紀元節きげんせつ

宮中きゅうちゅう祭祀さいしの主要しゅよう祭儀さいぎ一覧いちらん

四方拝しほうはい・歳旦さいたん祭さい

元始げんし祭さい

奏そう事始ことはじめ

昭和しょうわ天皇てんのう祭まつり（先帝せんてい祭さい）

孝明天皇こうめいてんのう例祭れいさい（先帝せんてい以前いぜん三さん代だいの例祭れいさい）

祈年祭としごいのまつり

天てん長ちょう祭さい（天長節てんちょうせつ祭さい）

春季しゅんき皇霊こうれい祭さい・春季しゅんき神殿しんでん祭さい

神武じんむ天皇てんのう祭さい・皇霊こうれい殿どの御神楽みかぐら

香こう淳じゅん皇后こうごう例祭れいさい（先さき后きさきの例祭れいさい）

節ふし折おり・大祓おおはらい

明治天皇めいじてんのう例祭れいさい（先帝せんてい以前いぜん三さん代だいの例祭れいさい）

秋季しゅうき皇霊こうれい祭さい・秋季しゅうき神殿しんでん祭さい

神嘗祭かんなめさい

新嘗祭にいなめさい

賢所かしこどころ御神楽みかぐら

大正天皇たいしょうてんのう例祭れいさい（先帝せんてい以前いぜん三さん代だいの例祭れいさい）

節ふし折おり・大祓おおはらい

紀元節きげんせつ（きげんせつ）は、古事記こじきや日本書紀にほんしょきで日本にっぽんの初代しょだい天皇てんのうとされる神武じんむ天皇てんのうの即位そくい日ひをもって定さだめた祝日しゅくじつ。日付ひづけは紀元前きげんぜん660年ねん2月がつ11日にち。1873年ねん（明治めいじ6年ねん）に定さだめられた。かつての祝祭日しゅくさいじつの中なかの四大しだい節ぶしの一ひとつ。

1948年ねん7月がつ20日はつかの「国民こくみんの祝日しゅくじつに関かんする法律ほうりつ」公布こうふ・施行しこうにより、紀元節きげんせつを含ふくむ四大しだい節ぶしは廃止はいしされた。1966年ねん（昭和しょうわ41年ねん）に同どうじ2月がつ11日にちが「建国けんこく記念きねんの日ひ」として国民こくみんの祝日しゅくじつとなり、翌年よくねんから適用てきようされた。

2月がつ11日にちの日付ひづけは、日本書紀にほんしょきで神武じんむ天皇てんのうが即位そくいしたとされる神武じんむ天皇てんのう元年がんねん（紀元前きげんぜん660年ねん）1月がつ1日にちの月日つきひを、明治めいじに入はいりグレゴリオ暦れきに換算かんさんしたものである。

紀元節きげんせつの制定せいていまで

8世紀せいき初はじめに編あまれた『日本書紀にほんしょき』によれば、神武じんむ天皇てんのうの即位そくい日びは「辛からし酉とり年春としはる正月しょうがつ、庚かのえ辰たつ朔ついたち」であり、日付ひづけは正月しょうがつ朔日さくじつ、すなわち1月がつ1日にちとなる。

辛からし酉とり年春としはる正月しょうがつ 庚かのえ辰たつ朔ついたち 天皇てんのう即そく帝位ていい於橿原はら宮みや — 『日本書紀にほんしょき』卷まき第だい三さん、神かみ武紀たけのり

