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信教しんきょう自由じゆう

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信仰しんこう自由じゆうから転送てんそう
政治せいじイデオロギー > 自由じゆう主義しゅぎ > 信教しんきょう自由じゆう

信教しんきょう自由じゆう(しんきょうのじゆう)また宗教しゅうきょうてき寛容かんよう(しゅうきょうてきかんよう)とは、信仰しんこう自由じゆうなどから構成こうせいされる宗教しゅうきょうかんする人権じんけん信教しんきょう自由じゆう宗教しゅうきょう自由じゆう)とは、特定とくてい宗教しゅうきょうしんじる自由じゆうまたは一般いっぱん宗教しゅうきょうしんじない自由じゆうをいう[1]

西欧せいおうでは、教会きょうかい権力けんりょくからの自由じゆうもとめる帰結きけつとして確立かくりつされた[2]

世界せかい人権じんけん宣言せんげんおよ市民しみんてきおよ政治せいじてき権利けんりかんする国際こくさい規約きやくともだい18じょう日本国にっぽんこく憲法けんぽうにおいては20じょう規定きていされる。

経緯けいい[編集へんしゅう]

ヨーロッパ諸国しょこくでは、信教しんきょう自由じゆうカトリック教会きょうかいからの人間にんげん精神せいしん解放かいほうもとめるたたかいの結果けっかとして確立かくりつされた歴史れきしがあり、それは精神せいしんてき自由じゆうそのものの希求ききゅうとして、近代きんだい自由じゆうけん確立かくりつ原動力げんどうりょくとなった[2]。このような背景はいけいから、近代きんだい憲法けんぽう例外れいがいなく信教しんきょう自由じゆう保障ほしょうする規定きていんでいる[2]

信教しんきょう自由じゆう保障ほしょうした法典ほうてんれいとして以下いかのようなものがある。

  • ミラノみことのりれい
  • マグナ・カルタ
  • ワルシャワ連盟れんめい協約きょうやく
  • ルドルフ2せい勅書ちょくしょ
  • ギュルハネみことのりれい
  • アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽう
    • 修正しゅうせい条項じょうこうだいいちじょう 連邦れんぽう議会ぎかいは、国教こっきょう樹立じゅりつし、あるいは信教しんきょうじょう自由じゆう行為こうい禁止きんしする法律ほうりつ、または言論げんろんあるいは出版しゅっぱん自由じゆう制限せいげんし、または人民じんみん平穏へいおん集会しゅうかいし、また苦痛くつう救済きゅうさいもとめるため政府せいふ請願せいがんする権利けんりおか法律ほうりつ制定せいていしてはならない。
  • 世界せかい人権じんけん宣言せんげん
    • だい18じょう すべてじんは、思想しそうりょうこころおよ宗教しゅうきょう自由じゆうたいする権利けんりゆうする。この権利けんりは、宗教しゅうきょうまた信念しんねん変更へんこうする自由じゆうならびに単独たんどくまたもの共同きょうどうして、公的こうてきまた私的してきに、布教ふきょう行事ぎょうじ礼拝れいはいおよ儀式ぎしきによって宗教しゅうきょうまた信念しんねん表明ひょうめいする自由じゆうふくむ。
  • 市民しみんてきおよ政治せいじてき権利けんりかんする国際こくさい規約きやく
    • だい18じょう すべてのものは、思想しそうりょうこころおよ宗教しゅうきょう自由じゆうについての権利けんりゆうする。この権利けんりには、みずか選択せんたくする宗教しゅうきょうまた信念しんねんまたゆうする自由じゆうならびに、単独たんどくまたもの共同きょうどうしておよおおやけまた私的してきに、礼拝れいはい儀式ぎしき行事ぎょうじおよ教導きょうどうによってその宗教しゅうきょうまた信念しんねん表明ひょうめいする自由じゆうふくむ。

以上いじょうには人間にんげん市民しみん権利けんり宣言せんげんふくまれていない。公的こうてき秩序ちつじょ制限せいげんされるぶん保障ほしょうよわいため。フランス王国おうこくルイ16せいフォンテーヌブローのみことのりれいはいしているが、フランス革命かくめいかれ死刑しけいにされているため、宣言せんげん成立せいりつ経緯けいいには注意ちゅういようする。

