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いんきょう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

いんきょう(いんきょう)とはとういんひとつ。現存げんそんする最古さいこいんである。『きりいんけい韻書いんしょ音韻おんいん体系たいけいたくみに図式ずしきしており、ちゅう古音こおん復元ふくげんさいして参考さんこうとされることがおおい。

概要がいよう

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みなみそうちょう麟之入手にゅうしゅし、50ねんおよ研究けんきゅうのち序文じょぶんをつけて刊行かんこうした(初刊しょかん1161ねんだいかん1197ねんだいさんかん1203ねん)。

いんきょう』をいつだれつくったかはわからない。ちょう麟之のじょれい[1]によると、本来ほんらい名前なまえは『ゆびげんいんきょう』とったらしいが[2]そうせいいみなげんろう」の「げん」およびそうつばさふとし祖父そふ)のいみなたかし」と同音どうおんの「かがみ」をけて『ゆびほろいんかん』、りゃくして『いんかん』とあらためた。ちょう麟之の時代じだいにはすでに「かがみ」をける必要ひつようがなかったので『いんきょう』にもどしたという。このはなしからわかることは、『いんきょう』がおそくともきたそう成立せいりつ以前いぜんかれたということである(そう書物しょもつなら最初さいしょからいみな抵触ていしょくするようなだいをつけなかっただろうから)。『いんきょう』が『こういん』よりふるいことになるが、現在げんざいる『いんきょう』には『こういん』の影響えいきょうられる。たとえばいんいんは欣韻になっているし(しかしけいいんうついんになっていない)、諄韻・桓韻・ほこいんけている。

とういんは『いんきょう』のほかにもあるが、『いんきょう』はとくに保守ほしゅてき特徴とくちょうつ。すなわち43まい使つかって、『こういん』のほぼすべてのしょういんうえことなる位置いち表示ひょうじしている。また、入声にっしょう対応たいおうするごえおなうえかれる。ほかのとういんでは『こういん』の複数ふくすういんをまとめたり、入声にっしょうかげごえいんはいされたりしている。

内容ないよう

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いんきょう』はだい一転いってんからだいよんじゅうさんてんまでの43まいけられている。おおきくじゅうろくにまとめられるようはいされており(じゅうろくしるされていない)、かくひらけあいなどのちがいにより1まいから7まいによって構成こうせいされる。その内訳うちわけつう(2てん)・こう(1てん)・やめ(7てん)・ぐう(2てん)・かに(4てん)・臻摂(4てん)・やま(4てん)・こう(2てん)・はて(2てん)・かり(2てん)・宕摂(2てん)・梗摂(4てん)・ながれ(1てん)・ふか(1てん)・咸摂(3てん)・曾摂(2てん)である。

1まいてん内外ないがいてんおよびひらけあいによって、みぎはしたとえば「うちてんだいいちひらく」のように表題ひょうだいしめされる。またよこじくこえはは音節おんせつあたま子音しいん)によって23れつかれる。かくれつにはこえははななおと清濁せいだく種類しゅるいしるされている。ななおとならじゅんみぎから「唇音しんおんしたおんきばおん歯音しおんのどおんはんしたおんはん歯音しおん」のじゅんである。さんじゅうろく字母じぼ名称めいしょうしるさない(じょれいには字母じぼ名称めいしょうしるす)。またたてじくは16だんあるが、まず四声しせいによってけられ、さらにそれぞれをとうよびによって4だんけている。たてじく左端ひだりはしには対応たいおうする『こういん』のいんしめされている。

この16×23の格子こうしかく枡目ますめ対応たいおうするおとがある場合ばあい漢字かんじ原則げんそくとして『こういん』のしょういん)がかれ、おとがない場合ばあいえんえがかれる。

 

