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N-1

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
N-1ロケット

機能きのう 有人ゆうじん月面げつめん探査たんさ
製造せいぞう S.P.コロリョフ ロケット&スペース コーポレーション エネルギア
開発かいはつこく ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦れんぽう
おおきさ
ぜんこう 105 m (344.5 ft)
直径ちょっけい 17 m (55.8 ft)
質量しつりょう 2,735,000kg (6,030,000lb)
段数だんすう 5だん
積載せきさいりょう
LEOへのペイロード 75,000 kg (165,000 lb)
実績じっせき
状態じょうたい 引退いんたい
射場いば LC-110, バイコヌール宇宙うちゅう基地きち
そう回数かいすう 4かい
成功せいこう 0かい
失敗しっぱい 4かい
はつ 1969ねん2がつ21にち
最終さいしゅう 1972ねん11月23にち
だい1だん - ブロック A
1だん名称めいしょう ブロック A
1だん全長ぜんちょう
1だん直径ちょっけい
エンジン 30NK-15
推力すいりょく 5,130,000 kgf (50.3 MN)
推力すいりょく 330びょう
燃焼ねんしょう時間じかん 125びょう
燃料ねんりょう RP-1/液体えきたい酸素さんそ
だい2だん - ブロック B
2だん名称めいしょう ブロック B
2だん全長ぜんちょう
2だん直径ちょっけい
エンジン 8NK-15V
推力すいりょく 1,431,680 kgf (14.04 MN)
推力すいりょく 346びょう
燃焼ねんしょう時間じかん 120びょう
燃料ねんりょう RP-1/液体えきたい酸素さんそ
だい3だん - ブロック V
3だん名称めいしょう ブロック V
3だん全長ぜんちょう
3だん直径ちょっけい
エンジン 4NK-21
推力すいりょく 164,000 kgf (1.61 MN)
推力すいりょく 353びょう
燃焼ねんしょう時間じかん 370びょう
燃料ねんりょう RP-1/液体えきたい酸素さんそ
だい4だん - ブロック G
4だん名称めいしょう ブロック G
4だん全長ぜんちょう
4だん直径ちょっけい
エンジン 1NK-19
推力すいりょく 45,479 kgf (446.00 kN)
推力すいりょく 353びょう (3,460 N·s/kg)
燃焼ねんしょう時間じかん 443びょう
燃料ねんりょう RP-1/液体えきたい酸素さんそ
だい5だん - ブロックD
5だん名称めいしょう ブロックD
5だん全長ぜんちょう
5だん直径ちょっけい
エンジン 1RD-58
推力すいりょく 8,500 kgf (83.36 kN)
推力すいりょく 349びょう (3,420 N·s/kg)
燃焼ねんしょう時間じかん 600びょう
燃料ねんりょう RP-1/液体えきたい酸素さんそ

N-1ロシア:Н1エーヌ・アヂーン)は、つきソ連それんじん宇宙うちゅう飛行ひこうおくるようにつくられたソビエト連邦れんぽうロケットである。全長ぜんちょうやく100メートル。アメリカのサターンVロケット匹敵ひってきするおおきなロケットで、てい軌道きどうに95トンものペイロード投入とうにゅうできるよう設計せっけいされた。しかしながら、4かい試験しけんげすべてに失敗しっぱいし、実用じつようのめどがたないまま1974ねん計画けいかく放棄ほうきされた。

概要がいよう

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N-1の開発かいはつつき火星かせいへの有人ゆうじん宇宙うちゅう飛行ひこう宇宙うちゅうステーション大型おおがた軍事ぐんじ衛星えいせい打上うちあげのために1956ねんからはじまった。米国べいこく1961ねん有人ゆうじん月面げつめん着陸ちゃくりく目的もくてき発表はっぴょうしたのち1964ねんに、N-1はこの目的もくてき転換てんかんした。しかし、予算よさん十分じゅうぶん供給きょうきゅうされなかったため、計画けいかく成功せいこういたらなかった。

