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四声しせい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

四声しせい(しせい)とは、中国ちゅうごく声調せいちょうを、中古ちゅうこ漢語かんご調しらべるいもとづいての4種類しゅるい分類ぶんるいしたもの。音韻おんいんがくでは平声ひょうしょう(へいせい、ひょうせい、ひょうしょう)・上声じょうせい(じょうせい、じょうしょう)・去声きょしょう(きょせい、きょしょう)・入声にっしょう(にゅうせい、にっしょう)をいう。

現代げんだい中国語ちゅうごくご北方ほっぽう官話かんわ基礎きそとした普通ふつうばなし声調せいちょうよっつあるがゆえに「四声しせい」とばれることがあるが、中古ちゅうこ漢語かんごのものとはことなり、もと入声にっしょううしなわれて平声ひょうしょうふたつにかれ、陰平かげひら第一声だいいっせい)・陽平ようへいだいこえ)・上声じょうせいだいさんこえ)・去声きょしょうだい四声しせい)をいう。

概要がいよう

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言語げんごがくにおいて声調せいちょう(トーン、tone)とは、音節おんせつかかわるおと高低こうていちがいのことをいい、中国ちゅうごくはこの高低こうてい変化へんかのパターンのちがいをかたり弁別べんべつもちいている。しかし、音韻おんいんがくにおいては、音韻おんいん分類ぶんるい整理せいりした結果けっか高低こうてい変化へんかパターンだけではなく、おとの促舒(まるかびるか)をもふくめて声調せいちょう認識にんしきしており、入声にっしょう音節おんせつまつが -p・-t・-k・-h といったうちやぶおとわるみじかまった音節おんせつ分類ぶんるいしている[1]

中国ちゅうごくの1音節おんせつ(1)にはかならず1つの声調せいちょうがあり、その高低こうていのパターンを調しらべ(ちょうち)とぶ。そのたかさのがりがりは、現在げんざい5しきばれるてい(1)・はんてい(2)・なか(3)・はんだか(4)・だか(5)の数値すうちわせてあらわされる。そしておな調ちょうをもつ音節おんせつ音節おんせつまつの促舒のちがいを帰納きのうして分類ぶんるいしたものが調しらべるい(ちょうるい)である。

中古ちゅうこ漢語かんごにおいては4つの調しらべるいがあったが、その調ちょう音韻おんいん変化へんかがおき、中古ちゅうこ以降いこう声調せいちょうは、これをかげ調ちょう調ちょうけた八声やこえ(はっせい)あるいは四声しせいはち調ちょう(しせいはっちょう)によって分類ぶんるいされている。

四声しせいを2種類しゅるい分類ぶんるいする方法ほうほうとしては、平仄ひょうそく舒促がある。前者ぜんしゃ四声しせいのうち、平声ひょうしょう以外いがいみっつをまとめて仄声としたもので、とく漢詩かんし重視じゅうしされている。後者こうしゃ入声にっしょう以外いがいみっつを舒声、入声にっしょうを促声としたもので、音韻おんいんがく見地けんちからは舒促でけたほう便利べんりである。

ちゅう古音こおんにおける声調せいちょう

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四声しせいという名称めいしょうは、六朝りくちょう時代じだいみなみひとしりょう沈約(441ねん~513ねん)らが中国ちゅうごく声調せいちょうがあることにづき、たいらうえいれづけたことにはじまるとされる。『はりしょ』沈約でんには沈約が『四声しせい』をつくったとあり、はりたけみかどしゅうに「四声しせいとはなにか」と質問しつもんし、「天子てんし聖哲せいてつ」(てん平声ひょうしょう上声じょうせいきよし去声きょしょうあきら入声にっしょう)とこたえたエピソードがっている。たいらうえいれとは内容ないよう言葉ことばではなく、その代表だいひょうである。ただし、ぜんにご上声じょうせい去声きょしょうへの流入りゅうにゅうにごじょうへん)の結果けっか現在げんざいおおくの中国語ちゅうごくご方言ほうげんで「うえ去声きょしょう発音はつおんされる。このため習慣しゅうかんてき声調せいちょうあらわすときのみ「うえ」を上声じょうせいむ(普通ふつうばなしでは shǎng)。

