品質ひんしつ工学こうがく

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品質ひんしつ工学こうがく(ひんしつこうがく、えい: quality engineering)とは、技術ぎじゅつ開発かいはつしん製品せいひん開発かいはつ効率こうりつてきおこな開発かいはつ技法ぎほう考案こうあんしゃ田口たぐちげんいちかんしてタグチメソッドともばれる(TMとりゃくされる)。とく海外かいがいではこちらのかた一般いっぱんてきである。

ねら[編集へんしゅう]

事業じぎょう経営けいえいなか技術ぎじゅつ戦略せんりゃく重要じゅうようせいはますますたかまるばかりであるが、モノづくりの世界せかい相変あいかわらず従来じゅうらい科学かがくてき思考しこう統計とうけいてきかんがかたのパラダイムにかっていて、開発かいはつ効率こうりつ停滞ていたいしており、そのうえ社会しゃかいてきトラブルが頻発ひんぱつして後手ごて管理かんり再発さいはつ防止ぼうしがた生産せいさん活動かつどう(もぐらはたき)がおこなわれているのが現状げんじょうである。

品質ひんしつ工学こうがく欧米おうべいではタグチメソッド[1]ばれ、創始そうししゃ田口たぐちげんいちである。

品質ひんしつ工学こうがく本質ほんしつてきかんがかたは「社会しゃかいてき損失そんしつ最小さいしょう」「個人こじん自由じゆう拡大かくだい」など頭脳ずのう労働ろうどう生産せいさんせい改革かいかくかんがえることがねらいである。このことを「技術ぎじゅつ戦略せんりゃく」とかんがえている。モノづくりは企業きぎょうがわ理屈りくつではなく、顧客こきゃくがわ理屈りくつかんがえて企業きぎょう利益りえき顧客こきゃくがわ損失そんしつとがバランスするような経営けいえいをすることをねらっている。

田口たぐちげんいちは「品質ひんしつ工学こうがく目的もくてき社会しゃかいてき生産せいさんせいげること。しかも頭脳ずのう労働ろうどう生産せいさんせい大切たいせつだということだ。企業きぎょうでもR&Dでしん産業さんぎょうつく研究けんきゅうをすれば、失業しつぎょうしゃ吸収きゅうしゅうできるし、開発かいはつ段階だんかい機能きのうせい評価ひょうかをやって無駄むだ労働ろうどう時間じかん短縮たんしゅくすれば、2にちやすみを3にちか4にちにすることだってできる。そのやすみを旅行りょこうやスポーツなどの趣味しゅみやレジャーに使つかえばくに全体ぜんたいうるおうことになる」とかたっている。

構成こうせいする分野ぶんや[編集へんしゅう]

おもに3つの分野ぶんや構成こうせいされる。

  1. 開発かいはつ設計せっけい段階だんかい、つまり生産せいさんはいまえのオフラインでの品質ひんしつ工学こうがく(パラメータ設計せっけい損失そんしつ関数かんすう)
  2. 生産せいさん段階だんかい、つまり生産せいさんのオンラインでの品質ひんしつ工学こうがく損失そんしつ関数かんすう)
  3. MTほう(マハラノビス・タグチ)ほう

オフライン(開発かいはつ設計せっけい)における品質ひんしつ工学こうがく[編集へんしゅう]

パラメータ設計せっけい[編集へんしゅう]

パラメータ設計せっけいはいまえ重要じゅうようなことは、時代じだい潮流ちょうりゅうかんがえて、技術ぎじゅつテーマを選択せんたくするのは技術ぎじゅつ責任せきにんしゃ役割やくわりであり責任せきにんである。技術ぎじゅつ開発かいはつテーマがまったら、技術ぎじゅつしゃ顧客こきゃく立場たちばって「システム選択せんたく」することになるが、顧客こきゃくしい機能きのうかんがえて、理想りそう機能きのう満足まんぞくするシステムをたくさん考案こうあんすることが大切たいせつである。考案こうあんしたシステムのしを判断はんだんするのが「機能きのうせい評価ひょうか」である。機能きのうせい評価ひょうかはシステムとは関係かんけいなく、顧客こきゃく使つか立場たちば信号しんごうとノイズをかんがえてSN評価ひょうかすることが大切たいせつである。

