる。このさんそう交流こうりゅう電源でんげん励磁れいじ装置そうちによって位相いそう制御せいぎょすることにより、ぶんまきかい磁の連続れんぞく制御せいぎょおこなう。
励磁れいじ装置そうちには一般いっぱんにサイリスタとうもちいられるが、これら半導体はんどうたい素子そし登場とうじょう以前いぜんにも磁気じき増幅器ぞうふくき位相いそう制御せいぎょし、ほん方式ほうしき採用さいようした車輌しゃりょうもある。
さかい磁チョッパ制御せいぎょ
さかい磁位しょう制御せいぎょ同様どうようふくまき電動でんどうもちいるが、ほん方式ほうしきぶんまきかい磁をちょくまきかい磁と並列へいれつ配置はいちするてん特徴とくちょうである。ぶんまきかい磁をながれる直流ちょくりゅう電流でんりゅうチョッパ制御せいぎょすることで、さかい磁の連続れんぞく制御せいぎょおこな方式ほうしきである。方式ほうしき同様どうよう抵抗ていこう制御せいぎょ起動きどうし、さかい磁の連続れんぞく制御せいぎょよわ界磁制御かいじせいぎょ回生かいせいブレーキもちいられる。
チョッパ制御せいぎょ登場とうじょう以前いぜんに、可変かへん抵抗ていこうによりぶんまきかい磁のさかい調整ちょうせいおこな方式ほうしき存在そんざいし、ほん方式ほうしきはこれを電力でんりょくよう半導体はんどうたい素子そしえたものとえる。旧来きゅうらいさかい調整ちょうせいくら保守ほしゅせい応答おうとうせいめん有利ゆうりであり、電機でんきチョッパにくらべても回路かいろ安価あんかであったことから、多数たすう採用さいようれいがある。
一方いっぽうふくまき電動でんどう構造こうぞう複雑ふくざつで、負荷ふか架線かせん電圧でんあつ変動へんどうよわく、保守ほしゅ手間てまがかかるという難点なんてんわせっていた。
さかい添加てんか励磁れいじ制御せいぎょ
方式ほうしきことなり、製造せいぞう費用ひよう保守ほしゅめん有利ゆうりちょくまき電動でんどうもちいることが特徴とくちょうである。ちょくまきかい磁に分流ぶんりゅう回路かいろもうけるとともに、補助ほじょ電源でんげんによる励磁れいじ装置そうちからちょくまきかい磁に電流でんりゅう添加てんかしてさかい磁の連続れんぞく制御せいぎょおこなう。励磁れいじ装置そうちは、一般いっぱんさんそう交流こうりゅう補助ほじょ電源でんげん位相いそう制御せいぎょするが、直流ちょくりゅう補助ほじょ電源でんげんからDC-DCコンバータとして動作どうさする形式けいしきもある。
力行りっこう抵抗ていこう制御せいぎょにより起動きどうし、よわ界磁制御かいじせいぎょいきたっすると誘導ゆうどうコイルに電流でんりゅう分流ぶんりゅうさせるとともに、励磁れいじ装置そうちから分流ぶんりゅう回路かいろとはぎゃくきの電流でんりゅう添加てんかする。この電流でんりゅう徐々じょじょよわめていくとちょくまきかい磁の電流でんりゅう減少げんしょうし、連続れんぞくてきよわ界磁制御かいじせいぎょおこなうことができる。
一方いっぽう回生かいせいブレーキにおいては、バイパスダイオードによって電機でんき電流でんりゅうはすべて誘導ゆうどうコイルにながれる。ちょくまきかい磁には励磁れいじ装置そうちからの電流でんりゅうのみがながれ、ちょくまき電動でんどうでありながら非常ひじょう高速こうそく応答おうとうさかい磁をぶんまき電動でんどうとして制御せいぎょでき、幅広はばひろ速度そくどでの安定あんていした回生かいせいブレーキを可能かのうにしている。
界磁添加励磁制御の回路図。 力行(全界磁)。抵抗制御で起動する。 力行(弱め界磁)。速度が上昇すると添加電流を連続制御して弱め界磁を行う。 回生ブレーキ。速度の変化に合わせて界磁を連続制御する。
さかい添加てんか励磁れいじ制御せいぎょ回路かいろ
力行りっこうぜんさかい磁)。抵抗ていこう制御せいぎょ起動きどうする。
力行りっこうよわかい磁)。速度そくど上昇じょうしょうすると添加てんか電流でんりゅう連続れんぞく制御せいぎょしてよわかい磁をおこなう。
回生かいせいブレーキ。速度そくど変化へんかわせてさかい磁を連続れんぞく制御せいぎょする。