しかし、明治めいじ5年ねん11月15日にち（1872年ねん12月15日にち）、明治めいじ政府せいふは神武じんむ天皇てんのうの即位そくいをもって「紀元きげん」と定さだめ（明治めいじ5年ねん太政官だじょうかん布告ふこく第だい342号ごう）、同日どうじつには「第だい一いち月がつ廿にじゅう九きゅう日にち」（1月がつ29日にち）を神武じんむ天皇てんのう即位そくいの相当そうとう日びとして祝日しゅくじつにすることを定さだめた（明治めいじ5年ねん太政官だじょうかん布告ふこく第だい344号ごう）。（新暦しんれきによる表示ひょうじである）1873年ねん1月がつ29日にちは、新暦しんれき（太陽暦たいようれき：グレゴリオ暦れき）で旧暦きゅうれき（太陰たいいん太陽暦たいようれき：天保てんぽう暦れき）のまま変かえなかったときの明治めいじ6年ねん1月がつ1日にちに当あたる日付ひづけ（並行へいこうして二ふたつの暦こよみを進すすめた時ときに重かさなる日ひ）である。折おり柄がら、明治めいじ5年ねん12月2日にち（1872年ねん12月31日にち）の翌日よくじつをもって明治めいじ6年ねん1月がつ1日にち（1873年ねん1月がつ1日にち）とし、新暦しんれきが施行しこうされることになっていた。

今般こんぱん太陽暦たいようれき御ご頒行神武じんむ天皇てんのう御ご即位そくいヲ以テ紀元きげんト被ひ定てい候こうニ付づけ其旨ヲ被ひ爲ため告つげ候こう爲ためメ来らいル廿にじゅう五日御祭典被執行候事
但ただし當日とうじつ服ふく者しゃ参朝さんちょう可か憚はばか事こと

— 「太陽暦たいようれき御ご頒行神武じんむ天皇てんのう御ご即位そくいヲ以テ紀元きげんト定ていメラルニ付づけ十じゅう一いち月がつ二に十じゅう五ご日にち御ご祭典さいてん」（明治めいじ5年ねん太政官だじょうかん布告ふこく第だい342号ごう）、

第だい一いち月がつ廿にじゅう九きゅう日にち　神武じんむ天皇てんのう御ご即位そくい相しょう當日とうじつニ付づけ祝日しゅくじつト被ひ定例ていれい年ねん御ご祭典さいてん被ひ執行しっこう候こう事ごと

— 「神武じんむ天皇てんのう御ご即位そくい祝日しゅくじつ例年れいねん御ご祭典さいてん」（明治めいじ5年ねん太政官だじょうかん布告ふこく第だい344号ごう）

1873年ねん（明治めいじ6年ねん）1月がつ29日にち、神武じんむ天皇てんのう即位そくい日びを祝いわって、神武じんむ天皇てんのう御陵ごりょう遙拝ようはい式しきが各地かくちで行おこなわれた。同月どうげつ、神武じんむ天皇てんのう即位そくい日びと天長節てんちょうせつ（天皇誕生日てんのうたんじょうび）を祝日しゅくじつとする布告ふこくを出だしている。同年どうねん3月がつ7日にちには、神武じんむ天皇てんのう即位そくい日びを「紀元節きげんせつ」と称しょうすることを定さだめた（明治めいじ6年ねん太政官だじょうかん布告ふこく第だい91号ごう）。

今般こんぱん改暦かいれきニ付人つきびと日び上巳じょうし端午たんご七なな夕ゆう重陽ちょうようノ五ご節せつヲ廃はいシ神武じんむ天皇てんのう即位そくい日び天長節てんちょうせつノ両日りょうじつヲ以テ自今じこん祝日しゅくじつト被ひ定てい候こう事ごと

— 「五ご節せつヲ廃はいシ祝日しゅくじつヲ定ていム」（明治めいじ6年ねん太政官だじょうかん布告ふこく第だい1号ごう）

神武じんむ天皇てんのう御ご即位そくい日び紀元節きげんせつト被ひ稱しょう候こう事ごと

— 「神武じんむ天皇てんのう御ご即位そくい日び紀元節きげんせつト稱しょうセラル」（明治めいじ6年ねん太政官だじょうかん布告ふこく第だい91号ごう）

ところで、これらの太政官だじょうかん布告ふこくに先立さきだって、明治めいじ5年ねん11月9日にち（1872年ねん12月9日にち）に出だされていた太陽暦たいようれきを施行しこうする旨むねの太政官だじょうかん布告ふこくでは、祭典さいてん等とうの日付ひづけは、旧暦きゅうれきの月日つきひを新暦しんれきの月日つきひには換算かんさんせずまったく同おなじ数字すうじになるように施行しこうするものと定さだめていた（明治めいじ5年ねん太政官だじょうかん布告ふこく第だい337号ごう）。