そので、パラメータ設計せっけい厳密げんみつにはロバスト設計せっけいというほう適切てきせつである)をおこなうのであるが、品質ひんしつ工学こうがくでは「品質ひんしつしければ、品質ひんしつはかるな。機能きのうせい評価ひょうかせよ」とうことが合言葉あいことばになっていて、品質ひんしつ問題もんだい解決かいけつする場合ばあいには、品質ひんしつ特性とくせいなどのスカラーりょう使つかわずに、理想りそう機能きのう)を特性とくせいかんがえてパラメータ設計せっけいおこなう。 パラメータ設計せっけい手順てじゅん以下いかとおりである。

  1. テーマの分析ぶんせき
  2. 目的もくてき機能きのう明確めいかく
  3. 理想りそう機能きのう定義ていぎ
  4. 計測けいそく特性とくせいなにか(信号しんごう因子いんしとノイズの選択せんたく
  5. SN感度かんどもとめる
  6. 制御せいぎょ因子いんしめる
  7. 直交ちょっこうひょう制御せいぎょ因子いんしけて、信号しんごうやノイズとの直積ちょくせき実験じっけんおこな
  8. データ解析かいせきおこな
  9. 要因よういん効果こうか作成さくせいして最適さいてき条件じょうけん現行げんこう条件じょうけんやベンチマーク条件じょうけんもとめる
  10. 確認かくにん実験じっけん最適さいてき現行げんこう利得りとく再現さいげんせいをチェックする
  11. 再現さいげんせいわる場合ばあい特性とくせいやノイズや制御せいぎょ因子いんし見直みなおしをおこな

許容きょよう設計せっけい[編集へんしゅう]

パラメータ設計せっけいていコストの部品ぶひん使つかって、SN機能きのうせい改善かいぜんおこなうが、品質ひんしつ改善かいぜん目的もくてきはコスト改善かいぜんであるから、品質ひんしつとコストのバランスをかんがえることが大切たいせつでマネジメントの問題もんだいである。

そこで、パラメータ設計せっけいでSNを6dBでしべる改善かいぜんできれば、市場いちばばらつきが1/4になるのだから、1/4のていコスト部品ぶひん使つかっても目的もくてき機能きのうわらないことになる。この場合ばあい、3dBでしべる品質ひんしつ改善かいぜんに、のこりの3dBでしべるをコスト改善かいぜんまわせば、2ばい品質ひんしつ半分はんぶんのコストが達成たっせいできるのである。

許容きょよう設計せっけいは「品質ひんしつ改善かいぜん成果せいかをコスト改善かいぜん還元かんげんできる手法しゅほう」なのである。

ここではじめて「損失そんしつ関数かんすう」が必要ひつようになるのである。損失そんしつ関数かんすうは「目標もくひょうからのばらつき」に比例ひれいするもので、目標もくひょう調整ちょうせいしたのちのSNしんすう逆数ぎゃくすう比例ひれいする。すなわち、(えん) = (1/SN)であらわされ、機能きのう限界げんかい機能きのう限界げんかいえたときの損失そんしつ市場いちばたときの品質ひんしつ損失そんしつあらわす。

  1. 部品ぶひんひん許容きょよう設計せっけい
  2. 直交ちょっこう多項式たこうしき使つかった応答おうとう解析かいせきによる許容きょよう設計せっけい

最近さいきん社会しゃかいてきトラブルに関係かんけいする「安全あんぜん設計せっけい」にこのかんがかた適用てきようできる。品質ひんしつ工学こうがくにおける安全あんぜん設計せっけいとは、「信頼しんらいせいたよるのでなく、事故じこきたときに被害ひがい最小さいしょうにする設計せっけいである」。たとえば、航空機こうくうき事故じこ場合ばあい航空機こうくうきちたとき人命じんめいを2おくえんかんがえて、損害そんがい見合みあうような安全あんぜん装置そうち設置せっちするなどである。照明しょうめい器具きぐ落下らっかした場合ばあい人間にんげんあたまうえまって直接ちょくせつ危害きがいくわえない安全あんぜん装置そうちもうけるなどである。

