モデム

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USBモデムから転送てんそう

モデムえい: modem)とは、アナログ信号しんごうをデジタル信号しんごうに、またデジタル信号しんごうをアナログ信号しんごう変換へんかんすることでコンピュータなどの機器きき通信つうしん回線かいせんつうじてデータを送受信そうじゅしんできるようにする装置そうち[1][2]変復調へんふくちょう装置そうち

変調へんちょううつわ (modulator) と復調ふくちょううつわ (demodulator) をわせた装置そうちなので、双方そうほう名称めいしょうからあたますう文字もじ (mo + dem) を命名めいめいされている[1]

概要がいよう[編集へんしゅう]

デジタル信号しんごう伝送でんそう特性とくせいわせたアナログ信号しんごうデジタル変調へんちょうして送信そうしんし、伝送でんそうからのアナログ信号しんごうをデジタル信号しんごう復調ふくちょうして受信じゅしんする。通信つうしん方式ほうしきITU-Tにより標準ひょうじゅんされている。

通信つうしん回線かいせん種類しゅるいおうじたあみ制御せいぎょ装置そうち (NCU) をつものがおおく、あやま検出けんしゅつさい送信そうしんデータ圧縮あっしゅくなどの機能きのうつものもある。

たんにモデムという場合ばあいは、コンピュータをアナログ電話でんわ回線かいせん公衆こうしゅう交換こうかん電話でんわもう)に接続せつぞくするための変復調へんふくちょう装置そうち意味いみすることがおお[1]

広義こうぎには、コンピュータなどの機器きき通信つうしん回線かいせんあいだ信号しんごう相互そうご変換へんかんおこなって通信つうしん仲介ちゅうかいする機器きき全般ぜんぱんをモデムということがある[1]

アナログ電話でんわ回線かいせんようのモデム[編集へんしゅう]

アナログ電話でんわ回線かいせんつまりじんひと音声おんせい会話かいわをするために使つかっている通話つうわ回線かいせんもちいてコンピュータとうでデータの送受信そうじゅしんおこなうための装置そうちである。このタイプのモデムは、平易へいいうと、デジタル信号しんごうをいわゆる「おと」に変換へんかんし、またそのおともとのデジタル信号しんごうもど装置そうちである。送信そうしんがわ受信じゅしんがわがそれぞれモデムを設置せっちすることで、音声おんせい通話つうわよう回線かいせんでもデジタル通信つうしんおこなえるようになる。

このタイプのモデムは (300 - 3400Hzへるつ) という周波数しゅうはすう帯域たいいき利用りよう通信つうしんする。つまり音声おんせい可聴かちょう帯域たいいき周波数しゅうはすうよりはかなりせま帯域たいいき使用しようする。(※)。

(※)可聴かちょう周波数しゅうはすう帯域たいいきは、健康けんこうわかひと場合ばあい、およそ20Hzへるつ から 20000Hzへるつわれている[3]公衆こうしゅう交換こうかん電話でんわもう通信つうしん品質ひんしつ周波数しゅうはすう特性とくせい)は、音声おんせいのコミュニケーションが一応いちおうできればよい、つたわるおとはあまりだか品質ひんしつでなくてもよい、というかんがえで決定けっていされた経緯けいいがあり、その結果けっか公衆こうしゅう交換こうかん電話でんわもうでは周波数しゅうはすうたかおとつたわらない。公衆こうしゅう交換こうかん電話でんわもうつたえる周波数しゅうはすう帯域たいいきは、健康けんこうわかひと可聴かちょう周波数しゅうはすう帯域たいいきよりもずっとせまい。それにあわせてモデムが使用しようする周波数しゅうはすう帯域たいいきせばめられている。

このタイプのモデムの通信つうしん速度そくどは300bpsから56kbpsである。

指定していした電話でんわ番号ばんごうはつよびしてデータ通信つうしん開始かいししたり、外部がいぶからのちゃくよび応答おうとうして自動的じどうてきタ通信たつうしん開始かいししたりといった機能きのうそなえていることがおお[1]

  • モデムをつかって電話でんわ回線かいせん経由けいゆ遠隔えんかくのコンピュータ・LAN・インターネットなどに接続せつぞくすることをダイヤルアップ接続せつぞくといい、パソコン通信つうしんや、2000年代ねんだい前半ぜんはんころまでの個人こじんのインターネット利用りようでは主要しゅよう手段しゅだんとして利用りようされた[1]
  • FAXファクシミリ機器きき)と通信つうしんできるモデムをFAXモデム英語えいごばんという。コンピュータとFAXモデムをわせ電話でんわ回線かいせんにつなぐと、コンピュータじょうのソフトウェアを使つか自動的じどうてき大量たいりょう宛先あてさきにFAX送信そうしんをしたり、自動的じどうてきにFAXを次々つぎつぎ受信じゅしん全部ぜんぶデータする、などということもでき、FAX利用りようさかんだった時代じだいには利用りようされた。

なおアナログ音声おんせい回線かいせんには公衆こうしゅう交換こうかん電話でんわもう以外いがいにも、専用せんようせん私設しせつせん利用りようしゃ施設しせつない建物たてものない敷地しきちなどに敷設ふせつした電話でんわせん)、無線むせん電話でんわなどがある。モデムとこうしたアナログ回線かいせん利用りようして、たとえばPOS装置そうちのデータ集計しゅうけい自動じどう販売はんばいのリモート情報じょうほう収集しゅうしゅう屋外おくがい道路どうろ信号しんごう標識ひょうしきるいとのタ通信たつうしん、コンピュータとコンピュータの1たい1の接続せつぞくなどといったことができる[4]電話でんわ回線かいせんさえつなげばタ通信たつうしん可能かのうになる。機器ききをサイバー攻撃こうげきおこなわれがちなインターネットから完全かんぜん遮断しゃだんして、セキュリティを確保かくほした状態じょうたいタ通信たつうしんおこなうことができる、完全かんぜんにプライベートな回線かいせんでデータ通信つうしんできる、など現在げんざいでも意味いみある利用りようほう多々たたある。

形状けいじょう[編集へんしゅう]

形状けいじょうにはつぎのようなものがある。

アナログ回線かいせんようモデムの歴史れきし[編集へんしゅう]

世界せかいにおける歴史れきし[編集へんしゅう]