調しらべ

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ちゅう古音こおん四声しせい調しらべ調しらべるい実際じっさいおと)がどのようなものであったかについては、学者がくしゃによりせつかれる。たとえば平山ひらやま久雄ひさおは、六朝りくちょうからとうだい中頃なかごろまでの四声しせい調しらべは「平声ひょうしょう:クセし。なるくだ調ちょう:*31(こえはは清音せいおん);ていたいら調ちょう:*11(こえはは濁音だくおん)」「仄声:クセり」「上声じょうせい:こうのぼる調しらべ、緊喉、みじかめ:*’35」「去声きょしょう:ていのぼり調ちょう、ややながい:*24」「入声にっしょう:たん促調:*4(こえはは清音せいおん):*2(こえはは濁音だくおん)」であったと推定すいていしている[2]が、異説いせつおおい。

当時とうじ調しらべ推定すいていする材料ざいりょうとなる文献ぶんけん資料しりょうはいろいろある。たとえば、日本にっぽん安然あんねん悉曇しったんぞう』(990ねんまき5には「平声ひょうしょうちょくていゆうけいゆうじゅう上声じょうせいちょくのぼるゆうけいじゅう去声きょしょうやや引、けいじゅう入声にっしょうみちどめうちそと平中たいらなか怒声どせいあずかじゅうべつ上中かみなかしげるおんあずかぶん」とある。

上古じょうこおんにおける声調せいちょう

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中国ちゅうごく文学ぶんがくにおいて、「声調せいちょう」の存在そんざいはじめて明確めいかく言及げんきゅうしたのは六朝りくちょう時代じだい沈約であり、それ以前いぜん上古じょうこ中国語ちゅうごくご声調せいちょうがあったかどうかがあきらかではない。この問題もんだいについてふるくからたくさんの主張しゅちょうがなされてきたが、その根拠こんきょとなるのは『詩経しきょう』の押韻おういんである。『詩経しきょう』の押韻おういん四声しせい調しらべてみると、平声ひょうしょう上声じょうせい去声きょしょう押韻おういんされたり、去声きょしょう入声にっしょう押韻おういんされたりと一定いっていしない。『詩経しきょう』の押韻おういん調しらべて音韻おんいんがく基礎きそきずいたきよしだい考証こうしょう学者がくしゃ顧炎たけし言語げんご遅速ちそく軽重けいちょう押韻おういん平仄ひょうそくになっていったと主張しゅちょうし、平声ひょうしょうもっとながく、うえがこれにぎ、入声にっしょうきゅうまるおととしている。また去声きょしょう入声にっしょう押韻おういんされ、ちゅう古音こおんにおいても「えき」(いれ:エキ・:イ)・「だし」(いれ:シュツ・:スイ)・「あく」(いれ:アク・:ヲ)というようににゅうふたつの声調せいちょうをもつがあるように去声きょしょう入声にっしょうちか関係かんけいにあることにも注目ちゅうもくしている。

このことからだんだまさいたいらうえいれさんこえであって去声きょしょうはなかったとし、ただしたいらいれごえうえ去声きょしょうはなかったというせつとなえている。これをけて現代げんだいおうつとむは『漢語かんご稿こう』においてたいらいれこえだい分類ぶんるいがさらにおとながさで、長短ちょうたんるいかれる四声しせいであったというせつとなえた。現代げんだい中国語ちゅうごくごにおける声調せいちょうおとたかさだけをしゅたる特徴とくちょうとするが、古代こだい中国語ちゅうごくごにおいてはおとながさもしゅたる要素ようそとしていたとし、長平ながだいごえ平声ひょうしょうとなり、たん平声ひょうしょう上声じょうせいちょう入声にっしょう去声きょしょうたん入声にっしょう入声にっしょうになったとしている。

現代げんだいおんにおける声調せいちょう

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普通ふつうばなし声調せいちょう

現代げんだいしょ方言ほうげん声調せいちょう中古ちゅうこおん四声しせい陰陽いんよう2るいけた四声しせいはち調ちょうはちごえによって分類ぶんるいされている。中古ちゅうこおんから現代げんだいおんいたるまで調しらべ変化へんかははげしく、かく方言ほうげんにおいてかなりの差異さいられるが、調しらべるい変化へんかすくなく、こえはは清濁せいだくおうじて陰陽いんように2るいかれたことをおおきな特徴とくちょうとするのみである。