ソ連それんせい宇宙うちゅうロケット同様どうよう小型こがたのロケットエンジンを多数たすうたばねることおおきな推力すいりょくクラスターロケット方式ほうしきっているが、N-1のだい一段いちだんではそのかずは30にもおよび、それらを同期どうき制御せいぎょすること技術ぎじゅつじょう最大さいだい課題かだいであった。現在げんざい技術ぎじゅつをもってしても、それだけのかずのロケットエンジンの同期どうき制御せいぎょはきわめて困難こんなんである[1]

N-1では多数たすうのエンジンを制御せいぎょするためにKORDシステムが開発かいはつされた。ひとつのエンジンが停止ていしすると自動的じどうてき中心ちゅうしんじくはさんで反対はんたいがわのエンジンを停止ていししてバランスをとるとともに、のエンジンの燃焼ねんしょう時間じかん延長えんちょうして性能せいのう確保かくほする制御せいぎょシステムで、4つのエンジンが停止ていししても対応たいおうできるようになっていた。さらに外周がいしゅうの24のエンジンの一部いちぶ機体きたい鉛直えんちょくじくたいして、角度かくどをつけて装着そうちゃくされた。これらのエンジンの出力しゅつりょく調整ちょうせいすることでロール回転かいてんのコントロールも可能かのうであった。ただし3号機ごうき(N-1/6L)ではこのシステムでも制御せいぎょしきれないロール回転かいてん発生はっせいしたため、のちにステアリングエンジンを追加ついかした。

テストのための資金しきん不足ふそく技術ぎじゅつてき困難こんなんのため、4かいおこなわれたテスト飛行ひこうはいずれも成功せいこうせず、すべだい1だん分離ぶんりまえ失敗しっぱいした。もっとなが飛行ひこうは107びょうで、だい1だん分離ぶんり直前ちょくぜん爆発ばくはつした。テスト飛行ひこうは、最初さいしょの2かい1969ねん、3かい1971ねんで、最後さいご飛行ひこう1972ねんおこなわれた。

1974ねん5月にソ連それん有人ゆうじんがつ着陸ちゃくりく計画けいかく(L3計画けいかく)は中止ちゅうしされ、これにつづいてN-1の開発かいはつ同年どうねん8がつ放棄ほうきされた。さらなるテスト飛行ひこうそなえて用意よういされていた2のN-1Fは廃棄はいきされ、残骸ざんがい避難ひなんしょおよ貯蔵ちょぞう小屋こやとして使用しようされた。N-1FようのエンジンであるNK-33破棄はきされたはずであったが、放射ほうしゃせい廃棄はいきぶつのカバーをかけて破棄はきされずにのこっていたものが発見はっけんされ、試運転しうんてん結果けっか、まだうごくのみならず、良好りょうこう性能せいのうしめしたため、2005ねん民間みんかんのロケット開発かいはつ使用しようされることになった。このエンジンをさい利用りようする計画けいかく予定よていよりもおくれたが、2013ねんにこのエンジン2を1だん使用しようするアンタレスロケットげられ、商業しょうぎょう利用りよう開始かいしされた。

つき計画けいかく

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1961ねん5がつにアメリカはつき有人ゆうじん着陸ちゃくりく計画けいかく発表はっぴょうしたときセルゲイ・コロリョフ現在げんざいソユーズとしてられる新型しんがた宇宙船うちゅうせんもとにしたつき計画けいかく提案ていあんした。これはソユーズとつき着陸ちゃくりくせんやエンジンや燃料ねんりょうふくすうかいけてげ、軌道きどうじょうわせるというあんだった。 この方法ほうほう宇宙船うちゅうせんげに必要ひつようなロケットが1げるよりも小型こがたですむ利点りてんがあったが、それでも必要ひつようなペイロードがおおきすぎて既存きそんのソビエトのロケットの能力のうりょくではおよばなかった。コロリョフは50トンのペイロードをげるため最終さいしゅうてき製造せいぞうされたN-1の設計せっけいよりもはるかに小型こがたのN-1ロケットの開発かいはつ打診だしんした。

