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ヒスイ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
翡翠かわせみから転送てんそう
翡翠かわせみ原石げんせき(ヒスイ輝石きせき
新潟にいがたけん糸魚川いといがわ採取さいしゅされた軟玉

ヒスイ翡翠かわせみえい: jade、ジェイド)は、深緑しんりょくはん透明とうめい宝石ほうせきひとつ。東洋とうよう中国ちゅうごく)や中南米ちゅうなんべいアステカ文明ぶんめい)ではふるくから人気にんきたか宝石ほうせきであり、きむ以上いじょう珍重ちんちょうされたこともある。ふるくはたま(ぎょく)とばれた。

鉱物こうぶつがくまとには「翡翠かわせみ」とばれるいし化学かがく組成そせいちがいから「硬玉こうぎょくヒスイ輝石きせき)」と「軟玉ネフライト : とおる閃石-みどり閃石けいすみ閃石)」にかれ、両者りょうしゃまったべつ鉱物こうぶつである。しかしでは区別くべつがつきにくいことから、どちらも「翡翠かわせみ」とんでいる。

概要がいよう

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古代こだい

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ヒスイは非常ひじょう頑丈がんじょうなことから、先史せんし時代じだいには石器せっき武器ぶき材料ざいりょうでもあった。ヨーロッパでは翡翠かわせみつくられた石斧せきふ出土しゅつどする。

現在げんざい判明はんめいしている世界せかい最古さいこのヒスイの加工かこうは、日本にっぽん国内こくない新潟にいがたけん糸魚川いといがわ(のげん領域りょういき)においてやく5,000ねんまえはじまったものである[1]世界せかい最古さいこ翡翠かわせみだいたまどう国内こくない山梨やまなしけんつかっている[2]。2016ねん時点じてんでは国内こくない翡翠かわせみ加工かこうは7せんねんまえとされている[3](「糸魚川いといがわのヒスイ」も参照さんしょう)。

中国ちゅうごくではヒスイは宝石ほうせきよりも価値かちたかいとされ、ふるくから腕輪うでわなどの装飾そうしょくひんうつわ、また精細せいさい彫刻ちょうこくをほどこした置物おきものなどに加工かこうされ、利用りようされてきた。

不老不死ふろうふしおよび生命せいめい再生さいせいをもたらすちからつとしんじられており[よう出典しゅってん]古代こだいにおいてはヒスイの小片しょうへん金属きんぞくいとなどでつないだたまころも中国語ちゅうごくごばん貴人きじん遺体いたい全体ぜんたいおおうことがおこなわれた。中南米ちゅうなんべい王族おうぞくはかでも同様どうよう処置しょち確認かくにんされる。ニュージーランドメソアメリカではまじない道具どうぐとしても使つかわれていた(メソアメリカでは腹痛はらいたやわらげるいしとして使つかわれていた)。

硬玉こうぎょくと軟玉

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硬玉こうぎょくと軟玉は組成そせいてきにはなんら関係かんけいのないものだが、ていることからどちらも翡翠かわせみしょうされる。

中国ちゅうごくでは軟玉しかしなかったこともあり軟玉も宝石ほうせきとみなされるが、一般いっぱんてきには軟玉ははん貴石たかいし分類ぶんるいされる。中国ちゅうごく翡翠かわせみとしてしょうされて販売はんばいされるものは現在げんざいでも軟玉がおおい。軟玉のうちしろ透明とうめいかんのあるさい上質じょうしつのものはひつじあぶらだまばれ、硬玉こうぎょくよりも高値たかね取引とりひきされることがある。

現代げんだい利用りよう

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ヒスイは装飾そうしょくひんのほか、ランプシェードなどの工芸こうげいひんにも使つかわれていて、なかではたか硬度こうどかしたコーヒーミルつくられている。

