花はな髑髏しゃれこうべ

由利ゆり麟太郎りんたろう > 花はな髑髏しゃれこうべ

花はな髑髏しゃれこうべ（はなどくろ）
著者ちょしゃ	横溝よこみぞ正史せいし
発行はっこう日び	1976年ねん4月がつ20日はつか
ジャンル	小説しょうせつ
国くに	日本にっぽん
言語げんご	日本語にほんご
ページ数すう	368
コード	ISBN 4-04-130432-6 ISBN 978-4-04-109613-0（文庫本ぶんこぼん）
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『花はな髑髏しゃれこうべ』（はなどくろ）は、横溝よこみぞ正史せいしの短編たんぺん推理すいり小説しょうせつ。金田一きんだいち耕こう助すけシリーズに続つづく、探偵たんてい・由利ゆり麟太郎りんたろうシリーズの一ひとつ。1937年ねん、雑誌ざっし「富士ふじ」の1937年ねん6月増刊ぞうかん号ごうと7月がつ号ごうに分わけて掲載けいさいされた。

本ほん作品さくひんを原作げんさくとして、テレビドラマ1作品さくひんが制作せいさくされている。

あらすじ

名めい探偵たんてい由利ゆり麟太郎りんたろうの元もとに ″花はな髑髏しゃれこうべ″ と名乗なのる人物じんぶつから、これから事件じけんが起おきるであろうことを予告よこくする内容ないようが記しるされた5月14日にち付づけの不吉ふきつな手紙てがみが届とどく。翌よく15日にち、市谷薬王寺いちがややくおうじの俥宿やどの前まえには、合ごうトンビに身みを包つつみ、帽子ぼうしを目深まぶかに被こうむり、黒くろメガネと大おおきなマスクで顔かおを隠かくした小柄こがらな男おとこが現あらわれた。男おとこは車夫しゃふに、ある邸やしきの玄関げんかんに黒くろ塗ぬりの大おおきな長持ながもちが置おいてあるのでそれをある家いえに届とどけるよう依頼いらいする。邸やしきの主おもである日下くさか瑛あきら造づくりは精神病せいしんびょうの学者がくしゃで、一人ひとり息子むすこの瑛一えいいちは現在げんざい離はなれて暮くらしており、邸やしきには養女ようじょの瑠璃子るりこ、知能ちのうに障害しょうがいのある書生しょせいの宮園みやその魁さきがけ太ふとし、ほかに女中じょちゅうが二に人にん暮くらしていた。

車夫しゃふが荷車にぐるまに長持ながもちを積つみ運はこぶ途中とちゅう、隙間すきまから赤あかい血潮ちしおが滴したたり落おちていることに、予告よこく状じょうを受うけて来きていた由利ゆりが気付きづく。蓋ぶたを開あけると、中なかには猿轡さるぐつわを噛かまされ、体からだをしごき帯たいで巻まかれた瑠璃子るりこがぐったりと気きを失うしなっていた。瑠璃子るりこの肩かたには短刀たんとうが突つき刺ささっており、そこから血ちが流ながれ出だしていた。由利ゆりは同行どうこうしていた新聞しんぶん記者きしゃの三津木みつぎ俊助しゅんすけに瑠璃子るりこを医者いしゃへ運はこばせ、車夫しゃふを伴ともなって長持ながもちの届とどけ先さきに指定していされた瑛一えいいちが暮くらす家いえへと赴おもむいた。家いえの窓まどは開あけ放はなした状態じょうたいで、人ひとの気配けはいがするものの、声こえをかけても返事へんじは無なかった。由利ゆりが家いえの中なかに入にゅうろうとしたその時とき、上うえから火鉢ひばちが落おちて来きて、飛散ひさんした灰はいのために視界しかいが遮さえぎられた。勿論もちろん瑛一えいいちの仕業しわざだったが、彼かれはオートバイに乗のって逃亡とうぼうしてしまう。一方いっぽう、負傷ふしょうした瑠璃子るりこは手当てあてを受うけ、間まもなく意識いしきを取とり戻もどしたが、傷きずの程度ていどの割わりに彼女かのじょが着きていたオーバーに付ついた血ちの量りょうが多おおすぎることから、由利ゆりは他ほかにも被害ひがい者しゃがいると直感ちょっかんし、更さらなる事件じけんの予兆よちょうを感かんじる。