動力どうりょくげんはソビエトのロケットエンジンの設計せっけい大半たいはんっていたヴァレンティン・グルシュコしん設計せっけいしたUDMHN2O4推進すいしんざいとするRD-270だった。

このぜるだけで爆発ばくはつてき燃焼ねんしょうするハイパーゴリック推進すいしんざいはグルシュコが設計せっけいした既存きそん複数ふくすうのICBMに幅広はばひろ使用しようされていたエンジンの様式ようしきだった。しかしながらこのUDMH/N2O4推進すいしんざいわせはケロシン/液体えきたい酸素さんそよりも推力すいりょくひくかったのでコロリョフはハイパーゴリック推進すいしんざいわるべつ現実げんじつてき高性能こうせいのう設計せっけい必要ひつようになるとかんじた。さら重要じゅうようなことにコロリョフは有人ゆうじん宇宙船うちゅうせん安全あんぜんせいたかめるため無害むがい推進すいしんざい必要ひつようせいかんじていた。

この意見いけんちがいはグルシュコとコロリョフの仲違なかたがいに発展はってんした。両者りょうしゃ確執かくしつ原因げんいんはそれだけではなく、過去かこにグルシュコのうそ告発こくはつによりコロリョフが強制きょうせい収容しゅうようしょおくりになったことや、グルシュコがコロリョフにくら不遇ふぐうあつかいをされているとかんじていたことなどが背景はいけいにある。

1962ねんまりを打開だかいするため開催かいさいされた会議かいぎでコロリョフの意見いけん採用さいようされた。グルシュコはこのような設計せっけいこと反対はんたいしたため、コロリョフは最終さいしゅうてきあきらめてOKB-276のジェットエンジンの設計せっけいしゃであるニコライ・ドミトリエヴィチ・クズネツォフ支援しえんしてもらうことめた。クズネツォフはロケットエンジンの設計せっけい経験けいけんとぼしく、非常ひじょう小型こがたのNK-15エンジンを高度こうどおうじて最適さいてきした派生はせいがた計画けいかくされた。必要ひつよう推力すいりょくすために、複数ふくすうのNK-15を1だん周囲しゅういたばねて使用しようすること検討けんとうされた。

エンジンの内側うちがわひらかれる予定よていでブースターだん上部じょうぶ付近ふきん設置せっちされた吸気きゅうきこうから空気くうきおく予定よていだった。空気くうき燃料ねんりょうリッチの排気はいき混合こんごうされ燃焼ねんしょうすることで推力すいりょく増強ぞうきょうする仕掛しかけだった。環状かんじょうおおくのロケットエンジンのノズルを配置はいちするN-1の一段いちだんはトロイダル・エアロスパイクエンジンシステムを形成けいせいしていた。より一般いっぱんてきなエアロスパイクも同様どうよう研究けんきゅうちゅうだった。

問題もんだいてん

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サターンVとN1の比較ひかく.N1のほうみじかいが推力すいりょくおおきい。一方いっぽう、サターンVは液体えきたい水素すいそエンジンを2だんと3だん使用しようしているがN1は全段ぜんだんケロシンを使用しようするのでサターンVのほうがよりおもいペイロードを軌道きどう投入とうにゅうできる。実績じっせき対照たいしょうてきでサターンVは13かいげにすべ成功せいこうしたのにたいしてN1はすべ失敗しっぱいした。

燃料ねんりょう酸化さんかざい多数たすうのロケットエンジンへ供給きょうきゅうするために複雑ふくざつなポンプを必要ひつようとした。それにより脆弱ぜいじゃくとなり失敗しっぱい要因よういんとなった。さらにN-1のバイコヌール基地きち内陸ないりくにありおおきな部材ぶざい船舶せんぱく輸送ゆそうすることが出来できないので小分こわけにして鉄道てつどうはこび、現地げんちさいてした。その結果けっか複雑ふくざつし、推進すいしんざい供給きょうきゅうけい配管はいかんとタービンに起因きいんする破壊はかいてき振動しんどうと、やはり排気はいき流体りゅうたい力学りきがくてき問題もんだいからしょうずる機体きたいのロールじく傾斜けいしゃ真空しんくうキャビテーションをはじめとする問題もんだいまえ発見はっけんされず、その解決かいけつ必要ひつようとなった。

