交流こうりゅうがた電車でんしゃ

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交流こうりゅうがた電車でんしゃ(こうりゅうがたでんしゃ)とは、交流こうりゅう電化でんか区間くかん専用せんよう電車でんしゃである[1]

交流こうりゅう電車でんしゃ構造こうぞう[編集へんしゅう]

使用しようする電力でんりょくしゅ電動でんどうにより複数ふくすう種類しゅるい存在そんざいする。

さんそう交流こうりゅう電化でんか+さんそう交流こうりゅう誘導ゆうどう電動でんどう[編集へんしゅう]

3せん架空かくうせんと3きょくしゅうでん装置そうち設置せっちしたドイツの試験しけん車両しゃりょう時速じそく210.3kmの速度そくど記録きろく樹立じゅりつしたが、複雑ふくざつなシステムのため普及ふきゅうしなかった(ベルリン近郊きんこう,1903ねん)

初期しょき交流こうりゅう電化でんかこころみられた方式ほうしき

しかし、架線かせんひとし送電そうでん設備せつびしゅうでん装置そうちを3みずつ設置せっちしなければならないことや、速度そくど制御せいぎょむずかしいことから、一部いちぶのぞ普及ふきゅうすることはなかった。

2023ねん現在げんざいは、安定あんていした出力しゅつりょく保持ほじする特徴とくちょう一定いっていそく)、回生かいせいブレーキで発生はっせいした電力でんりょく電力でんりょくもうもどすことができる(回生かいせい失効しっこうしにくい)特徴とくちょうかして、ラックしき山岳さんがく鉄道てつどう使用しようされている。これらの山岳さんがく鉄道てつどうでは2きょく架空かくうせんで、のこりの1きょくをレールがにな形式けいしきとして、あつまりでん装置そうちを2くみとしている。スイスユングフラウ鉄道てつどうゴルナーグラート鉄道てつどうフランスラ・リューヌ登山とざん鉄道てつどうブラジルコルコバード登山とざん電車でんしゃの、けい4路線ろせん登山とざん鉄道てつどう運行うんこうちゅうである。

現代げんだいのモーターとその制御せいぎょシステムは、ソリッドステートコンバーターで構築こうちくされているため、従来じゅうらいのようにシステムに起因きいんする速度そくど固定こてい問題もんだい回避かいひしている。

さんそう交流こうりゅう電化でんか+直流ちょくりゅう整流せいりゅう電動でんどう[編集へんしゅう]

しん交通こうつうシステムにおける送電そうでん様子ようす車体しゃたい前方ぜんぽう画像がぞう左下ひだりした)の側壁そくへきに3ほん送電そうでんせん確認かくにんできる(関西国際空港かんさいこくさいくうこうウイングシャトル

専用せんよう高架こうか路線ろせん建設けんせつするため3きょく送電そうでんせん配置はいち容易よういな、いわゆるしん交通こうつうシステムでの方式ほうしき。こちらはくるまじょう搭載とうさい機器きき小型こがた軽量けいりょうというメリットがあったが、VVVFインバータ普及ふきゅうにより直流ちょくりゅう電化でんかでもくるまじょう機器きき小型こがたされ、くるまじょう機器ききめんでのメリットはうすれつつある。

てい周波しゅうはたんしょう交流こうりゅう電化でんか+たんしょう交流こうりゅう整流せいりゅう電動でんどう[編集へんしゅう]

西欧せいおう複数ふくすうくに、およびアメリカ東海岸ひがしかいがんでみられるてい周波しゅうは交流こうりゅう電化でんか(16 2/3 Hzもしくは25 Hz)は、 交流こうりゅう整流せいりゅう電動でんどう利用りようするのにてきしたものとして採用さいようされた。

このように交流こうりゅう電力でんりょくそのままで電動でんどううごかす方式ほうしきを、直接ちょくせつしきという。

なお、架線かせん電圧でんあつのままでは電圧でんあつたかすぎるため、変圧へんあつ経由けいゆして降圧こうあつさせる。

たんしょう交流こうりゅう電化でんか+直流ちょくりゅう整流せいりゅう電動でんどう[編集へんしゅう]

世界せかいおおくのくにでは、商用しょうよう電源でんげん周波数しゅうはすうたんしょう交流こうりゅう(50 Hz、一部いちぶ60 Hz)を利用りようする。 この場合ばあい直接ちょくせつしき不向ふむきであるため、変圧へんあつ電圧でんあつ降下こうかさせたのちに、整流せいりゅうもしくサイリスタによる機器きき搭載とうさいしてたんしょう交流こうりゅう直流ちょくりゅう変換へんかんし、直流ちょくりゅう整流せいりゅう電動でんどう駆動くどうする。