許容きょよう決定けってい[編集へんしゅう]

許容きょよう設計せっけいでは、部品ぶひんコストと品質ひんしつコストがバランスし、両者りょうしゃ最小さいしょうになるように許容きょようめることである。したがって、「コストがまらないと許容きょようめられない」ことになる。ぎゃくえば部品ぶひんまれば品質ひんしつ良否りょうひ判定はんていする許容きょよう決定けっていする。 許容きょよう下記かきのように損失そんしつ関数かんすうからめる。

 

 :部品ぶひんコストやえたときの廃棄はいき費用ひよう

 :機能きのう限界げんかいえたときの社会しゃかいてき損失そんしつ(えん)

 :機能きのう限界げんかい消費しょうひしゃ許容きょよう限界げんかい

生産せいさんしゃしゃ場合ばあいは、生産せいさんしゃ許容きょようしゃ機能きのう限界げんかいしゃ機能きのう限界げんかいえたときの損失そんしつからうえしきめる。

安全あんぜんりつ うえしきから、

あらわされる。

もち特性とくせいもちしょう特性とくせい安全あんぜんりつであるがもちだい特性とくせい安全あんぜんりつ

あらわされる。

ひん許容きょようめるときには、機能きのう限界げんかいから出力しゅつりょく特性とくせい許容きょようもとめ、直交ちょっこう多項式たこうしき

安全あんぜんりつ 

出力しゅつりょく特性とくせい許容きょよう 

A部品ぶひん許容きょよう 

B部品ぶひん許容きょよう 

オンライン(製造せいぞう)における品質ひんしつ工学こうがく[編集へんしゅう]

「メーカーがわ製造せいぞうしゃ)の損失そんしつ」と「ユーザーがわ顧客こきゃく)の損失そんしつ」のをバランスちいさくすることが、品質ひんしつ工学こうがく目的もくてきである。「ユーザーがわ顧客こきゃく)の損失そんしつ」のなか機能きのうのばらつきをちいさくする手法しゅほうとしてパラメータ設計せっけいがある。

「メーカーがわ製造せいぞうしゃ)の損失そんしつ」いわゆる、生産せいさんコストは、

 生産せいさんじょうのコスト=材料ざいりょう+加工かこう+管理かんり+公害こうがいとう損失そんしつ

となる。

このうち材料ざいりょう加工かこう公害こうがいとう損失そんしつは、おも設計せっけい段階だんかいまるが、管理かんりは、生産せいさん部門ぶもんあたえられた工程こうてい規格きかくどおりの製品せいひん出荷しゅっかするための管理かんり品質ひんしつ管理かんりで、管理かんり依存いぞんする。工程こうてい状態じょうたい高水準こうすいじゅん維持いじしたり、装置そうち故障こしょうするまえ予防よぼう措置そちをとらねばならないが、その対策たいさく過剰かじょう品質ひんしつになれば、いずれは、価格かかくかえ競争きょうそうりょくうしなうことになる。したがって、経済けいざいせい勘案かんあんした工程こうてい管理かんりのありかた重要じゅうようになる。この分野ぶんやをオンライン(製造せいぞう)における品質ひんしつ工学こうがくうが、許容きょよう決定けっていさい前提ぜんていにあることはうまでもい。

オンライン品質ひんしつ工学こうがくは、製造せいぞう工程こうていにおいて一番いちばんすくない経費けいひ一番いちばん品質ひんしつにするための仕事しごとのやりかたであるが、具体ぐたいてき方法ほうほうろんには下記かきのようなものがある。