内容ないよう[編集へんしゅう]

信教しんきょう自由じゆう具体ぐたいてきには以下いか内容ないよう構成こうせいされる。

信仰しんこう自由じゆう
個人こじん内心ないしんにおいて特定とくてい宗教しゅうきょうてき信仰しんこうをもち、あるいは、いかなる信仰しんこうももたない自由じゆうをいう[1]
この意味いみ信仰しんこう自由じゆう思想しそう良心りょうしん自由じゆう宗教しゅうきょうてき側面そくめんである[1]
宗教しゅうきょうてき行為こうい自由じゆう
礼拝れいはい祈祷きとうその宗教しゅうきょうじょう儀式ぎしき式典しきてんおこない、それに参加さんかする自由じゆう、また、それにまった参加さんかしない自由じゆうである[3]
宗教しゅうきょうじょう結社けっしゃ自由じゆう
宗教しゅうきょう団体だんたい結社けっしゃする権利けんり結社けっしゃ自由じゆう宗教しゅうきょうてき側面そくめんでの保障ほしょうとしてとらえられる[3]

日本にっぽん[編集へんしゅう]

大日本帝国だいにっぽんていこく憲法けんぽう[編集へんしゅう]

大日本帝国だいにっぽんていこく憲法けんぽうだい28じょう
日本にっぽん臣民しんみん安寧あんねい秩序ちつじょさまたげケス及臣民しんみんタルノ義務ぎむカサルげんニ於テ信教しんきょう自由じゆうゆう

大日本帝国だいにっぽんていこく憲法けんぽうについては28じょう規定きていがあり、しょ外国がいこく憲法けんぽうおなじく信教しんきょう自由じゆう保障ほしょうしていたが[4][5]明治めいじ憲法けんぽう権利けんり保障ほしょうは「法律ほうりつ範囲はんいないニ於テ」または「法律ほうりつていメタル場合ばあいじょがい」としてみとめ、最終さいしゅうてきに、権利けんり保障ほしょうかんする法律ほうりつ効力こうりょくつには、天皇てんのうによる裁可さいか必要ひつようとされた(法律ほうりつ留保りゅうほ[4]信教しんきょう自由じゆうについては自由じゆうけん規定きていとはことなり法律ほうりつ留保りゅうほさえなかった[6][5]。これについて「安寧あんねい秩序ちつじょさまたげケス及臣民しんみんタルノ義務ぎむカサルげん」において法律ほうりつをもってしても制限せいげんすることができないと解釈かいしゃくする学説がくせつもあったが[6]実際じっさいには「臣民しんみんタルノ義務ぎむ」にふくまれるものとして法律ほうりつによらなくても命令めいれいによって制限せいげんすることもできると理解りかいされていた[6][5]

また、明治めいじ憲法けんぽうでは、神社じんじゃ神道しんとうについては国民こくみん道徳どうとくてきなものをあわち、仏教ぶっきょうキリスト教きりすときょうなどとは本質ほんしつてきことなるものとされ、信教しんきょう自由じゆう保障ほしょうとは無関係むかんけいとされ、特別とくべつ地位ちいにあった[6]

明治めいじ憲法けんぽう信教しんきょう自由じゆうをめぐる事件じけんにはつぎのようなものがある。

教育きょういく勅語ちょくご不敬ふけい事件じけん
内村うちむら鑑三かんぞう教育きょういく勅語ちょくごたいする拝礼はいれい拒否きょひしたために問題もんだいとなり、だいいち高等こうとう中学校ちゅうがっこう教員きょういん辞職じしょく
上智大じょうちだいなま靖国神社やすくにじんじゃ参拝さんぱい拒否きょひ事件じけん
1932ねんクリスチャン上智大学じょうちだいがく学生がくせい靖国神社やすくにじんじゃ参拝さんぱい拒否きょひしたために問題もんだいとなった事件じけん軍部ぐんぶおそれた[7]上智大じょうちだいがわが、個人こじんてき信仰しんこう国民こくみんとしてのおおやけ義務ぎむべつであるむね文部省もんぶしょうもうれたため事態じたい沈静ちんせいしたが、これ以降いこうキリスト教徒きりすときょうと積極せっきょくてき戦争せんそう遂行すいこう神道しんとう奉賛ほうさん傾斜けいしゃしてゆく端緒たんしょとなった。
1935ねん大本おおもと事件じけん[8]