（略りゃく）
一いち　諸しょ祭典さいてん等とう舊曆きゅうれき月日つきひヲ新曆しんれき月日つきひニ相當そうとうシ施行しこう可か致事ちし
（略りゃく）

— 「太陰暦たいいんれきヲ廃はいシ太陽暦たいようれきヲ頒行ス」（明治めいじ5年ねん太政官だじょうかん布告ふこく第だい337号ごう）抜粋ばっすい

これは、祭典さいてんの執行しっこう日びを新暦しんれきで固定こていし、毎年まいとし旧暦きゅうれきの月日つきひから新暦しんれきの月日つきひに換算かんさんする煩雑はんざつさを避さけるための規定きていである。例たとえば、例年れいねん1月がつ1日にちに新年しんねんを祝いわって行おこなわれる歳旦さいたん祭さいは、旧暦きゅうれき1月がつ1日にちの新暦しんれき相当そうとう日びではなく新暦しんれき1月がつ1日にちに行おこなうということになる。

この規定きていの影響えいきょうなどもあって、紀元節きげんせつは旧暦きゅうれき1月がつ1日にち、すなわち旧きゅう正月しょうがつを祝いわう祝日しゅくじつとの誤解ごかいが国民こくみんのあいだに広ひろまった。国民こくみんのこの反応はんのうを見みて政府せいふは、紀元節きげんせつは神武じんむ天皇てんのう即位そくい日びを祝いわう祝日しゅくじつであるという理解りかいが広ひろまらないのではないかと考かんがえた。また、1月がつ29日にちでは、孝明天皇こうめいてんのうの命日めいにち（慶応けいおう2年ねん12月25日にち（1867年ねん1月がつ30日にち）、孝明天皇こうめいてんのう祭さい）と前後ぜんごするため、不都合ふつごうでもあった。

そこで、政府せいふは、1873年ねん（明治めいじ6年ねん）10月がつ14日にち、新あらたに神武じんむ天皇てんのう即位そくい日びを定さだめ直なおし、2月がつ11日にちを紀元節きげんせつとした（明治めいじ6年ねん太政官だじょうかん布告ふこく第だい344号ごう）。

年中ねんじゅう祭日さいじつ祝日しゅくじつ等とうノ休暇きゅうか日び左ひだりノ通つう候こう條じょう此旨布告ふこく候こう事ごと
（略りゃく）
孝明天皇こうめいてんのう祭さい　一いち月がつ三さん十じゅう日にち
紀元節きげんせつ　二に月がつ十じゅう一いち日にち
神武じんむ天皇てんのう祭さい　四よん月がつ三さん日にち
（略りゃく）

— 「年中ねんじゅう祭日さいじつ祝日しゅくじつノ休暇きゅうか日びヲ定ていム」（明治めいじ6年ねん太政官だじょうかん布告ふこく第だい344号ごう）

2月がつ11日にちという日付ひづけは、文部省もんぶしょう天文てんもん局きょくが算出さんしゅつし、暦学れきがく者しゃの塚本つかもと明あきら毅あつしが審査しんさして決定けっていした。その具体ぐたい的てきな計算けいさん方法ほうほうは明あきらかにされていないが、当時とうじの説明せつめいでは「干支えとに相そうより簡法相ほうしょう立だて」としている。