電機でんきチョッパ制御せいぎょ地下鉄ちかてつ車輌しゃりょう中心ちゅうしんもちいられたのにたいし、これらの手法しゅほう高速こうそく運転うんてんおこな郊外こうがい電車でんしゃ優等ゆうとう列車れっしゃもちいられた。高速こうそく電車でんしゃにおいては、界磁制御かいじせいぎょ領域りょういきひろいため抵抗ていこう損失そんしつ影響えいきょう軽微けいびである一方いっぽう回生かいせい電力でんりょく速度そくどじょう比例ひれいするため、高速こうそくいきでの回生かいせいブレーキ性能せいのうすぐれるほん方式ほうしき一般いっぱん有利ゆうりとなる。

VVVFインバータ制御せいぎょ[編集へんしゅう]

交流こうりゅう電動でんどうを、その特性とくせいわせて任意にんい速度そくど回転かいてんすう動作どうささせるために、(静止せいし)インバータにより任意にんい周波数しゅうはすう電圧でんあつ発生はっせいさせる方式ほうしき一般いっぱんに「インバータ方式ほうしき」というが、鉄道てつどう業界ぎょうかい関係かんけいではそれを「電圧でんあつ-周波数しゅうはすう比例ひれい制御せいぎょ」としてとくに「VVVFインバータ方式ほうしき」、あるいは「VVVF方式ほうしき=可変かへん電圧でんあつ可変かへん周波数しゅうはすう制御せいぎょ方式ほうしき」とんでいる。VVVFという単語たんごは、可変かへん電圧でんあつ可変かへん周波数しゅうはすう直訳ちょくやくした和製わせい英語えいごである。

交流こうりゅう周波数しゅうはすう同期どうき速度そくど)をってまわ交流こうりゅうモータを使つか場合ばあい従前じゅうぜん任意にんい周波数しゅうはすう電源でんげんがなかなかられず、商用しょうよう周波数しゅうはすう (50Hzへるつ、60Hzへるつ) 固定こてい電源でんげん起動きどうさせるため、任意にんい速度そくどでの運転うんてんができず商用しょうよう周波数しゅうはすうでの同期どうき速度そくど付近ふきんでのみ運転うんてん可能かのうで、起動きどうトルクがちいさかったり、効率こうりつとしたり、定常ていじょう運転うんてんだい出力しゅつりょく交流こうりゅうモータをけい負荷ふか使つかっていた。そうした経過けいか従前じゅうぜんは、その動作どうさ特性とくせいも、あつかほう商用しょうよう周波数しゅうはすう固定こていでのものがひろられているだけで、回転かいてんすう周波数しゅうはすう特性とくせいはほとんど記述きじゅつられていなかった。

同期どうき速度そくどとは回転かいてん磁界じかい速度そくどで、電機でんき構造こうぞうが2・Pきょく場合ばあい周波数しゅうはすうf/Pとなる。小型こがた一般いっぱんてきな4きょく構造こうぞうではf/(4/2) が同期どうき速度そくど。60Hzへるつであれば2きょくで60rps(毎秒まいびょう回転かいてんすう)、4きょくで30rps、6きょくで20rpsが同期どうき速度そくどである。60をける記述きじゅつ秒速びょうそく-ぶんそく単位たんい換算かんさんのrpm(まいぶん回転かいてんすう表示ひょうじである。

