竜りゅうの歯は

竜りゅうの歯は（ドイツ語ご: Drachenzähne、英えい: Dragon's teeth ）は、戦車せんしゃや機械きかい化か歩兵ほへいの移動いどうを妨さまたげるために設置せっちされる鉄筋てっきんコンクリート製せいの四よん角錐かくすいの防御ぼうぎょ用よう障害しょうがい物ぶつである。これによって戦車せんしゃを減速げんそくさせて、対戦たいせん車しゃ兵器へいきによる攻撃こうげきを容易よういにするキルゾーンを形成けいせいするものだった。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なかに最初さいしょに使用しようされ、特とくに欧州おうしゅう戦線せんせんでナチス・ドイツ西部せいぶ国境こっきょうを守まもるジークフリート線せんにおいて広ひろく採用さいようされた^[1]^[2]^[3]。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん

竜りゅうの歯はは、ヨーロッパ戦域せんいきでいくつかの軍隊ぐんたいによって使用しようされた。ドイツ国防こくぼう軍ぐんはジークフリート線せんと大西洋たいせいようの壁かべでそれらを広範囲こうはんいに使用しようした。通常つうじょう、各かく「歯は」は90 - 120 cm (3 - 4 ft)の高たかさで規格きかく化かされていた。

地雷じらいがしばしば個々ここの「歯は」の間あいだに敷設ふせつされ、さらに歩兵ほへいを妨害ぼうがいする有刺鉄線ゆうしてっせんや、戦車せんしゃをさらに妨害ぼうがいする斜ななめに配置はいちされた鋼鉄こうてつの梁はりなど、「歯は」の列れつに沿そってさらに障害しょうがい物ぶつが設置せっちされた。1940年ねんから1941年ねんの英国えいこくでは多数たすうが設置せっちされ、ドイツ軍ぐんの英国えいこく本土ほんど上陸じょうりく（アシカ作戦さくせん）に備そなえていた。

「地雷原じらいげんの後うしろにはドラゴンの歯はがあった。それは10～30メートル幅はばのコンクリートの床ゆかの上うえに設置せっちされ、床ゆかは地中ちちゅう1、2メートルの深ふかさに作つくられていた（床ゆかの下したにトンネルを掘ほって爆薬ばくやくで吹ふき飛とばすことができないようにである）。この床ゆかの上うえに「歯は」、つまり頭あたまを平ひらたくした強化きょうかコンクリートのピラミッドが並ならんでいた。高たかさは最さい前列ぜんれつで1メートルほど、最さい後列こうれつで2メートルである。戦車せんしゃが通とおれないように互たがい違ちがいに、適度てきどな間隔かんかくで設置せっちされていた。この歯はの間あいだには地雷原じらいげん、有刺鉄線ゆうしてっせん、そして砲撃ほうげきではほとんど破壊はかいできないトーチカがあり、これはドイツ側がわから前線ぜんせんすべてにわたって十字砲火じゅうじほうかが可能かのうなように作つくられていた。トーチカを奪取だっしゅするには歩兵ほへいが背後はいごに回まわって入口いりくちを攻撃こうげきするしかなかった。しかし第だい一いちのトーチカ列れつとドラゴンの歯はの後うしろには必かならず第だい二にの列れつがあり、たいてい第だい三さんの列れつがあり、時ときには第だい四よんの列れつまであった。」^[4]

膨大ぼうだいな数かずが設置せっちされ、また、耐久たいきゅう性せいのある構造こうぞうのため、今日きょうでも何なん千せんという竜りゅうの歯はが、特とくにジークフリート線せんの跡地あとちで見みられる。

2009年ねん、英国えいこくウェールズのフェアボーン海岸かいがんに残のこる、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん時じの竜りゅうの歯は。戦車せんしゃの上陸じょうりくを阻止そしするために設計せっけいされた。2009年ねん撮影さつえい。
英国えいこくサリーのウェイバリー修道院しゅうどういん近ちかくに残のこる「GHQ線せん」の竜りゅうの歯は。2006年ねん撮影さつえい。
1944年ねん、ジークフリート線せんを突破とっぱして竜りゅうの歯はを通とおり抜ぬけるアメリカ陸軍りくぐん部隊ぶたい。
イタリア北部ほくぶに残のこる「アルプス壁かべ（英語えいご版ばん）」の竜りゅうの歯は

