ペンギン

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ペンギン
ケープペンギン
ケープペンギン Spheniscus demersus
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : とりつな Aves
: ペンギン Sphenisciformes
学名がくめい
Sphenisciformes Sharpe, 1891
Spheniscidae Bonaparte, 1831
シノニム

Spheniscomorphae
Impennes
Eupodornithes

和名わみょう
ペンギン[1]
ペンギン[1]
現生げんなまぞく

分布域

ペンギンは、ペンギン(Sphenisciformes)にぞくするとり総称そうしょうである。ペンギン(Spheniscidae)のみが現生げんなまする。

おも南半球みなみはんきゅう生息せいそくする海鳥うみどりであり、ぶことができない

いまでは使つかわれることはまれだが、漢字かんじくと「ひととり(じんちょう)」「くわだて(きが、くわだて爪先立つまさきだつの、鵝はガチョウ)」[注釈ちゅうしゃく 1]という和名わみょうもある。ひととり語源ごげんあるかたヒトおな直立ちょくりつそく歩行ほこうをしてるようにえることからだが、実際じっさいには直立ちょくりつそく歩行ほこうをしてはいない。

分布ぶんぷ[編集へんしゅう]

南半球みなみはんきゅうひろ緯度いど範囲はんい分布ぶんぷする。おも南極大陸なんきょくたいりく繁殖はんしょくするのはコウテイペンギンアデリーペンギンの2しゅのみである。ほかに、ジェンツーペンギンマカロニペンギンヒゲペンギンの3しゅは、南極大陸なんきょくたいりくなかでも比較的ひかくてき温暖おんだん南極なんきょく半島はんとうにも繁殖はんしょくがあるが、おも繁殖はんしょく南極なんきょく周辺しゅうへんしまである。種類しゅるいみなみアメリカアフリカ南部なんぶオーストラリアニュージーランド、あるいは南極なんきょく周辺しゅうへんしまなどに繁殖はんしょくがある。

もっとてい緯度いどにすむのは赤道あかみち直下ちょっかガラパゴス諸島しょとう分布ぶんぷするガラパゴスペンギンであり、その生息せいそくいき赤道せきどうはさみわずかに北半球きたはんきゅうにはみている。

これらのなかてい緯度いど繁殖はんしょくはいずれも、南極なんきょくかい周辺しゅうへんから寒流かんりゅうながれて海域かいいきめんしている。

形態けいたい[編集へんしゅう]

ペンギンは、現在げんざいでは6ぞく19たねだが、化石かせきから、かつてはもっとおおくの種類しゅるい存在そんざいしたことが確認かくにんされている。ぞくたね特徴付とくちょうづけるのは頭部とうぶ周辺しゅうへんで、それぞれ特徴とくちょうてき形態けいたいをしている。

現生げんなまペンギンの最小さいしょうしゅコビトペンギン(フェアリーペンギン)で体長たいちょうやく40 cmである。

現生げんなま最大さいだいしゅコウテイペンギンで、体長たいちょう100 - 130 cmたっする。ただし、絶滅ぜつめつたねジャイアントペンギン (Pachydyptes ponderosus) や、ノルデンショルトジャイアントペンギン (Anthropornis nordenskjoeldi) はコウテイペンギンよりもさら大型おおがたである。

おおくの鳥類ちょうるい陸上りくじょうでは、胴体どうたい前後ぜんごたおくびこす姿勢しせいをとるが、ペンギンるい胴体どうたい垂直すいちょくてる。鳥類ちょうるいおおくが飛翔ひしょう使つかつばさ特殊とくしゅし、ひれじょうの「フリッパー」としていて飛翔ひしょう能力のうりょくうしな水中すいちゅう遊泳ゆうえいにのみ使つかわれる。くびみじかく、鳥類ちょうるいとは一線いっせんかく独特どくとく体型たいけいをしている。

世間せけん一般いっぱんでは「あしみじかい」とおもわれているが、実際じっさいには体内たいない皮下脂肪ひかしぼう内側うちがわあし屈折くっせつしている。関節かんせつはこの状態じょうたいのまま固定こていされているので、あしばすことはできない。体外たいがいからているのは足首あしくびからした部分ぶぶんだけである。成鳥せいちょうではほとんど脂肪しぼうかくされており表面ひょうめんじょうえないが、生後せいごまもなくの脂肪しぼうすくないペンギンではその骨格こっかくがはっきりとてとれる。