トルクの電圧でんあつ周波数しゅうはすう特性とくせい[編集へんしゅう]

電動でんどうの1そうさそえ起電きでんあつ回転かいてんすう

トルクの周波数しゅうはすう特性とくせいとしては、(電圧でんあつV/周波数しゅうはすうf)2比例ひれいし、さらに誘導ゆうどう電動でんどうでは、とまどうトルクより微少びしょう場合ばあいはスベリ周波数しゅうはすうs比例ひれいする(一般いっぱんてきな「すべりりつS」ではなく「すべり周波数しゅうはすうs 」であることに注意ちゅうい)。同期どうき電動でんどうでは電機でんき磁界じかい回転子かいてんし磁界じかい角度かくどδでるたかんして sin(δでるた/2) に比例ひれいする。これをしき表現ひょうげんすれば、

ここに、比例ひれい定数ていすう、Iは電機でんき電流でんりゅうくさり交総磁束じそく、Vは電圧でんあつ、fは電源でんげん周波数しゅうはすうはすべり周波数しゅうはすうである。すなわち V/f を一定いっていにして(=電圧でんあつ周波数しゅうはすう比例ひれいさせて)ゼロから徐々じょじょやして起動きどうすればよく、周波数しゅうはすうおうじた任意にんい速度そくどでの運転うんてんができる。

任意にんい周波数しゅうはすう電源でんげんをパワー半導体はんどうたい構成こうせい[編集へんしゅう]

近年きんねん電力でんりょくよう半導体はんどうたい進歩しんぽにより、任意にんい周波数しゅうはすう任意にんい電圧でんあつ交流こうりゅう電力でんりょく生成せいせいするインバータ直流ちょくりゅう-交流こうりゅう変換へんかん)がられるようになり、交流こうりゅうモータの特性とくせいわせて、電機でんきさそえおこり起電きでんりょく+インピーダンス降下こうか電圧でんあつ供給きょうきゅうして駆動くどうすることで任意にんい速度そくど運転うんてんできるようになった。電機でんき誘導ゆうどう起電きでんりょく磁界じかい一定いっていであれば回転かいてんすう、すなわち周波数しゅうはすう比例ひれいするから、供給きょうきゅう電圧でんあつ周波数しゅうはすうをほぼ一定いっていにして速度そくど制御せいぎょすることがVVVFインバータ制御せいぎょ基本きほんである。

鉄道てつどう車両しゃりょうでは[編集へんしゅう]

鉄道てつどう車両しゃりょうではこの電圧でんあつ周波数しゅうはすう比例ひれい領域りょういき(V/f一定いってい領域りょういき)をとくに「VVVF領域りょういき(=可変かへん電圧でんあつ可変かへん周波数しゅうはすう領域りょういき)」とんでいる。インバータの最大さいだい電圧でんあつ以降いこう高速こうそく領域りょういき電圧でんあつ一定いってい周波数しゅうはすうげるので「CVVF領域りょういき(=てい電圧でんあつ可変かへん周波数しゅうはすう領域りょういき)」とぶが、CVVF領域りょういきのうち、電流でんりゅう一定いってい加速かそくつづける領域りょういきは、誘導ゆうどう電動でんどうであればスベリ周波数しゅうはすうやして加速かそくするが供給きょうきゅう電力でんりょくとしては一定いってい(=電圧でんあつ一定いってい×電流でんりゅう一定いってい)なので「てい電力でんりょく領域りょういき」とび、トルクは回転かいてん速度そくど反比例はんぴれいする。とまどうトルク(脱出だっしゅつトルク)にちかづくとスベリはやせなくなり周波数しゅうはすうのみをやす「特性とくせい領域りょういき」となり、トルクは回転かいてん速度そくどの2じょう反比例はんぴれいする。これは、V/f一定いってい・すべり周波数しゅうはすう制御せいぎょばれている。

