サービス科学かがく

サービス科学かがく (サービスかがく、サービス・サイエンス、英えい: service science) とは、経営けいえい工学こうがく、社会しゃかい工学こうがく、システム科学かがく、生産せいさん管理かんり、サービス・マーケティング、マーケティング・サイエンス、法律ほうりつ学がく、経営けいえい戦略せんりゃくなどをはじめとする様々さまざまな学術がくじゅつ分野ぶんやが融合ゆうごうし、サービスについての研究けんきゅうを行おこなう新あたらしい領域りょういきの学問がくもんである。

概要がいよう

サービス・サイエンス（SSME）という言葉ことばは、IBMによって提唱ていしょうされた概念がいねんである。学問がくもんの垣根かきねを越こえてサービス・システムを推進すいしんし、人々ひとびとの知恵ちえと技術ぎじゅつを駆使くしし、他者たしゃへ価値かちを提供ていきょうする複雑ふくざつなシステムを仕様しよう化かすることである。より正確せいかくに述のべるなら、サービス・サイエンスとは、科学かがく、経営けいえい、工学こうがくの応用おうよう的てき領域りょういきであり、企業きぎょうなど組織そしきが他者たしゃと一体いったいとなり利益りえき（価値かち）を生うみ出だすことである。

また、今日きょう、先進せんしん国こくだけでなく、急速きゅうそくに発展はってんが進すすむ開発途上国かいはつとじょうこくにおいても、サービス産業さんぎょうは経済けいざい的てきに最もっとも大おおきい割合わりあいを占しめており、これらサービス産業さんぎょうが、よりシステム工学こうがく的てきなイノベーションを行おこなうことに、学術がくじゅつ界かい、産業さんぎょう界かい、政府せいふらは注目ちゅうもくしている。サービス科学かがくは、今いままでの学術がくじゅつ領域りょういきの再編さいへんというわけではなく、多おおくの学術がくじゅつ領域りょういきをまたがって、サービスに関かんする知恵ちえを集あつめ、新あらたな学術がくじゅつ領域りょういき、研究けんきゅう分野ぶんやとして確立かくりつされることが望のぞまれている。

サービスとは

産業さんぎょう分類ぶんるいにおいて、サービス産業さんぎょうとは、農林のうりん水産すいさん業ぎょうまたは工業こうぎょうのいずれにも当あてはまらないものを意味いみする。（第だい三さん次じ産業さんぎょう）

一般いっぱん的てきにサービスとは、一連いちれんの行為こういやパフォーマンス、経験けいけんなどを個人こじんあるいは組織そしきが提供ていきょうし、他者たしゃへの利益りえきをもたらすものである。例たとえば、スーツをオーダーメイドすること、夕食ゆうしょくを注文ちゅうもんすること、リムジンを貸かし切きること、国くにを防衛ぼうえいすること、折おれた骨ほねを治なおすこと、学校がっこうで教育きょういくを受うけること、企業きぎょうのITシステムを稼動かどうさせることなどがあげられる。これら全すべてにおいて、サービスは、技能ぎのうや知識ちしきを開発かいはつすること、他たの企業きぎょうにない優位ゆうい性せいをもつことで利益りえきを伸のばすこと、個人こじん単位たんいで提供ていきょうされる場合ばあいもあり顧客こきゃくに応おうじてカスタマイズできる仕事しごとであること、顧客こきゃくから何なんらかの情報じょうほうの提供ていきょうが必要ひつようであること（例れい: レストランにおいてステーキの好このみの焼やき加減かげんをウェイターに注文ちゅうもんする）が特徴とくちょうである。

サービス・システム

サービス・システムとは、サービス・マネジメント、サービス・オペレーション、サービス・マーケティング、サービス・デザイン、そしてサービス工学こうがくの分野ぶんやにおいて使つかわれる用語ようごである。

サービス科学かがくにおけるサービスとは、サービス提供ていきょう者しゃとサービス顧客こきゃくの両方りょうほうが一体いったいとなり、価値かちを創つくり上あげる（共きょう創そう）だといえる。例たとえば、医療いりょう分野ぶんやにおいては、医師いしが患者かんじゃに質問しつもんし、検査けんさし、薬くすりを処方しょほうする。この時とき、患者かんじゃは質問しつもんに回答かいとうし、検査けんさに協力きょうりょくすることで、適切てきせつな薬くすりを得えることができる。医師いし、患者かんじゃ、またそれ以外いがいの医療いりょう従事じゅうじ者しゃ、さらに技術ぎじゅつとが一体いったいとなり、価値かち（この例れいでは健康けんこう）を創つくり上あげる。

サービス科学かがくの特徴とくちょう

サービスに関かんする学術がくじゅつ的てき、産業さんぎょう的てきな長ながい歴史れきしはアダム・スミスによって始はじめられ、現在げんざいに至いたる。かつて、多おおくの関心かんしんはマーケティングや経営けいえい、経済けいざいに焦点しょうてんを当あてたものであったが、技術ぎじゅつ革新かくしんにより技術ぎじゅつを用もちいたサービスが増ふえ続つづけ、多おおくの伝統でんとう的てきな製造せいぞう業ぎょうはより多おおくの収入しゅうにゅうを得えるためにサービス事業じぎょうを始はじめるようになった。今いまでは、産業さんぎょう界かいにおいてサービス・イノベーションは技術ぎじゅつ革新かくしんよりも重要じゅうようだと認識にんしきされている。ただし、サービス・イノベーションについては、一般いっぱん的てきな解釈かいしゃくはまだなされていない。