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ご

スイスは、特定とくていの戦略せんりゃく的てき地域ちいきで竜りゅうの歯は列れつを維持いじし続つづけている。軍事ぐんじ的てき俗語ぞくごでは、これらの構造こうぞう物ぶつはチョコレートバーにちなんで「トブラローネ線せん」と呼よばれている^[5]。

ドラゴンの歯はは、韓国かんこくの非ひ武装ぶそう地帯ちたいの境界きょうかい線せんに沿そった一部いちぶの領域りょういきにも存在そんざいしている。ベルリンの壁かべの東ひがしドイツ側がわでも使用しようされていた。

この英単語えいたんごは現在げんざいでも生いき延のびており、現在げんざいでは、農村のうそんの駐車ちゅうしゃ場じょうや道路どうろ沿ぞいなど、車両しゃりょうの侵入しんにゅうを阻止そしするために地面じめんに設置せっちされた支柱しちゅうやペグの列れつを表あらわすのにも使用しようできる。「ボラード」はそのような柱はしらの別名べつめいである。

ユーゴスラビアの崩壊ほうかい後のちに形成けいせいされた国くになど、一部いちぶの国くにでは移動いどう可能かのうな「歯は」が製造せいぞうされ、戦略せんりゃく的てきな場所ばしょの道端みちばたに仮かり置おきされており、有事ゆうじには持もち上あげて道路どうろに置おくことができる^{[要よう出典しゅってん]}。

世界せかいラリー選手権せんしゅけん（WRC）のドイツラウンドであるラリー・ドイチュラントのいくつかのステージは、バウムホルダーの軍事ぐんじ訓練くんれん場じょう内ないの道路どうろを走はしっているが、路肩ろかたは「ヒンケルシュタイネ（独どく: Hinkelsteine）」と呼よばれる竜りゅうの歯はで囲かこまれている。戦車せんしゃが道路どうろから逸それるのを防ふせぐために設置せっちされているが、滑すべりやすいコンクリート舗装ほそうの曲まがりくねった道路どうろ脇わきに敷設ふせつされているため、道みちを逸はぐれたラリーカーがダメージを負おう危険きけんなコースとして知しられている^[6]^[7]。

2022年ねんロシアによるウクライナ侵攻しんこうにおいて、ロシア連邦れんぽう軍ぐんがウクライナの占領せんりょう地域ちいきにおいて、反攻はんこうしてくるウクライナ軍ぐんに備そなえて、塹壕ざんごうや地雷原じらいげんと組くみ合あわせた竜りゅうの歯はを設置せっちしている^[8]^[9]^[10]。

脚注きゃくちゅう

^ Wilson, Joe (1999). The 761st "Black Panther" Tank Battalion in World War II. McFarland. p. 150. ISBN 0786406674. "This section of the Siegfried Line sat in the middle of the Hardt Mountains, where the landscape was dotted with pillboxes and dragon teeth tank obstacles."
^ Bohner. “Baptism of Fire on the Siegfried Line”. 11th Armored Division Legacy Group website. 2013年ねん2月がつ26日にち閲覧えつらん。 “it was late afternoon on 18 Feb when [we] passed through the Siegfried Line dragons teeth”
^ Owens, Emiel W. (2006). Blood on German Snow: An African American Artilleryman in World War II and Beyond. Texas A&M University Press. p. 56. ISBN 1585445371. "Human-made obstacles such as the "dragon teeth" were integrated carefully into the defense system of the line."
^ Ambrose, Stephen (1998). The Victors: Eisenhower and his Boys — The Men of World War II. New York: Simon & Schuster. pp. 256
^ Muehlemann (2008年ねん6月がつ9日にち). “Ligne fortifiée, un témoin du passé à valoriser” (French). 24 Heures. 2012年ねん2月がつ26日にち時点じてんのオリジナルよりアーカイブ。2009年ねん8月がつ9日にち閲覧えつらん。
^ 編集へんしゅう部ぶ, autosport web (2019年ねん8月がつ16日にち). “WRC：トヨタ、大会たいかい連覇れんぱ目指めざして第だい10戦せんドイツへ。「ふたたび最高さいこうの結果けっかを残のこす自信じしんはある」とマキネン | ラリー/WRC”. autosport web. 2024年ねん6月がつ18日にち閲覧えつらん。
^ “WRCの “最さい恐おそれ” ステージ 6選せん”. Red Bull (2017年ねん5月がつ6日にち). 2024年ねん6月がつ18日にち閲覧えつらん。
^ 露ろ軍ぐんが「防衛ぼうえい線せん800キロ・メートル」スペイン紙し報道ほうどうウクライナ反攻はんこうに備そなえ『読売新聞よみうりしんぶん』朝刊ちょうかん2023年ねん4月がつ22日にち（国際こくさい面めん）同日どうじつ閲覧えつらん
^ “https://twitter.com/coupsure/status/1580192286348279809”. Twitter. 2022年ねん10月がつ12日にち閲覧えつらん。
^ “https://twitter.com/ralee85/status/1579975702853869568”. Twitter. 2022年ねん10月がつ12日にち閲覧えつらん。