最初さいしょ商業しょうぎょうてき利用りよう可能かのうになったモデムはBell 103 modemであり、1962ねんにアメリカのAT&Tから公表こうひょうされたものである[5]


日本にっぽん国内こくない歴史れきし[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは日本電信電話にほんでんしんでんわ公社こうしゃ民営みんえいするため1985ねん4がつ電気でんき通信つうしん事業じぎょうほう制定せいていされ、民間みんかん企業きぎょうとしての日本電信電話にほんでんしんでんわ (NTT)誕生たんじょうした。この法令ほうれい施行しこうにより、それまで省庁しょうちょう個別こべつ許認可きょにんかせいし、特別とくべつ事情じじょうだけに許可きょかされていた「日本にっぽん国内こくないでの通信つうしん事業じぎょう」が、ひろ一般いっぱん民間みんかん企業きぎょう開放かいほうされた。これと同時どうじに「端末たんまつ自由じゆう」もおこなわれ[ちゅう 1]技術ぎじゅつ基準きじゅん適合てきごう認定にんていけた通信つうしん機器ききであれば自由じゆう利用りようできるようになった。

この端末たんまつ機器きき自由じゆうは、アナログ信号しんごう音声おんせい通話つうわ機器きき自由じゆうくわえて、デジタル信号しんごう伝送でんそうするタ通信たつうしん自由じゆうされた。それまでのデジタル通信つうしん日本電信電話にほんでんしんでんわ公社こうしゃが1964ねん東京とうきょうオリンピック目前もくぜんの1963ねんまつの12月[6]に、国鉄こくてつの「みどりの窓口まどぐち」と日本航空にほんこうくう座席ざせきやくシステムコンピューターネットワーク接続せつぞくのために開始かいししたデータ伝送でんそうサービスだった[7][8]。その全国ぜんこく銀行ぎんこうタ通信システムたつうしんしすてむでの銀行ぎんこうあいだにおける為替かわせ業務ぎょうむ通信つうしんひろがった。

企業きぎょうあいだタ通信たつうしん時代じだい当然とうぜんながれで機器ききてい価格かかくともな次第しだい個人こじんレベルでのアーリーアダプターひろがりくさパソコン通信つうしんでは音響おんきょうカプラによる300bps使用しよう企業きぎょうしてくるころには1200bpsのタ通信たつうしんへのえ、パソコン通信つうしんアクセスポイントへのダイヤルアップ接続せつぞくFAX通信つうしんをする手段しゅだんとなった。これによりパーソナルコンピュータ接続せつぞくする電話でんわ回線かいせんようモデムが普及ふきゅうした。1994ねん日本にっぽんでのインターネット商用しょうようけてこれがさらに加速かそくし、当初とうしょそとけだったモデムはパソコンのてい価格かかくあいまって、次第しだい内蔵ないぞう主流しゅりゅうとなった。

モデムはもともとはデジタル信号しんごうをアナログ信号しんごう変換へんかんし、アナログ通信つうしん回線かいせんつうじて相手あいておくり、受信じゅしんがわはそのアナログ信号しんごうをモデムでデジタル信号しんごう変換へんかんするものである。

しかし、デジタル信号しんごうをデジタル回線かいせんにそのまませるシステムとして1995ねんには世界せかい先駆さきがけて日本にっぽんでデジタル通信つうしんのためのISDN回線かいせんがサービス開始かいしされた。ISDNでは(「モデム」は本来ほんらいアナログ回線かいせん使つかうものであったので)それとはっきり区別くべつするために「ターミナルアダプタ (TA)」とばれた。1997ねんからの常時じょうじ接続せつぞくサービスにより一般いっぱん使用しよう徐々じょじょひろがり、高速こうそく通信つうしんとして使用しようされた。タ通信たつうしんは64kbps/128kbpsとなった。しかしアナログ加入かにゅう回線かいせん主流しゅりゅうで、モデムのほうもひろ一般いっぱん使用しようされつづけ、アナログ回線かいせんようモデムとデジタル回線かいせんようターミナルアダプタが共存きょうぞんする時代じだいとなった。

2000ねんごろからADSLCATVなどのブロードバンド回線かいせん普及ふきゅうしはじめた。ADSLは(一般いっぱん音声おんせいのための)アナログ回線かいせん利用りようしてのデジタル通信つうしんであり、ADSL仕様しようのモデムを利用りようする。これをADSLモデムという。ADSLはてい価格かかくだい容量ようりょう一般いっぱんひろ普及ふきゅうし、ADSLモデムもひろ普及ふきゅうした。(一方いっぽうひかりファイバーもうのデジタル回線かいせん普及ふきゅうし、デジタル回線かいせん利用りようしたデジタル通信つうしん主流しゅりゅうとなってきた。)

公衆こうしゅう無線むせんLAN接続せつぞくモバイルタ通信たつうしん定額ていがくせいインターネットFAXサービスなどの拡充かくじゅうによりモデムを使つか用途ようと激減げきげんし、2000年代ねんだい後半こうはんには、モデムはノートパソコンでも内蔵ないぞうされないことが一般いっぱんした。モデムを利用りようするひとだけカードがたモデムを増設ぞうせつして利用りようするようになった。モデムのわりにWifi標準ひょうじゅん搭載とうさいするノートPCが一般いっぱんしていった。ノートパソコンにカードスロットもなくなり、モデム使用しようにはUSB接続せつぞくモデムが使つかわれるようになってきた。

デジタル回線かいせんやADSL使用しよう不可ふか地域ちいき一部いちぶ離島りとうなど)では、いまでも従来じゅうらいがたのモデムが使用しようされている。

インタフェース[編集へんしゅう]

接続せつぞくほう[編集へんしゅう]

内蔵ないぞうようPCIモデム
単独たんどく外部がいぶモデム

コンピュータルーターなどとは、ふる機種きしゅではRS-232CRS-422などのシリアルポート比較的ひかくてきあたらしい機種きしゅではUSBExpressCardなどのインタフェース接続せつぞくするのがおおい。また、パソコン本体ほんたい内蔵ないぞうされたものや、PCIなどの拡張かくちょうスロットに装着そうちゃくするもの、PCカードタイプのものもある。