干支えと紀年きねん法ほうは、後こう漢かんの元和がんわ2年ねん（ユリウス暦れき85年ねん）に三さん統すべ暦れきを廃止はいしして以降いこうは、60の周期しゅうきで単純たんじゅんに繰くり返かえすようになっている。神武じんむ天皇てんのうの即位そくい年ねんの「辛からし酉とり年ねん」は『日本書紀にほんしょき』の編へん年ねん（720年ねん（養老ようろう4年ねん）に成立せいりつ）を元もとに計算けいさんすると西暦せいれき紀元前きげんぜん660年ねんに相当そうとうし、即位そくい月がつは「春はる正月しょうがつ」であることから立春りっしゅんの前後ぜんごであり、即位そくい日びの干支えとは「庚かのえ辰たつ」である。そこで西暦せいれき（先発せんぱつグレゴリオ暦れき）で紀元前きげんぜん660年ねんの立春りっしゅんに最もっとも近ちかい庚かのえ辰たつの日ひを探さがすと新暦しんれき2月がつ11日にちが特定とくていされる。その前後ぜんごでは前年ぜんねん12月がつ20日はつかと同年どうねん4月がつ19日にちも庚かのえ辰たつの日ひであるが、これらは「春はる正月しょうがつ」にならない。したがって、「辛からし酉とり年春としはる正月しょうがつ庚かのえ辰たつ」は紀元前きげんぜん660年ねん2月がつ11日にちとした。なお、『日本書紀にほんしょき』はこの日ひが「朔ついたち」、すなわち新月しんげつの日ひであったとも記載きさいしているが、朔ついたちは暦法れきほうに依存いぞんしており「簡法」では計算けいさんできないので、明治めいじ政府せいふによる計算けいさんでは考慮こうりょされなかったと考かんがえられる。なお、現代げんだいの天文てんもん知識ちしきに基もとづき当時とうじの月齢げつれいを計算けいさんすると、この日ひは天文てんもん上じょうの朔ついたちに当あたるが、これは天文てんもん上じょうの朔ついたちにあわせるため、庚かのえ辰たつの日ひを即位そくい日びとしたと考かんがえられている。

