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中国ちゅうごく部屋へや

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

中国ちゅうごく部屋へや(ちゅうごくごのへや、Chinese Room)とは、哲学てつがくしゃジョン・サールが、1980ねんに “Minds, Brains, and Programs(のうしん、プログラム)” という論文ろんぶんなか発表はっぴょうした思考しこう実験じっけん[1]

中国ちゅうごく理解りかいできないひとしょう部屋へやめて、マニュアルしたがった作業さぎょうをさせるという内容ないようチューリング・テスト発展はってんさせた思考しこう実験じっけんで、意識いしき問題もんだいかんがえるのに使つかわれる。

思考しこう実験じっけん概要がいよう

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あるしょう部屋へやなかに、漢字かんじ理解りかいできない英国えいこくじん以下いかAとする)をじこめておく。このしょう部屋へやには外部がいぶかみきれのやりとりをするためのちいさいあながひとついており、このあなとおしてAに1まいかみきれがれられる。そこにはAがたこともない文字もじならんでいる。これは漢字かんじならびなのだが、Aにしてみれば、それは「★△◎∇☆□」といった記号きごう羅列られつにしかえない。Aの仕事しごとはこの記号きごうれつたいして、あらたな記号きごうくわえてから、かみきれをそとかえすことである。どういう記号きごうれつに、どういう記号きごうくわえればいいのか、それは部屋へやなかにある1さつのマニュアルのなかすべかれている。たとえば

"「★△◎∇☆□」とかれた紙片しへんには「■@◎∇」とくわえてからそとせ"

などとかれている。

Aはこの作業さぎょうをただひたすらかえす。そとから記号きごう羅列られつされたかみきれをり(じつ部屋へやそとではこのかみきれを"質問しつもん"とんでいる)、それにあらたな記号きごうくわえてそとかえす(こちらのほうは"回答かいとう"とばれている)。すると、部屋へやそとにいる人間にんげんは「このしょう部屋へやなかには中国語ちゅうごくご理解りかいしているひとがいる」とかんがえる。しかしながら、しょう部屋へやなかにはAがいるだけである。Aはまった漢字かんじめず、作業さぎょう意味いみまった理解りかいしないまま、ただマニュアルどおりの作業さぎょうかえしているだけである。それでも部屋へや外部がいぶからると、中国ちゅうごくによる対話たいわ成立せいりつしている。

思考しこう実験じっけん意味いみ

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この思考しこう実験じっけん全体ぜんたいはコンピュータのアナロジーになっている。すなわちしょう部屋へや全体ぜんたいがコンピュータをあらわし、マニュアルにしたがって作業さぎょうする英国えいこくじんは、プログラムにしたがってうごCPU相当そうとうする。この思考しこう実験じっけんから帰結きけつする論点ろんてんは、基本きほんてき単一たんいつのものだが、分野ぶんやによってその表現ひょうげん若干じゃっかんことなる。ここでは中国語ちゅうごくご部屋へや思考しこう実験じっけんについてよく議論ぎろんされるみっつの分野ぶんやしん哲学てつがく言語げんご哲学てつがく人工じんこう知能ちのう哲学てつがくからの表現ひょうげんべる。

しん哲学てつがくからこの実験じっけんると、これは心身しんしん問題もんだいたいする立場たちばひとつ、機能きのう主義しゅぎたいする反論はんろん提示ていじしている。すなわち

意識いしき体験たいけん機能きのう付随ふずいしない。機能きのう主義しゅぎ間違まちがっている。

言語げんご哲学てつがく観点かんてんからの表現ひょうげんは、つぎのようになる。

統語とうごろん意味いみろんふくまない。

人工じんこう知能ちのう哲学てつがく観点かんてんから表現ひょうげんすると、つぎのようになる。

つよ人工じんこう知能ちのう製作せいさく不可能ふかのうである。

中国ちゅうごく部屋へやたいする反論はんろん

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サールはなかひと中国ちゅうごく理解りかいしていないことから対象たいしょう中国語ちゅうごくご理解りかいしているとはいえないとろんじているが、チューリング・テスト観点かんてんからすると、そう断定だんていするためにはなか人間にんげんだけでなく、はこ全体ぜんたい中国ちゅうごく理解りかいしていないことを証明しょうめいしなければならないことになる。すなわち、なかひととマニュアルをふくあわさせた存在そんざい中国ちゅうごく理解りかいしていないことを証明しょうめいしなければならない。つまり、サールはカテゴリー錯誤さくご誤謬ごびゅうおかしていると反論はんろんしている[2]:47

一方いっぽう知能ちのう基準きじゅんとなっている人間にんげん場合ばあいでさえ、のうない化学かがく物質ぶっしつ電気でんき信号しんごう完全かんぜん解析かいせきおこなわれず、知能ちのう仕組しくみがあきらかになっていないのだから、中国ちゅうごく部屋へやも、中身なかみがどうであれまさしく中国ちゅうごくのやりりができている時点じてん中国語ちゅうごくご理解りかいしていると判断はんだんしてよいのではという、チューリング・テスト観点かんてんからの反論はんろん存在そんざいする。以上いじょうのような反論はんろんたいしてサールは、中国ちゅうごく部屋へや体内たいないして、すなわち部屋へやなかにある中国ちゅうごくのマニュアルをなかひとがマスターし、中国ちゅうごくのネイティヴのように会話かいわができたとしても、なおそのひと意味いみろんてき見地けんちからは中国語ちゅうごくご理解りかいしていないと主張しゅちょうしている。このさい反論はんろんたいしては、たしかに純粋じゅんすい会話かいわ機械きかいには身体しんたいせいがないために意味いみろん理解りかいないが、ロボットのようなシステム総体そうたいとしても理解りかいできないというのは、やはりカテゴリー錯誤さくごであるという批判ひはんがある[2]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Searle, John. (1980). “Minds, Brains, and Programs.” Behavioral and Brain Sciences 3, 417-424. (オンライン・ペーパー)
  2. ^ a b 戸田とださん 和久わぐだい1しょう 意味いみ」『哲学てつがく入門にゅうもん筑摩書房ちくましょぼう〈ちくま新書しんしょ〉、2014ねん3がつISBN 978-4-480-06768-5OCLC 872214587https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784480067685 

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん文献ぶんけん

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日本語にほんごのオープンアクセス文献ぶんけん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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