プロトン (ロケット)

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プロトンロケット
プロトンKによる国際こくさい宇宙うちゅうステーションザーリャモジュールのげ。バイコヌール宇宙うちゅう基地きち1998ねん11月20にち
基本きほんデータ
運用うんようこく ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦れんぽう
ロシアの旗 ロシア
開発かいはつしゃ OKB-52(クルニチェフ
使用しよう期間きかん 1965ねん - 現役げんえき
すう 430かい成功せいこう382かい
物理ぶつりてき特徴とくちょう
構成こうせい 3だん
そう質量しつりょう 707 トン
全長ぜんちょう 50 m
直径ちょっけい 4.2 m(コア部分ぶぶん
軌道きどう投入とうにゅう能力のうりょく
てい軌道きどう やく20,000 kg
200km / 51.6
静止せいし移行いこう軌道きどう やく5,000 kg
脚注きゃくちゅう
物理ぶつりてき特徴とくちょうはプロトンK (SL-13) がたのデータ。プロトンK・ブロックD (SL-12)およびプロトンM・ブリーズMは4段式だんしき構成こうせい
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プロトンロシア: Протон プラトーン、ラテン文字もじ表記ひょうきれい: Proton、「陽子ようし」の意味いみ)は、きゅうソ連それん開発かいはつされたようロケットである。別名べつめいとしてUR-500D-1SL-12SL-13などが存在そんざいする。

概要がいよう[編集へんしゅう]

OKB-52(だい52設計せっけいきょく、チェロメイ設計せっけいきょく)がおもICBMとして設計せっけいN2O4UDMHもちいた液体えきたいロケットエンジンを使用しようする。ソユーズL1計画けいかく有人ゆうじんがつ接近せっきん飛行ひこう計画けいかく)では無人むじんのテストであるゾンドのげに使つかわれた。有人ゆうじんがつ探査たんさ計画けいかく中止ちゅうしはそのだい推力すいりょくかし、惑星わくせい探査たんさサリュートミール国際こくさい宇宙うちゅうステーションひとしげ、現在げんざい静止せいし衛星えいせい商業しょうぎょう打上うちあげなどに使用しようされている。

すべてのプロトンロケットはモスクワにあるクルニチェフ国家こっか研究けんきゅう生産せいさん宇宙うちゅうセンター工場こうじょう製造せいぞうされている。バイコヌール宇宙うちゅう基地きちてられ、横倒よこだおしのまま鉄道てつどうてんまではこばれてから垂直すいちょくてられる[1]てんバイコヌール宇宙うちゅう基地きち200ばんてん使用しようされている。

2013ねん3がつ報道ほうどうによれば、アンガラ・ロケットがデビューし、打上うちあ成功せいこうりつ一定いっていのめどがついた2020ねん以降いこうには、有毒ゆうどく推進すいしんやく使つかうプロトンロケットは退役たいえきさせる方針ほうしんしめされた[2]。 プロトンロケットの商用しょうよう販売はんばいはインターナショナル・ローンチ・サービス (ILS) しゃおこなっている。

これはロシア企業きぎょうクルニチェフとエネルギア、べい企業きぎょうロッキード・マーティンあいだ設立せつりつされた企業きぎょうで、世界せかいでのプロトンロケットを使用しようした人工じんこう衛星えいせいげの権利けんり保有ほゆうしている。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

プロトンロケットには、3段式だんしきまたは4段式だんしきのタイプがある。1だん一見いっけんするとコアステージのまわりを補助ほじょロケットがかこんでいるようだが、中心ちゅうしんそこにエンジンをたないたんなる酸化さんかざいタンクで、その周囲しゅういRD-253現在げんざいは、推力すいりょく増強ぞうきょうがたのRD-275へ移行いこう)エンジンを装備そうびした6ほん燃料ねんりょうタンクがかこんだ特有とくゆう構造こうぞうつ。

1965ねん7がつ16にちからよく66ねん7がつ6にちまでに4げられた初期しょきがた (8K82/UR-500) は、RD-253エンジン6の1だんとRD-0210エンジン4の2だんつ2段式だんしきであったが、プロトンK (SL-13) からはRD-0212エンジン1の3だん構成こうせいになっている。3段式だんしきのプロトンKはおもてい軌道きどう人工じんこう衛星えいせいようとして使つかわれる。

ルナ計画けいかくやゾンド計画けいかく、その静止せいし軌道きどうまたはそれをえる軌道きどうへの投入とうにゅう計画けいかくには、N1ロケット5だんとして開発かいはつされたブロックDをくわえた4段式だんしきのプロトンK・ブロックD (SL-12) が使つかわれる(プロトンKの4だんはブロックDまたはブロックDM(RD-58エンジン1)を使用しよう)。4段式だんしきのプロトンKは静止せいしトランスファ軌道きどうやく4.8トンの能力のうりょくをもつ。