日本国にっぽんこく憲法けんぽう[編集へんしゅう]

日本国にっぽんこく憲法けんぽうにおいては、20じょう規定きていがある。

日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい20じょう
だい1こう
信教しんきょう自由じゆうは、何人なんにんたいしてもこれを保障ほしょうする。いかなる宗教しゅうきょう団体だんたいも、くにから特権とっけんけ、また政治せいじじょう権力けんりょく行使こうししてはならない。
だい2こう
何人なんにんも、宗教しゅうきょうじょう行為こうい祝典しゅくてん儀式ぎしきまた行事ぎょうじ参加さんかすることを強制きょうせいされない。
だい3こう
くにおよびその機関きかんは、宗教しゅうきょう教育きょういくそのいかなる宗教しゅうきょうてき活動かつどうもしてはならない。

なお日本国にっぽんこく憲法けんぽうでは、神道しんとう神社じんじゃ)も「宗教しゅうきょうひとつ」としてあつかわれている(宗教しゅうきょう法人ほうじんほうだい2じょう[6]

信教しんきょう自由じゆう保障ほしょう[編集へんしゅう]

だい1こう前段ぜんだんは「信教しんきょう自由じゆうは、何人なんにんたいしてもこれを保障ほしょうする。」と規定きていし、だい2こうで「何人なんにんも、宗教しゅうきょうじょう行為こうい祝典しゅくてん儀式ぎしきまた行事ぎょうじ参加さんかすることを強制きょうせいされない。」と規定きていしている。くに特定とくてい宗教しゅうきょう正統せいとうとして信仰しんこう強制きょうせい干渉かんしょうする行為こうい特定とくてい信仰しんこうゆうすることやゆうしないことを理由りゆう刑罰けいばつその不利益ふりえきくわえる行為こういひと信仰しんこう強制きょうせいてき告白こくはくさせたり宗教しゅうきょうてき意味いみ発言はつげん行為こうい強制きょうせいする行為こうい(かつての宗門しゅうもんあらためるい)は本条ほんじょう違反いはんする(宗教しゅうきょうにおける沈黙ちんもく自由じゆう[1]

なお、自衛じえいかん護国ごこく神社じんじゃ合祀ごうし事件じけんにおいて最高裁さいこうさいは「自己じこもしくはしたしいものについて、他人たにんから干渉かんしょうけない静謐せいひつなかで、宗教しゅうきょうじょう感情かんじょう思考しこうめぐらせ、行為こういをなす」という宗教しゅうきょうてき人格じんかくけんについて法的ほうてき利益りえきみとめることはできないと判示はんじしている(最大さいだいばん昭和しょうわ63・6・1みんしゅう42かん5ごう277ぺーじ[9][10][11]

信教しんきょう自由じゆう限界げんかい[編集へんしゅう]

信教しんきょう自由じゆうのうち内心ないしん信仰しんこうかんするものについては、思想しそう良心りょうしん自由じゆう日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい19じょう)とおなじく絶対ぜったいてき制約せいやくかいされている[12]内心ないしん信仰しんこうにおいて邪教じゃきょう真正しんせい宗教しゅうきょうかという判断はんだんについては、国民こくみんゆだねられるべきものであって、公権力こうけんりょく決定けっていすべきでないとほぐされている[12]

これにたいして、外部がいぶてき行為こういともなうものについては、信仰しんこう表明ひょうめいとしてなされた行為こういであっても他者たしゃ権利けんり利益りえきたいして現実げんじつてき具体ぐたいてき害悪がいあくおよぼす場合ばあいにまで絶対ぜったいてき保障ほしょうされるものではない[12]。ただ、宗教しゅうきょうてき行為こうい内心ないしん信仰しんこう密接みっせつ関連かんれんするものであるから慎重しんちょう配慮はいりょ必要ひつようとされ、信教しんきょう自由じゆうたいする制約せいやくについては、その性質せいしつじょう表現ひょうげん自由じゆう同様どうよう厳格げんかく基準きじゅん適用てきようされる[12]