ケーブルモデム・ADSLモデムなどの高速こうそくなものは、LANポート(イーサネット)で接続せつぞくするものがおおい。

加入かにゅう電話でんわ回線かいせんようのモデムの加入かにゅうしゃせんがわは、電話でんわよう2せんしきモジュラージャック (RJ-11) にモジュラーケーブルで接続せつぞくする。アナログ電話機でんわきは、電話機でんわき端子たんし接続せつぞくする。

通信つうしん方式ほうしき[編集へんしゅう]

たん方向ほうこうたんしん[編集へんしゅう]

たん方向ほうこう通信つうしんのみ可能かのうで、送信そうしんがわ受信じゅしんがわえのできないもの。

半二重はんにじゅうはんふくしん[編集へんしゅう]

通信つうしん方向ほうこうえて使用しようするもので、送信そうしん受信じゅしん同時どうじにできないもの。現在げんざいでもPOSシステムや、銀行ぎんこうけの業務ぎょうむようシステム(ぜんぎん手順てじゅん)の一部いちぶ使つかわれている。G3ファクシミリもこの方式ほうしきである(制御せいぎょ通信つうしん画像がぞう通信つうしんとも)。

ぜんじゅうふくしん[編集へんしゅう]

各種かくしゅふくしん方式ほうしき利用りようして、送受信そうじゅしん同時どうじおこなえるようになっているもの。現在げんざい一般いっぱんてき使用しようされている。

同期どうき方式ほうしき[編集へんしゅう]

非同期ひどうきモデム[編集へんしゅう]

一般いっぱんてき使つかわれるタイプ。モデムには、同期どうき機能きのういものである。調歩ちょうほ同期どうきしきでビット単位たんい同期どうきHigh-Level Data Link Control (HDLC) などのフラグ同期どうきまたはキャラクタ同期どうきでブロック単位たんい同期どうきを、データ信号しんごう自体じたいりながら通信つうしんする。同期どうきモデムにくらべて、速度そくど確実かくじつせいおとるが、安価あんかである。

同期どうきモデム[編集へんしゅう]

一部いちぶ業務ぎょうむよう使つかわれるタイプ。端末たんまつ装置そうちから別々べつべつ信号しんごうせん送信そうしんされたデータ信号しんごう同期どうき信号しんごうを、ひとつの伝送でんそう送信そうしんし、受信じゅしんがわでデータ信号しんごう同期どうき信号しんごう分離ぶんり別々べつべつ信号しんごうせん端末たんまつ装置そうち受信じゅしんさせるものである。非同期ひどうきモデムにくらべて、確実かくじつ高速こうそく通信つうしん可能かのうであるが、高価こうかである。

可聴かちょう帯域たいいきようのモデム[編集へんしゅう]

電話でんわ回線かいせん音声おんせい周波数しゅうはすう帯域たいいき (300 - 3400Hzへるつ) をデジタル変調へんちょうにより変復調へんふくちょうし、コンピューターひとしシリアルポートとデジタル信号しんごう(データ)としてやりりするものである。

MMモデム[編集へんしゅう]

MMとは手動しゅどう発信はっしん手動しゅどう着信ちゃくしんりゃくである。通信つうしん回線かいせんインターフェースと変復調へんふくちょう一体いったいにまとめたモデム。通信つうしんようインターフェース(RS-232Cおおい)と通信つうしん回線かいせんインターフェース(一般いっぱん電話でんわ回線かいせんおおい)をち、1980年代ねんだいのパソコン通信つうしん登場とうじょう初期しょきから使つかわれている。音響おんきょうカプラとことなり回線かいせん直接ちょくせつ接続せつぞくされているので安定あんていせいたかい。

回線かいせん制御せいぎょ機能きのう自動的じどうてきではなく、電話機でんわきでダイヤルにモデムにあるボタンやスイッチの操作そうさ以下いかスイッチ操作そうさ)で回線かいせんをモデムにえる。通信つうしん終了しゅうりょうにも同様どうようにスイッチ操作そうさ回線かいせん電話機でんわきもどす。発信はっしんはつよび ORG)ほの着信ちゃくしんよび ANS)ほのかの選択せんたくもスイッチ操作そうさおこなう。複数ふくすう通信つうしん規格きかく(V.21 300bpsとV.23 1200bps半二重はんにじゅう など)に対応たいおうした機種きしゅでは通信つうしん速度そくどえもスイッチ操作そうさおこなう。

など

のちに着信ちゃくしんのみ自動じどうしたMAモデムも登場とうじょうした。1980年代ねんだい後半こうはんごろから次項じこうのインテリジェントモデムにとってわられた。

インテリジェントモデム[編集へんしゅう]

NCU・変復調へんふくちょう制御せいぎょ一体いったいにまとめたモデム。通信つうしんようインターフェースと通信つうしん回線かいせんインターフェースをち、1980年代ねんだいのパソコン通信つうしん登場とうじょう初期しょきから使つかわれている。当時とうじ普及ふきゅうのMMモデムにたい高級こうきゅうであった。かつては主流しゅりゅうであったが、2000ねんごろからすくなくなっている。

次項じこうのソフトモデムとことなり、動作どうさちゅうにCPUに負担ふたんをかけることがすくなく、安定あんていして動作どうさすることや、特別とくべつなデバイスドライバがなくても、RS-232Cポートさえ利用りようできれば通信つうしんできるメリットがあり、産業さんぎょうよう機器ききなどのみシステムのコンポーネンツに利用りようされたこともおおい。

インテリジェントモデムをモジュールし、INS1500のような集合しゅうごう回線かいせん一括いっかつ接続せつぞくし、通信つうしんようインターフェースにネットワークインターフェースをもちいた集合しゅうごうモデムは、アクセスポイントに多用たようされた。

ソフトモデム[編集へんしゅう]

ソフトモデムは、モデムがわハードウェア簡略かんりゃくし、コンピュータがわCPU処理しょりおおくをおこなうものである。部品ぶひん点数てんすうすくなく・回路かいろ占有せんゆうする基板きばん面積めんせきせまく・コストがやすいため、動作どうさには電源でんげんってもかまわない、内部ないぶ拡張かくちょうスロット・USB接続せつぞく・PCカード・コンピュータ内蔵ないぞうのモデムのほとんどは、このソフトモデムである。