一般いっぱんてきかげ調ちょうたか調子ちょうし調ちょうひく調子ちょうしであるが、かげ調ちょう清音せいおんに、調ちょう濁音だくおん由来ゆらいする。これは濁音だくおん清音せいおんくらべてひく調子ちょうしからはじまるためで、中原なかはらにおいて清濁せいだく区別くべつうしなわれるようになると、はじめのおとたかさのちがいとして認識にんしきされるようになったとかんがえられている。現代げんだいくれ紹興しょうこう方言ほうげん閩語うしおしゅう方言ほうげんはすべての調しらべるい陰陽いんよう2るいかれたはちこえであるが、かなりきっちりと陰陽いんよう清濁せいだく区別くべつ対応たいおうしている。

平声ひょうしょうおおくの方言ほうげんで2るいかれており、これは平声ひょうしょうおとながさが調しらべるいくらべて比較ひかくてきながく、はっきりとした発音はつおんであったためとかんがえられている。とうだいにはかげ平声ひょうしょう平声ひょうしょう区別くべつしょうじていたとされている。これらの調しらべるい分化ぶんか合併がっぺい仕方しかたちがいは、方言ほうげん分類ぶんるいするさい重要じゅうよう要素ようそとしてあつかわれる。

入声にっしょうについて、すすむ中原なかはら官話かんわ一部いちぶなどでは、音節おんせつまつ促音そくおん消滅しょうめつしてしまったものの、調しらべちがいとして入声にっしょう区別くべつされているれいがある[3]。また、ドンガン甘粛かんせい方言ほうげんのように、単音たんおんぶしでは調しらべちがいがなくなっても、音節おんせつ複数ふくすうわさったとききる声調せいちょう変化へんかちがいとして調しらべるい保持ほじしている方言ほうげんれいもある[4]

現代げんだい中国語ちゅうごくご普通ふつうばなしでは、平声ひょうしょう陰陽いんよう2るいかれて陰平かげひらごえ第一声だいいっせい平声ひょうしょうだいこえとなり、上声じょうせいおおくはだいさんこえ去声きょしょう上声じょうせい一部いちぶだい四声しせいとなり、入声にっしょううしなわれている。

ちゅう古音こおん四声しせい主要しゅよう方言ほうげん声調せいちょう対照たいしょうひょう
方言ほうげん 地名ちめい 平声ひょうしょう 上声じょうせい 去声きょしょう 入声にっしょう 声調せいちょうすう
きよし にご きよし にご きよし にご きよし にご
つぎにご ぜんにご つぎにご ぜんにご つぎにご ぜんにご つぎにご ぜんにご
北方ほっぽう 北京ぺきん 陰平かげひら55 陽平ようへい35 上声じょうせい214 去声きょしょう51 陰平かげひら, 陽平ようへい, 上声じょうせい, 去声きょしょう 去声きょしょう 陽平ようへい 4
すみみなみ 陰平かげひら213 陽平ようへい42 上声じょうせい55 去声きょしょう21 陰平かげひら 去声きょしょう 陽平ようへい 4
西安しーあん 陰平かげひら21 陽平ようへい24 上声じょうせい53 去声きょしょう44 陰平かげひら 陽平ようへい 4
あららぎしゅう 陰平かげひら31 陽平ようへい53 上声じょうせい442 去声きょしょう13 陽平ようへい 4
ドンガン(甘粛かんせい方言ほうげん) 平声ひょうしょう24 上声じょうせい51 去声きょしょう44 平声ひょうしょう 3
成都せいと 陰平かげひら44 陽平ようへい41 上声じょうせい52 去声きょしょう13 陽平ようへい 4
南京なんきん 陰平かげひら31 陽平ようへい13 上声じょうせい22 去声きょしょう44 入声にっしょう5 5
ふとしはら 平声ひょうしょう11 上声じょうせい53 去声きょしょう45 かげいれ2 いれ54 5
上海しゃんはい 陰平かげひら52 舒113 かげじょう335 舒113 かげじょう335 舒113 かげいれ5 いれ23 5
蘇州そしゅう 陰平かげひら44 陽平ようへい24 かげじょう52 じょう31 かげ412 31 かげいれ4 いれ2 7
紹興しょうこう 陰平かげひら53 陽平ようへい31 かげじょう335 じょう113 かげ33 11 かげいれ45 いれ12 8
歙県 陰平かげひら31 陽平ようへい44 上声じょうせい35 かげ324 22(33) 入声にっしょう21 6
寿ことぶきあきら 陰平かげひら12 陽平ようへい52 かげじょう24 じょう534 去声きょしょう33 かげにゅうかぶと55,かげにゅうおつ3 いれ31 8
ちょうすな 陰平かげひら33 陽平ようへい13 上声じょうせい41 かげ55 21 入声にっしょう24 6
みなみあきら 陰平かげひら42 かげ 陽平ようへい24 上声じょうせい213 かげ55 21 かげいれ5 いれ21 7
きゃく うめしゅう 陰平かげひら44 陽平ようへい11 上声じょうせい31 去声きょしょう52 かげいれ21 いれ4 6
ふくしゅう 陰平かげひら44 陽平ようへい52 上声じょうせい31 かげ213 242 かげいれ23 いれ4 7