信教しんきょう自由じゆうかんする判例はんれい[編集へんしゅう]

なお、政教せいきょう分離ぶんり原則げんそく関連かんれんする判例はんれいについては、政教せいきょう分離ぶんり原則げんそく項目こうもく参照さんしょう

加持かじ祈祷きとう事件じけん
精神せいしん障害しょうがいもの平癒へいゆ祈願きがんするために、宗教しゅうきょう行為こういとして加持かじ祈祷きとう行為こういがなされたが、それによって被害ひがいしゃ死亡しぼういたらしめた行為こういが、傷害しょうがい致死ちしざいわれた事件じけんで、最高裁さいこうさい憲法けんぽうだい20じょうだい1こう信教しんきょう自由じゆう保障ほしょう限界げんかい逸脱いつだつしたものというほかないとして、被告人ひこくにん上告じょうこく棄却ききゃくした(加持かじ祈祷きとう事件じけん最大さいだいばん昭和しょうわ38・5・15けいしゅうだい17かん4ごう302ぺーじ[13]
剣道けんどう履修りしゅう拒否きょひ事件じけん
最高裁さいこうさいは、信仰しんこうじょう理由りゆうにより剣道けんどう実技じつぎ履修りしゅう拒否きょひした神戸市立工業高等専門学校こうべしりつこうぎょうこうとうせんもんがっこう学生がくせいたいして、学校がっこうがわった原級げんきゅう留置りゅうち処分しょぶんおよ退学たいがく処分しょぶんについて、裁量さいりょうけん範囲はんいえる違法いほうなものであると判断はんだんした(神戸こうべだかせん剣道けんどう実技じつぎ拒否きょひ事件じけんさいはん平成へいせい8ねん3がつ8にちみんしゅう50かん3ごう469ぺーじ)。
輸血ゆけつ拒否きょひ事件じけん
最高裁さいこうさいは、 宗教しゅうきょうじょう信念しんねんから、いかなる場合ばあいにも輸血ゆけつけることは拒否きょひするとのかた意思いしゆうしているエホバの証人しょうにん患者かんじゃたいし、医師いしがほかに救命きゅうめい手段しゅだんがない事態じたいいたった場合ばあいには、輸血ゆけつするとの方針ほうしんっていることを説明せつめいしないまま、手術しゅじゅつ施行しこうして輸血ゆけつをした場合ばあいにおいて、医師いし不法ふほう行為こうい責任せきにんみとめた(エホバの証人しょうにん輸血ゆけつ拒否きょひ事件じけんさいはん平成へいせい12ねん2がつ29にちみんしゅう54かん2ごう582ぺーじ[14][15]
青春せいしゅんかえ裁判さいばん
平成へいせい13ねんがつ29にち札幌さっぽろ地方裁判所ちほうさいばんしょでいいわたされた統一とういつ協会きょうかいげん世界せかい平和へいわ統一とういつ家庭かてい連合れんごう)のもと信者しんじゃ原告げんこく20めい事件じけん青春せいしゅんかえ裁判さいばん)の判決はんけつでは、正体しょうたいかくした勧誘かんゆうとう内容ないようとする統一とういつ協会きょうかい伝道でんどう教化きょうか活動かつどうについて、目的もくてき結果けっか不当ふとうせい認定にんていしたうえで最終さいしゅうてきに「信仰しんこう自由じゆう財産ざいさんけんとう侵害しんがいするおそれ」のある行為こういであると認定にんていした[16]

オウム真理教おうむしんりきょう信教しんきょう自由じゆう[編集へんしゅう]