機能きのうおおくをソフトウェアで実現じつげんしているため、安価あんかしん規格きかくソフトウェア変更へんこうのみで対応たいおう可能かのうである。しかし、処理しょり速度そくど通信つうしん速度そくど安定あんていせい低下ていか原因げんいんとなることもある。また、オペレーティングシステムごとにデバイスドライバ開発かいはつ必要ひつようである。

基本きほんてき一般いっぱんてきなモデム(インテリジェントモデム)の場合ばあいNCUからアナログ信号しんごうとデジタル信号しんごう相互そうご変換へんかんおこなADC/DAC接続せつぞくするまでのトランス・アンプ・イコライザなどのアナログ回路かいろと、ADC/DACと接続せつぞくされ変調へんちょう復調ふくちょう圧縮あっしゅく展開てんかい・エラー訂正ていせい・コマンド処理しょりつかさどDSPとシリアルインターフェース回路かいろ構成こうせいされている。コンピューターがわのCPUがDSPの機能きのう担当たんとうすれば、ハードウエアで必要ひつよう部品ぶひんはNCU・トランス・必要ひつよう最小限さいしょうげんのアナログ回路かいろ・ADC/DACになる。とくにDSPは高価こうか部品ぶひんなので、省略しょうりゃくすること大幅おおはばなコストダウンとなる。

シリアルインターフェースも省略しょうりゃくされ、せいのアナログ信号しんごうをADC/DAC経由けいゆ高速こうそくにCPUと入出力にゅうしゅつりょくするため、FIFOメモリとホストバスインターフェース(ISAPCIUSB)が使つかわれる。初期しょきのソフトモデムをのぞき、現在げんざいのソフトモデムはアナログ回路かいろからホストバスインターフェースまでの一切いっさいをワンチップで構成こうせいしている。

デバイスドライバはDSPが担当たんとうしていた処理しょりエミュレーションし、イコライザ・ゲイン調整ちょうせい・NCUで使用しようする信号しんごう生成せいせい変調へんちょう復調ふくちょう圧縮あっしゅく展開てんかい・エラー訂正ていせい・コマンド処理しょりおこない、オペレーティングシステムに仮想かそうシリアルインターフェースのかたちでインテリジェントモデムが存在そんざいするようにせかけている。

初期しょきのソフトモデムは非常ひじょうおおくのCPUパワーを消費しょうひしていた。これは当時とうじのCPUがDSPてき命令めいれいセットをそなえていなかったために、とく変調へんちょう復調ふくちょう処理しょり手間取てまどっていたためである。ダイヤル回線かいせんのダイヤルパルスの間隔かんかくみだれ、かけ間違まちがいがこることもあった。現代げんだいのCPUは全般ぜんぱんてき処理しょり能力のうりょく向上こうじょうしていることにくわえ、DSPてき命令めいれいセットをそなえ、かつ並列へいれつしていち実行じっこうすることができることから、ソフトモデムが登場とうじょうしたころにくらべるとCPU負荷ふかはかなり軽減けいげんされている。

スマートフォンのアプリケーションとしての実装じっそうもできる。FAXモデム(次項じこう)を実装じっそうすることにより、スマートフォンでFAXを送受信そうじゅしんすることもできるようになる。

モデムホン[編集へんしゅう]

モデムホン(オートホン)[10]電話機でんわきとモデムを一体いったいにした装置そうち。オンフックダイヤル、スピーカ受話じゅわ短縮たんしゅくダイヤルリダイヤル、スピーカ音量おんりょう調節ちょうせつとう付加ふか機能きのう通信つうしん装置そうちとしての機能きのうはモデムにじゅんじる。通信つうしん回線かいせんインターフェース(モジュラジャック)と通信つうしんようインターフェース (RS-232C) をち、パソコンからコントロールできる機能きのう電話でんわともえる。

ただし、モデムを内蔵ないぞうしている電話機でんわきのためAC電源でんげんアダプタとうにより電源でんげん供給きょうきゅうする必要ひつようがある。

FAXモデム[編集へんしゅう]

FAXモデムは、G3ファクシミリ (ITU-T T.30) の送受信そうじゅしん機能きのうを、ATコマンドを拡張かくちょうして実装じっそうしたものである。カラーG3 (ITU-T T.30E) などの拡張かくちょう機能きのう利用りようする場合ばあい、Class1相当そうとう機能きのうのみを利用りようすることとなる。機械きかいてきには、単体たんたいモデム・ソフトモデムともに存在そんざいする。

1990年代ねんだい後半こうはんより、パーソナルコンピュータ電話でんわもう接続せつぞくされたファクシミリとの相互そうご通信つうしんのために導入どうにゅうされていた。2000年代ねんだいはいり、業務ぎょうむようのFAXサーバふくごうのFAXインターフェースモジュールとして製造せいぞうされるものがおもとなっている。FAXモデムチップセットのシェアはコネクサントしゃきゅうロックウエルしゃ)がだい部分ぶぶんめている。EIA-578規格きかくいち姿すがたしたものの、チップセットの価格かかく安価あんかにすることができること、G3以外いがい規格きかく(カラーG3やスーパーG3など)も使つかえるためふたたび2014ねん現在げんざい主流しゅりゅうであるEIA-592規格きかく後退こうたいさせている。

FAXモデム規格きかく
TIA EIA規格きかく TR-29 Class 特徴とくちょう 備考びこう 制定せいていねん
EIA-578 1 HDLCフレーム生成せいせいのみ実装じっそう機能きのうはPCがわ実現じつげん 1990
2 G3の送受信そうじゅしん制御せいぎょ実装じっそう・PCがわ画像がぞう圧縮あっしゅくしたデータとコマンドとをおくりリザルトを ドラフト仕様しよう
EIA-592 2.0 最終さいしゅう仕様しよう準拠じゅんきょ

ボイスモデム[編集へんしゅう]

ボイスモデムは、タ通信たつうしん切替きりかえまたは、対応たいおう機器ききあいだ同時どうじおとこえ通信つうしん可能かのうなものである。1990年代ねんだい後半こうはん製造せいぞうされていたが、2000年代ねんだいはいりほとんど製造せいぞうされていない。

