チェコの針鼠はりねずみ

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん時とき、ナチス・ドイツの大西洋たいせいようの壁かべ計画けいかくの一部いちぶとしてカレー近ちかくに設置せっちされたチェコの針鼠はりねずみ。

冷戦れいせん時とき、ベルリンの壁かべ近ちかくの鉄道てつどう沿ぞいに設置せっちされたチェコの針鼠はりねずみ。

チェコの針鼠はりねずみ(チェコ語ご: rozsocháč または チェコ語ご: ježek)とは、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん頃ころに開発かいはつされた防御ぼうぎょ用よう対戦たいせん車しゃ障害しょうがい物ぶつである。通常つうじょう、L字じ鋼こうまたはH形かたち鋼こうを組くみ合あわせて作つくられ、その形状けいじょうから爆発ばくはつ等とうで転ころがったとしても障害しょうがい物ぶつとしての価値かちを損そこなわないという特徴とくちょうがある。戦車せんしゃなどの進行しんこうを効果こうか的てきに阻害そがいするものの、機械きかい化か歩兵ほへいなどに対たいしては限定げんてい的てきな効果こうかしかもたらさない。

歴史れきし

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん直前ちょくぜんのチェコスロバキアでは、対たい独どく国境こっきょうにチェコスロバキア国境こっきょう要塞ようさい線せんとして知しられる大だい規模きぼな要塞ようさい線せんの構築こうちくを行おこなっていた。この要塞ようさい線せんに用もちいられた障害しょうがい物ぶつがチェコの針鼠はりねずみの起源きげんとされている。なお、この要塞ようさい線せんは完成かんせいを待またぬまま1938年ねんのミュンヘン会談かいだんとズデーテン地方ちほうの割譲かつじょうを迎むかえ、ドイツ側がわへ譲渡ゆずりわたされた。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中ちゅうのソビエト連邦れんぽうでも、チェコの針鼠はりねずみが広ひろく使用しようされた。通常つうじょうは手頃てごろな鋼材こうざいを組くみ合あわせて作成さくせいされたが、時ときには鉄道てつどう線路せんろの枕木まくらぎなどの木材もくざいを用もちいる場合ばあいもあった。市街しがい戦せんでは少数しょうすうの配置はいちで道路どうろを完全かんぜんに封鎖ふうさできるチェコの針鼠はりねずみは特とくに有効ゆうこうな障害しょうがい物ぶつと捉とらえられていた。戦線せんせん各地かくちで使用しようされた為ため、ソ連邦それんぽうにおいてチェコの針鼠はりねずみは「防衛ぼうえい」そのものの象徴しょうちょうとなり、1966年ねんにM10幹線かんせん道路どうろに設置せっちされたモスクワ防衛ぼうえい隊たいの慰霊いれい碑ひの周囲しゅういには3つの巨大きょだいなチェコの針鼠はりねずみが設置せっちされている。

ドイツでは大西洋たいせいようの壁かべ計画けいかくに基もとづく要塞ようさい構築こうちくで広ひろく用もちいられ、ノルマンディー上陸じょうりく作戦さくせんなどの写真しゃしんでもこれらを確認かくにんできる。

2022年ねんロシアのウクライナ侵攻しんこうを受うけて、ウクライナの各地かくちでさまざまな形状けいじょうのチェコの針鼠はりねずみが急造きゅうぞうされ、道路どうろなどの封鎖ふうさに利用りようされた。

設計せっけい

オリジナルのチェコの針鼠はりねずみは、少すくなくとも60トン（600kN）の力ちからに耐たえられる材質ざいしつで、高たかさはおおむね1.4メートル (4 ft 7 in)とされていた。しかし、急造きゅうぞうの対戦たいせん車しゃ障害しょうがい物ぶつとして前線ぜんせんで作成さくせいされたチェコの針鼠はりねずみでは、こうした規格きかくは必かならずしも重視じゅうしされなかった。

チェコの針鼠はりねずみは恒久こうきゅう的てきな設置せっちを前提ぜんていとしておらず、その大おおきさや重量じゅうりょうは運搬うんぱんが可能かのうであることが好このましいとされた。また、戦車せんしゃによって踏ふみ越こえられる事ことを避さける為ため、高たかさは戦車せんしゃの車体しゃたい底面ていめんから地面じめんまでの最低さいてい地上ちじょう高だかよりも高たかい事ことが求もとめられた。

工場こうじょう生産せいさん型がたのチェコの針鼠はりねずみは3本ほんのL型かた鋼こう（L 140/140/13mm, 長ながさ1.8m、重おもさ198kg, 後期こうき型がたは長ながさ2.1m、重おもさ240kg）を板金ばんきん、リベット、ボルト、あるいは溶接ようせつなどの手段しゅだんで固定こていしたものである。各かく形かたち鋼こうは他たの2本ほんと直角ちょっかくを形成けいせいするように、すなわち八はち面体めんていの軸じくと同様どうように配置はいちされている。通常つうじょうは2本ほんの型かた鋼こうのみ固定こていした状態じょうたいで工場こうじょうから出荷しゅっかされ、3本ほん目めの型かた鋼こうは現場げんばで固定こていされた。それぞれの型かた鋼こうには地面じめんに沈しずみ込こませない為ための正方形せいほうけいの足あしと、有刺鉄線ゆうしてっせんを取とり付つける為ための切きり欠かきがあった。

ノルマンディー上陸じょうりく後ご、連合れんごう軍ぐんでは生垣いけがき（ボカージュ）を突破とっぱする為ための機材きざいとして、解体かいたいしたチェコの針鼠はりねずみの形かたち鋼こうから加工かこうした刃はをM4中ちゅう戦車せんしゃやM5軽けい戦車せんしゃの正面しょうめんに取とり付つけた。この刃はを取とり付つけた戦車せんしゃはライノ・タンクと呼よばれた。

外部がいぶリンク

• J A Hampton (1944年ねん). “A 23992: Royal Navy Commandos at La Riviere preparing to demolish beach obstacles (photograph)”. Imperial War Museum Collection Search. Imperial War Museum. 2 August 2012閲覧えつらん。