  1. フィードバック制御せいぎょつくった製品せいひん特性とくせい調しらべ、目標もくひょうとある程度ていど以上いじょうがあるとき工程こうてい正常せいじょうもどすフィードバック制御せいぎょ管理かんり理論りろん
  2. 工程こうてい診断しんだん調節ちょうせつ合格ごうかく合格ごうかく判定はんていしかできない場合ばあい工程こうてい設計せっけい理論りろんれい)ビンの製造せいぞう工程こうてい、アルミダイキャスト製造せいぞう工程こうてい
  3. 工程こうてい連結れんけつのシステム設計せっけい一連いちれん加工かこう工程こうてい連結れんけつする場合ばあい稼働かどうりつ在庫ざいこ費用ひよう考慮こうりょした最適さいてき連結れんけつ方式ほうしきもとめる方法ほうほう
  4. フィードフォワード制御せいぎょ(適応てきおう制御せいぎょ): 部品ぶひん中間なかま製品せいひん特性とくせい調しらべ、相手あいて部品ぶひんえらんだり、工程こうてい条件じょうけんえて製品せいひん目標もくひょうどおりにつく適応てきおう制御せいぎょ方式ほうしき設計せっけい理論りろん
  5. 検査けんさ設計せっけい検査けんさ方法ほうほうまっているとき工程こうてい品質ひんしつ水準すいじゅんとその工程こうていでの不良ふりょうりつ調しらべ、検査けんさするかしないかを決定けっていする方法ほうほう
  6. 予防よぼう保全ほぜん方式ほうしき設計せっけい出荷しゅっかした製品せいひん機能きのうしなかったり、生産せいさん機械きかい故障こしょうしてまってしまう場合ばあい予防よぼう保全ほぜん設計せっけい方式ほうしき
  7. 安全あんぜんシステムの設計せっけい保全ほぜん故障こしょう表示ひょうじ設置せっちされていても、故障こしょう表示ひょうじ装置そうち自体じたい異常いじょう人間にんげんがチェックしなければならない.この場合ばあい点検てんけん方式ほうしき理論りろん

MTほう(MTシステム)[編集へんしゅう]

MTえい: Mahalanobis Taguchiほうというあたらしい多次元たじげん情報じょうほうデータによる予測よそく診断しんだん分析ぶんせきほう提案ていあんされ、実用じつようれい多数たすう企業きぎょうから報告ほうこくされている。だいいち産業さんぎょう革命かくめいは、加工かこう運搬うんぱんなどの肉体にくたい労働ろうどう機械きかいすることで、重労働じゅうろうどう作業さぎょうから人間にんげん解放かいほうしたのみでなく、生産せいさんせい向上こうじょう生活せいかつ水準すいじゅんゆたかにした(現在げんざいはMahalanobisの距離きょり使つかっていない手法しゅほう普及ふきゅうし、そのなかでTほう主力しゅりょくとなるとおもわれるが、MTシステムの名前なまえはそのまま使つかわれている)。

米国べいこくでは、農業のうぎょう生産せいさんせい向上こうじょうし、現在げんざいでは2%以下いか農業のうぎょう人口じんこうで、米国べいこくぜん人口じんこうの2ばい人々ひとびとたいして十分じゅうぶん農産物のうさんぶつ供給きょうきゅうできるようになったという。

それらの改善かいぜんは、農作業のうさぎょう農産物のうさんぶつ運搬うんぱん貯蔵ちょぞう必要ひつよう作業さぎょう機械きかいによる生産せいさんせい建国けんこく当時とうじの100ばいになったが、現在げんざい人間にんげんによる作業さぎょうのこされている。

とく乳幼児にゅうようじ高齢こうれいしゃ世話せわおおくの人手ひとで必要ひつようにしている。それらの作業さぎょう機械きかいするには漫画まんがてくるようなロボットの開発かいはつ必要ひつようである。人間にんげん動物どうぶつ能力のうりょくでコンピュータがっていない能力のうりょくの1つが「パターン認識にんしき能力のうりょく」である。

パターン認識にんしきは、ひろくは言語げんご理解りかい能力のうりょくであるが、品質ひんしつ工学こうがくのMTほうでは蓄積ちくせきされたデータベースからの判断はんだん問題もんだい診断しんだん予測よそく)のみをげる。