制定せいてい後ごから「建国けんこく記念きねんの日ひ」に変かわるまで

詳細しょうさいは「建国けんこく記念きねんの日ひ」を参照さんしょう

紀元節きげんせつには、宮中きゅうちゅう皇霊こうれい殿どので天皇てんのう親祭しんさいの祭儀さいぎが行おこなわれ、各地かくちで神武じんむ天皇陵てんのうりょうの遙拝ようはい式しきも行おこなわれた。1889年ねん（明治めいじ22年ねん）には、この日ひを期きして大日本帝国だいにっぽんていこく憲法けんぽうが発布はっぷされ、これ以降いこう、憲法けんぽう発布はっぷを記念きねんする日ひにもなった。1891年ねん（明治めいじ24年ねん）には小学校しょうがっこう祝日しゅくじつ大祭たいさい儀式ぎしき規程きてい（明治めいじ24年ねん6月17日にち文部省もんぶしょう令れい第だい4号ごう）が定さだめられ、天皇てんのう皇后こうごうの御真影ごしんえい（写真しゃしん）に対たいする最さい敬礼けいれいと万歳ばんざい奉祝ほうしゅく、校長こうちょうによる教育きょういく勅語ちょくごの奉読ほうどくなどからなる儀式ぎしきを小学校しょうがっこうで行おこなうことになった。1914年ねん（大正たいしょう3年ねん）からは全国ぜんこくの神社じんじゃで紀元節きげんせつ祭さいを行おこなうこととなった。1926年ねん（大正たいしょう15年ねん）からは青年せいねん団だんや在郷ざいきょう軍人ぐんじん会かいなどを中心ちゅうしんとした建国けんこく祭さいの式典しきてんが各地かくちで開催かいさいされるようになった。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ごの1947年ねん（昭和しょうわ22年ねん）、片山かたやま哲あきら内閣ないかくにより、日本国にっぽんこく憲法けんぽうにふさわしい祝日しゅくじつの法案ほうあんに紀元節きげんせつが「建国けんこくの日ひ」として盛もり込こまれていたが、連合れんごう国軍こくぐん最高さいこう司令しれい官かん総そう司令しれい部ぶにより削除さくじょされ、法ほうは1948年ねん（昭和しょうわ23年ねん）7月がつに施行しこうされた。日本にっぽんが独立どくりつを回復かいふくした1952年ねん（昭和しょうわ27年ねん）から復活ふっかつ運動うんどうがおき、1957年ねん2月がつ13日にち自民党じみんとう纐纈こけつ弥わたる三さんらは、建国けんこく記念きねん日び法案ほうあんを国会こっかいに提出ていしゅつし、5月15日にち衆議院しゅうぎいんで可決かけつ（のち審議しんぎ未了みりょう）、また1958年ねん（昭和しょうわ33年ねん）に国会こっかいへ議案ぎあんが提出ていしゅつされた。その後ご、「紀元節きげんせつ」の復活ふっかつに賛否さんぴ両論りょうろんあるなか数すう度どの廃案はいあんと再さい提案ていあんを経へて、1965年ねん2月がつ3日にち首相しゅしょう佐藤さとうは全国ぜんこく知事ちじ会議かいぎで建国けんこく記念きねん日びは2月がつ11日にちが適当てきとう、祝日しゅくじつ法ほう改正かいせい案あんは政府せいふ立法りっぽうで国会こっかいに提出ていしゅつすると所信しょしんを表明ひょうめい、1966年ねん（昭和しょうわ41年ねん）に、「建国けんこくをしのび、国くにを愛あいする心しんを養やしなう。」という趣旨しゅしの「建国けんこく記念きねんの日ひ」を定さだめる国民こくみんの祝日しゅくじつに関かんする法律ほうりつの改正かいせいが成立せいりつした。同どう改正かいせい法ほうでは、「建国けんこく記念きねんの日ひ」の具体ぐたい的てきな日付ひづけについて定さだめず、政令せいれいによって定さだめることとしていた。そのため、同年どうねん12月がつ、佐藤さとう栄作えいさく内閣ないかくは、建国けんこく記念きねんの日ひとなる日ひを定さだめる政令せいれい（昭和しょうわ41年ねん政令せいれい第だい376号ごう）を定さだめて、「建国けんこく記念きねんの日ひ」を2月がつ11日にちとした。同どう政令せいれいは即日そくじつ施行しこうされ、翌よく1967年ねん（昭和しょうわ42年ねん）の2月がつ11日にちに実施じっしされた。こうして、紀元節きげんせつの祭日さいじつであった2月がつ11日にちは、「建国けんこく記念きねんの日ひ」として祝日しゅくじつとなった。

1966年ねん12月8日にち建国けんこく記念きねん日び審議しんぎ会かいは建国けんこく記念きねん日びを2月がつ11日にちと答申とうしんし、12月9日にち公布こうふされた（政令せいれい）。

紀元節きげんせつ祭さい

紀元節きげんせつが祭日さいじつとされていたときには、その当日とうじつ、宮中きゅうちゅう三さん殿どのの賢所かしこどころ、皇霊こうれい殿どの、神殿しんでんでは、紀元節きげんせつ祭さいが行おこなわれ、紀元節きげんせつの祝宴しゅくえんも行おこなわれた。また、全国ぜんこくの神社じんじゃにおいても、紀元節きげんせつ祭さいが行おこなわれた。

紀元節きげんせつ祭さいは、初はじめて紀元節きげんせつとされた1873年ねん（明治めいじ6年ねん）1月がつ29日にちに、宮中きゅうちゅう三さん殿どのの皇霊こうれい殿どのにおいて行おこなわれたのが最初さいしょである。このときには皇霊こうれい殿どのにおいてのみ祭祀さいしが行おこなわれ、賢所かしこどころには便たよりの御ご拝はいが行おこなわれただけであった。1914年ねん（大正たいしょう3年ねん）から、全国ぜんこくの神社じんじゃでも紀元節きげんせつ祭さいを行おこなうように定さだめられ、1927年ねん（昭和しょうわ2年ねん）の皇室こうしつ祭祀さいし令れいの一部いちぶ改正かいせいによって、賢所かしこどころ、皇霊こうれい殿どの、神殿しんでんにおいて行おこなわれるようになった。

