翻訳ほんやく後ご修飾しゅうしょく

この略図りゃくずの下部かぶはインスリンの一いち次じ構造こうぞうの翻訳ほんやく後ご修飾しゅうしょくである。

翻訳ほんやく後ご修飾しゅうしょく（ほんやくごしゅうしょく、Post-translational modification、PTM）は、翻訳ほんやく後ごのタンパク質たんぱくしつの化学かがく的てきな修飾しゅうしょくである。これは多おおくのタンパク質たんぱくしつの生なま合成ごうせいの後方こうほうのステップの1つである。

翻訳ほんやく後ご、アミノ酸あみのさんは、酢酸さくさん、リン酸さん、様々さまざまな脂質ししつ、炭水化物たんすいかぶつのような他ほかの生化学せいかがく官能かんのう基もとと結合けつごうし、化学かがく的てき特性とくせいの変換へんかん（例たとえばシトルリン）、またはジスルフィド結合けつごうの形成けいせいのような構造こうぞう変換へんかんなどを受うけ、タンパク質たんぱくしつの反応はんのうの幅はばを広ひろげる。

また、酵素こうそがタンパク質たんぱくしつのN末端まったんからアミノ酸あみのさんを輸送ゆそうするか、中央ちゅうおうからペプチド結合けつごうを切断せつだんすることもある。例たとえば、ペプチドホルモンであるインスリンはジスルフィド結合けつごうが形成けいせいされた後のちに2つに切断せつだんされ、C-ペプチド（右みぎ図ずの桃色ももいろのポリペプチド鎖くさり部分ぶぶん）は結合けつごうから切きり離はなされる（最終さいしゅう的てきにジスルフィド結合けつごうで2つのポリペプチド鎖くさりが結合けつごうしたタンパク質たんぱくしつが生しょうじる）。

この他ほかの修飾しゅうしょくにリン酸化さんかがある。この修飾しゅうしょくはタンパク質たんぱくしつ酵素こうその作用さようの活発かっぱつ化かと非ひ活発かっぱつ化かの調節ちょうせつ機構きこうにおいてよく起おこる。

官能かんのう基もと付加ふか

コドンと修飾しゅうしょくの付加ふかの一覧いちらん。

• アシル化か
  • アシル基もと(RCO-)の付加ふか。O-アシル化か（エステル化か）、N-アシル化か（アミド化か）、S-アシル化か（チオエステル化か）など。
    • アセチル化か
      • アセチル基もとの付加ふかで、リシン残ざん基もと、またはN末端まったんのアミノ基もとに起おこる。エタノイル化かというともいう。ヒストンが良よく知しられる例れいである。ヒストン尾お部ぶにおけるアセチル化か、またその逆ぎゃく反応はんのうの脱だつアセチル化かはリシンの持もつ電荷でんかを変化へんかさせてDNAとの結合けつごう状態じょうたいに影響えいきょうを与あたえるとともに、ブロモドメインをもつヒストン修飾しゅうしょく酵素こうそやクロマチンリモデリング因子いんしなどに対たいする標的ひょうてき部位ぶいを規定きていするヒストンコードの要素ようそとしてクロマチン構造こうぞうの変換へんかんに寄与きよし、遺伝子いでんし発現はつげんの変化へんかを引ひき起おこす。
    • ホルミル化か
• アルキル化か
  • メチル基もとの付加ふかはメチル化かと呼よばれ、リシンとアルギニン残ざん基もとに起おこる。
  • ジメチル化か
• アミド化かはC末端まったんで起おこる
• ビオチニル化か
  • ビオチンを付加ふかさせてリシン残ざん基もとを保護ほごする
• γがんまカルボキシル化か
  • ビタミンKに依存いぞんする。
• グルタミル化か
  • たんぱく質しつのグルタミン酸ぐるたみんさん残ざん基もとの共有きょうゆう結合けつごうによるチューブリンと他たのタンパク質たんぱくしつとの結合けつごう。
• グリコシル化か
  • アスパラギン、ヒドロキシリシン、セリン、トレオニンにグリコシル基もとが付加ふかし、糖とうタンパク質たんぱくしつができる。メイラード反応はんのうでは糖とうの付加ふかは酵素こうそ無なしで行おこなわれる。
• グリシル化か
  • チューブリンのC末端まったん尾おの40以上いじょうのグリシン残ざん基もとの1つの共有きょうゆう結合けつごう
• ヘム
  • 共有きょうゆう結合けつごうの付加ふか
• ヒドロキシル化か
• ヨウ素もと化か
  • 甲状腺こうじょうせんホルモン
• イソプレニル化か
  • イソプレノイドの付加ふか（ファルネソール、ゲラニルゲラニオールなど）
• リポイル化か
  • プレニル化か
  • GPIアンカー形成けいせい
    • ミリストイル化か
    • ファルネシル化か
    • ゲラニルゲラニル化か
• ヌクレオチドまたは誘導体ゆうどうたいへの共有きょうゆう結合けつごうの付加ふか
  • ADPリボシル化か
  • FAD結合けつごう
  • アデニリル化か
• 酸化さんか還元かんげん反応はんのう
• ポリエチレングリコール化か
• ホスファチジルイノシトール
• ホスホパンテテイニル化か
  • 脂肪酸しぼうさん、ポリケチド、非ひリボソームペプリド、ロイシンでの補ほ酵素こうそAからの4'-ホスホパンテテイニルの付加ふか。
• リン酸化さんか
  • リン酸さんの付加ふか。通常つうじょう、セリン、チロシン、トレオニン、ヒスチジンで起おこる。
• ピログルタミン酸ぐるたみんさん形成けいせい
• ラセミ化か
  • プロリルイソメラーゼによるプロリンのラセミ化か
• tRNA
  • アミノ酸あみのさん付加ふかによる調停ちょうてい
• チロシン硫酸りゅうさん化か
  • チロシンへの硫黄いおうの付加ふか
• セレノイル化か
  • セレノタンパク質しつへのセレンの付加ふか

タンパク質たんぱくしつまたはペプチドの付加ふか

• ISG化か
  • ISG15タンパク質たんぱくしつへの共有きょうゆう結合けつごう連鎖れんさ（インターフェロン刺激しげき遺伝子いでんし15）
• SUMO化か
  • SUMOタンパク質たんぱくしつへの共有きょうゆう結合けつごう連鎖れんさ (SUMO ; Small Ubiquitin-related MOdifier)
• ユビキチン化か
  • ユビキチンへの共有きょうゆう結合けつごう連鎖れんさ

アミノ酸あみのさんの化学かがく的てき性質せいしつの変換へんかん

• シトルリン化かまたは脱だつアミン
  • アルギニンをシトルリンに変換へんかん
• 脱だつアミド
  • グルタミンをグルタミン酸ぐるたみんさん、アスパラギンをアスパラギン酸さんに変換へんかん

構造こうぞうの変換へんかん

• ジスルフィド
  • 2つのシステインの共有きょうゆう結合けつごう
• プロテアーゼ
  • タンパク質たんぱくしつのペプチド結合けつごうの加水かすい分解ぶんかい

修飾しゅうしょくの例れい

• 加水かすい分解ぶんかいとジスルフィド形成けいせいによるインスリンの形成けいせい
• ヒストンの転写てんしゃ調節ちょうせつ（クロマチン形成けいせい時じのRNAポリメラーゼの調節ちょうせつ）
• RNAポリメラーゼIIの転写てんしゃ調節ちょうせつ

参照さんしょう項目こうもく

• タンパク質たんぱくしつ輸送ゆそう
• 翻訳ほんやく後ご調節ちょうせつ