当初とうしょ提案ていあんされたのはMT(Mahalanobis Taguchi)ほうであったがその各種かくしゅ提案ていあんされている。MTほうというとこの最初さいしょ提案ていあんされたMTほうしたり、この提案ていあんされたすべての手法しゅほう場合ばあいの2とおりがある。MTシステムとった場合ばあい手法しゅほう全体ぜんたいのことをすことがおおい(ただし、MTSという略号りゃくごうはTSほう初期しょきであることもあり、ふる文献ぶんけん参照さんしょうする場合ばあい注意ちゅういすること)

戦略せんりゃくとしての品質ひんしつ工学こうがく欧米おうべいではタグチメソッド(Taguchi methodsとかTaguchi quality engineering)とばれている。

タグチメソッドは、予測よそく精度せいど機能きのうせい評価ひょうかによるSN信号しんごうたい雑音ざつおん)をもちいる方法ほうほうである。SN判断はんだんあやまりのおおきさを結果けっか評価ひょうかする方法ほうほうで、関数かんすう空間くうかん関係かんけいのみならず、多次元たじげん空間くうかん関係かんけいにも応用おうようできるのである。

多次元たじげん空間くうかんには様々さまざまとき系列けいれつのデータもはいるので、ここにしめ方法ほうほう工学こうがくのみならず医学いがく経営けいえいがく社会しゃかいがく自然しぜん現象げんしょう地震じしん天候てんこうなど)の分野ぶんやにも利用りようできるが、データベースは個々ここ分野ぶんや専門せんもん仕事しごとでタグチメソッドではない。

商品しょうひん技術ぎじゅつ分野ぶんやでパラメータ設計せっけいおこなうときにも制御せいぎょ因子いんしえらぶのは専門せんもん仕事しごとであって、システムの良否りょうひ判断はんだんすることがタグチメソッドの機能きのうせい評価ひょうかであるとおなじことである。

MTほうでは判断はんだんする場合ばあい、データベースとして、単位たんい空間くうかんめて異常いじょう空間くうかんおおきさを予測よそくするのであるが、単位たんい空間くうかんはあくまでも均一きんいつ空間くうかんであるから正常せいじょう空間くうかん普通ふつう空間くうかんかんがえる。

MTシステムには、MTほう、MTAほう、MTSほう、TSほう、Tほうなどが用意よういされている。

MTシステムのMはマハラノビスMahalanobisのMで、Tは田口たぐち頭文字かしらもじあらわし、マハラノビスの考案こうあんしたマハラノビスの距離きょりを、田口たぐちによって拡張かくちょうされた概念がいねんである。

MTほう[編集へんしゅう]

MTほうはマハラノビスの距離きょりもちいてぎゃく行列ぎょうれつ利用りようした方法ほうほう単位たんい空間くうかんもとめた観測かんそく対象たいしょう平均へいきんが1になることが特徴とくちょうである。ぎゃく行列ぎょうれつ計算けいさん精度せいど維持いじできる程度ていど項目こうもくあいだ多重たじゅうどもせんせいがなく(ぎゃく行列ぎょうれつ計算けいさん精度せいど影響えいきょうする)、でない場合ばあい使用しようできる。

MTAほう[編集へんしゅう]

MTシステムの1つであるが、ぎゃく行列ぎょうれつ利用りようした場合ばあい相関そうかん係数けいすうが1の場合ばあい相関そうかんつよくなって精度せいどがる場合ばあいには、解析かいせきができないなど不具合ふぐあい発生はっせいする。これは多重たじゅうどもせんせいばれる問題もんだいである。これをぎゃく行列ぎょうれつわりに因子いんし行列ぎょうれつもちいて一部いちぶ解決かいけつしたのがMTAほうである。この方法ほうほうもとめた距離きょりもMTほうことなるが、多重たじゅうどもせんせい発生はっせいしていなければ、MTほう完全かんぜん相関そうかん距離きょり定数ていすうばいされるだけである。またMTAの拡張かくちょう方法ほうほう永田ながた早稲田大学わせだだいがく)より提案ていあんされている。