分類ぶんるい[編集へんしゅう]

系統けいとうじゅあいだHackett et al. (2008)[2]ないBaker et al. (2006)[3]より。

water birds

アビ Gaviiformes

ペンギン
オウサマペンギンぞく

オウサマペンギン Aptenodytes patagonicus

コウテイペンギン Aptenodytes forsteri

アデリーペンギンぞく

アデリーペンギン Pygoscelis adeliae

ジェンツーペンギン Pygoscelis papua

ヒゲペンギン Pygoscelis antarctica

マカロニペンギンぞく

マユダチペンギン Eudyptes sclateri

キマユペンギン Eudyptes pachyrhynchus

ハシブトペンギン Eudyptes robustus

イワトビペンギン

Eudyptes chrysocome

Eudyptes filholi

Eudyptes moseleyi

マカロニペンギン Eudyptes moseleyii

ロイヤルペンギン Eudyptes schlegeli

キンメペンギンぞく

キンメペンギン Megadyptes antipodes

コビトペンギンぞく

コビトペンギン Eudyptula minor

ケープペンギンぞく

ケープペンギン Spheniscus demersus

マゼランペンギン Spheniscus magellanicus

フンボルトペンギン Spheniscus humboldti

ガラパゴスペンギン Spheniscus mendiculus

ミズナギドリ Procellariiformes

コウノトリ Ciconiiformes

ペリカン Pelecaniformesカツオドリ Suliformes

ペンギン海鳥うみどり渉禽類しょうきんるい(の一部いちぶ)からなるクレード water birds一員いちいんである。姉妹しまいぐん外洋がいようせい海鳥うみどりミズナギドリである。

ペンギン現生げんなまかんしてはたんがたである、つまり、ペンギンのみがぞくす。

従来じゅうらいは1しゅとされてきたイワトビペンギン Eudyptes chrysocome sensu lato の3亜種あしゅは、遺伝子いでんし比較ひかくにより別種べっしゅとする主張しゅちょうがある[4]。キタイワトビペンギン Eudyptes moseleyiのみを分化ぶんかし、ヒガシイワトビペンギンをミナミイワトビペンギン Eudyptes chrysocome亜種あしゅとする主張しゅちょうもある[5]

従来じゅうらいたねまたは亜種あしゅとみなされてきたハジロコビトペンギン Eudyptula albosignata は、コビトペンギンにふくめられ、さらにコビトペンギンのほか亜種あしゅともに、亜種あしゅ地位ちい否定ひていされた[よう検証けんしょう][6]

かつてはロイヤルペンギンとマカロニペンギン、ハシブトペンギンとキマユペンギンを同種どうしゅとするせつもあったが、遺伝いでんてき差異さい別種べっしゅ相当そうとうする[3]

以下いか分類ぶんるいはClements Checklists ver. 2015・IOC World Bird List(v 7.1)、和名わみょうはイワトビペンギンるいのぞいて山階やましな(1986)、英名えいめいはIOC World Bird List(v 7.1)にしたが[1][7]

歴史れきしじょうのペンギン分類ぶんるいにはおおきくけて、いずれかの海鳥うみどり仲間なかまだとするせつと、類縁るいえんのない独特どくとくのグループだとするせつとがあった。

Nitzsch (1840) はペンギンを、アビるいカイツブリるいウミスズメるいともPygopodes分類ぶんるいした。ほぼおなじグループを Garrod (1873; 1874) は Anseres、Reichenow (1882) は Urinatores とんだ。

Gray (1849) はややことなり、海鳥うみどり水鳥みずとり大半たいはんふくむ Anseres にふくめた。

それらにたいし、Huxley (1867) はペンギンを、海鳥うみどりから分離ぶんりし Spheniscomorphae とした。Sclater (1880) は、独立どくりつしたペンギン Impennes とした。Stejneger (1885) は、独立どくりつしたペンギン上目うわめImpennes とした。Menzbier (1887) は、鳥類ちょうるいを4グループにけたうちの1つ Eupodornithes をペンギンにて、ペンギンは爬虫類はちゅうるい祖先そせん段階だんかい鳥類ちょうるいとはかれていたと示唆しさした。