変圧へんあつ整流せいりゅうとう必要ひつようとするため、直流ちょくりゅうがた電車でんしゃくらべれば車両しゃりょう製造せいぞうコスト高額こうがくになるが、直流ちょくりゅう電車でんしゃくらべれば低廉ていれんである。

てい周波しゅうはたんしょう交流こうりゅう電化でんか方式ほうしきでも、電機でんきチョッパ制御せいぎょ方式ほうしきではこの方式ほうしき一般いっぱんてきだったが、そのさんそう誘導ゆうどう電動でんどう使用しようする方式ほうしき実用じつようされたため、れいすくない。

たんしょう交流こうりゅう電化でんか+さんそう交流こうりゅう誘導ゆうどう電動でんどう同期どうき電動でんどう[編集へんしゅう]

てい周波しゅうはしき商用しょうよう周波しゅうはしきともに、最近さいきんではVVVFインバータによる制御せいぎょひろもちいられている。 しかし、たんしょうこう電圧でんあつから直接ちょくせつさんそう交流こうりゅう変換へんかんする電車でんしゃよう装置そうち実用じつようされていないため、コンバータで一旦いったん直流ちょくりゅう変換へんかんしたのちで、再度さいどインバータにとおさんそう交流こうりゅうつくしている。このため、構造こうぞうじょう直流ちょくりゅう電車でんしゃちかく、理論りろんじょう直流ちょくりゅう電車でんしゃ改造かいぞうすることも可能かのうである[2]

このコンバータとインバータを1つにまとめてしゅ変換へんかん装置そうちぶことがある。

日本にっぽん交流こうりゅうがた電車でんしゃ[編集へんしゅう]

JR東日本ひがしにっぽん701けい交流こうりゅう電車でんしゃ屋根やねじょうにあるパンタグラフと関連かんれん機器ききひだりからAがしゅ回路かいろのメインヒューズ・Bが交流こうりゅう避雷・Cが真空しんくう遮断しゃだん・Dがパンタグラフのげに使用しようするシリンダーに圧力あつりょく空気くうきおくため空気くうきかん・ Eがけい器用きよう変圧へんあつ

おも新幹線しんかんせん全線ぜんせん(50/60 Hz)、北海道ほっかいどう東北とうほく地方ちほう(50 Hz)、九州きゅうしゅう島内しまうち(60 Hz)のJR在来ざいらいせん使用しようされている。かく路線ろせん実情じつじょうわせ、50 Hz専用せんようがた、60 Hz専用せんようがた、50/60 Hzりょう周波数しゅうはすう対応たいおう車両しゃりょうがある。

国鉄こくてつ時代じだい末期まっきまで、在来ざいらいせんでは直流ちょくりゅう電化でんか区間くかんとの不可能ふかのうだった北海道ほっかいどうのぞけば、量産りょうさんされた営業えいぎょうよう交流こうりゅう専用せんよう電車でんしゃ存在そんざいせず[3]直流ちょくりゅう電車でんしゃがもっぱら使用しようされていた。なにより、国鉄こくてつ時代じだい交流こうりゅう電化でんか同時どうじ地域ちいき輸送ゆそうよう車両しゃりょう近郊きんこうがた)が投入とうにゅうされた事例じれいきわめてわずかで、そのなかで常磐線じょうばんせん九州きゅうしゅう北部ほくぶ直流ちょくりゅう区間くかんへの直通ちょくつう考慮こうりょした交直両用りょうようしゃ401/421けい)であり、純然じゅんぜんたる交流こうりゅう電車でんしゃでは711けい[4]特急とっきゅうようである781けい[5]があった。これ以外いがい地域ちいきはもちろん、これら電車でんしゃ投入とうにゅうされた地域ちいきでも、郵便ゆうびん荷物にもつ輸送ゆそう問題もんだいから客車きゃくしゃ列車れっしゃ牽引けんいん交流こうりゅう電気でんき機関きかんしゃえただけの列車れっしゃのこった。

なお、長崎本線ながさきほんせん佐世保線させぼせん客車きゃくしゃ列車れっしゃえを名目めいもくとして九州きゅうしゅうけに製作せいさくした713けい電車でんしゃ小規模しょうきぼながら存在そんざいする。