TSほう[編集へんしゅう]

シュミットの直交ちょっこう展開てんかい利用りようした方法ほうほうであるが、この方法ほうほう単位たんい空間くうかん中央ちゅうおうにある場合ばあい予測よそく対象たいしょうただしまけ符号ふごう付与ふよすることが可能かのうである。解析かいせきたっては信号しんごうしんかくからしさが重要じゅうようで、計測けいそく対象たいしょう距離きょりとは計測けいそく対象たいしょうしん直接ちょくせつ推定すいてい予測よそくすることができる。したがって信号しんごうしん信頼しんらいによって結果けっかわる可能かのうせいがあることが指摘してきされている。

Tほう[編集へんしゅう]

TSほうおなじように予測よそく対象たいしょうただしまけ符号ふごうかんがえられる場合ばあい下記かきの3つの方法ほうほう用意よういされている。

  • Tほう(1):両側りょうがわTほうあらわされる場合ばあい。パターンによる推定すいていほう結果けっか中央ちゅうおう付近ふきんのメンバーを単位たんい空間くうかんにとる。経営けいえい利益りえき株価かぶか降雨こううりょうなどは変化へんか安定あんていしているときのデータが単位たんい空間くうかん正負せいふのどちらのデータも予測よそくしたい場合ばあいもちいる。
  • Tほう(2):片側かたがわTほうあらわされる場合ばあいでパターン距離きょりもちいる方法ほうほうで、はし単位たんい空間くうかんをとり、異常いじょう診断しんだん予測よそくもちいる。歩留ぶどまりは100%が単位たんい空間くうかんで、地震じしん予測よそくでは震度しんど1未満みまん単位たんい空間くうかんでそれからの距離きょり予測よそくしたい場合ばあい使用しようする。

どちらもしんがある場合ばあいもちいる。

しんがある場合ばあいしん単位たんい空間くうかんかく項目こうもくのSN感度かんど計算けいさんして、かく項目こうもくおもけしてしんMを推定すいていする。

  • Tほう(3)RTほう信号しんごうしんがない場合ばあい文字もじ認識にんしき場合ばあい、「ちがう」ということはかるが、どの程度ていどちがう」のかからない。火災かさい場合ばあいでも、ぼやや火事かじだい火事かじなどしんからないので、項目こうもくごとにメンバー(データ)をもとめて、データごとのSN感度かんどもとめて、両者りょうしゃからMTAほう使つかって単位たんい空間くうかん距離きょりもとめる。単位たんい空間くうかん単位たんい空間くうかんぞくさないメンバーの比較ひかくする。

Tほう(1)(2)では項目こうもくたいしてデータすうはいくらでもよく、でもよい。

項目こうもく診断しんだんながれ】

  1. 単位たんい空間くうかんデータ、信号しんごうデータを用意よういして、信号しんごうデータの距離きょり推定すいていする。
  2. 信号しんごうデータを異常いじょう種類しゅるいべつ分類ぶんるいする
  3. 分類ぶんるいした信号しんごうデータ(異常いじょう種類しゅるいべつに、距離きょり特性とくせいとして2水準すいじゅん直交ちょっこうひょう利用りようして要因よういん効果こうか作成さくせいする。
  4. 診断しんだんしたい未知みちデータの距離きょり特性とくせいとして、2水準すいじゅん直交ちょっこうひょう利用りようした要因よういん効果こうか作成さくせいする。
  5. 未知みちデータの要因よういん効果こうかと、すで分類ぶんるいしてある信号しんごうデータの要因よういん効果こうか比較ひかくして、おな異常いじょうのパターンをさがす。

その[編集へんしゅう]

標準ひょうじゅんSN[編集へんしゅう]