日本にっぽんのヒスイ

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上述じょうじゅつのように日本にっぽん列島れっとうにおいては世界せかい最古さいこかんがえられるヒスイ加工かこう文化ぶんか発展はってんしたが、のちに衰退すいたいしてわすられていた。しかし20世紀せいきふたた国内こくないでの産出さんしゅつ発見はっけんされたことで、歴史れきしがくてき地理ちりがくてき注目ちゅうもくびることとなった[4]

古代こだいにおける発展はってん

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縄文じょうもん時代じだい装身具そうしんぐ

日本にっぽんにおけるヒスイ利用りよう文化ぶんかやく5,000ねんまえ縄文じょうもん時代じだい中期ちゅうきはじまり、縄文じょうもんじんがヒスイの加工かこうおこなっていた。のち弥生やよい時代じだい古墳こふん時代じだいにおいても珍重ちんちょうされ、祭祀さいし呪術じゅじゅつもちいられたり、装身具そうしんぐ勾玉まがたまなどに加工かこうされたりしていた[1][2]

新潟にいがたけん糸魚川いといがわ現在げんざい)のヒスイ海岸かいがんげられたヒスイの原石げんせき交易こうえきひんとして海路かいろもちいてひろはこばれたとされ、北海道ほっかいどうから沖縄おきなわいた範囲はんいで1せん箇所かしょ以上いじょうでヒスイの加工かこうひん発見はっけんされている[5]

糸魚川いといがわのヒスイは海外かいがいにもはこばれ、朝鮮半島ちょうせんはんとうからも出土しゅつどしている[5][6]。さらに中国ちゅうごく史書ししょこころざし倭人わじんでん」に記載きさいされた邪馬台国やまたいこくだいあずか中国ちゅうごく王朝おうちょうおくった2勾玉まがたまがヒスイだったというせつもある[5]

衰退すいたい忘却ぼうきゃく

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奈良なら時代じだいはい仏教ぶっきょう伝来でんらいすると、王朝おうちょうはそれまで重要じゅうようとされていたヒスイの利用りようけるようになり、急速きゅうそく日本にっぽん歴史れきしから姿すがたした[1][2]。ヒスイをおおくあしらった国宝こくほうである東大寺とうだいじ不空ふくう羂索観音かんのん立像りつぞうはその過渡かとのものである。

そのため以後いごはヒスイの加工かこう文化ぶんかのみならず日本にっぽん国内こくない産出さんしゅつすることも忘却ぼうきゃくされており、昭和しょうわ初期しょきまでの研究けんきゅうしゃたちは、日本にっぽん国内こくない遺跡いせきから出土しゅつどするヒスイの勾玉まがたまひとし海外かいがいユーラシア大陸たいりく)からまれたものだとかんがえていた[4]

さい発見はっけん

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1938ねん昭和しょうわ13ねん)、糸魚川いといがわ在住ざいじゅうする文学ぶんがくしゃ相馬そうま御風ぎょふうが、史書ししょ記載きさいによればかつて糸魚川いといがわ周辺しゅうへんおさめていたというやつ奈川ながわ(ぬながわ)ひめがヒスイの勾玉まがたまにつけていたとされるため、付近ふきんにヒスイの産地さんちがある可能かのうせいがあるとかんがえた[4]

相馬そうま知人ちじん鎌上かまがみ竹雄たけおにそのむねはなしたところ、鎌上かまがみはさらに親類しんるい伊藤いとう栄蔵えいぞう口伝くでんし、伊藤いとう同年どうねん8がつ12にち居住きょじゅうしていた小滝こだきむらげん糸魚川いといがわ)をながれるしょう滝川たきかわそそ倉沢くらさわ滝壷たきつぼ緑色みどりいろうつくしいいし発見はっけんした[4]