近年きんねんではさら瞬時しゅんじ変化へんか過渡かと応答おうとう特性とくせい改善かいぜんのためベクトル制御せいぎょくわえている。空転くうてん滑走かっそうなど急激きゅうげき負荷ふか変化へんかたいしスベリ周波数しゅうはすう制御せいぎょだけで追従ついしょう制御せいぎょしたのではせい定時ていじあいだおおきくかり、加速かそく減速げんそくにぶくなってしまう。これを高速こうそく演算えんざん最適さいてき位置いち駆動くどう磁界じかいつくることで応答おうとう遅延ちえんふせ過渡かと状態じょうたい収束しゅうそく制御せいぎょである。

同期どうき電動でんどう場合ばあいは、すべりはゼロで、回転かいてん磁界じかい回転子かいてんし磁界じかいおくかくδでるた半角はんかく正弦せいげん比例ひれいしたトルクをしょうずる。最大さいだい電圧でんあつ到達とうたつ以降いこうはそのままでは電動でんどうさそえ起電きでんあつ速度そくど比例ひれいして過電圧かでんあつとなり、直流ちょくりゅう励磁れいじがた同期どうき電動でんどうでは速度そくど反比例はんぴれい励磁れいじ磁束じそくらす調整ちょうせいもとめられる。

永久えいきゅう磁石じしゃく同期どうき電動でんどう (PMSM) の場合ばあいは、電機でんき反作用はんさよう(ちょくじく反作用はんさよう)を利用りようして永久えいきゅう磁石じしゃくによるくさり磁束じそくげんじることで、さそえ起電きでんあつ上昇じょうしょう抑制よくせいされる(よわ磁束じそく制御せいぎょ)。PMSMでは、電機でんき反作用はんさようによるすす電流でんりゅうでリラクタンストルクが増加ぞうかするため、誘導ゆうどうモーターと同様どうようにCVVF領域りょういきでのてい出力しゅつりょく運転うんてん可能かのうとなる。

なおIPMSMでは、必要ひつようおうじて惰行運転うんてんちゅうにもよわ磁束じそく制御せいぎょおこなわれる。この制御せいぎょ同機どうき調ちょうしょうにおけるげん磁作ようおな運転うんてん状態じょうたいであり、ちからりつが0%となる。そのため、モーター電流でんりゅう増減ぞうげんかかわらず力行りっこう制動せいどうトルクは一切いっさい発生はっせいしない。

直流ちょくりゅう電動でんどう制御せいぎょとの比較ひかく[編集へんしゅう]

直流ちょくりゅう電動でんどう制御せいぎょとの比較ひかくでいえば、「電機でんき誘導ゆうどう起電きでんりょく(=ぎゃく起電きでんりょく)+内部ないぶ抵抗ていこう降下こうか」を直流ちょくりゅう電動でんどうくわえて起動きどうさせるのが抵抗ていこう制御せいぎょチョッパ制御せいぎょ基本きほんだから、VVVFインバータ制御せいぎょはその制御せいぎょ周波数しゅうはすう位相いそうくわわるだけで基本きほん同様どうようである。「てい電力でんりょく領域りょういき」と「特性とくせい領域りょういき」についても直流ちょくりゅう電動でんどうの「じゃくかい領域りょういき=てい電力でんりょく領域りょういき」「特性とくせい領域りょういき」とわらない。またVVVF領域りょういきていトルクに制御せいぎょすれば抵抗ていこう制御せいぎょ直流ちょくりゅう電動でんどうでの「ていトルク領域りょういき」と同様どうようである。

鉄道てつどうではてんわせてVVVF制御せいぎょしゃ抵抗ていこう制御せいぎょしゃを併結運転うんてんしているれいもある。

インバータの制御せいぎょ対象たいしょう[編集へんしゅう]