ボイスモデム規格きかく
規格きかくめい ITU-T勧告かんこくめい おとこえ通信つうしん 用途ようと 制定せいていねん
方式ほうしき タ通信たつうしんとの競合きょうごう
ASVD V.34Q アナログ 中断ちゅうだんして切替きりかえ 公衆こうしゅう交換こうかん電話でんわもう利用りようした留守番るすばん電話でんわボイスメール 1996
DSVD V.70 デジタル 帯域たいいき一部いちぶ利用りようして同時どうじ通信つうしん 対応たいおう機器きき相互そうごあいだのテレビ会議かいぎ・ボイスチャット 1996

通信つうしん速度そくど[編集へんしゅう]

詳細しょうさい[6]参照さんしょう

規格きかく最高さいこう通信つうしん速度そくど
ITU-T勧告かんこくめい ふくしん 最高さいこう通信つうしん速度そくど (bps) 変調へんちょう 搬送波はんそうは周波数しゅうはすう (Hz) 制定せいていねん 備考びこう
2せん 4せん 速度そくど (baud) 最大さいだいビットかず 方式ほうしき
V.21 ぜんじゅう 最高さいこう300 最高さいこう300 1 FSK 1080
±100
1964 G3ファクシミリの制御せいぎょ通信つうしんは、この規格きかく高群たかむれ信号しんごうにより75bpsでおこなわれる。
この規格きかくでは、着信ちゃくしんのアンサートーン (2100Hzへるつ) をさずに直接ちょくせつだかぐんのマーク信号しんごう (1650Hzへるつ) をしてもことになっていた。MMモデムでは必然ひつぜんてきにこの実装じっそうになるが、初期しょきのインテリジェントモデムでもこの実装じっそうのものがある。
1750
±100
V.22 1200 600 2 QPSK 1200
/2400
1980
V.22bis 2400 4 16QAM 1984
V.23 半二重はんにじゅう 600 600 1 FSK 1500
±200
1964 600bpsの規格きかく前者ぜんしゃ)と1200bpsの規格きかく後者こうしゃ)がある。日本にっぽんではナンバーディスプレイ番号ばんごう通知つうち利用りようされている。
オプションで75bpsのバックワードチャネル (420±30Hzへるつ) の追加ついか可能かのう
この場合ばあいは2せんしきぜんじゅう通信つうしんになる
1200 1200 1700
±400
V.26 半二重はんにじゅう ぜんじゅう 2400 1200 2 DQPSK
(Alternative A)

πぱい/4 DQPSK
(Alternative B)

1800 1968
V.26bis πぱい/4 DQPSK 1972 V.23同様どうよう、オプションで75bpsのバックワードチャネル(420±30HzへるつのFSK)を追加ついか可能かのう
V.26ter ぜんじゅう DQPSK 1984 エコーキャンセラ使用しよう
V.27 半二重はんにじゅう ぜんじゅう 4800 1600 3 8PSK 1800 1972
V.27bis 1976 G3ファクシミリの画像がぞう通信つうしん
V.23同様どうよう、オプションで75bpsのバックワードチャネル(420±30HzへるつのFSK)を追加ついか可能かのう
V.27ter ぜんじゅう 1976
V.29 半二重はんにじゅう ぜんじゅう 9600 2400 4 16APSK 1700 1976 G3ファクシミリの画像がぞう通信つうしん(オプション)
V.32 ぜんじゅう 9600 2400 4 16QAM 1800 1984
V.32bis 14400 6 TCM英語えいごばん
128QAM
1991
V.33 ぜんじゅう 1988
V.17 半二重はんにじゅう G3ファクシミリの画像がぞう通信つうしん(オプション)
V.34 ぜんじゅう 28800 3200 10.7 TCM
960QAM[ちゅう 2]
1994 スーパーG3ファクシミリ
1996ねん改定かいてい
33600 3429 TCM
1664QAM
1996
V.90 ISDN→アナログ TCM
PCM
8000
サンプリング
1998 中継ちゅうけい回線かいせんISDNされており、通信つうしん相手あいてがISDNで接続せつぞくされている場合ばあい
アナログ回線かいせんがわ交換こうかんでD/A変換へんかん
56000 8000 7
アナログ→ISDN TCM
1664QAM[ちゅう 2]
1800
33600 3429 10.7
V.92 ISDN→アナログ TCM
PCM
8000
サンプリング
2000 中継ちゅうけい回線かいせんがISDNされており、通信つうしん相手あいてがISDNで接続せつぞくされている場合ばあい
アナログ回線かいせんがわ交換こうかんでD/A変換へんかん
56000 8000 7
アナログ→ISDN
48000 8000 6

FSK変調へんちょう採用さいようした規格きかくは、Bell 103をのぞひくぐん高群たかむれともマーク(1)信号しんごう低位ていい、スペース(0)信号しんごう高位こういである。FSK以外いがい変調へんちょう採用さいようした規格きかくでは、おなじシンボルが連続れんぞくすると搬送波はんそうは変化へんかがなくなり復調ふくちょう支障ししょうをきたすため、一定いっていのアルゴリズムでマークとスペースをえる処理しょりおこなわれる。これをスクランブルという。

2400bps以上いじょう速度そくどのものは、後述こうじゅつのMNPやLAPMによる圧縮あっしゅくおこなうことから、パソコンとモデムあいだ通信つうしん速度そくどは、回線かいせんじょう通信つうしん速度そくどよりもたか設定せっていすることがほとんどである。この場合ばあい、RS-232CのRS・CS信号しんごうのオン・オフでフローコントロールをおこなう。