Furbringer (1888); Gadow (1893); Pycraft (1898); Boas (1933) などは、(現在げんざいられているとおり)ペンギンはミズナギドリもっとちかいとした。それ以降いこうは、ペンギンはをなし、ミズナギドリきんえんだとするせつ主流しゅりゅうとなった。ただし、独立どくりつしたグループを形成けいせいするというせつ後々あとあとまでのこった。

Verheyen (1961) はペンギンを、ミズナギドリ・ウミスズメペリカン・ウミスズメ・アビ)とともに Hygrornithes 上目うわめ分類ぶんるいした[8]

Bock (1982) はペンギンを、しんあご上目うわめあご上目うわめならだい3の上目うわめであるペンギン上目うわめ Impennes に分類ぶんるいした。

Sibley & Ahlquist (1990) はペンギンはいし、現在げんざいwater birds 全体ぜんたい拡大かくだいしたコウノトリふくめた。ペンギングンカンドリアビミズナギドリ現在げんざいのミズナギドリ)とともにミズナギドリうえふくめた。

最古さいこのペンギン ワイマヌ・マンネリンギの想像そうぞう
フンボルトペンギンぞく化石かせきしゅ2しゅフンボルトペンギン(した)の頭骨とうこつ

Clarke et al. (2003) はペンギンとペンギン系統的けいとうてきさい定義ていぎし、ペンギン現生げんなまペンギンのもっとあたらしい共通きょうつう祖先そせん子孫しそん、ペンギンはペンギンの祖先そせん飛翔ひしょう能力のうりょくうしなってからの子孫しそんとした。

さらにかれらは、ペンギンの祖先そせん現生げんなま鳥類ちょうるいから枝分えだわかれして以降いこう子孫しそんとして Pansphenisciformes も定義ていぎした。ただし、化石かせき発見はっけんされている最古さいこのペンギンもすでに飛翔ひしょう能力のうりょくうしなっており、Pansphenisciformes とペンギン現状げんじょうではおなじである。

ペンギンClarke et al.意味いみでの)にふくまれる化石かせきぞく発見はっけんされておらず、ペンギンには現生げんなまぞくのみがふくまれる[9]。ただし、ケープペンギンぞく化石かせきしゅ2しゅ S. megaramphusS. urbinai がペンギンふくまれる。

ペンギンの絶滅ぜつめつぞくについては、以下いか系統けいとうもとまっている[9][10]ぞく分類ぶんるい矛盾むじゅんする部分ぶぶん簡略かんりゃくしている)。ただし遺伝子いでんしによる系統けいとうくらべれば分岐ぶんき確実かくじつである。

ペンギン

ワイマヌ Waimanu

デルフィオルニス Delphinornis

マランビオルニス Marambiornis

メセタオルニス Mesetaornis

ペルディプテス Perudyptes

アンスロポルニス Anthropornis

パレユーディプテス Palaeeudyptes

イカディプテス Icadyptes

ジャイアントペンギン Pachydyptes

アルケオスフェニスクス Archaeospheniscus

ダントルーノルニス Duntroonornis

パラプテノディテス Paraptenodytes

アルスロディテス Arthrodytes

プラティディプテス Platydyptes

パレオスフェニスクス Palaeospheniscus

エレティスクス Eretiscus

デゲ Dege

マープルソルニス Marplesornis

ペンギン現生げんなまペンギン)

ミズナギドリ

Simpson (1946)化石かせきペンギンを4現生げんなまペンギンをペンギン Spheniscinaeけい5分類ぶんるいしていた。

その Marples (1952) はアンスロポルニスをパレユーディプテス統合とうごうした。しかし系統けいとう解析かいせきでは、SimpsonMarples枠組わくぐみは否定ひていされている。

生態せいたい[編集へんしゅう]

トボガンするキングペンギン
(2009ねん2がつ旭川あさひかわ旭山あさひやま動物どうぶつえん
海面かいめんからヒゲペンギン

陸上りくじょうではフリッパーをばたつかせながらある姿すがたがよくられているが、氷上ひかみ砂浜すなはまなどでははらばいになってすべる。これをトボガンという[11]

うみなかではつばさばたかせておよぐ。ペンギンるいもっとはやジェンツーペンギン水中すいちゅう速度そくど最大さいだい36 km/hたっする。イルカのように海面かいめんでジャンプすることもあり、水中すいちゅうから陸上りくじょうもどるときにはいったんふかもぐり、いきおいをけてびあがる。独特どくとく体型たいけいおよぐことにとくしており、海中かいちゅう自在じざいおよまわようはしばしば「水中すいちゅう」と形容けいようされる。