インバータ制御せいぎょ対象たいしょうとなる鉄道てつどうよう交流こうりゅうモータは、かごがた誘導ゆうどう電動でんどう一般いっぱんてきだが、TGVなどでは電磁石でんじしゃく同期どうき電動でんどうもちいられていることもあった(あたらしい車両しゃりょうでは誘導ゆうどう電動でんどう採用さいようされている)。ともに回転かいてん磁界じかいじかつくれるさんそう交流こうりゅうしきである。誘導ゆうどう電動でんどうのすべりりつSは回転子かいてんしでの電力でんりょくそん割合わりあいなので、ていスベリ周波数しゅうはすう制御せいぎょをすると低速ていそく回転かいてんほど損失そんしつりつ効率こうりつがるので、低速ていそく回転かいてんになる直接ちょくせつ駆動くどうモーター (DDM) ではスベリ回転かいてんのない同期どうき電動でんどうえらばれることがおおい。しかしながら低速ていそく回転かいてん電動でんどうのため重量じゅうりょうかさみ、新幹線しんかんせん保守ほしゅ経験けいけんから「線路せんろ損傷そんしょうじくじゅうの4じょう速度そくどの2じょう比例ひれいする」ことがかり、回生かいせい制動せいどう技術ぎじゅつ発達はったつしたこともあって、JR東日本ひがしにっぽん試作しさくしゃE993けい量産りょうさんしゃ先行せんこうしゃE331けい1編成へんせい(=7りょう編成へんせい×2:14りょう)と試用しよう車両しゃりょうまり、量産りょうさんしゃつくられないまま一般いっぱん方式ほうしき次世代じせだいしゃであるE233けい投入とうにゅうされた。

交流こうりゅう直流ちょくりゅう両用りょうよう車両しゃりょう[編集へんしゅう]

交流こうりゅう電化でんか区間くかん直流ちょくりゅう電化でんか区間くかん直通ちょくつうする列車れっしゃは、当初とうしょはその境界きょうかい機関きかんしゃりょう区間くかん直通ちょくつうしていた。北陸本線ほくりくほんせん米原まいばらえき - 田村たむらえきあいだでは当初とうしょ交流こうりゅう直流ちょくりゅうあいだ蒸気じょうき機関きかんしゃ牽引けんいんつな間接かんせつ切替きりかえ方式ほうしきがとられたほか、黒磯くろいそえきなどではえき構内こうない架線かせんへの給電きゅうでんえる地上ちじょう切替きりかえ方式ほうしきがとられたが、列車れっしゃ高速こうそく要求ようきゅうともない、交直りょう区間くかん電流でんりゅうとおらないデッドセクションもうけてその区間くかん走行そうこうちゅうくるまじょう切替きりかえ方式ほうしき移行いこうし、これを直通ちょくつうできる「交直両用りょうよう車両しゃりょう開発かいはつされた。

その構造こうぞうは、基本きほんてきには直流ちょくりゅう車両しゃりょう直流ちょくりゅう変電へんでん設備せつびせて、えて使つかうものであり、走行そうこう特性とくせいとしては直流ちょくりゅう車両しゃりょうじゅんじる。

シリコン整流せいりゅうしき[編集へんしゅう]

直流ちょくりゅうようしん性能せいのう電車でんしゃ構造こうぞう基本きほん構造こうぞうとしてトランスとシリコン整流せいりゅう搭載とうさいした車両しゃりょう常磐ときわせん関門かんもんトンネル運用うんようふく鹿児島かごしま本線ほんせん投入とうにゅうされた。当初とうしょ電源でんげん周波数しゅうはすうごとべつ形式けいしきとして投入とうにゅうされたが、長距離ちょうきょりよう車両しゃりょうから50/60Hzへるつりょう周波数しゅうはすう共用きょうよう形式けいしきとなった。基本きほんてき走行そうこう装置そうちひく周波数しゅうはすうの50Hzへるつ対応たいおうしていれば60Hzへるつ兼用けんようにでき、周辺しゅうへん装置そうち共用きょうようで3電源でんげんしたことで大阪おおさか - 青森あおもりあいだ特急とっきゅう白鳥はくちょう」などが運行うんこうされた。シリコン整流せいりゅうでは回生かいせい制動せいどう不可能ふかのうだが、当初とうしょしん性能せいのう電車でんしゃ発電はつでん制動せいどう方式ほうしきのみ採用さいようしていたので支障ししょうはなかった。