もっとも、サイリスタ位相いそう制御せいぎょ実用じつよう以前いぜん変圧へんあつタップ制御せいぎょでは、タップアークによる破壊はかいや、カーボン付着ふちゃくによる絶縁ぜつえん低下ていかなどの欠点けってんがあり、交流こうりゅう専用せんようしゃにすることのメリットもうすかったが、東海道新幹線とうかいどうしんかんせんでは、電車でんしゃ床下ゆかしたおさまる寸法すんぽう電動でんどうと、架線かせん電圧でんあつ上限じょうげんひく直流ちょくりゅうとのわせでは、時速じそく200 km/hかべえることはむずかしいとの判断はんだんから、上記じょうきのデメリットを承知しょうちうえ交流こうりゅう電化でんか採用さいようった[6]

その北海道ほっかいどう以外いがい在来ざいらいせん交流こうりゅう電車でんしゃ普及ふきゅうしなかった理由りゆうは、直流ちょくりゅう区間くかんへの直通ちょくつう優等ゆうとう列車れっしゃおおかったことや[7]PCB問題もんだい変圧へんあつ製造せいぞう見合みあわされたこと[8]などもあるが、主因しゅいん全国ぜんこくてき配置はいち転換てんかん考慮こうりょしたものであった。分割ぶんかつ民営みんえいこうは、全国ぜんこく規模きぼ配置はいち転換てんかんがなくなり、JR各社かくしゃはそれぞれの地域ちいきった車両しゃりょう製造せいぞうするようになり、交流こうりゅう電化でんか区間くかんではおおくの場合ばあい交流こうりゅう専用せんよう電車でんしゃ導入どうにゅうするようになっている。

特別とくべつだかあつあつかうことから、直流ちょくりゅう電車でんしゃのように、屋根やねじょうのパンタグラフとその配線はいせん支持しじする碍子がいしおおきくして、車体しゃたいとのあいだ絶縁ぜつえん離隔りかくおおきくしている。そのにも、遮断しゃだん異常いじょう以外いがい使用しようしない)、交流こうりゅう避雷、メインヒューズ計器けいきよう変圧へんあつ交流こうりゅう電圧でんあつ加圧かあつされているのを検知けんちする交流こうりゅう電圧でんあつ継電器けいでんき作動さどうさせる変圧へんあつ)を搭載とうさいする。異相いそう区分くぶんセクション通過つうか室内しつないとうえないよう配慮はいりょされている。

電化でんか方式ほうしきとの直接ちょくせつ関連かんれんはないが、在来ざいらいせん交流こうりゅう電化でんか区間くかん走行そうこうする電車でんしゃ出入口でいりぐちにはステップ段差だんさ)のついている車両しゃりょうおおい。これは交流こうりゅう電化でんかされているおおくの路線ろせんにおいてプラットホームたかさが客車きゃくしゃ対象たいしょうとした列車れっしゃようとなっていることに起因きいんする[9]国鉄こくてつ分割ぶんかつ民営みんえい以降いこう客車きゃくしゃ列車れっしゃ廃止はいしとホームのかさげがすすんだことから、ステップをめた車両しゃりょう充当じゅうとうされはじめたほか、ホームにわせて車両しゃりょうゆかめんげるかたちでステップをはいした車両しゃりょうえている[10]

以下いか交流こうりゅう電車でんしゃ一覧いちらんげる。括弧かっこない対応たいおうしている周波数しゅうはすうである。

日本にっぽん国有こくゆう鉄道てつどう・JR[編集へんしゅう]

電圧でんあつは、新幹線しんかんせんはすべて交流こうりゅう25 kV在来ざいらいせん交流こうりゅう20 kVである。ただし、新幹線しんかんせん在来ざいらいせん直通ちょくつうする400けいE3けいE6けいE8けいは25 kVと20 kVの両方りょうほう対応たいおうするふく電圧でんあつしゃである。

新幹線しんかんせん[編集へんしゅう]

*1:F80編成へんせい長野ながのオリンピック臨時りんじ輸送ゆそう充当じゅうとうするために50/60 Hzりょう対応たいおうになっていた。すで廃車はいしゃされている。
*2:東北新幹線とうほくしんかんせん専用せんようの1000番台ばんだいは50 Hzのみ対応たいおう
*3:P81・P82編成へんせい長野ながの新幹線しんかんせんへのれを考慮こうりょして50/60 Hzりょう対応たいおう

特急とっきゅうがた電車でんしゃ[編集へんしゅう]

近郊きんこうがた電車でんしゃ[編集へんしゅう]

*4:すで全車ぜんしゃ廃車はいしゃされ、形式けいしき消滅しょうめつしている。

通勤つうきんがた電車でんしゃ[編集へんしゅう]

一般いっぱんがた電車でんしゃ[編集へんしゅう]

*5:JR北海道ほっかいどうの721けい電車でんしゃとJR東日本ひがしにっぽんのE721けい電車でんしゃは、形式けいしきめい数字すうじおなじであるがまったことなる車両しゃりょう電車でんしゃとは無関係むかんけいであるが、同様どうようのケースはキハ120キハE120でもられる)である。