V.90/V.92
V.90は中継ちゅうけい回線かいせんがISDNされており、通信つうしん相手あいてがISDNで接続せつぞくされているのを前提ぜんていに、ISDN→アナログ回線かいせん通信つうしんに、デジタルデータをサンプリング周波数しゅうはすう8kHzきろへるつ量子りょうしビットすう7ビットのPCM信号しんごうとして伝送でんそうすることにより最高さいこう56,000bpsを達成たっせいできる規格きかくである。ISDNがわからはデジタルデータのまま伝送でんそうし、アナログ回線かいせんがわ交換こうかんでD/A変換へんかんする。サンプリング周波数しゅうはすう8kHzきろへるつである電話でんわ回線かいせんでの理論りろんじょう上限じょうげんである8000baudにたっした。サンプリング周波数しゅうはすう動的どうてき変化へんかし、通信つうしん速度そくどは1,333.3bps (4000/3) きざみである。なお、アナログ→ISDNはV.34と同様どうようの33,600bpsまでである。
K56flexやX2もたような規格きかくであるが互換ごかんせいはない(K56flexは速度そくどが2,000bpsきざみであるひとし)。
V.92ではアナログ→ISDN方向ほうこうをサンプリング周波数しゅうはすう8kHzきろへるつ量子りょうしビットすう6ビットのPCM信号しんごうとして伝送でんそうすることにより、最高さいこう48,000bpsを達成たっせいできる規格きかくである。アナログ回線かいせんがわ交換こうかんでA/D変換へんかんする。ISDN→アナログ方向ほうこうはV.90同様どうよう最高さいこう56,000bpsである。さらに、2ついのモデムをもちいてさらなる高速こうそく最高さいこうで2ばい)をはかこと可能かのうである。
なお、アナログ回線かいせんようのV.92モデム同士どうしではV.92で応答おうとうせずV.34での通信つうしんになるため、最高さいこう速度そくどは33,600bpsである。
Bell規格きかく
Bell規格きかく北米ほくべい普及ふきゅうした。元々もともとAT&Tせいモデムの商品しょうひんめいである。Bell 103、Bell 202、Bell 212Aなどがある。高速こうそく通信つうしん規格きかくはなくITU-Tの規格きかく使用しようする。
ITU-Tの規格きかくとのちがいは、着信ちゃくしんのアンサートーンがBell 103のこうぐんのマーク信号しんごう (2225Hzへるつ) であるてんである。
Bell 103やBell 202は有線ゆうせん通信つうしんほかパケット通信つうしんなどでも使用しようされた。
Bell 103
Bell 103(1962ねん発売はつばい)は300bps、ぜんじゅう規格きかくである。1958ねん発売はつばい、110bpsのBell 101を改良かいりょうしたもの。搬送波はんそうは周波数しゅうはすうは1170±100Hzへるつおよび2125±100HzへるつのFSKであるが、ていぐん高群たかむれともV.21とはぎゃくにマーク信号しんごう高位こうい、スペース信号しんごう低位ていいである。
Bell 212A
Bell 212Aは1200bps、ぜんじゅう規格きかくである。1200Hzへるつおよび2400HzへるつのQPSKであるてんはV.22とおなじであるが、スクランブルのアルゴリズムがことなり互換ごかんせいはない。
Bell 202
Bell 202は1200bps、半二重はんにじゅう(4せんしきではぜんじゅう)の規格きかくである。1700±500HzへるつのFSKである。北米ほくべいで、日本にっぽんのナンバーディスプレイに相当そうとうするCaller ID番号ばんごう通知つうち使用しようされている。オプションで、5bps(387HzへるつのASK)または150bps(437±50HzへるつのFSK)のバックワードチャンネルを追加ついかできる。
HST Dual Standard
HSTはUS Roboticsにより16,800bpsでの通信つうしん実現じつげんしたものである。V.FC/V.34の16,800bpsとは互換ごかんせいがない。普及ふきゅうせずローカルな実装じっそうとなった。Dual StandardとはHSTとV.32bisの両方りょうほう対応たいおうするという意味いみである。
V.32terbo
AT&TによりV.32bisをさらに発展はってんさせ、19,200bpsでの通信つうしん実現じつげんしたものである。V.FC/V.34の19,200bpsとは互換ごかんせいがない。これも普及ふきゅうせずローカルな実装じっそうとなった。
V.FC
別名べつめいV.FAST。V.34以前いぜんに28,800bpsでの通信つうしん実現じつげんした。V.34の制定せいていおくれたため、ぜんしゃより普及ふきゅうした。V.34にある送信そうしん受信じゅしんことなる速度そくど利用りようする実装じっそうはない。接続せつぞくから通信つうしん開始かいしまでの時間じかんがV.34よりながい。V.34とは互換ごかんせいがないが、V.34対応たいおう機種きしゅおおくがV.FCにも対応たいおうしている。

Microcom Networking Protocol[編集へんしゅう]

MNP (Microcom Networking Protocol) は、アメリカMicrocom(マイクロコム)しゃ提唱ていしょうした、モデムようのデータ圧縮あっしゅくとエラー訂正ていせいのための規格きかく総称そうしょう第三者だいさんしゃ組織そしきによって標準ひょうじゅんされた規格きかくではないが、一部いちぶ規格きかく内容ないよう一般いっぱん公開こうかいされたことと、実際じっさいにMicrocom Networking Protocolを搭載とうさいしたマイクロコムしゃのモデムの伝送でんそう品質ひんしつすぐれていたことから普及ふきゅうした。クラス1から10までクラスけがされており、上位じょういのクラスは下位かいのクラスの機能きのうをすべてふくんでいる。ほかの通信つうしんプロトコルとわせて使用しようされる。

クラスごと特徴とくちょう以下いかとおり。[11]

クラス1
非同期ひどうき半二重はんにじゅう通信つうしんおこなう。
クラス2
非同期ひどうきぜんじゅう通信つうしんおこなう。
クラス3
同期どうきがた通信つうしんおこなう。スタートビット、ストップビットをおくらないことからスループットは非同期ひどうき手順てじゅん通信つうしんの110%程度ていどになる。
クラス4
回線かいせん品質ひんしつおうじてパケットちょう自動じどう設定せっていする。また、送受信そうじゅしんされるデータからコントロールビットの重複じゅうふくのぞくことでスループットは非同期ひどうき手順てじゅん通信つうしんの120%以上いじょうになる。
クラス5
ランレングス圧縮あっしゅくとハフマン符号ふごうによるデータ圧縮あっしゅくおこなう。スループットは200%となる。
クラス6
通信つうしんりょうおうじてぜんじゅう通信つうしんを2ばい半二重はんにじゅう通信つうしんとして使つか手法しゅほうおよび通信つうしん速度そくど自動じどう設定せってい
クラス7
ファースト・オーダ・マルコフモデルによるハフマン符号ふごうデータ圧縮あっしゅくをおこなう。スループットはやく300%。
クラス9
データ・パケットにACKを付加ふかするPiggy Back Askingと指定していしたデータ・パケットのみを再送さいそう要求ようきゅうできるMultiple Selective Negative Ackに対応たいおうする。
クラス10
移動いどうたい通信つうしんなどようの、伝送でんそう状態じょうたい変化へんかにより通信つうしん速度そくどやパケットサイズを調節ちょうせつし、さい送信そうしんなどをらして送信そうしん効率こうりつげるもの。