PWMコンバータしき[編集へんしゅう]

ところが、VVVFインバータ制御せいぎょ車両しゃりょうになると、整流せいりゅう可逆かぎゃくせいのある (PWM) コンバータを採用さいようして、高力こうりきりつ広範こうはん回生かいせい制動せいどう可能かのうにして効率こうりつ改善かいぜんはかるとともに、交流こうりゅう専用せんよう車両しゃりょう匹敵ひってきするたか粘着ねんちゃくりょく利用りようでき、こう加速度かそくどこう減速げんそく、そして編成へんせいなかれられる電動でんどうしゃらせるようになった。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 内燃ないねん機関きかん発電はつでんのみに利用りようする電気でんきしき動力どうりょくしゃは、はし装置そうち電気でんきしゃおなじであり、変速へんそくやクラッチは必要ひつようない。
  2. ^ 電力でんりょく回生かいせいブレーキにはVμみゅーを1700〜1800ボルト程度ていど維持いじすることが必要ひつようだが、単純たんじゅん抵抗ていこう制御せいぎょ場合ばあい確保かくほできず、原理げんりじょう可能かのうではあるが実用じつようてきではない。
  3. ^ ノコギリ運転うんてん - 目標もくひょう速度そくどたっしたところでノッチオフし、速度そくどがある程度ていどがるとさい加速かそくおこな運転うんてん方法ほうほう速度そくど時間じかんをグラフにするとノコギリのようなギザギザなせんえがくことからこのがある。特定とくてい速度そくど領域りょういき連続れんぞく力行りっこうできない場合ばあいおこなう。
  4. ^ 電気でんき鉄道てつどう技術ぎじゅつ入門にゅうもんム社むしゃ、2008ねん、p.65-p.67ぺーじISBN 9784274501920 
  5. ^ 新幹線しんかんせん0けい電車でんしゃ後継こうけいである100けい同様どうようよわかい磁をもちいない設計せっけいであったが、270km/h運行うんこう目指めざしたグランドひかり編成へんせい(100Nけい)では高速こうそく性能せいのう向上こうじょうのため80%のよわかい磁を追加ついかした。
  6. ^ 一部いちぶにはちょくまき電動でんどう使用しようするさかい磁位しょう制御せいぎょ方式ほうしきもある。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

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  • 石井いしい幸孝ゆきたか入門にゅうもん鉄道てつどう車両しゃりょう交友こうゆうしゃ、1970ねん、6 - 53ぺーじ
  • 伊原いはら一夫かずお鉄道てつどう車両しゃりょうメカニズム図鑑ずかん』 グランプリ出版しゅっぱん、1987ねん、26 - 37・180 - 190ぺーじ
  • Michael C. Duffy; Institution of Electrical Engineers (2003). Electric railways 1880 - 1990. IET. pp. pp247 - 248 
  • 交流こうりゅう調整ちょうせいかんするQ&A (PDF, 218 KB) 富士電機ふじでんきテクニカ、14ぺーじ
  • 宮上みやうえゆきせい岡本おかもと研一けんいちさわ邦彦くにひこ直流ちょくりゅう電車でんしゃようサイリスタチョッパ制御せいぎょ装置そうち富士ふじ時報じほう だい43かんだい2ごう(1970ねん 205 - 213ぺーじ
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  • 『インバータ制御せいぎょ電車でんしゃ概論がいろん飯田いいだ秀樹ひできわがあつしちょ電気でんきしゃ研究けんきゅうかい2003ねん8がつかんしん京成けいせい8800がた開発かいはつしゃ

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]