泉州せんしゅう[5]

陰平かげひら33 陽平ようへい24 かげじょう55 じょう33(=陰平かげひら)あるいは22 去声きょしょう41 かげいれ55 いれ24 6/7
廈門 陰平かげひら55 陽平ようへい24 上声じょうせい51 かげ11 33 かげいれ32 いれ5 7
うしおしゅう 陰平かげひら33 陽平ようへい55 かげじょう53 じょう35 かげ11 31 かげいれ2 いれ5 8
広州こうしゅう 陰平かげひら55 陽平ようへい21 かげじょう35 じょう13 かげ33 22 上陰かみかげいれ55, 下陰したかげいれ33 いれ22 9
みなみやすし 陰平かげひら41 陽平ようへい52 かげじょう33 じょう24 かげ55 22 上陰かみかげいれ55, 下陰したかげいれ33 上陽じょうようにゅう24 しもいれ22 10

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 現代げんだいおんでは例外れいがいがある。
  2. ^ 平山ひらやま久雄ひさお唐詩とうし韻律いんりつ――漢文かんぶん訓読くんどく彼方かなた――」(『東京大学とうきょうだいがく中国語ちゅうごくご中国ちゅうごく文学ぶんがく研究けんきゅうしつ紀要きよう 19』pp.183-201, 2016ねん11月)p.191
  3. ^ はじめまんはるちょ、『しょうらくかた言語げんごおん研究けんきゅう』、pp56-59、2010ねん中国ちゅうごく社会しゃかい科学かがく出版しゅっぱんしゃ北京ぺきんISBN 978-7-5004-8905-4
  4. ^ 単音たんおんぶしでは調しらべるいは3しゅえるが、複音ふくおんぶし声調せいちょう変化へんかパターンでは4しゅがまだ保持ほじされている。海峰みほ、『ちゅうひがしげん研究けんきゅう』、p36、2003ねんしん疆大がく出版しゅっぱんしゃ、ウルムチ、ISBN 7-5631-1789-X
  5. ^ 當代とうだい泉州せんしゅうおん字彙じいは (すくなくとも2009ねん2がつ20日はつかまで) つぎよういてる: 「...
    • 陰平かげひら(1) 33 蜘翻ぐん高東こうとうけん乖堅
    • 陽平ようへい(2) 24 ぐんはたどうはし含凡きんたん
    • かげじょう(3) 55 とうかえしむごしん抵滾あまね
    • じょう(4) 22 ある 33 たけちか簿どう在社ざいしゃ
    • かげ(5) 41 泛晉こまよいせん霸宋
    • (6) 41 でんみとめきょうがいだいまんじょねん
    • かげいれ(7) 55 ほうしめしつぶくしずくしつひつじょう
    • いれ(8) 24 にちばつふく習碟きょくざつ...」

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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