死体したい

法ほう医い病理びょうり学がくの研究けんきゅう目的もくてきで保管ほかんされた遺体いたい（ドイツ・ベルリン）

死体したい（したい、屍体したい）とは、生物せいぶつが死しを迎むかえ、その生命せいめい活動かつどうを停止ていししている状態じょうたいの体からだを指さす。日常にちじょう用語ようごとして「死体したい」と言いう場合ばあい、人間にんげんないし動物どうぶつの死体したいまでを指さすことが多おおい。また、医科いか大学だいがくや病院びょういんなどでの研究けんきゅうのために死後しごの体からだを提供ていきょうすること、およびその死体したいは献体けんたいと呼よばれる。

日本語にほんごでは、「死骸しがい」（しがい）、「遺骸いがい」（いがい）、「亡骸なきがら」（なきがら）、「屍かばね」（しかばね）、「骸むくろ」（むくろ）などとも言いい、微妙びみょうにニュアンスが異ことなる（後述こうじゅつ）。また、直截ちょくせつ的てきない方いかたを避さけ、「ほとけ」・「ほとけさん」などと呼よばれることもある。

宗教しゅうきょう・習俗しゅうぞく

遺体いたいの扱あつかいに関かんしては各国かっこくの歴史れきしや習俗しゅうぞくにより異ことなるが、多おおくの国くにでこれを法律ほうりつ上うえの手続てつづきによらずに放置ほうちしたり損壊そんかいする行為こうい（死体したい遺棄いきや死体したい損壊そんかい）は法律ほうりつで禁きんじられている。

歴史れきし的てきには病理びょうり解剖かいぼうも宗教しゅうきょう的てき・道徳どうとく的てきには非ひ人道的じんどうてきな行為こういと考かんがえられたこともあり、病理びょうり解剖かいぼう学がくと臨床りんしょう医学いがくが結むすび付つくのは19世紀せいき以後いごのことである^[1]（解剖かいぼう学がくを参照さんしょう）。

「死体したい（屍体したい）」と「遺体いたい」との相違そうい

「死体したい（屍体したい）」は、一いち個この物体ぶったいとしての即そく物的ぶってきな印象いんしょうを与あたえる用語ようごである。そのため、死者ししゃの人格じんかくを尊重そんちょうするような場面ばめんでは、これを避さけて「遺体いたい」（いたい）の語かたりを用もちいる。「死骸しがい」、「屍かばね（しかばね）」も同様どうように「遺骸いがい」、「亡骸なきがら（なきがら）」等とうとい換いかえられる。

地質ちしつ学がくや生態せいたい学がくなどにおける学術がくじゅつ用語ようごとして「生物せいぶつ遺体いたい」・「動物どうぶつ遺体いたい」・「植物しょくぶつ遺体いたい」などの用語ようごもあり、「遺体いたい」が必かならずしも人間にんげん以外いがいの生物せいぶつに適用てきようされないわけでもない。また、刑法けいほうでは、「死体したい遺棄いき（死体したい損壊そんかい）」のように「死体したい」が用もちいられる。

公共こうきょう交通こうつう機関きかんの持込もちこみ禁止きんし手回てまわり品ひんについては、鉄道てつどう・バス・タクシーでは「死体したい」、船舶せんぱく・航空こうくうでは「遺体いたい」と表記ひょうきされることが多おおい。鉄道てつどう運輸うんゆ規程きてい・旅客りょかく自動車じどうしゃ運送うんそう事業じぎょう運輸うんゆ規則きそくに「死体したい」、海上かいじょう運送うんそう法ほう第だい9条じょう第だい3項こうの規定きていに基もとづく標準ひょうじゅん運送うんそう約款やっかん（国土こくど交通省こうつうしょう告示こくじ）に「遺体いたい」と表記ひょうきされ、それに各かく事業じぎょう者しゃの規則きそく・規程きてい・約款やっかん等とうも倣ならっているためである。