皇室こうしつ祭祀さいし令れいが定さだめる大祭たいさいのひとつで、天皇てんのうが皇族こうぞくおよび官僚かんりょうを率ひきいて親おやら祭典さいてんを行おこなう。天皇てんのうの出御しゅつぎょは午前ごぜん9時じ30分ふんで、御ご拝礼はいれい御ご告文こくぶんを奏そうして入にゅう御ご。ついで皇后こうごう、皇太后こうたいごうの御ご拝はい、皇族こうぞくの御ご拝はいがある。参列さんれつ員いんは文武ぶんぶ高だか官有かんゆう爵者優遇ゆうぐう者しゃ、勅みことのり任にん待遇たいぐうまでの官僚かんりょうで、正午しょうごから午後ごご3時じ30分ふんまで、有ゆう資格しかく者しゃの参拝さんぱいが許ゆるされた。当夜とうやは賢所かしこどころ御神楽みかぐらの儀ぎに準じゅんじて皇霊こうれい殿どのに御神楽みかぐらの奏楽そうがくがあり、このとき天皇てんのうが御ご拝はいして、入にゅう御おののち神楽かぐらに移うつった。天皇てんのうは、神楽かぐらが終おわるまで就寝しゅうしんしなかった。伊勢神宮いせじんぐう、官かん国幣社こくへいしゃ以下いかの神社じんじゃにおいては、1914年ねん（大正たいしょう3年ねん）から、中ちゅう祭式さいしきで祭典さいてんが行おこなわれた。

1947年ねん（昭和しょうわ22年ねん）5月がつ2日にちの皇室こうしつ祭祀さいし令れい廃止はいし、1948年ねん（昭和しょうわ23年ねん）7月がつ20日はつかの休日きゅうじつニ関せきスル件けん廃止はいしを受うけて、1949年ねん（昭和しょうわ24年ねん）以降いこう、大祭たいさいとしての紀元節きげんせつ祭さいは行おこなわれなくなった。ただし、昭和しょうわ天皇てんのうは同年どうねんの2月がつ11日にちより、宮中きゅうちゅう三さん殿どのにおいて、臨時りんじ御ご拝はい（りんじぎょはい）として、旬しゅん祭さいと同おなじ作法さほうで親拝しんぱいを行おこなった。平成へいせい以降いこうは三さん殿御とのご拝はい（さんでんぎょはい）に名称めいしょうが改あらためられ、同様どうように天皇てんのうの親拝しんぱいが行おこなわれている。橿原神宮かしはらじんぐうへも勅使ちょくしが派遣はけんされ、御神楽みかぐら奉納ほうのうは神武じんむ天皇てんのう祭さい（4月がつ3日にち）に併あわせて行おこなわれている。

民間みんかんでは、一部いちぶの有志ゆうしによって建国けんこく祭さいなどと名称めいしょうを変かえて式典しきてんが行おこなわれている。また、1967年ねん（昭和しょうわ42年ねん）の建国けんこく記念きねんの日ひ制定せいてい以降いこう、全国ぜんこくの神社じんじゃでも再ふたたび紀元節きげんせつ祭さいが行おこなわれるようになった。神社じんじゃ本庁ほんちょうなどから宮中きゅうちゅうでの紀元節きげんせつ祭さい復活ふっかつの要求ようきゅうがあるが、宮内庁くないちょうはこれを拒否きょひしている。右翼うよく団体だんたいは21世紀せいきにも建国けんこく記念きねんの日ひに「紀元節きげんせつ」を奉祝ほうしゅくする集会しゅうかいや街宣がいせん活動かつどうを日本にっぽん各地かくちで行おこなう。