サービス・サイエンスのを説明せつめいする上じょうで最もっとも重要じゅうような事ことは、複数ふくすうの領域りょういき間あいだの相互そうご作用さよう性せいである。ただ単たんに、あるサービスの一ひとつ一ひとつの特徴とくちょうを見みつけることではなく、人々ひとびとや技術ぎじゅつ、ビジネスロジックが互たがいに結むすびついた一ひとつのシステムとしてサービスを考かんがえることにある。サービス・サイエンスは、複数ふくすうの既存きそんの領域りょういきの知恵ちえを元もとに、新あらたなアイデアが作つくりだされる。例たとえば、情報じょうほう工学こうがく、認知にんち科学かがく、経済けいざい学がく、組織そしき行動こうどう論ろん、人事じんじ、マーケティング、オペレーションズ・リサーチなどの分野ぶんやが1つのチームにまとまることを目指めざしている。

IBMでは、実際じっさいに、サービス・サイエンスを重要じゅうような戦略せんりゃくとして位置いちづけ、成果せいかとしている。HPでも同様どうようの理由りゆうで、サービス・サイエンス・システムセンターを設立せつりつした。オラクルは、IBMと共同きょうどうで、サービス・リサーチ・イノベーション・イニシアティブのコンソーシアムを設立せつりつした。 EUでは、NESSIグループが、サービス・サイエンスのワーキング・グループを設立せつりつした。

サービス・サイエンスの定義ていぎには誤解ごかいを招まねく可能かのう性せいもあるが、コンピュータ・サイエンスからの類推るいすいだとすることができる。コンピュータ・サイエンスの成果せいかには、基礎きそ科学かがく（例たとえば、物理ぶつり学がくや化学かがく）だけでなく、それ以上いじょうに数学すうがくや電子でんし工学こうがく、心理しんり学がくの分野ぶんやが集あつまって融合ゆうごうすることによって共通きょうつうの目的もくてきを果はたしたことによるものが大おおきい。サービス・サイエンスも同様どうようで、ただしコンピュータサイエンスより分野ぶんやが幅広はばひろい。経済けいざい学者がくしゃ、社会しゃかい科学かがく者しゃ、数学すうがく者しゃ、コンピュータ科学かがく者しゃ、そして議員ぎいんらが協力きょうりょくしあい、大おおきなゴールに向むかって、分析ぶんせきし、戦略せんりゃくを立案りつあんし、経営けいえいし、今いままでに作つくられてきた複雑ふくざつなシステムを進化しんかさせることを目標もくひょうとしている。

大学だいがくにおいても、サービス科学かがくの社会しゃかい的てき需要じゅように対たいして動うごきはじめている。例たとえば、カリフォルニア大学だいがくバークレー校こうでは、SSMEプログラムを創設そうせつした。ノースカロライナ州立しゅうりつ大学だいがくでは、コンピュータ・サイエンスの学位がくいと同様どうようにサービスのためのMBAコースを創設そうせつした。両方りょうほうのケースにおいても、大学だいがくは幅広はばひろくの分野ぶんやが相互そうごに協力きょうりょくすることを認識にんしきしている。他たの大学だいがくにおいても、カーネギーメロン大学だいがく、メリーランド大学だいがくカレッジパーク校こう、アリゾナ州立しゅうりつ大学だいがく、北きたイリノイ大学だいがく、アアルト大学だいがく（旧きゅう:ヘルシンキ工科こうか大学だいがく）、シドニしどにー大学だいがく、シンガポール国立こくりつ大学だいがくなどでサービス科学かがくの学際がくさい的てきコースが創設そうせつされている。

学術がくじゅつ雑誌ざっしにおいても、サービス科学かがくに関かんする論文ろんぶんが現あらわれるようになった。例たとえば、ACMの Communications of the ACM focused entirely on service science やIEEEの Steps Toward a Science of Service Systems などで見みることができる。

日本にっぽんにおけるサービス科学かがく

イノベーション25戦略せんりゃく会議かいぎ

安倍あべ内閣ないかくにおけるイノベーション25戦略せんりゃく会議かいぎでは、2025年ねんまでに国くにが目指めざすイノベーション政策せいさくを明あきらかにし、長期ちょうき戦略せんりゃくとして位置いちづけた。2007年ねんの中なか間あいだとりまとめでは、クロネコヤマト、アートコーポレーション、フェデックス、アマゾン、グーグル等ひとしを「サービス・イノベーション」の例れいとして挙あげた。

サービス・イノベーション人材じんざい育成いくせい推進すいしんプログラム

文部もんぶ科学かがく省しょうでは、サービス産業さんぎょうの重要じゅうよう性せいは高たかいものの生産せいさん性せいの低ひくい日本にっぽんのサービス産業さんぎょうの競争きょうそう力りょくを強化きょうかするため、2008年ねんから「サービス・イノベーション人材じんざい育成いくせい推進すいしんプログラム」の事業じぎょうを開始かいしした。 東京工業大学とうきょうこうぎょうだいがく、京都大学きょうとだいがく、東北大学とうほくだいがく、筑波大学つくばだいがくなど6つの大学だいがくで人材じんざい育成いくせいプログラムが開始かいしされている。

関連かんれん項目こうもく

• サービス
• アフターサービス
• エンタープライズアーキテクチャ
• サービスプロバイダ
• システム
• Webサービス
• 技術ぎじゅつ経営けいえい
• 計算けいさん機き科学かがく

外部がいぶリンク

• イノベーション25 総務そうむ省しょう
• サービス・イノベーション人材じんざい育成いくせい推進すいしんプログラム：文部もんぶ科学かがく省しょう
• 東京工業大学とうきょうこうぎょうだいがく 社会しゃかい的てきサービス価値かちのデザイン・イノベーター育成いくせいプログラム
• 京都大学きょうとだいがく　サービス・イノベーション人材じんざい育成いくせい推進すいしんプログラム