しょくせい肉食にくしょくで、魚類ぎょるい甲殻こうかくるいあたまあしるいなどを海中かいちゅう捕食ほしょくする。

一方いっぽう天敵てんてきシャチヒョウアザラシサメなどである。

ヒゲペンギンの

陸上りくじょう繁殖はんしょくする。たまご1個いっこ〜3み、オスとメスでだきたまごをする。またコウテイペンギンのように、ある程度ていど成長せいちょうしたヒナ同士どうしあつまり「クレイシュ」(crècheフランス語ふらんすご託児たくじしょ。クレイシとも)を形成けいせいするものがある。また、羽毛うもうわるかわはねにはうみはいらず、絶食ぜっしょく状態じょうたい陸上りくじょうにとどまるたねもいる。

ほとんどのペンギンは鳥類ちょうるい同様どうようはるからなつにかけて繁殖はんしょくするが、最大さいだいしゅのコウテイペンギンは、-60たっするふゆ南極大陸なんきょくたいりく繁殖はんしょくする。そのため、世界せかいもっと過酷かこく子育こそだてをするとりわれる。

人間にんげんとの関係かんけい[編集へんしゅう]

ペンギンの西洋せいよう世界せかいでの認知にんちは、温帯おんたいさんペンギンについてはだい航海こうかい時代じだいはじまる。南極なんきょくさんは18世紀せいき以降いこう南極なんきょくさんは19世紀せいき以降いこうのようである。日本にっぽんでは江戸えど時代じだい後期こうき蘭書らんしょられたが、その認知にんち一部いちぶ蘭学らんがくしゃにとどまった。一般いっぱんへの認知にんち明治めいじ後期こうき日本人にっぽんじん南極なんきょく探検たんけんにはじまる。

帝国ていこく南極なんきょく横断おうだん探検たんけんたいのコックチャールズ・グリーン英語えいごばんによって調理ちょうりされるペンギン(1914ねん

過去かこには、にく脂肪しぼうかられるあぶら採取さいしゅするために、おも南極なんきょく探検たんけん調査ちょうさたいがペンギンを捕獲ほかくしていた時代じだいがあった。20世紀せいきには捕獲ほかくかぎられたものとなり、現在げんざいでは資源しげん目的もくてき捕獲ほかく対象たいしょうとはなっていない。しかし廃棄はいきぶつ投棄とうきふね事故じこによる石油せきゆ流出りゅうしゅつなど、様々さまざま海洋かいよう汚染おせんがペンギンの脅威きょういとなっている。とくもちほう周辺しゅうへん海域かいいきパタゴニアなど、重要じゅうよう航路こうろめんした海域かいいき油田ゆでん地帯ちたいせっした海域かいいきにこの傾向けいこうつよい。さらに、近年きんねん生息せいそくいき温暖おんだんにより、えさオキアミ繁殖はんしょくいきとなる海上かいじょうこおり激減げきげん洪水こうずいによる浸水しんすいなどで、生息せいそくすうっているたねもある。

飼育しいく対象たいしょうとしてのペンギン[編集へんしゅう]

ブレーマーハーフェン動物どうぶつえんでの映像えいぞう

飼育しいくされたペンギンは、世界せかい各地かくち動物どうぶつえん水族館すいぞくかんることができる。とく日本にっぽんでは、動物どうぶつえん水族館すいぞくかんでの繁殖はんしょく技術ぎじゅつすすんだこともあり、現在げんざい世界せかいわれているペンギンの1/4が日本にっぽんにいるとわれるほどになっている。にちちゅう国交こっこう正常せいじょうさいジャイアントパンダ中国ちゅうごくよりおくられてきた返礼へんれいとして、ニホンカモシカとともにケープペンギンが日本にっぽんから中国ちゅうごくおくられた。これは前述ぜんじゅつのように、日本にっぽんでは当時とうじすでにペンギンの飼育しいく体系たいけい確立かくりつしていたが、当時とうじ中国ちゅうごく飼育しいく事例じれいがなかったためである。