ある日ひ由利ゆり、三津木みつぎ、車夫しゃふの三さん人にんが駅えきを降おりてしばらく歩あるくと、神社じんじゃの境内けいだいで由利ゆりの顔見知かおみしりである湯浅ゆあさ博士はかせに出合であう。博士はかせは用ようがあってこれから友人ゆうじんである日下くさかの邸やしきへ向むかうと言いい、由利ゆりたちも同行どうこうする。やがて到着とうちゃくするが邸やしきは物音ものおと一ひとつせず、人影ひとかげも無ない。中なかへ上あがり込こみ日下くさかがいるであろう研究けんきゅう室しつへと向むかい、ドアを開あけて部屋へやに入はいると、そこには胸むねに短刀たんとうを突つき立たてられた日下くさかが大だいの字じに倒たおれており、既すでに死亡しぼうしていた。床ゆかには大おおきなガラス製せいの容器ようきが転ころがっており、その周まわりには白菊しらぎくの花はなが散ちりばめられ、中なかには血ちに染そまった人間にんげんの頭蓋骨ずがいこつが入はいっていた。容器ようきには ″八はち十じゅう川がわ藤松ふじまつ　享年きょうねん三さん五ご歳さい″ と書かかれたラベルが貼はられていた。

湯浅ゆあさによると、自分じぶんは20年ねんほど前まえに日下くさかと同おなじ病院びょういんに勤つとめており、八はち十じゅう川がわ藤松ふじまつはそこへ入院にゅういんしてきた患者かんじゃであったという。八はち十じゅう川がわは精神せいしんを病やんでおり、何なにをしでかすか分わからないような凶暴きょうぼう性せいを持もった人物じんぶつで、また結核けっかくも患わずらっていたことから、湯浅ゆあさは治なおる見込みこみのない患者かんじゃなら、いっそのこと医者いしゃの手てで安やすらかに死しなせた方ほうが幸しあわせであろうと日下くさかに漏もらしていた。数日すうじつ後ご、八はち十じゅう川がわは心臓麻痺しんぞうまひを起おこして死亡しぼうし、係かかわり医者いしゃが日下くさかだったという。八はち十じゅう川がわには男子だんしと思おもわれる ″アサオ″ という子供こどもが一人ひとりおり、湯浅ゆあさはその子こが生いきていて父ちちの復讐ふくしゅうを遂とげたのだと主張しゅちょうする。さらに、子この年齢ねんれいから考かんがえて ″アサオ″ は瑛一えいいちか書生しょせいの宮園みやその魁さきがけ太ふとしのどちらかであろうと推測すいそくし、二人ふたりを探さがすが行方ゆくえは分わからず仕舞しまいであった。

5日にちほど経たち、由利ゆりと三津木みつぎは湯浅ゆあさに会あうため、氏しが瑠璃子るりこの計けいらいで寝泊ねとまりしているという日下くさか邸ていへと向むかった。邸やしきの近ちかくまで来きた頃ころ、ポストの陰かげから件けんの合ごうトンビ姿すがたの男おとこが現あらわれ、三津木みつぎが叫さけぶと男おとこは姿すがたを消けしてしまった。邸やしきに着つき呼よび鈴りんを押おそうとしたその時とき、中ちゅうから女おんなの悲鳴ひめいが聞きこえた。声こえの主あるじは入浴にゅうよく中ちゅうの瑠璃子るりこで、宮園みやそのと思おぼしき男おとこが窓まどの外そとから中なかを覗のぞいていたという。その矢先やさき、日下くさかが殺害さつがいされた日ひ以来いらい行方ゆくえを晦くらましていた宮園みやそのが、業平橋なりひらばし近ちかくの木造もくぞうアパートの一室いっしつで、封筒ふうとうを胸むねに死しんでいるのが発見はっけんされた。封筒ふうとうの中なかには、野菊のぎくの花はなで囲かこまれ赤あかく塗ぬられた髑髏しゃれこうべを描えがいた紙片しへんが入はいっていた。死因しいんは薬物やくぶつによる中毒ちゅうどく死しで、一見いっけん自殺じさつと思おもわれるが、由利ゆりは宮園みやそのの性質せいしつから考かんがえて自殺じさつをするような人間にんげんではない、犯人はんにんは別べつにいると判断はんだんする。

2、3日にちの後のち、由利ゆりのもとに再ふたたび ″花はな髑髏しゃれこうべ″ を名乗なのる人物じんぶつから、「 ″アサオ″ とは宮園みやその魁さきがけ太ふとしのことではない。犯人はんにんは他たにいる。そいつはさらに恐おそろしい殺人さつじんを企たくらんでいる。」という内容ないようの手紙てがみが届とどく。

登場とうじょう人物じんぶつ

由利ゆり麟太郎りんたろう（ゆり りんたろう）

私立しりつ探偵たんてい。

三津木みつぎ俊助しゅんすけ（みつぎ しゅんすけ）

新しん日報にっぽう社しゃの記者きしゃ。

日下くさか瑛あきら造づくり（くさか えいぞう）

精神病せいしんびょうの学者がくしゃ。あくまでも冷徹れいてつな科学かがく者しゃ肌はだの人物じんぶつ。

日下くさか瑛一えいいち（くさか えいいち）

瑛あきら造づくりの一人ひとり息子むすこ。文学ぶんがくで身みを立たてようとしている情熱じょうねつ家かタイプの感かんじ易やすい、背せの高たかい色いろの白しろい細面ほそおもての貴公子きこうし然しかたる風采ふうさいの美び青年せいねん。