現在げんざいのパラメータ設計せっけいでは、市場いちば調査ちょうさとうで、しばしば目的もくてき機能きのう対象たいしょうにする場合ばあいがある。たとえば、市場いちば調査ちょうさ結果けっか、スイッチの場合ばあい、クリックかんなどが評価ひょうかされる。その目的もくてき機能きのう距離きょりあつ関係かんけい波状はじょう曲線きょくせん形状けいじょうとなる。

このような曲線きょくせん場合ばあいは、変数へんすう変換へんかん比例ひれい関係かんけいにはできない。SNは、ノイズにたいする安定あんていせい評価ひょうかであることから、比例ひれい関係かんけいでない場合ばあい色々いろいろなノイズ条件下じょうけんかでも標準ひょうじゅん条件じょうけんおなじように機能きのうすることを評価ひょうかしたいのである。この評価ひょうか方法ほうほう標準ひょうじゅんSN別称べっしょう N0(エヌゼロ)ほう)とうが、TSほうおよびTほうならび、あたらしい概念がいねんである。なお、ふるくから正常せいじょう異常いじょう判定はんてい基準きじゅん(0, 1)評価ひょうか標準ひょうじゅん寄与きよりつからもとめられる標準ひょうじゅんSNがあるが、それとは区別くべつされたい。

従来じゅうらいのSNは、顧客こきゃくしい機能きのうあらわ信号しんごう効果こうか顧客こきゃくのぞまないノイズの効果こうかとのあらわしたものであるが、信号しんごう効果こうかなかには、比例ひれいこう変動へんどう信号しんごうの2次項じこうのばらつきSMresがふくまれるため、そのばらつきは誤差ごさ変動へんどうとはべつなばらつきでノイズの影響えいきょうではないのである。そこで、ノイズの影響えいきょうだけが顧客こきゃくのぞまないものであるから、信号しんごう効果こうかとノイズの効果こうか完全かんぜん分離ぶんりすることをかんがえたのが標準ひょうじゅんSNである。したがって、2段階だんかい設計せっけいでは、まずノイズの効果こうかだけをかんがえて最適さいてき条件じょうけんもとめてから、信号しんごう効果こうか、2効果こうかになるように要因よういん効果こうか制御せいぎょ因子いんしでチューニングするのである。従来じゅうらいSNくらべて再現さいげんせいたかくなるのが特徴とくちょうである。

従来じゅうらいのSNあらわし、標準ひょうじゅんSNあらわされる。

標準ひょうじゅんSNは、目的もくてき機能きのうでも基本きほん機能きのうでももちいられるが、ベンチマークと品質ひんしつ比較ひかくをする場合ばあいには再現さいげんせい必要ひつようないので、従来じゅうらいSNもちいることになる。

エネルギーがたSNしんSN[編集へんしゅう]

機能きのうせい評価ひょうかでは、実験じっけんデータの出力しゅつりょくのエネルギー(ST)は、有効ゆうこうエネルギー(Sβべーた)と有害ゆうがいエネルギー(SN)のでピタコラスの定理ていりあらわされるから、ST=Sβべーた+SNとなる。顧客こきゃく満足まんぞくあらわすSNは、有効ゆうこうエネルギーと有害ゆうがいエネルギーのかんがえることができるから、

SN(ηいーた)=(Sβべーた/nr)/(SN/nr)=Sβべーた/SN デシベルでは10log(Sβべーた/SN)
感度かんど(S)=10log(Sβべーた/nr)

あらわされる。しんSNは、信号しんごう水準すいじゅんすうやデータすう関係かんけいないことが特徴とくちょうである。MTほうでSNもとめる場合ばあい従来じゅうらいSNではSβべーた<Veの場合ばあいηいーた=0としてかんがえるが、しんSNではべてのデータを採用さいようできることが特徴とくちょうである。SN相対そうたい比較ひかくであるから、利得りとく改善かいぜん意味いみがあって、SN絶対ぜったい問題もんだいにしないというかんがえが従来じゅうらいSNであるが、絶対ぜったいわらないしんSNほう損失そんしつ関数かんすうもとめる場合ばあいには便利べんりである。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ えい: Taguchi methods