日本にっぽん警察けいさつは、オウム真理教おうむしんりきょう教団きょうだん施設しせつから脱走だっそうした信者しんじゃ拉致らちする事件じけん頻発ひんぱつし、東京とうきょう都内とないでも1991ねん平成へいせい3ねんあきごろから相次あいついでいたが、オウム真理教おうむしんりきょうは『信教しんきょう自由じゆう』をたて警察けいさつ追及ついきゅうまぬかれていた。もと警視庁けいしちょう捜査そうさかんは「本人ほんにん自由じゆう意思いし教団きょうだんもどった」と主張しゅちょうされると、警察官けいさつかんがらざるをなかったとがゆさをかたっている。1995ねん2がつ目黒めぐろ公証こうしょう役場やくば事務じむちょう監禁かんきん致死ちし事件じけんまで、オウム真理教おうむしんりきょう事件じけんかんする捜査そうさすすめられなかったため、「信教しんきょう自由じゆう」をたてに、同種どうしゅ事件じけんこる懸念けねん表明ひょうめいしている[17]

ジャーナリスト藤田ふじた庄市しょういちは、殺人さつじんを「ポア(救済きゅうさい殺人さつじん)」として正当せいとうする教義きょうぎをもつオウム真理教おうむしんりきょうや、先祖せんぞ因縁いんねんなどの宗教しゅうきょうてき脅迫きょうはく財産ざいさん奪取だっしゅする統一教会とういつきょうかいれいにあげ、「信教しんきょう自由じゆう」が「精神せいしん自由じゆう」を侵害しんがいする人権じんけん蹂躙じゅうりんは、従来じゅうらい宗教しゅうきょうかんわく呪縛じゅばくされていればえないと指摘してきした[18]

生命せいめい家族かぞく財産ざいさんなど人々ひとびと生存せいぞん自由じゆうおびやかす宗教しゅうきょう事件じけん現場げんばあるいてかんがえてきたのは、「なに根本こんぽんてき問題もんだいなのか」ということである。現代げんだい日本にっぽんという社会しゃかいてき歴史れきしてき条件じょうけん捨象しゃしょうし、抽象ちゅうしょうしてしまえば、出家しゅっけ献身けんしん高額こうがくのお布施ふせ献金けんきんも、すべて崇高すうこう宗教しゅうきょう行為こういとしてかたることは可能かのうである。殺人さつじんですら「正当せいとう」できる論理ろんり存在そんざいする。

中略ちゅうりゃく

政教せいきょう分離ぶんり一体いったい信教しんきょう自由じゆうや、権力けんりょく干渉かんしょうたいする思想しそう信条しんじょう自由じゆう問題もんだいならば裁判所さいばんしょ理解りかいしやすかったであろう。しかし、筆者ひっしゃりゅうえば、「精神せいしん自由じゆう」にたいする侵害しんがいは、従来じゅうらい宗教しゅうきょうかんわく呪縛じゅばくされていれば、それこそ「カルト」に内在ないざいする人権じんけん蹂躙じゅうりんえないのである。宗教しゅうきょう事件じけんそこには、信教しんきょう自由じゆう精神せいしん自由じゆう問題もんだいよこたわっている。自由じゆう範囲はんい拡大かくだいする問題もんだいなのである。 — 藤田ふじた庄市しょういち「オウム、統一教会とういつきょうかい……「信教しんきょう自由じゆう」にうばわれた自由じゆう」より[18]

フランス[編集へんしゅう]

フランスは、いくらかの宗教しゅうきょう団体だんたいをセクトと指定していし、監視かんしおこなっている (政府せいふ文書ぶんしょによってセクトと分類ぶんるいされた団体だんたい一覧いちらん#フランス)。

欧州おうしゅうでイスラーム過激かげきによるテロがつづなか、2016ねん、フランス当局とうきょくは、イスラーム過激かげき伝道でんどうおこなっているとられる一部いちぶのモスクを強制きょうせいてき閉鎖へいさした[19]。また、フランス当局とうきょくは、「世俗せぞくてき原則げんそくのための厳密げんみつ配慮はいりょ」のうえで、モスクの資金しきん透明とうめいせい確保かくほすることにんでいる[19]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく[編集へんしゅう]