よく1939ねん昭和しょうわ14ねん)6がつ、そのいし鎌上かまがみむすめ勤務きんむしていた病院びょういん院長いんちょうである小林こばやし総一郎そういちろうつうじて、小林こばやし親類しんるいであり東北とうほく帝国ていこく大学だいがく理学部りがくぶ岩石がんせき鉱物こうぶつ鉱床こうしょうがく研究けんきゅうしていた河野こうのよしれいおくられた。河野こうの上司じょうしである教授きょうじゅ神津こうづ俶祐所有しょゆうしていたビルマさんのヒスイとそのいしとを河野こうの分析ぶんせき比較ひかくした結果けっか小滝川こたきがわれた緑色みどりいろいしはヒスイであることが判明はんめいした[4]

さらによく7がつ河野こうの現地げんち調査ちょうさによって小滝川こたきがわ河原かわらにヒスイのいわかたまり多数たすうあることを確認かくにんし、河野こうの同年どうねん11がつ論文ろんぶん発表はっぴょうした[4]

この結果けっか日本にっぽん国内こくないにはヒスイの産地さんち存在そんざいすることが証明しょうめいされた[1][7][8]奈良なら時代じだいわすれられて以降いこうやく1,200ねんものときさい発見はっけんであった。

日本にっぽん列島れっとう周辺しゅうへん太古たいこ利用りようされていたヒスイ加工かこうひん海外かいがい渡来とらいでなく日本にっぽん国内こくない由来ゆらいのものであった[5][6]ことがしめされ、考古学こうこがくじょうおよび地質ちしつがくじょう通説つうせつくつがえす、歴史れきしてき意義いぎおおきい画期的かっきてき発見はっけんとなった。

さい発見はっけんにまつわるなぞ

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このさい発見はっけんかんしてはさまざまな疑問ぎもんてん、またそれ以前いぜんの「さい発見はっけん」の可能かのうせいしめ異説いせつ存在そんざいする。詳細しょうさい糸魚川いといがわのヒスイ記事きじ参照さんしょう

現代げんだい

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2016ねん平成へいせい28ねん)9がつには日本にっぽん鉱物こうぶつ学会がっかいにより日本にっぽん国石くんぜ認定にんていされた[9]

なお、天然てんねん翡翠かわせみくだいてかえ行為こうい環境かんきょう保護ほごなどをさだめた法律ほうりつ違反いはんするおそれがある[10]

中国ちゅうごくたま彫工ちょうこうげい

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翠玉すいぎょく白菜はくさい

中国ちゅうごくにおいてたま中国ちゅうごくではうつくしいいし宝石ほうせき総称そうしょうで、ふるくから実用じつようひん装飾そうしょくとう材料ざいりょうとしてもちいられた。たまなかでもとく翡翠かわせみ珍重ちんちょうされたことから、たま翡翠かわせみ意味いみとしても使つかわれた。

たますなわちたま彫工ちょうこうげいひんは、中国ちゅうごく伝統でんとう工芸こうげいひんにおいて重要じゅうよう位置いちめる。などのたまふるくからつくられ(古玉こだま)、「かずの璧」などの故事こじ題材だいざいにもなっている。

なお、草創そうそうたまには石英せきえい滑石かっせきふくむが、みや博物はくぶついん収蔵しゅうぞうされているようなたまのほとんどは軟玉である。

ふる時代じだい中国ちゅうごくでは、とく白色はくしょくのものがこのまれており数々かずかず作品さくひんのこっている。これらの軟玉の産地さんちは、現在げんざい中国ちゅうごく新疆しんきょうウイグル自治じちぞくするホータンであり、の軟玉よりかた籽玉(シギョク、シはべいへんに)または和田わだたまふるくはコーランだま)とばれていた。

18世紀せいききよし時代じだい以降いこうミャンマーから硬玉こうぎょく輸入ゆにゅうされるようになると、あざやかなみどりのものがこのまれるようになった。そのなかでもこう品質ひんしつのものは琅玕ロウカンカンはたまへんに)とばれ珍重ちんちょうされることになった。台北たいぺい国立こくりつみや博物はくぶついんにある有名ゆうめい翠玉すいぎょく白菜はくさい彫刻ちょうこく硬玉こうぎょくせいである。