 近年きんねん、いしゐのぞむ(石井いしいのぞむ)の新説しんせつではいんきょう曼荼羅まんだらとして以下いかのやうにする。「ア」を一等いっとう根本こんぽんおんとして、うちころがしてイ、ウにめぐるのがさんとうとなり、そところがしてエ、オにめぐるのをとうとする。丁度ちょうど最古さいこ和字わじ五十音ごじゅうおんが「イオアエウ」とれっするのが一等いっとうのアを中心ちゅうしんとしてりょうはしさんとうのイ、ウ、そところがして一等いっとうさんとうとのあいだかれるエ、オがとうとなる。おな旋法せんぽう扁平へんぺいにしたのがいんきょうひとしだいである。大日だいにちけいなどの曼荼羅まんだら旋法せんぽうにそのほうえる。このいしゐせつ密教みっきょう文化ぶんかなかいんきょうかいしてゐる。 [3]

テキスト

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日本にっぽんでは写本しゃほんつたわっていたが、とおるろく戊子ぼし(1528ねん)に出版しゅっぱんされ、江戸えど時代じだいにこのほん覆刻ふっこくしたほん漢字かんじおん研究けんきゅう中心ちゅうしんになった。『いんきょう』を使つかった江戸えど時代じだい有名ゆうめい研究けんきゅうとして文雄ふみおすりこういんきょう』がある。

中国ちゅうごくでは『いんきょう』ははやくに散佚さんいつした。みなみそうていきこりつうこころざしななおとりゃく引用いんようする「なな音韻おんいんかん」は実質じっしつてきに『いんきょう』とどう内容ないようだったが、きたそう司馬しばひかりさくとされていた『きりいんゆびてのひら』のほうふるいとおもわれていたため[4]、あまり重視じゅうしされなかった。きよしすえ中国ちゅうごくうしなわれたほん日本にっぽん収集しゅうしゅうしたはじむ庶昌楊守けいらによって出版しゅっぱんされた『いっ叢書そうしょ』に『いんきょう』がふくまれ、これによって中国ちゅうごくでも存在そんざいられるようになった。

いんきょうじゅうねん

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いんきょう』が難解なんかいであり、理解りかいに10ねんようすることから、「理解りかいすることが、きわめてむずかしいこと」という意味いみつ「いんきょうじゅうねん」というよん熟語じゅくごがある[5]

関連かんれん文献ぶんけん

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  • 馬渕まぶち和夫かずおいんきょう校本こうほんこういん索引さくいん日本にっぽん学術がくじゅつ振興しんこうかい、1954ねん 
いんきょう』のテキストを比較ひかくして本来ほんらいかたち復元ふくげんしようとしたもの。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 現在げんざいほんには「じょさく」とあるが、じょわりには「いんかんじょれいおわり」とあるので、「じょれい」がただしいとわかる。
  2. ^ いんきょうじょれいすんで而得友人ゆうじん授『ゆびほろいんきょういちへん(「ほろせいめいうえいち)」
  3. ^  やまと漢音かんおん旋法せんぽうかい いしうみあお 香港ほんこんちゅうぶん大學だいがく中國ちゅうごくぶん研究けんきゅう」2008ねんだい1そうだい25)。  https://www.cuhk.edu.hk/ics/clrc/chinese/pub_scl_catalogues_25.html   https://www.cuhk.edu.hk/ics/clrc/scl_25/ishiwi.pdf       やまと内外ないがいてんさつ いしゐのぞむ 長崎総合科学大学ながさきそうごうかがくだいがく紀要きよう 47 (1), 2007   https://cir.nii.ac.jp/crid/1050845762397650944   
  4. ^ 四庫全書総目提要』は『きりいんゆびてのひら』について「其有なりしょでんしゃおもんみこう此書ため最古さいこ」という
  5. ^ いんきょうじゅうねん(いんきょうじゅうねん)とは? 意味いみかた使つかかた - よん熟語じゅくご一覧いちらん”. goo辞書じしょ. 2024ねん2がつ17にち閲覧えつらん