イングランド国教こっきょうかい反発はんぱつするピューリタン革命かくめいとその王政おうせい復古ふっこ名誉めいよ革命かくめいなどのイングランド混乱こんらんのなか、ニューイングランド植民しょくみんへ、様々さまざま宗派しゅうはのピューリタンが多数たすう移住いじゅうした。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく独立どくりつによって、1791ねん権利けんり章典しょうてん合衆国がっしゅうこく憲法けんぽう修正しゅうせいだい1じょう)では国教こっきょう禁止きんしされ、宗教しゅうきょう自由じゆう明記めいきされた[20]

1998ねん以降いこうは、アメリカ国際こくさい宗教しゅうきょう自由じゆう委員いいんかい他国たこく信教しんきょう自由じゆうについて調査ちょうさし、侵害しんがい度合どあいを判別はんべつして報告ほうこくしょりまとめている。2019ねんまでに中国ちゅうごくミャンマー北朝鮮きたちょうせんイランサウジアラビアウズベキスタントルクメニスタンタジキスタンエリトリアを「とく懸念けねんされるくに」に指定していしたほか[21]、2020ねんにはナイジェリアパキスタン追加ついか指定していしている[22]

政教せいきょう分離ぶんり原則げんそく Separation of Church and State[編集へんしゅう]

国家こっか宗教しゅうきょうむすびつくとき、個々人ここじん信教しんきょう自由じゆうたいする間接かんせつてき圧迫あっぱくしょうじたり、宗教しゅうきょう世俗せぞく権力けんりょく癒着ゆちゃくすることで宗教しゅうきょうてき純粋じゅんすいさをうしなって堕落だらくしたり、国家こっか宗教しゅうきょうてきはげしい対立たいりつまれてきたという歴史れきしがあることから、国家こっか宗教しゅうきょうせいないし国家こっか宗教しゅうきょうとの分離ぶんり要請ようせいされるようになった[23]。しかし、分離ぶんり度合どあいはまちまちであり、フランスのように完全かんぜん分離ぶんり立場たちばをとる国々くにぐにもあれば、イギリスやデンマーク、コスタリカのように国教こっきょう制度せいどをとりつつ国教こっきょう以外いがい宗教しゅうきょうたいして広汎こうはん宗教しゅうきょうてき寛容かんようみとめることで信教しんきょう自由じゆうはかろうとするくにもある[23]