琅玕は中国ちゅうごく青々あおあおとしたうつくしいたけ意味いみし、英語えいごではインペリアルジェイドばれる。これは西にしふとしきさき熱狂ねっきょうてき収集しゅうしゅうであったことに由来ゆらいするとされる。

2008ねん平成へいせい20ねん)の北京ぺきんオリンピックメダルにもヒスイの装飾そうしょくもちいられた[11][12]

語源ごげん

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翡翠かわせみ

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元々もともと翡翠かわせみうつくしいいしとして、瑪瑙めのうやその宝石ほうせきとともに「たま」と総称そうしょうされていた。

翡翠かわせみ」は中国ちゅうごくでは元々もともとカワセミ言葉ことばであったが、時代じだいくだると翡翠かわせみ宝石ほうせきたますようになった。その経緯けいいかっていないが以下いかせつがある。翡翠かわせみのうち白地しろじ緑色みどりいろ緋色ひいろこんじるいしはとりわけうつくしく、カワセミのはねいろたとえられ翡翠かわせみだまづけられたという。この「翡翠かわせみだま」がいつしか「たま全体ぜんたいをさす名前なまえになったのではないかとかんがえられている。

参考さんこうまでに、古代こだい日本にっぽんではたまは「たま」、カワセミは「そび」「そにとり」とばれていた。カワセミに「翡翠かわせみ」のがあてられ「ヒスイ」ともばれはじめたのは室町むろまち時代じだい以降いこうである。したがって「翡翠かわせみ」のかたり中国ちゅうごくから輸入ゆにゅうされたと推察すいさつできる。

英語えいごでは、硬玉こうぎょく、軟玉、碧玉へきぎょくとう総称そうしょうとしてジェイド (Jade) を使つかっており、とくに硬玉こうぎょくと軟玉をわける必要ひつようがあるとき、硬玉こうぎょく(ヒスイ輝石きせき)をジェイダイト (Jadeite)、軟玉(とおる閃石-みどり閃石けいかく閃石)をネフライト (Nephrite) といっている。

Jadeの語源ごげんとして、スペインの「piedra de ijada」(腹痛はらいたいし)が、フランス語ふらんすご移入いにゅうして「pierre de jade」と変化へんかし、これが英語えいごはいり「Jade」となったとされる。なお「腹痛はらいたいし」の名称めいしょうは、スペインじんがメキシコのアステカ王国おうこくほろぼしたのち、メキシコからこのいしかえったことに由来ゆらいする。

産出さんしゅつ

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中華民国ちゅうかみんこく国立こくりつみや博物はくぶついん掲示けいじされている、世界せかいおも翡翠かわせみ産地さんち

翡翠かわせみ産出さんしゅつ世界せかいてきにもかぎられている。なお、中国ちゅうごくのホータンで産出さんしゅつされる翡翠かわせみ和田わだたま)は軟玉であり、よく誤解ごかいされているが中国ちゅうごく硬玉こうぎょく産地さんち存在そんざいしない。

硬玉こうぎょくおも産地さんち

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宮崎みやざきさかい海岸かいがん富山とやまけん

軟玉のおも産地さんち

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性質せいしつ特徴とくちょう

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翡翠かわせみは「硬玉こうぎょく」(ヒスイ輝石きせき)と「軟玉」(ネフライト)の2種類しゅるいがあり、化学かがくてきにも鉱物こうぶつ学的がくてきにもことなる物質ぶっしつである。日本にっぽんにおいては明確めいかく区別くべつされており、通常つうじょう翡翠かわせみ」はヒスイ輝石きせきす。このため、「硬玉こうぎょく」という用語ようごはほとんど使つかわれない。一方いっぽうで、「軟玉」は現在げんざいでも使つかわれている[13]宝石ほうせきとしての翡翠かわせみは50%以上いじょうのヒスイ輝石きせきふくまれたヒスイ輝石きせきがんす。それ以外いがいのものは基本きほんてきには資産しさん価値かちとぼしいとされている。ほん記事きじでも「翡翠かわせみ」は、とくことわりのないかぎりヒスイ輝石きせきがんのことをしている。