なお、クラス8は欠番けつばんである。

LAPM・V.42bis[編集へんしゅう]

ITU-T標準ひょうじゅんプロトコルで規定きていされた、エラー訂正ていせいとデータ圧縮あっしゅく方式ほうしき。エラー訂正ていせいはMNP4と互換ごかん。「V.42bis」はBTLZ (British Telecom Lempel-Ziv) 方式ほうしき採用さいようしたデータ圧縮あっしゅく規格きかくであり、CCITT当時とうじ)が1989ねん11月に勧告かんこくしたもの。MNP5の圧縮あっしゅくりつが1.6 : 1であったのと比較ひかくして2.45 : 1程度ていどと、圧縮あっしゅくこうたか[12][13]。2400bps以上いじょうのモデムでひろ使つかわれた。

あみ制御せいぎょ装置そうち[編集へんしゅう]

あみ制御せいぎょ装置そうち(もうせいぎょそうち)は、NCU (Network Control Unit) ともばれる、一般いっぱん加入かにゅうしゃ回線かいせん接続せつぞくするために、交換こうかんたい回線かいせん接続せつぞく相手あいてがわ電話でんわ番号ばんごう通知つうち切断せつだん通信つうしんさきとう変更へんこうとう処理しょりおこな機器ききである。

初期しょきのものは、電話機でんわき形状けいじょうをしており、回線かいせん接続せつぞくなどの動作どうさ手動しゅどうでダイヤルしたり、回路かいろえたりしていたが、のちに、コンピュータからの制御せいぎょにより自動じどう発信はっしん自動じどう着信ちゃくしんなどもできるようになった。

初期しょき段階だんかいでは、NCUから制御せいぎょよう信号しんごう専用せんようのケーブルでモデムに接続せつぞくされていたが、のちにモデムと一体化いったいかされた機器きき登場とうじょうする。ヘイズATコマンドという業界ぎょうかい標準ひょうじゅんのコマンドを搭載とうさいしたモデムが登場とうじょうしてからは、専用せんようケーブルをかいして制御せいぎょする必要ひつようがなくなり、制御せいぎょコードの標準ひょうじゅん通信つうしん回線かいせん接続せつぞくのモジュラジャックともない、一般いっぱんのパソコン通信つうしんなどでも使つかえるようになった。

ヘイズATコマンド[編集へんしゅう]

Hayesしゃの300bpsモデム Smartmodem(北米ほくべいけ)

ヘイズATコマンドとは、アメリカのHayes Microcomputer Productsしゃ開発かいはつしたインテリジェントモデムのコマンド体系たいけいで、ATtentionのりゃくである、「AT」でコマンドがはじまることからこうばれる。AやTは小文字こもじでもいが、AとTとのあいだのコードがはいるとATコマンドとは認識にんしきされない。

ヘイズ以外いがいのモデムメーカーもどうコマンド体系たいけい採用さいようしたため業界ぎょうかい標準ひょうじゅんとなったが、各社かくしゃ独自どくじ拡張かくちょうがされた部分ぶぶんには互換ごかんせいがないこともある。

端末たんまつからの命令めいれいを「コマンド」、モデムからの応答おうとうを「リザルトコード」とぶ。

RS-232は最下位さいかいビットから送信そうしんするので、8-N-1(8データビット、パリティビットなし、1ストップビット)のラインパターンは

0100000101 0001010101(スタート、ストップビットを斜体しゃたい)でATコマンドは、つぎのようなビットストリームからはじまる。

8bit、パリティなし、ストップビット1bitの場合ばあい

A|0s|1|0|0|0|0|0c|1|0x|1s| T|0s|0|0|1|0|1|0c|1|0x|1s| /|0s|1|1|1|1|0|1|0|0x|1s|

a|0s|1|0|0|0|0|1c|1|0x|1s| t|0s|0|0|1|0|1|1c|1|0x|1s|

ヘイズATコマンドを採用さいようするモデムはDCE - DTEあいだ速度そくどおよびフォーマットを自動じどう判定はんていする機能きのうそなえている場合ばあいおおい。このATというデータを受信じゅしんしたと仮定かていし、最初さいしょの1ののちの5の0ののちあらわれる1までの時間じかん測定そくていすることで速度そくど (bit per second) を測定そくていできる。そのつぎの0 (0x) があらわれるかどうかで、あらわれなければ7bitパリティなしと、0ではなく1があらわれた場合ばあいは7bit奇数きすうパリティであると判定はんていできる。0があらわれた場合ばあいは7bit偶数ぐうすうパリティと8bitパリティなしの可能かのうせいがある。その場合ばあい、AとTでは1の個数こすうことなるため、Tのパリティビットをることでどちらなのか判定はんていできる。実際じっさい実装じっそうは、AやTが小文字こもじであった場合ばあい (0c=1) を考慮こうりょしてある、ストップビットちょうをAののちにくるTとのあいだ判断はんだんするなど、若干じゃっかん複雑ふくざつである。なお、A/直前ちょくぜん操作そうさかえすコマンドである。

ITU-T V.25bis[編集へんしゅう]

ITU-Tさだめたモデムのコマンド体系たいけい。ヘイズATコマンドはモデムによって独自どくじ拡張かくちょうおこなわれており、通信つうしんするにあたってモデムをなんらかのかたち識別しきべつしなければならないが、V.25bisではシリアルインターフェースの制御せいぎょ状態じょうたいからコマンドとその手順てじゅん厳密げんみつ定義ていぎされており機種きしゅ依存いぞん問題もんだいはほとんどない。ルーターなどに接続せつぞくされることを前提ぜんていとしたモデムで採用さいようされている。コンシューマーけの製品せいひんでは一時期いちじきV.25bisとヘイズATコマンドの両方りょうほうをサポートしていたが、現在げんざいではV.25bisをサポートしていない製品せいひんがほとんどである。

無線むせんモデム[編集へんしゅう]