事業じぎょうよう車両しゃりょう[編集へんしゅう]

試作しさくしゃ[編集へんしゅう]

私鉄してつ[編集へんしゅう]

*6:JR東日本ひがしにっぽん701けい電車でんしゃどう仕様しよう車両しゃりょうである。
*7:JR東日本ひがしにっぽんE721けい電車でんしゃどう仕様しよう車両しゃりょうである。

日本にっぽん国外こくがい交流こうりゅうがた電車でんしゃ形式けいしき[編集へんしゅう]

大韓民国だいかんみんこく[編集へんしゅう]

電気でんき方式ほうしきは、すべて25 kV・60 Hzである。

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく[編集へんしゅう]

電気でんき方式ほうしきは、すべて25 kV・50 Hzである。

香港ほんこん[編集へんしゅう]

電気でんき方式ほうしきは、すべて25 kV・50 Hzである。

台湾たいわん中華民国ちゅうかみんこく[編集へんしゅう]

電気でんき方式ほうしきは、すべて25 kV・60 Hzである。

ドイツ[編集へんしゅう]

電気でんき方式ほうしきは、15 kV・16 2/3 Hzである。

  • ドイツ鉄道てつどう参照さんしょう
  • ICE1(401かたち):電気でんき機関きかんしゃ+客車きゃくしゃ固定こてい編成へんせいという見方みかたもあるが、動力どうりょく集中しゅうちゅうしき電車でんしゃという見方みかたもあるので、ここにげる。
  • ICE2(402かたち):電気でんき機関きかんしゃ+客車きゃくしゃ固定こてい編成へんせいという見方みかたもあるが、動力どうりょく集中しゅうちゅうしき電車でんしゃという見方みかたもあるので、ここにげる。
  • ICE3(403かたち
  • ICE-T(411かたち・415かたち
  • 420かたち近郊きんこうよう
  • 423かたち・424かたち・425かたち・426かたち近郊きんこうよう

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 日本にっぽんではきゅう日本にっぽん国有こくゆう鉄道てつどう国鉄こくてつ)での表記ひょうきならい、「かたち」のもちいることがおおい。
  2. ^ コンバータをはらえば直流ちょくりゅうがた電車でんしゃへの改造かいぞう可能かのうである。
  3. ^ 試作しさくしゃ牽引けんいんしゃのみ。
  4. ^ 711けいについては国鉄こくてつ時代じだい交流こうりゅう電化でんか同時どうじ地域ちいき輸送ゆそうよう電車でんしゃしんせい配置はいちされた唯一ゆいいつれいとなった。
  5. ^ ただし、この2系列けいれつ場合ばあい耐寒たいかんたいゆき対策たいさくほどこした北海道ほっかいどう専用せんよう車両しゃりょうという側面そくめんもあった。
  6. ^ 当時とうじフランス国鉄こくてつ保持ほじしていた速度そくど世界せかい記録きろく直流ちょくりゅう区間くかん達成たっせいされたものであるが、特別とくべつ歯車はぐるま変更へんこうした電気でんき機関きかんしゃ単機たんきによる記録きろくである。
  7. ^ おおくの優等ゆうとう列車れっしゃおこり終点しゅうてんであった上野うえのえき大阪おおさかえき自体じたい直流ちょくりゅう区間くかんないにあるうえ、日本海にほんかい縦貫じゅうかんせんは、きたから交流こうりゅう50 Hz、直流ちょくりゅう交流こうりゅう60 Hz、直流ちょくりゅうみだれている。
  8. ^ 変圧へんあつかんしては交直両用りょうようしゃおな条件じょうけんであったが、国鉄こくてつしん開発かいはつシリコーン冷却れいきゃく変圧へんあつを、485けいなどのさん電源でんげん直流ちょくりゅう交流こうりゅう50/60 Hz)に対応たいおうした交直両用りょうようしゃ優先ゆうせんして搭載とうさいした。
  9. ^ 日本にっぽん直流ちょくりゅう電車でんしゃにもステップきのれいがある。いわゆる電車でんしゃせんばれた線区せんくのプラットホームは鉄道てつどうしょう時代じだいには現在げんざいおなたかさとなっていたが、国鉄こくてつ交流こうりゅう電化でんかまたは気動車きどうしゃ導入どうにゅうさいし、費用ひようおさえるため、当該とうがい線区せんくのほとんどのえきでプラットホームの嵩上かさあ工事こうじおこなわなかった。
  10. ^ 小径しょうけい車輪しゃりんもちいたていゆかなど。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]