プロトンM・ブリーズM (Proton M / Briz M) はプロトンKの改良かいりょうがたで、2001ねん4がつにデビューした。フェアリングを5mに大型おおがたし、1だんエンジンの推力すいりょく増強ぞうきょうするとともに飛行ひこう制御せいぎょシステムをデジタルした、また4だんブリーズM(S5.98Mエンジン1)に変更へんこう能力のうりょく静止せいしトランスファ軌道きどうやく5.5トンにまで向上こうじょうした。なお、2007ねん7がつには機体きたい軽量けいりょうするなどして能力のうりょく強化きょうかした増強ぞうきょうがたプロトンM(Proton-M Enhanced)がデビューした。

プロトン K[編集へんしゅう]

プロトン K
(プロトン8K82K)

プロトン K(プロトン8K82K)は燃料ねんりょうとして 非対称ひたいしょうジメチルヒドラジン酸化さんかざいとしてよん酸化さんか窒素ちっそ使用しようする。このわせは接触せっしょくするだけで燃焼ねんしょうする(ハイパーゴリック推進すいしんざいばれる)ため、点火てんか装置そうち不要ふようで、常温じょうおん保管ほかんできる。これにより低温ていおん設備せつび不要ふようとなり、長期間ちょうきかん発射はっしゃだい配備はいびすることが可能かのうになる(同様どうよう能力のうりょくはアメリカのタイタンロケットシリーズや中国ちゅうごくちょうせいシリーズ、ソビエト/ウクライナのツィクロンコスモス3コスモス3Mにもある)。これは、蒸発じょうはつによって推進すいしんざいげていく低温ていおん燃料ねんりょうエンジンとは対照たいしょうてきである。ハイパーゴリック推進すいしんざい腐食ふしょくせいがあり毒性どくせいがあるので、あつかいには細心さいしん注意ちゅういはら必要ひつようがあり、高度こうど訓練くんれんされた作業さぎょうしゃによってあつかわれる必要ひつようがある。

任務にんむによっては様々さまざま形式けいしきの4だん追加ついかされる。もっと単純たんじゅんブロックD惑星わくせい探査たんさミッションに使つかわれた。ブロックDは飛行ひこう制御せいぎょ探査たんさ依存いぞんしており、誘導ゆうどう装置そうちたない。3種類しゅるいのブロックDM派生はせいがた (DM, DM2, DM-2M) はこう軌道きどうへのげに使用しようされた(てい軌道きどうへのげには4だん使用しようしないため、3だん搭載とうさいした航法こうほう装置そうち使用しよう)。ブロックD/DMの燃料ねんりょうはエンジンの周囲しゅうい酸化さんかざいタンクの後方こうほう設置せっちされたドーナツがたのタンクに貯蔵ちょぞうされるというめずらしい方式ほうしきであった。

45年間ねんかん使つかわれてきたプロトンKは、2012ねん3がつ30にちに310(1かいぜん失敗しっぱいをカウントすると311)となる最後さいご打上うちあげげがおこなわれた[3]

プロトン M[編集へんしゅう]

げをつプロトンM

プロトン M最新さいしんしきのバージョンで、3~3.2トンの重量じゅうりょうぶつ静止せいし軌道きどう投入とうにゅうしくは5.5トンの重量じゅうりょうぶつ静止せいしトランスファー軌道きどう投入とうにゅうする。てい軌道きどうには最大さいだい22トンまでを、国際こくさい宇宙うちゅうステーション周回しゅうかいする51.6°の軌道きどう傾斜けいしゃかく投入とうにゅうできる。

プロトンMの改良かいりょうてんは1だん構造こうぞう重量じゅうりょうらし、推力すいりょく増強ぞうきょうして推進すいしんざい完全かんぜん使つかうようにしたことである。全体ぜんたいてきブロックDやブロックDMのわりに貯蔵ちょぞう可能かのう推進すいしんざい使用しようするブリーズ-M上段じょうだん使用しようすることによって、複数ふくすう燃料ねんりょう供給きょうきゅう必要ひつようせい液体えきたい酸素さんそ蒸発じょうはつ問題もんだい解消かいしょうした。プロトン-MもブロックDMを上段じょうだん使用しようする。外国がいこくおもにウクライナ)せい部材ぶざい使用しよう削減さくげんにも注力ちゅうりょくした。