報道ほうどうに限かぎらず、ラジオやテレビでの番組ばんぐみ内ないでは、「死体したい」という語かたりは（例外れいがいはあるが）一般いっぱんに、単たんに身元みもとのわからない死者ししゃの場合ばあいや、それが無関係むかんけいの場ばで不意ふいに発見はっけんされた場合ばあいなどに主おもに用もちいる（ただし、身元みもと不明ふめいながら歴史れきし的てき価値かちの高たかい資料しりょうといったような場合ばあいは、ミイラや化石かせきも含ふくめて、「死体したい」よりも「死者ししゃ」というような表現ひょうげんを用もちいる場合ばあいが多おおい）。

一方いっぽう「遺体いたい」という語かたりは、身元みもとが判明はんめいしている死者ししゃのケースはもとより、それが捜索そうさくされている対象たいしょうの死者ししゃだとみなされうるケースに主おもに用もちいる。遺族いぞくの存在そんざいを通常つうじょう想定そうていできうる場合ばあいや、将来しょうらい的てきに遺族いぞくが名乗なのり出でてきたり証明しょうめいできるなどして判明はんめいしうる場合ばあいである。よって、乗客じょうきゃく名簿めいぼの類るいのある飛行機ひこうきや客船きゃくせんでの事故じこや事件じけんでの犠牲ぎせい者しゃ、同様どうように国外こくがいへの邦人ほうじん旅行りょこう者しゃが乗のった自動車じどうしゃや列車れっしゃの事故じこや、国外こくがいのホテルやスタジアムといった建築けんちく物ぶつの損壊そんかいに巻まき込こまれた邦人ほうじん犠牲ぎせい者しゃなど、身元みもとが判明はんめいしうる不ふ特定とくてい多数たすうの死者ししゃのケースにも用もちいられる。あるいは、国内こくないでの大だい規模きぼな災害さいがいで発見はっけんされた不ふ特定とくてい多数たすうの亡骸なきがらなど、発見はっけんされた時点じてんでは不明ふめいであり確かく率りつは低ひくいながらも将来しょうらい的てきに随時ずいじ判明はんめいしていく前提ぜんていの場合ばあいは、視聴しちょう者しゃ等とうへの配慮はいりょもあって後者こうしゃの語かたりを用もちいる場合ばあいが多おおい。そういう意味いみでは、国内こくないに遺族いぞくがほとんどいないと予測よそくされる諸しょ外国がいこくでの災害さいがいや事故じこ、テロや戦争せんそうなどについての邦人ほうじん以外いがいの死者ししゃについては、表現ひょうげんが分わかれうる。

死体したいの扱あつかい

棺かん、遺体いたい収納しゅうのう袋ぶくろ
埋葬まいそう、死体したい安置あんち所しょ
エンバーミング（遺体いたい衛生えいせい保全ほぜん） - プラスティネーション、ミイラ
献体けんたい、死体したい解剖かいぼう保存ほぞん法ほう
死体したい売買ばいばい
死体したい損壊そんかい・遺棄いき罪ざい
カニバリズム（人ひと肉食にくしょく）
屍かばね姦かん
死後しご処刑しょけい - すでに死しんだ死体したいを切きり刻きざむなどの処刑しょけいする刑罰けいばつ。世界中せかいじゅうで行おこなわれた。
- 獄門ごくもん - 刑罰けいばつのこと。死刑しけいではねた首くびは、梟首きょうしゅ（きょうしゅ、晒さらし首くび）とされた。
- 試ためし斬ぎり
- 伍ご子こ胥 - 「死屍ししに鞭打むちうつ」の故事こじを産うんだ。父兄ふけいの仇かたきである楚すわえの平ひら王おうの死体したいを惨むごたらしくむち打うちした故事こじから。
- A級きゅう戦犯せんぱん#処刑しょけい後ごの遺体いたいの扱あつかい - 米べい軍ぐんは神聖しんせい視しされることがないように場所ばしょを秘密ひみつにして海上かいじょう散骨さんこつした^[2]。