南極なんきょく南極なんきょくのペンギンの飼育しいくには低温ていおんにする設備せつび必要ひつようだが、フンボルトペンギンマゼランペンギンケープペンギンなどの温帯おんたいペンギンは、氷雪ひょうせつこのまず屋外おくがい飼育しいく可能かのうであり、イギリスのエディンバラ動物どうぶつえん日本にっぽんでも掛川かけがわ花鳥かちょうえんなどで冬季とうきストーブにあたる風景ふうけいられる。日本にっぽんでは1989ねん設立せつりつされた葛西かさい臨海りんかいすいぞくえんのペンギンの飼育しいく施設しせつがフンボルトペンギンの生息せいそく岩山いわやま再現さいげんしたものであり、以後いご温帯おんたいペンギンの飼育しいく施設しせつはそれを踏襲とうしゅうしているが、それまでは戦前せんぜん阪神はんしんパーク確立かくりつされた南極なんきょく氷山ひょうざんをモチーフにしたしろりのコンクリートの小山こやまをバックとすることがおおかった。下関しものせき市立しりつしものせき水族館すいぞくかん2かいにある「フンボルトペンギン特別とくべつ保護ほご[12] はフンボルトペンギンの重要じゅうよう生息せいそくであるチリ・アルガロボとう環境かんきょう再現さいげんしており、チリ国立こくりつ動物どうぶつえん英語えいごばんなどからなるチリ国立こくりつサンティアゴ・メトロポリタン公園こうえん英語えいごばんから同種どうしゅ生息せいそく域外いきがい重要じゅうよう繁殖はんしょくとして指定していけている[13]

ごく少数しょうすうだが、家庭かていペットとしてペンギンを飼育しいくしているれいもある。ただし、ペンギンの大半たいはん種類しゅるいワシントン条約じょうやく保護ほご対象たいしょうとなっており、捕獲ほかく輸入ゆにゅう規制きせいされているため入手にゅうしゅ困難こんなんであるほか、大量たいりょうえさみず気温きおん調節ちょうせつなどで飼育しいくコストがたかく、においやごえおおきいなど、ペットとしての飼育しいく非常ひじょう困難こんなんである[14]

捕鯨ほげいとのかかわり[編集へんしゅう]

商業しょうぎょう捕鯨ほげい時代じだいには日本にっぽん捕鯨ほげいせん南氷洋なんぴょうようクジラとともにペンギンをりにしてかえり、動物どうぶつえん水族館すいぞくかん譲渡ゆずりわたされて飼育しいく展示てんじされていた。長崎ながさき水族館すいぞくかんで39年間ねんかんわたって飼育しいくされ世界せかい最長さいちょう飼育しいく記録きろくのこしたキングペンギン「ぎんきち」や、同館どうかんで28年間ねんかんわたって飼育しいくされたエンペラーペンギン「フジ」も、大洋たいよう漁業ぎょぎょう(のちのマルハ)の捕鯨ほげい母船ぼせんだい二日ふつかしんまる」に捕獲ほかくされ渡来とらいした個体こたいであった[15]捕鯨ほげい母船ぼせんではうえ甲板かんぱんにペンギンようのプールを特設とくせつしたものもあり、船員せんいんたちのいこいのになっていたという[16]

船内せんないではえさ解凍かいとうしてきざんだくじらにくあたえられ、船員せんいんらは荒波あらなみによる船酔ふなよいで食事しょくじのどとおらないでもペンギンの給餌きゅうじおこたらなかった[16]。しかし船員せんいんもペンギンにかんしては素人しろうとのため、過剰かじょう給餌きゅうじ消化しょうか不良ふりょう痛風つうふうこし体調たいちょうくず個体こたいもいた[15]。また、南極なんきょくからの帰航きこう温暖おんだん赤道あかみち周辺しゅうへんかなら通過つうかしなければならないため、低温ていおん乾燥かんそう地帯ちたいげんじゅう抵抗ていこうりょくよわいペンギンはアスペルギルスしょう発症はっしょうしやすく、帰港きこうにはすでに衰弱すいじゃくしていた個体こたいえんかん譲渡ゆずりわたされたのち短期間たんきかん死亡しぼうしてしまう個体こたいすくなくなかった[16]

文化ぶんか[編集へんしゅう]

民俗みんぞく俗信ぞくしん[編集へんしゅう]