鉱物こうぶつがくてき特徴とくちょう

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硬玉こうぎょく - ヒスイ輝石きせき(jadeite、ほん翡翠かわせみ、ジェイダイト、ジェダイト)
Na輝石きせき一種いっしゅ。イノ珪酸けいさんしお鉱物こうぶつ化学かがく組成そせい: NaAlSi2O6結晶けっしょうけい: たんはすあきらけいいろ: 白色はくしょくあわ緑色みどりいろモース硬度こうど: 6.5 - 7。比重ひじゅう: 3.25 - 3.35。劈開へきかいきれひらく: 完全かんぜん結晶けっしょうかたち: たんくさりがた
軟玉 - ネフライト(nephrite、とおる閃石-みどり閃石けいかく閃石の緻密ちみつ集合しゅうごう
Caかく閃石一種いっしゅ。イノ珪酸けいさんしお鉱物こうぶつ化学かがく組成そせい: Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2結晶けっしょうけい: たんはすあきらけいいろ: 白色はくしょく緑色みどりいろ - くら緑色みどりいろ。モース硬度こうど: 6 - 6.5。比重ひじゅう: 2.9 - 3.1。

堅牢けんろうせい

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硬玉こうぎょくはモース硬度こうどが6.5 - 7、軟玉は6 - 6.5、と価値かちたか宝石ほうせきなかでは硬度こうどひくく、すな石英せきえい)よりも硬度こうどおとるためきずがつきやすい。しかし翡翠かわせみは、硬玉こうぎょくも軟玉も、内部ないぶはりじょう繊維状せんいじょうちいさな結晶けっしょう複雑ふくざつからった鉱物こうぶつイノ珪酸けいさんしお鉱物こうぶつ)であり、すべての鉱物こうぶつなかもっとれにくい性質せいしつうつぼせい)をっている。

ダイヤモンド最高さいこう硬度こうどをもっているが、ある特定とくてい角度かくどから衝撃しょうげきあたえると簡単かんたんれる。一方いっぽう翡翠かわせみこまかな結晶けっしょうあつまりであるため、衝撃しょうげきよわ方向ほうこうというものが存在そんざいしない。ただし、鉱物こうぶつとしては強靭きょうじんでも、天然てんねん翡翠かわせみ場合ばあい、ヒビやいしがあるとそこかられる場合ばあいもあるのであつかいにをつける必要ひつようがある。

翡翠かわせみいろ

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日本にっぽんでは翡翠かわせみ深緑しんりょく宝石ほうせきという印象いんしょうひとおおいが、そのにも、ピンク、薄紫うすむらさき(ラベンダー)、はん透明とうめいしろあおくろだいだいあかだいだいといった様々さまざまいろがあり、おおきくけて、15しょく程度ていどわれる。

化学かがくてき純粋じゅんすいなヒスイ輝石きせき結晶けっしょう無色むしょくだが、翡翠かわせみこまかな結晶けっしょうあつまりのため白色はくしょくとなる。また翡翠かわせみ様々さまざまいろつのはいしふくまれる不純物ふじゅんぶつ輝石きせきいろのためである。

翡翠かわせみ緑色みどりいろには2つの系統けいとうあり、あざやかなみどりのものはクロム原因げんいんであり、コスモクロア輝石きせきいろである。もうひとつのいたみどりてつによるものであり、オンファス輝石きせきいろである。おな緑色みどりいろでも日本にっぽん東南とうなんアジアではこのみがことなり、日本にっぽんではみどりのものが価値かちたかく、ぎゃく東南とうなんアジアではいろうすいものがこのまれている。ただしこれは比較的ひかくてき安価あんかいしことであって、やはりどのくにいてももっと珍重ちんちょうされるのは琅玕クラスのいしである。また、翡翠かわせみはん透明とうめいというイメージがあるが品質ひんしついしはトロリとしたテリのある透明とうめいかんがある。