2007ねん7がつ7にちにILSはディレクTV-10衛星えいせいせた最初さいしょプロトン Breeze M Enhanced軌道きどう投入とうにゅうした。これは326番目ばんめのプロトンのげで、16番目ばんめのプロトンM/ブリーズ-Mのげでもあり、41かいのILSによるプロトンげでもある。[4] プロトン-M Enhanced特徴とくちょうこう効率こうりつのエンジンを1だん搭載とうさいし、航空こうくう電子でんし機器きき更新こうしんし、タンクを増量ぞうりょうして、より強力きょうりょくなバーニアエンジンをブリーズ-M上段じょうだんそなえて重量じゅうりょう軽減けいげんしたことである。

2013ねん7がつ2にちに3GLONASS衛星えいせい搭載とうさいしてげたが、発射はっしゃ直後ちょくご問題もんだい発生はっせいし、制御せいぎょうしなわれたプロトンMは蛇行だこうしたのちよこ方向ほうこう飛行ひこうして空中くうちゅう分解ぶんかいし、発射はっしゃだいから2.5kmの距離きょり地表ちひょう墜落ついらくした[5]墜落ついらく動画どうが)。発射はっしゃ17びょうにエンジンの緊急きんきゅう停止ていしコマンドを送信そうしんしたが、このコマンドは射場しゃじょう保護ほごのために42びょうまでけられない仕様しようになっており、機能きのうしなかった[6]

2014ねん5がつ16にちカザフスタンバイコヌール宇宙うちゅう基地きちからげられたプロトンは、げ545びょう制御せいぎょようエンジンが故障こしょう太平洋たいへいようじょう炎上えんじょうして墜落ついらくした[7]

比較ひかくひょう(2014.3)
形式けいしき 運用うんようこく はつ飛行ひこう 緯度いど そう質量しつりょう (t) ペイロード(t) 直径ちょっけい (m) 成功せいこうりつ/そう回数かいすう
てい軌道きどう 静止せいしトランスファ軌道きどう 静止せいし軌道きどう
プロトンM ロシアの旗 ロシア 2001 46° 705 23 6,15 3,25 4,35 91%----(76)
アリアン5ECA 欧州連合の旗 欧州おうしゅう連合れんごう 2002 780 20 10 5,4 98%----(44)
ゼニット3SL ロシアの旗 ロシア ウクライナ 1999 473 13,7 6,06 2,6 4,15 85%----(41)
デルタ IVHeavy アメリカ合衆国の旗 アメリカ 2004 35° и 28° 732 23 10,75 6,57 5,1 86%----(7)
デルタ IVMedium+(5.4) アメリカ合衆国の旗 アメリカ 2009 35° и 28° 399 13,5 5,5 3,12 5,1 100%---(4)
アトラス V551 アメリカ合衆国の旗 アメリカ 2006 35° и 28° 541 18,8 6,86 3,90 5,4 100%---(4)
アトラス V521 アメリカ合衆国の旗 アメリカ 2003 35° и 28° 419 13,49 4,88 2,63 5,4 100%---(2)
H-IIB 日本の旗 日本にっぽん 2009 30° 531 19 8 5,1 100%---(4)
H-IIA204 日本の旗 日本にっぽん 2006 30° 445 15 6 2.3 4 100%---(1)
ちょうせい3ごうB 中華人民共和国の旗 中国ちゅうごく 1996 28° 426 11,2 5,1 2 4,2 92%---(25)

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ プロトンロケットの概要がいよう”. JAXA. 2015ねん10がつ7にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2016ねん3がつ31にち閲覧えつらん
  2. ^ “Proton rocket to be phased out after 2020 – head of the Russian Federal Space Agency”. ITAR-TASS. (2013ねん3がつ29にち). http://www.itar-tass.com/en/c154/691060.html 2013ねん4がつ28にち閲覧えつらん 
  3. ^ “Russian Proton-K completes 45 years of service with US-KMO satellite launch”. NASASpaceflightnow.com. http://www.nasaspaceflight.com/2012/03/russian-proton-k-rocket-launch-us-kmo/ 2012ねん3がつ30にち閲覧えつらん 
  4. ^ "ILS Proton Successfully Launches DIRECTV 10 on First Enhanced Proton" (Press release). ILS. 7 July 2007. 2011ねん1がつ3にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。
  5. ^ プロトンロケット失敗しっぱい空中くうちゅう分解ぶんかい sorae 2013ねん7がつ2にち
  6. ^ Russia's Proton crashes with a trio of navigation satellites Russian Space Web.com
  7. ^ プロトンロケット失敗しっぱい太平洋たいへいようじょう炎上えんじょう. AFPBB News. (2014ねん5がつ16にち). https://www.afpbb.com/articles/-/3015125 2014ねん5がつ17にち閲覧えつらん 

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]