外部がいぶリンク

ウィキメディア・コモンズには、竜りゅうの歯はに関かんするカテゴリがあります。
The Toblerone trail
Dragon's Teeth in Horsham, West Sussex
"You Build 'Em - We'll Bust 'Em." Popular Science, June 1942, pp. 106–112. Field expedient tank traps constructed of logs.
White Cliffs Underground - Dragon's Teeth and Tank Traps around England's south coast
Dragons Teeth on Libyan border with Egypt
“ANTI-TANK OBSTACLES, ISLE OF GRAIN, KENT”. en:English Heritage. 2010年ねん7月がつ28日にち閲覧えつらん。

[1] Wilson, Joe (1999). The 761st "Black Panther" Tank Battalion in World War II. McFarland. p. 150. ISBN 0786406674. "This section of the Siegfried Line sat in the middle of the Hardt Mountains, where the landscape was dotted with pillboxes and dragon teeth tank obstacles."

[2] Bohner. “Baptism of Fire on the Siegfried Line”. 11th Armored Division Legacy Group website. 2013年ねん2月がつ26日にち閲覧えつらん。 “it was late afternoon on 18 Feb when [we] passed through the Siegfried Line dragons teeth”

[3] Owens, Emiel W. (2006). Blood on German Snow: An African American Artilleryman in World War II and Beyond. Texas A&M University Press. p. 56. ISBN 1585445371. "Human-made obstacles such as the "dragon teeth" were integrated carefully into the defense system of the line."

[4] Ambrose, Stephen (1998). The Victors: Eisenhower and his Boys — The Men of World War II. New York: Simon & Schuster. pp. 256

[5] Muehlemann (2008年ねん6月がつ9日にち). “Ligne fortifiée, un témoin du passé à valoriser” (French). 24 Heures. 2012年ねん2月がつ26日にち時点じてんのオリジナルよりアーカイブ。2009年ねん8月がつ9日にち閲覧えつらん。

[6] 編集へんしゅう部ぶ, autosport web (2019年ねん8月がつ16日にち). “WRC：トヨタ、大会たいかい連覇れんぱ目指めざして第だい10戦せんドイツへ。「ふたたび最高さいこうの結果けっかを残のこす自信じしんはある」とマキネン | ラリー/WRC”. autosport web. 2024年ねん6月がつ18日にち閲覧えつらん。

[7] “WRCの “最さい恐おそれ” ステージ 6選せん”. Red Bull (2017年ねん5月がつ6日にち). 2024年ねん6月がつ18日にち閲覧えつらん。

[8] 露ろ軍ぐんが「防衛ぼうえい線せん800キロ・メートル」スペイン紙し報道ほうどうウクライナ反攻はんこうに備そなえ『読売新聞よみうりしんぶん』朝刊ちょうかん2023年ねん4月がつ22日にち（国際こくさい面めん）同日どうじつ閲覧えつらん

[9] “https://twitter.com/coupsure/status/1580192286348279809”. Twitter. 2022年ねん10月がつ12日にち閲覧えつらん。

[10] “https://twitter.com/ralee85/status/1579975702853869568”. Twitter. 2022年ねん10月がつ12日にち閲覧えつらん。

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第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ご

関連かんれん項目こうもく

脚注きゃくちゅう

外部がいぶリンク