みどりつぎ人気にんきたかい「ラベンダー翡翠かわせみ」は、日本にっぽんのものはチタン原因げんいんでありややあおみがかってみえる。またミャンマーさんのものはてつ原因げんいんであり紅紫こうししょくつよい。

だいだいあかだいだいは、つぶあいだにある酸化さんかてつ影響えいきょうであり、黒色こくしょくのものは炭質たんしつぶつ原因げんいんである。これらのいろ翡翠かわせみ一般いっぱんてきには資産しさん価値かちがない。日本にっぽんではだいだいあかだいだいけい翡翠かわせみ産出さんしゅつされていない。

あおは、ヒスイ輝石きせきには存在そんざいせず、おもにオンファス輝石きせきいろによっている。また、日本にっぽん翡翠かわせみちゅうから見出みいだされるあお鉱物こうぶつは、糸魚川いといがわせき(SrAl2(Si2O7)(OH)2・H2O)というしん鉱物こうぶつであることが発見はっけんされている。

翡翠かわせみ成因せいいん

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翡翠かわせみ産出さんしゅつされるところはすべ造山つくりやまたいであり、翡翠かわせみおも蛇紋じゃもんがんなか存在そんざいする。蛇紋じゃもんがん地殻ちかくしたマントルおおふくまれる橄欖かんらんがんみずふくんで変質へんしつしたもので、プレート境界きょうかい付近ふきんこる広域こういき変成へんせい作用さよう結果けっかとしてできる岩石がんせきである。

一方いっぽうのプレートがのプレートのしたもぐむことにより広域こういき変成へんせい作用さようこり、同時どうじはげしい断層だんそう活動かつどう地上ちじょうみだされることにより蛇紋じゃもんがん地表ちひょう付近ふきん出現しゅつげんする。その途中とちゅうアルビタイト曹長そうちょうがん)やへんむら糲岩へん玄武岩げんぶがんむことがあり、それらがたか圧力あつりょくのもとでナトリウムカリウムふくんだ溶液ようえき反応はんのうして翡翠かわせみ変化へんかしたとかんがえられている。

曹長そうちょうせきたか圧力あつりょくをかけることでこる、NaAlSi3O8 = NaAlSi2O6 + SiO2というかた相反あいはんおうがあることから、ヒスイ輝石きせき低温ていおんだかあつでできるとかんがえられてきたが、実際じっさいには翡翠かわせみちゅうには石英せきえいがほとんど存在そんざいせず、にえせきるいのような低圧ていあつ鉱物こうぶつとの共生きょうせいられることから、くわしい成因せいいんについては今後こんご研究けんきゅうたれている。

人工じんこう合成ごうせいせき

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1984ねんにGE(ゼネラル・エレクトリックしゃ)が人工じんこうてき合成ごうせい成功せいこうナトリウム、アルミニウム、酸化さんかシリコンを混合こんごうし、1482℃、圧力あつりょく120まんkg/cm2条件下じょうけんかで、直径ちょっけい6.25mm×たかさ12.5mm の円筒えんとうじょう結晶けっしょうている。

ただし、宝飾ほうしょくようのものを合成ごうせいすることは現在げんざいのところ困難こんなんである。

加工かこうほう

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翡翠かわせみ多孔たこうしつ物質ぶっしつであり、様々さまざまのち加工かこう可能かのうである。通常つうじょう宝石ほうせきとして販売はんばいされる翡翠かわせみは、まったく処理しょり翡翠かわせみすくなく、なんらかの改良かいりょう処理しょりがされているものがほとんどである。この処理しょりのことをエンハンスメントという。