唱歌しょうか「紀元節きげんせつ」

高崎たかさき正風まさかぜ作詞さくし、伊沢いさわ修二しゅうじ作曲さっきょくの唱歌しょうか「紀元節きげんせつ」が1888年ねん（明治めいじ21年ねん）に発表はっぴょうされ、1893年ねん（明治めいじ26年ねん）には文部省もんぶしょうによって祝日しゅくじつ大祭たいさい日び唱歌しょうかに選定せんていされた。

一いち、雲くもにそびゆる髙ちほの髙ねおろしに艸そうこうも木きも
　　なびきふしけん大だい御世みよを仰おおせぐけふこそ樂たのしけれ
二に、うなばらなせるはにやすの池いけのおもよりなほひろき
　　めぐみのなみにあみし世よを仰おおせぐけふこそたのしけれ
三さん、天てんつひつぎの髙みくら千せん代だいよろづ世よに動うごきなき
　　もとゐ定さだめしそのかみを仰あおぐ今日きょうこそたのしけれ
四よん、空そらにかがやく日ひの本もとの萬まんの國くににたぐひなき
　　國くにのみはしらたてし世よを仰おおせぐけふこそ樂たのしけれ — 紀元節きげんせつ 高崎たかさき正風まさかぜ

諸説しょせつ

紀元節きげんせつの2月がつ11日にちという日付ひづけの由来ゆらいについては、「建たて武たけし年間ねんかん記き」「建たて武たけし年中ねんじゅう行事ぎょうじ」によると、延喜えんぎ式しき神かみ名めい帳ちょう筆頭ひっとうにある宮中きゅうちゅう内ないの座ざ神しん「韓かん神社じんじゃ」の祭まつりを、建たて武たけし2年ねん2月がつ11日にちに後醍醐天皇ごだいごてんのうが執とり行おこなったことに由来ゆらいするとする説せつがある。

その他た

紀元節きげんせつには、社会しゃかい事業じぎょう奨励しょうれいを目的もくてきに宮みや内省ないせいから、業績ぎょうせきが顕著けんちょな病院びょういん（財団ざいだん法人ほうじん）等とうに対たいし、金一封きんいっぷうが下賜かしされた。また、都道府県とどうふけん単位たんいで社会しゃかい事業じぎょう功労こうろう者しゃ、教育きょういく功労こうろう者しゃ、産業さんぎょう功労こうろう者しゃ等とうに対たいする表彰ひょうしょう伝達でんたつが行おこなわれていた。表彰ひょうしょう制度せいどの多おおくは、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ごも続つづけられているが、表彰ひょうしょう日びは他たの節目ふしめに行おこなわれる例れいも多おおくなった。

天皇てんのうの即位そくいなど節目ふしめの年としの紀元節きげんせつには恩赦おんしゃが行おこなわれた。 具体ぐたい的てきには1934年ねん（昭和しょうわ9年ねん）の紀元節きげんせつでは明仁あきひと親王しんのう誕生たんじょうを記念きねんした恩赦おんしゃが、1938年ねん（昭和しょうわ13年ねん）の紀元節きげんせつでは憲法けんぽう発布はっぷ50年ねんを記念きねんした恩赦おんしゃが行おこなわれている、当時とうじ服役ふくえきしていた五ご・一いち五ご事件じけんの首謀しゅぼう者しゃの例れいでは、刑期けいきをそれぞれの恩赦おんしゃ時じに1/4減刑げんけいされるなどの恩恵おんけいを得えている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 日本にっぽん文化ぶんか研究けんきゅう会かい『神武じんむ天皇てんのう紀元きげん論ろん・紀元節きげんせつの正ただしい見方みかた』立花たちばな書房しょぼう、1958年ねん（昭和しょうわ33年ねん）3月がつ。

関連かんれん項目こうもく

• 神武じんむ天皇てんのう即位そくい紀元きげん
• グレゴリオ暦れき
• 橿原神宮かしはらじんぐう - 例祭れいさい（大祭たいさい）である紀元きげん祭さいが斎とき行ぎょうされる。
• 上古じょうこ天皇てんのうの在位ざいい年ねんと西暦せいれき対照たいしょう表ひょうの一覧いちらん