日下くさか瑠璃子るりこ（くさか るりこ）

瑛あきら造づくりの養女ようじょ。

宮園みやその魁さきがけ太ふとし（みやぞの かいた）

知的ちてき障害しょうがいのある書生しょせい。ぶつぶつといっぱいに面皰にきびがふきだし、絶たえず涎よだれのたれそうな動うごき続つづけている厚あつい唇くちびる、どろんとして光ひかりの無ない双そうの眸ひとみで、ずんぐりと脂あぶらぎった体格たいかく。

湯浅ゆあさ博士はかせ（ゆあさ はかせ）

精神病せいしんびょうの学者がくしゃ。瑛あきら造づくりのかつての同僚どうりょう。某ぼう大学だいがくの医学部いがくぶに講座こうざを持もつ。

八はち十じゅう川がわ藤松ふじまつ（やそがわ ふじまつ）

瑛あきら造づくりと湯浅ゆあさがかつて勤務きんむしていた病院びょういんに入院にゅういんしていた患者かんじゃ。故人こじん。

勝かつ公こう（かつこう）

車夫しゃふ。

等々力とどりき（とどろき）

警視庁けいしちょうの警部けいぶ

テレビドラマ

2020年ねん6月16日にちから7月がつ14日にちまで関西かんさいテレビ放送ほうそう制作せいさく・フジテレビ系列けいれつで放送ほうそうされた火曜かよう21時じ枠わく「探偵たんてい・由利ゆり麟太郎りんたろう」の第だい一いち話わとしてドラマ化かされた。映像えいぞう化かはこれが初はじめてとなる。

負傷ふしょうした瑠璃子るりこが発見はっけんされるのが長持ながもちでなく冷蔵庫れいぞうこに変更へんこうされ、届とどけ先さきが瑛一えいいちの住すむ家いえではなくリサイクル処理しょり場じょうに変更へんこうされたほか、原作げんさくでは日下くさか家かに住すむ書生しょせいの宮園みやその魁さきがけ太ふとが、ドラマでは瑛あきら造づくりが瑠璃子るりこを強姦ごうかんし産うませた子こで引ひきこもりの少年しょうねんという設定せっていに変更へんこう、八はち十じゅう川がわの死因しいんが瑛あきら造づくりと湯浅ゆあさが行おこなった人体じんたい実験じっけんに耐たえかねての自じ死しという設定せっていに変更へんこうされるなど、随所ずいしょにストーリーの改変かいへんが見みられる。

収録しゅうろく書籍しょせき

• 『花はな髑髏しゃれこうべ』（1976年ねん4月がつ20日はつか（初版しょはん）角川かどかわ文庫ぶんこ 緑みどり304-32、ISBN 4-04-130432-6）

  三みっつの短編たんぺんを収録しゅうろくしている。表題ひょうだい作さくは「白しろ蝋ろう変化へんか」「焙烙ほうろくの刑けい」の後のちに収録しゅうろくされている。

• 『花はな髑髏しゃれこうべ』（2020年ねん6月12日にち（新装しんそう版ばん）角川かどかわ文庫ぶんこ よ5-47、ISBN 978-4-04-109613-0）

  内容ないようは初版しょはんと同様どうよう。

参考さんこう資料しりょう

• 横溝よこみぞ正史せいし『花はな髑髏しゃれこうべ』（14版はん）角川かどかわ文庫ぶんこ、1984年ねん10月がつ20日はつか。緑みどり304-32。 

外部がいぶリンク

• 横溝よこみぞ正史せいしの名めい探偵たんてい〈由利ゆり麟太郎りんたろう〉シリーズ。妖艶ようえんさと残虐ざんぎゃくさ、波瀾はらん曲折きょくせつに富とんだミステリ全ぜん３篇へん『花はな髑髏しゃれこうべ』 – KADOKAWA文芸ぶんげいWEBマガジン カドブン
• 花はな髑髏しゃれこうべ - 横溝よこみぞ正史せいし – 国内外こくないがいのミステリー・推理すいり小説しょうせつのデータベースサイト Aga-search.com
• 探偵たんてい・由利ゆり麟太郎りんたろう 第だい1回かい　2020年ねん6月がつ16日にち(火)か放送ほうそう 横溝よこみぞ正史せいし原作げんさくドラマ　名めい探偵たんていへ殺ころしの挑戦ちょうせん状じょう　花はな髑髏しゃれこうべに隠かくされた謎なぞ – フジテレビジョン