Huawei CDMA2000 Evolution-Data Optimized USB ワイヤレスモデム

無線むせんモデムワイヤレスモデム (wireless modem) とは、無線むせん通信つうしん回線かいせん伝送でんそう使用しようするモデムである。ブロードバンドインターネット接続せつぞくのものは、モバイルモデム (Mobile modem)、ポータブルモデム (portable modem) とぶこともある[ちゅう 3]

IP仮想かそうLANカードルーターブリッジとしてうものは、「モデム」とうよりは「(通信つうしん)アダプタ」などとばれることおお[ちゅう 4]

汎用はんよう無線むせんデバイスとして多様たよう使つかかた可能かのうBluetooth無線むせんモデムの一種いっしゅえる。

2000年代ねんだいより電波でんぱ帯域たいいき有効ゆうこう活用かつようのため、2G携帯けいたい電話でんわPHSのように、おとこえアナログ-デジタル変換へんかんしてナローバンド無線むせんモデムでデジタル伝送でんそうすることが一般いっぱんてきになっていた。また、2000年代ねんだい後半こうはんよりだい3世代せだい移動いどう通信つうしんシステム (3G) ・Wimaxなどの広帯域こうたいいき無線むせんアクセスや、Wi-Fiアクセスポイントなどが普及ふきゅうはじめる。

2010年代ねんだいより、だい3.5世代せだい携帯けいたい電話でんわ (3.5G)、おくれてだい3.9世代せだい携帯けいたい電話でんわ (3.9G)普及ふきゅうはじめている。とくに3.9G (LTE) は形式けいしきこそあれ基盤きばん技術ぎじゅつおなじLTEであり、3.5Gまでられた規格きかくあらそいは沈静ちんせい一本いっぽんられる。3.9G (LTE) は2010年代ねんだいまつけて本格ほんかくてき普及ふきゅうした。

2020年代ねんだいけてだい4世代せだい携帯けいたい電話でんわ (4G)、だい5世代せだい携帯けいたい電話でんわ (5G)普及ふきゅう展望てんぼうされている。

移動いどうたい通信つうしんネットワーク以外いがい使用しようするものとして、しょう出力しゅつりょくのFMラジオ使用しようしたり、ISMたいである2.4GHzたいや、特定とくていしょう電力でんりょく無線むせん使用しようする無線むせんモデムがある。後者こうしゃ無線むせんモデムは、ホストと通信つうしんポートとう直接ちょくせつ接続せつぞくしたり、イーサネットブリッジとして機能きのうするものもある。2.4GHzたい無線むせんモデムは免許めんきょ不要ふようでかつ高速こうそく通信つうしんができるスペクトラム拡散かくさんもちいたものおもである。アマチュア無線むせんにおけるターミナルノードコントローラ (TNC) が、モデムを内蔵ないぞうしたデータリンク装置そうち該当がいとうする。ただしTNCがモデムとばれることはすくない。

衛星えいせいモデム[編集へんしゅう]

通信つうしん衛星えいせい利用りようした、デジタル通信つうしんもちいられるもの。多元たげん接続せつぞく機能きのうつものがおおい。

ケーブルモデム・ADSLモデムなど[編集へんしゅう]

ADSLモデム
ケーブルモデム

ブロードバンドインターネット接続せつぞくなどの高速こうそくデジタル通信つうしんようのモデム。コンピュータとうとは、LANポート(イーサネット)でPPPoEひとしによるブリッジ接続せつぞく、あるいはルーター内蔵ないぞうされてルータ接続せつぞくするものがおおい。

ひかりモデム[編集へんしゅう]

従来じゅうらいのアナログモデムより高速こうそくせいと、ノイズへのたいせいたかめるなどの安定あんていせい目的もくてきとしたモデム。RS-232Cなどのシリアルインターフェースを半導体はんどうたいレーザーこう変換へんかんして、ひかりケーブルをもちいて通信つうしんする。用途ようとはNTTがサポートするアナログ回線かいせんうち特定とくてい回線かいせんによるものとほぼおなじで、アナログの専用せんようせんからのえがすすんでいる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ この時期じき接続せつぞく機器きき (Device) ではなくはしまつ (Terminal) であった。接続せつぞくする通信つうしんネットワークが主人しゅじんあるじ)であり、接続せつぞくする機器きき(デバイス)はそれがコンピューターであってもおもしたがう(したがえ)ものとしてあつかわれた。
  2. ^ a b 変調へんちょうごとに象限しょうげんπぱい/2 (90°) ずつわるため、変調へんちょうごとのシンボルは240または416である。960・1664は総数そうすうである
  3. ^ これらは元々もともとは、据付すえつけではない搬性のある可聴かちょう帯域たいいきようモデムにたいするでもあった。
  4. ^ 同様どうように、通信つうしん機器きき構成こうせい部品ぶひんとしてはたしかに無線むせん回路かいろたいしデジタル変復調へんふくちょうおこな部品ぶひん存在そんざいするが、それをモデムとことすくなく、通信つうしんチップやモジュールとうばれるほうおおい。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e f [1]
  2. ^ [2]
  3. ^ [3]
  4. ^ [4]
  5. ^ Britannica, modem.[5]
  6. ^ https://www.ntt-east.co.jp/databook/pdf/2019_S4.pdf
  7. ^ https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/s48/html/s48a02010201.html
  8. ^ https://next.rikunabi.com/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=001133
  9. ^ AIWA PV-2123 (1986)”. 2020ねん2がつ13にち閲覧えつらん
  10. ^ オートホン PC-TL101 仕様しよう一覧いちらん”. NEC サービス&サポート. 2019ねん4がつ16にち閲覧えつらん
  11. ^ MNPオフィシャルハンドブック,株式会社かぶしきがいしゃアスキー,1989ねん
  12. ^ ピクニック企画きかく, つつみ大介だいすけ, ed. (1 March 1990). "BTLZ方式ほうしき". 電脳でんのう辞典じてん 1990's パソコン用語ようごのABC』. ピクニック企画きかく. p. 282. ISBN 4-938659-00-X
  13. ^ ピクニック企画きかく, つつみ大介だいすけ, ed. (1 March 1990). "V.42bis". 電脳でんのう辞典じてん 1990's パソコン用語ようごのABC』. ピクニック企画きかく. p. 356. ISBN 4-938659-00-X

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]