エンハンスメント

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エンハンスメントは天然てんねん状態じょうたいでもこりうる現象げんしょう人為じんいてきせておこな改良かいりょうであり、処理しょりせきとはなされないとされる。

翡翠かわせみ場合ばあい表面ひょうめん光沢こうたく改良かいりょうする目的もくてきで、無色むしょくワックスなどでエンハンスメント(ろう処理しょり)がおこなわれる。これらは鑑別かんべつしょ明記めいきされることがある。

トリートメント

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天然てんねん状態じょうたいではこらない方法ほうほう改良かいりょう処理しょりされたものをトリートメントという。翡翠かわせみ場合ばあい含浸がんしん染色せんしょくがある。これらは鑑別かんべつしょ明記めいきされる。

含浸がんしん
天然てんねん翡翠かわせみには不純物ふじゅんぶつ酸化さんかてつなどで茶色ちゃいろざっている場合ばあいおおい。翡翠かわせみさん比較的ひかくてきつよいため、酢酸さくさんなどにつけててつすことができる。そのエポキシけい樹脂じゅしひた表面ひょうめんなめらかにととのえる方法ほうほうは、中国ちゅうごくではふるくからおこなわれている。
染色せんしょく
翡翠かわせみ多孔たこうしつ物質ぶっしつであり、染料せんりょう簡単かんたん吸収きゅうしゅうすることから、価値かちおと白色はくしょく翡翠かわせみ染色せんしょくすることがおこなわれている。

翡翠かわせみ等級とうきゅう

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以上いじょうのような処理しょりをほどこした翡翠かわせみは3つの等級とうきゅうけられる。

Aジェイド
処理しょりされていないもの。「ナチュラルナチュラル」とばれる。
Bジェイド
樹脂じゅしひたしたもの。同時どうじ漂白ひょうはく処理しょりもされることがおおい。
Cジェイド
染色せんしょくされたもの。

鑑定かんてい購入こうにゅう

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翡翠かわせみ鑑別かんべつ科学かがくてき鑑定かんていほう存在そんざいするが、一般人いっぱんじんおこなうことはむずかしいため専門せんもん機関きかんまかせることになる。硬玉こうぎょくと軟玉の区別くべつ非常ひじょうにつきにくいため、海外かいがい購入こうにゅうする場合ばあいとく注意ちゅうい必要ひつようである。また宝石ほうせき業界ぎょうかいでは、商品しょうひんめいなかかけのよくたより高価こうか貴金属ききんぞくめいれて顧客こきゃくだます「フォールスネーム(偽名ぎめい)」という慣習かんしゅうがあるが、以下いかにあげるように、翡翠かわせみにはよく鉱物こうぶつすこ加工かこうするだけで翡翠かわせみせかけることができる鉱物こうぶつおおいため、べつ鉱物こうぶつに「~翡翠かわせみ」などというフォールスネームをつけてられていることがすくなくない。