日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい20じょうだい1こう後段こうだんで「いかなる宗教しゅうきょう団体だんたいも、くにから特権とっけんけ、また政治せいじじょう権力けんりょく行使こうししてはならない。」として特権とっけん付与ふよ禁止きんし宗教しゅうきょう団体だんたい政治せいじてき権力けんりょく行使こうし禁止きんしさだめている[24]。また、だい3こう後段こうだんで「くにおよびその機関きかんは、宗教しゅうきょう教育きょういくそのいかなる宗教しゅうきょうてき活動かつどうもしてはならない。」としこく宗教しゅうきょうてき活動かつどう禁止きんし規定きていしている[25]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d 樋口ひぐち et al. 1994, p. 388.
  2. ^ a b c 樋口ひぐち et al. 1994, p. 386.
  3. ^ a b 樋口ひぐち et al. 1994, p. 389.
  4. ^ a b 阿部あべ 1975, p. 139.
  5. ^ a b c 樋口ひぐち et al. 1994, p. 387.
  6. ^ a b c d e 阿部あべ 1975, p. 140.
  7. ^ 靖国神社やすくにじんじゃ参拝さんぱい拒否きょひ対抗たいこうして学校がっこう教練きょうれん配属はいぞくされていた将校しょうこう陸軍りくぐん上智大学じょうちだいがくからげようとした。宇垣うがき軍縮ぐんしゅく以降いこう学校がっこうでは学校がっこう教練きょうれんおこなわれていたが、この学校がっこう教練きょうれん履修りしゅうすると兵役へいえきが10ヶ月かげつ短縮たんしゅくされるという特典とくてんがあった。そのため私立しりつ学校がっこうでは任意にんいであった学校がっこう教練きょうれん学生がくせい獲得かくとく目的もくてき積極せっきょくてきれていた。将校しょうこうげによって学校がっこう教練きょうれん廃止はいしされることは学生がくせいすう確保かくほめんからも問題もんだいとなった。
  8. ^ 中島なかじま三千男みちお「「大日本帝国だいにっぽんていこく憲法けんぽうだい28じょう信仰しんこう自由じゆう規定きてい成立せいりつ過程かてい奈良大学ならだいがく紀要きよう(6),p.127-140,1977.12.
  9. ^ みんしゅう』42かん5ごう 277ぺーじ
  10. ^ 判例はんれい時報じほう』1277ごう 34ぺーじ
  11. ^ 判例はんれいタイムズ』669ごう 66ぺーじ
  12. ^ a b c d 樋口ひぐち et al. 1994, p. 391.
  13. ^ 樋口ひぐち et al. 1994, p. 392.
  14. ^ 判例はんれい時報じほう』1629ごう 34ぺーじ
  15. ^ 判例はんれいタイムズ』965ごう 83ぺーじ
  16. ^ さとせい. “正体しょうたいかくした伝道でんどう活動かつどう偽装ぎそう勧誘かんゆう─の違法いほうせいについて”. 消費しょうひしゃほうニュース. 2022ねん8がつ20日はつか閲覧えつらん
  17. ^ “オウム死刑しけい執行しっこう 「信教しんきょう自由じゆう」を捜査そうさはばたてに もと捜査そうさいん同種どうしゅ事件じけん懸念けねん. 産経新聞さんけいしんぶん. https://www.sankei.com/article/20180726-J3JW4L46HZKRZGPFHTR3ZUMZPI/ 2018ねん7がつ26にち閲覧えつらん 
  18. ^ a b 藤田ふじた庄市しょういち「オウム、統一教会とういつきょうかい……「信教しんきょう自由じゆう」にうばわれた自由じゆう」『中央公論ちゅうおうこうろん』2012ねん5がつごう
  19. ^ a b “France has 'shut 20 radical Islam-preaching mosques'” (英語えいご). TheJournal.ie. (2016ねん8がつ1にち). http://www.thejournal.ie/france-has-shut-20-mosques-2905469-Aug2016/ 2016ねん8がつ8にち閲覧えつらん 
  20. ^ 新田にった, 浩司こうじ政教せいきょう分離ぶんり市民しみん宗教しゅうきょうについての法学ほうがくてき考察こうさつ」(PDF)『地域ちいき政策せいさく研究けんきゅうだい14かん2・3合併がっぺいごう高崎経済大学たかさきけいざいだいがく地域ちいき政策せいさく学会がっかい、2012ねん1がつ、21 - 35ぺーじ 
  21. ^ 信教しんきょう自由じゆう」の抑圧よくあつ世界せかい規模きぼつよまる”. クリスチャン・トゥデイ (2016ねん5がつ9にち). 2021ねん1がつ3にち閲覧えつらん
  22. ^ イスラム教徒きょうと破壊はかいしたヒンズひんずきょう寺院じいん公費こうひ再建さいけんへ パキスタン”. AFP (2021ねん1がつ2にち). 2021ねん1がつ3にち閲覧えつらん
  23. ^ a b 樋口ひぐち et al. 1994, p. 395.
  24. ^ 樋口ひぐち et al. 1994, pp. 395, 397.
  25. ^ 樋口ひぐち et al. 1994, p. 397.

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • ウィリアム・ウッダード 『天皇てんのう神道しんとう GHQの宗教しゅうきょう政策せいさく』 サイマル出版しゅっぱんかい(1988ねん原作げんさく英語えいごばんは1972ねん
  • マーサ・ヌスバウム良心りょうしん自由じゆう アメリカの宗教しゅうきょうてき平等びょうどう伝統でんとう慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく出版しゅっぱんかい(2011ねん
  • 樋口ひぐち, 陽一よういち佐藤さとう, 幸治こうじ中村なかむら, 睦男むつお浦部うらべ, ほう注解ちゅうかい法律ほうりつがく全集ぜんしゅう(1)憲法けんぽうI』あおりん書院しょいん、1994ねんISBN 4-417-00936-8 
  • 阿部あべあきらへん憲法けんぽう 2 基本きほんてき人権じんけん(1)』有斐閣ゆうひかく有斐閣ゆうひかく双書そうしょ〉、1975ねん、139ぺーじ 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]