ひろば　川崎かわさき高津たかつ公法こうほう研究けんきゅう室しつ別室べっしつ

　今年ことしは玉たま電でん開業かいぎょう110周年しゅうねんです。その本線ほんせんである玉川たまがわ線せん〔渋谷しぶや⇔二子ふたご玉川たまがわ園えん（現在げんざいの二子ふたご玉川たまがわ）〕や砧きぬた線せん（二子ふたご玉川たまがわ園えん⇔砧きぬた本村ほんそん）は1969年ねんに廃止はいしされましたが、三軒茶屋さんげんぢゃやから下高井戸しもたかいどまでの世田谷線せたがやせんは残のこりました。ちなみに、渋谷しぶや⇔二子ふたご玉川たまがわ園えんは1977年ねんに地下ちか線せんの新玉川線しんたまがせんとして復活ふっかつ（？）し、現在げんざいは田園都市線でんえんとしせんの一部いちぶとなっています。

　世田谷線せたがやせんを走はしる300系けいといえば、編成へんせい毎ごとに色いろが異ことなることでも知しられており、訪おとずれる者ものの目めを（そして利用りよう者しゃの目めも）楽たのしませてくれますが、今年ことし、300系けいのうちの305編成へんせい（305F）が玉たま電でん開業かいぎょう110周年しゅうねん記念きねんのラッピングをまとい、走はしっています。

これが305編成へんせいです。元来がんらいはチェリーレッドの塗装とそうとなっていますが（「世田谷線せたがやせん（１）」を御覧ごらんください）、開業かいぎょう時じの木造もくぞう単車たんしゃの塗装とそうを復刻ふっこくしたようなデザインのラッピングを施ほどこされています。

何なんヶ月かげつ前まえであったか、YouTubeでこの編成へんせいの動画どうがを見みて、最近さいきんのラッピング電車でんしゃとしては珍めずらしく（しかし東急とうきゅうらしく）上品じょうひんなデザインであることに感心かんしんし、撮影さつえいしたいと思おもっていました。

正面しょうめんの運転うんてん席せきの下した（向むかって左側ひだりがわ）には、小ちいさいものではありますがヘッドマークのようなものも描えがかれています。玉たま電でんが開業かいぎょうした当時とうじ（明治めいじ40年ねん）の木造もくぞう単車たんしゃも登場とうじょうしています。

　この編成へんせいのデザインの良よさは、側面そくめんによく現あらわれています。都電とでん荒川あらかわ線せんの9000形かたち9001号ごうにも似にていますが（「レトロ風ふう」を御覧ごらんください）、単純たんじゅんに上下じょうげを塗ぬり分わけたようなものとなっていません。扉とびらや窓まどの上うえの方ほうにある茶色ちゃいろの半円はんえんのような部分ぶぶんは、少すこしばかりですがかつての東横線とうよこせん渋谷しぶや駅えきを思おもい起おこさせるような格好かっこうになっていますが、これは狙ねらった訳わけではないでしょう。

　私わたしが立たっているのは世田谷線せたがやせん三軒茶屋さんげんぢゃや駅えき（SG01）の降車こうしゃホームです。自由じゆう通路つうろともなっていますので、簡単かんたんに出入でいりができます。

　世田谷線せたがやせんでは、三軒茶屋さんげんぢゃや駅えきと下高井戸しもたかいど駅えきを除のぞき、入口いりくちと出口でぐちが決きまっています。前まえの車両しゃりょうの一番いちばん前まえの扉とびらと、後ごの車両しゃりょうの一番いちばん後ごの扉とびらが入口いりくち（つまり乗車じょうしゃ用よう）、その他たの扉とびらは出口いでぐち（つまり降車こうしゃ用よう）となっています〔但ただし、上町うえまち駅えきの上のぼりホーム（三軒茶屋さんげんぢゃや方面ほうめんホーム）のみ異ことなります〕。

　最後さいごに、下くだり側がわのほうを撮影さつえいしておきます。茶色ちゃいろも上手うまく使つかえば上品じょうひんな色いろになることは、フォルクスワーゲンや日産にっさんなどの乗用車じょうようしゃや阪急はんきゅう電車でんしゃで実証じっしょうされていますが、東急とうきゅう300系けい305Fも代表だいひょう例れいに加くわえてよいでしょう。このラッピングがいつまで続つづくのかはわかりませんが、もしかしたら301Fのようになるかもしれません。301Fは、登場とうじょう時じにはアルプスグリーン一色いっしょくで、正面しょうめんにはサザエさんの顔かおがヘッドマークのように描えがかれていましたが、ペコちゃんことデハ200形がたの登場とうじょうから50周年しゅうねんとなる2005年ねんに現在げんざいの玉たま電でん色しょくに変かわっています。

　先程さきほど書かき忘わすれていましたが、実じつは玉たま電でんに、世田谷線せたがやせんの他ほか、廃止はいしされなかった区間くかんがもう一ひとつあります。現在げんざいは田園都市線でんえんとしせんの一部いちぶとなっている二に子し玉川たまがわ⇔溝みぞの口くちです。1927年ねん、玉川たまがわ電気でんき鉄道てつどうは玉川たまがわ線せんの延長えんちょうのような形かたちで二に子し玉川たまがわから溝みぞの口くちまでの溝ノ口みぞのくち線せんを開業かいぎょうさせます。この時ときに二に子し新地しんじ駅えき、高津たかつ駅えきおよび溝みぞの口くち駅えきが開業かいぎょうしました（そのために、田園都市線でんえんとしせんでもこの区間くかんでは駅えき間あいだ距離きょりが短みじかいのです）。しかし、1943年ねん、軍需ぐんじゅ関連かんれん輸送ゆそうの強化きょうかのため、溝ノ口みぞのくち線せんは、線路せんろの幅はばを1372㎜から1067㎜に改あらためた上うえで大井おおい町まち線せんに編入へんにゅうされます。それでも1966年ねんまで、二子ふたご橋きょうは道路どうろの真まん中なかに単線たんせんの線路せんろが敷しかれるという軌道きどう線せんそのままのスタイルを保たもっていました。今いまの二子ふたご橋きょうしか御存知ごぞんじない方ほうには、あのあまり幅はばの広ひろくない橋はしの真まん中なかを大井おおい町まち線せん・田園都市線でんえんとしせんの電車でんしゃが走はしっていたことが信しんじられないでしょう（私わたしも写真しゃしんでしか見みたことがありません）。