翡翠かわせみいし

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カルセドニー玉髄ぎょくずい碧玉へきぎょく)、クリソプレーズオーストラリア翡翠かわせみともばれる)
カルセドニーはさまざまながあり、瑪瑙めのうメノウ)、カーネリアンブラッドストーンなどの変種へんしゅがある。これも翡翠かわせみおなじような多孔たこうしついしであり、しばしば染色せんしょくされて販売はんばいされている。みどりめた場合ばあいあおあじがかかってえ、「ブルージェイド」とばれる場合ばあいもある。クリソプレーズは緑色みどりいろのカルセドニー。
クォーザイトアベンチュリンインド翡翠かわせみ
クォーザイトは日本語にほんご珪岩のこと。これを染色せんしょくすると、翡翠かわせみによくいしとなる。アベンチュリンはその変種へんしゅで、クロムしろ雲母うんも結晶けっしょういろから緑色みどりいろにみえる。ごく安価あんかであり、パワーストーンあつかみせにはよく陳列ちんれつされている。
サーペンティン (コリアンジェイド)
日本語にほんごでは蛇紋じゃもんせき翡翠かわせみ触感しょっかん脂肪しぼう光沢こうたくのあるいしであり、翡翠かわせみおなじく蛇紋じゃもんがんなかふくまれる。安価あんかで、翡翠かわせみより硬度こうどひくいため彫刻ちょうこくようとして利用りようされている。
アイドクレーズ(アメリカンジェイド、カリフォルニアンジェイド)
ベスブせきという鉱物こうぶつ一種いっしゅ。そのなかで緑色みどりいろをしている変種へんしゅをアイドクレーズという。
ハイドログロシュラライト(アフリカ翡翠かわせみトランスバールジェイド
緑色みどりいろ柘榴ざくろせき(ガーネット)の一種いっしゅくろ斑点はんてんじょう磁鉄鉱じてっこうふく場合ばあいおおい。
マウ・シット・シット (Maw-Sit-Sit)
ヒスイ輝石きせきによく組成そせいユーレアイトコスモクロア輝石きせき)が主成分しゅせいぶん。ミャンマーのマウ・シット・シット渓谷けいこく産出さんしゅつされる。くろっぽいいろ宝飾ほうしょくひんとしてはあまり人気にんきがない。
メタジェイド
翡翠かわせみ模造もぞうせきガラス加熱かねつして、ゆっくりとやすことで部分ぶぶんてき結晶けっしょうさせてはん透明とうめいさせたもの。
染色せんしょくクンツァイト
翡翠かわせみ模造もぞうひんしつわるクンツァイトリチア輝石きせき)やいろわるいクンツァイトにたいして、しばしば染色せんしょくされ旅行りょこうきゃく相手あいて販売はんばいされていることがある。染色せんしょくすることによりロウカンしつおもわせる透明とうめいかん色合いろあい仕上しあがる。

染色せんしょく

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昨今さっこん染色せんしょく技術ぎじゅつは、肉眼にくがんによる鑑別かんべつ不可能ふかのういきにまでたっし、それ染色せんしょくされた翡翠かわせみ天然てんねんいろであるようにいつわって高値たかね販売はんばいされることもすくなくない。このような場合ばあい鑑別かんべつにはチェルシーフィルターという、特殊とくしゅ波長はちょう特性とくせい光学こうがくフィルターが使つかわれる。一般いっぱんに、緑色みどりいろ翡翠かわせみ鑑別かんべつもちいられるが、ラベンダー翡翠かわせみ鑑別かんべつようフィルターもつくられている。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d ヒスイってなにだろう/糸魚川いといがわ”. 糸魚川いといがわ. 2018ねん12月29にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c 展示てんじ案内あんないだい2 翡翠かわせみ文化ぶんか ●翡翠かわせみてん東洋とうよう至宝しほう”. 国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかん. 2018ねん12月29にち閲覧えつらん
  3. ^ 朝日新聞あさひしんぶん2016ねん9がつ24にち日曜にちようづけ
  4. ^ a b c d e f g ヒスイってなにだろう | フォッサマグナミュージアム Fossa Magna Museum - 新潟にいがたけん糸魚川いといがわのヒスイとフォッサマグナのことがたのしくまなべる博物館はくぶつかん”. 2020ねん12月29にち閲覧えつらん
  5. ^ a b c d 日本海にほんかいがわ表玄関おもてげんかん いにしえの先進せんしん技術ぎじゅつ大動脈だいどうみゃく朝日新聞あさひしんぶんデジタル”. 朝日新聞あさひしんぶんデジタル. 2020ねん12月29にち閲覧えつらん
  6. ^ a b たま」のかがやきにせられた世界せかい 日本海にほんかいむす海外かいがい交流こうりゅう朝日新聞あさひしんぶんデジタル”. 朝日新聞あさひしんぶんデジタル. 2020ねん12月29にち閲覧えつらん
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  13. ^ ヒスイってなにだろう

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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  • Jade (mindat.org) 英語えいご