それらの技術ぎじゅつてき困難こんなん順番じゅんばん解決かいけつするため資金しきん不足ふそくしていたことによりN-1はすべての試験しけんげに失敗しっぱいした。12かい試験しけん計画けいかくなかで4かい無人むじん飛行ひこう計画けいかくすべて1だん分離ぶんりするまえ失敗しっぱいわった。もっともなが飛行ひこう最後さいご発射はっしゃされた107びょうだい1だん分離ぶんり直前ちょくぜんだった。

月面げつめん有人ゆうじん着陸ちゃくりくのN-1F計画けいかく中止ちゅうしされたのちも、アメリカのスカイラブ対抗たいこうする宇宙うちゅうステーションげにこのロケットを使用しようすること期待きたいされたが、皮肉ひにくなことにグルシュコの開発かいはつしたロケットが充当じゅうとうされることとなり、N-1F計画けいかくは1974ねん終了しゅうりょうした。2のN-1Fは当時とうじ準備じゅんび段階だんかいだったが中止ちゅうしされた。計画けいかく大型おおがたプロトンロケットのようなハイパーゴリック推進すいしんざい使用しようした「ヴァルカン」という概念がいねんで、1976ねんエネルギア/ブラン計画けいかく開始かいしされるまでつづいていた。

実績じっせき

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1969/2/21 1号機ごうき(N-1/3L)
68びょうだい一段いちだんぜんエンジンの停止ていし
原因げんいん:KORDシステムのエラー。出力しゅつりょく調整ちょうせいタイミングのあやまりから振動しんどうしょうじ、液体えきたい酸素さんそパイプを破壊はかい火災かさい発生はっせいした。
1969/7/3 2号機ごうき(N-1/5L)
発射はっしゃじゅうすうびょうだい一段いちだんぜんエンジン停止ていし
原因げんいん金属きんぞくへんがターボポンプにはいんだためエンジン停止ていし点火てんかの0.25びょうエンジンNo.8のターボポンプにはいんだ金属きんぞくへん液体えきたい酸素さんそポンプが破裂はれつ停止ていしし、そのKORDシステムによって29のエンジンも停止ていしされた。ロケットは発射はっしゃだい落下らっかして爆発ばくはつした。
1971/6/26 3(N-1/6L)
おも改良かいりょうてん燃料ねんりょうラインへのフィルター設置せっち、エンジンルームの換気かんき装置そうち冷却れいきゃく装置そうち追加ついか発射はっしゃ直後ちょくごのKORDシステムによるエンジン停止ていし禁止きんし
発射はっしゃ50びょう分解ぶんかい
原因げんいん:エンジン後方こうほうでのスリップストリームによりロール回転かいてんしょう分解ぶんかい。エンジンには問題もんだいきなかった。
1972/11/23 4(N-1/7L)
おも改良かいりょうてん回転かいてんめるためのステアリングエンジンが追加ついか
発射はっしゃ107びょうだい一段いちだん爆発ばくはつ
原因げんいん振動しんどうにより燃料ねんりょうラインへくわわる負荷ふかけるためのプログラムが作動さどうしエンジンが停止ていし一部いちぶのエンジンは爆発ばくはつこした。
1974ねん8がつ N-1計画けいかく
5号機ごうき、6号機ごうき(N-1F)
おも改良かいりょうてん エンジンをNK-15からNK-33変更へんこう
ほぼ完成かんせいしていたものの、N-1計画けいかくりのため廃棄はいき

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ なおファルコンヘビーでは27のエンジンを制御せいぎょしている

出典しゅってん

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • N1” (英語えいご). Encyclopedia Astronautica. 2008ねん6がつ23にち閲覧えつらん
  • Matthew Johnson (2014-03-01). N-1: For the Moon and Mars A Guide to the Soviet Superbooster. ARA Press; First edition. ISBN 9780989991407. 

外部がいぶリンク

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