ペンギンについて、北半球きたはんきゅうのヨーロッパやひがしアジアでは近世きんせい以前いぜんにはられていなかった。日本にっぽん場合ばあい前述ぜんじゅつとおり、蘭学らんがくしゃ一部いちぶしかなかった。そのため、ペンギンについて、ニワトリハトのような家禽かきんや、ツバメカラススズメなど身近みぢか野鳥やちょう、あるいはハクチョウのような気高けだか野鳥やちょうのような俗信ぞくしんなどはなく、紋章もんしょうなどにももちいられなかった。

北半球きたはんきゅうでのペンギン文化ぶんか20世紀せいき以降いこうのもので、前述ぜんじゅつ動物どうぶつえん水族館すいぞくかん飼育しいくや、後述こうじゅつするキャラクターによってつくられたところがおおきい。

ペンギンのキャラクター[編集へんしゅう]

LinuxのキャラクターペンギンTux

ペンギンがたキャラクターは、ふるくは、黒色こくしょくはら白色はくしょくであることから、タキシードまたは燕尾服えんびふく着用ちゃくようした紳士しんしになぞらえられることがおおかった。

科学かがく[編集へんしゅう]

有機ゆうき化合かごうぶつペンギノンは、平面へいめん構造こうぞうしきがペンギンにていることからづけられた。

同性愛どうせいあい象徴しょうちょう[編集へんしゅう]

2006ねんにアメリカで同性愛どうせいあいペンギンの絵本えほん And Tango Makes Three出版しゅっぱんされ、波紋はもんんだ。アメリカのニューヨークセントラルパーク動物どうぶつえん実在じつざいした、オス同士どうしのペンギンのカップルを題材だいざいにしている。

ペンギンに同性愛どうせいあい行動こうどう存在そんざいする。2006ねん、ノルウェーのオスロ自然しぜん博物館はくぶつかんでは、世界せかいはつの「生物せいぶつ同性愛どうせいあい」がテーマの展示てんじかいもよおされ、同性愛どうせいあい自体じたい自然しぜんかいでもめずらしいことではないという事実じじつ研究けんきゅう確認かくにんされている。同性どうせい同士どうしのペアのペンギンは、ドイツの動物どうぶつえん日本にっぽん登別のぼりべつマリンパークニクスなどで存在そんざい確認かくにんできる。

映像えいぞう[編集へんしゅう]

2008ねん、イギリスの放送ほうそうきょくであるBBCはエイプリルフールの話題わだいにペンギンをもちいた映像えいぞう制作せいさく発表はっぴょう。その映像えいぞう[17]あいらしいペンギンがそら様子ようすCGなどITを援用えんようしてたくみにつくした。

ペンギンある[編集へんしゅう]

歩幅ほはばちいさくし、そろそろある方法ほうほうをペンギンあるきと[18]冬季とうき凍結とうけつ路面ろめんなどで安全あんぜんある手法しゅほうで、日本にっぽんのほか、ドイツ[19]でも推奨すいしょうされている。

ファーストペンギン[編集へんしゅう]

集団しゅうだんえさもとめてうみさいに、最初さいしょむペンギンは「ファーストペンギン」とばれる。てんじて「リスクのある新分野しんぶんや最初さいしょ挑戦ちょうせんするひと」のことを[20]

「ペンギン」の語源ごげん[編集へんしゅう]

オオウミガラス (剥製はくせい)

ラテン語らてんごせつ[編集へんしゅう]

ラテン語らてんごpinguis肥満ひまん)によるという仮説かせつ。15世紀せいき後半こうはん以降いこう大西おおにしひろし横断おうだんしたスペインタラ漁師りょうしが、北西ほくせい大西おおにしひろしニューファンドランドとう周辺しゅうへん生息せいそくするべない潜水せんすいせい海鳥うみどりであるオオウミガラススペインpenguigoふとっちょ)とんだ。16世紀せいきにこのかたり英語えいごはいって penguin となったとする。

どきおなじくして、南半球みなみはんきゅう探検たんけんしペンギンをはじめてたヨーロッパじんは、オオウミガラスに形態けいたい生態せいたいのこれらの海鳥うみどりおなじ「ペンギン」のでよんだという。これらはとく区別くべつせず「ペンギン」と総称そうしょうされ、混同こんどうされることもおおかった。

ウェールズせつ[編集へんしゅう]

古代こだいウェールズpen gwynしろあたま)に由来ゆらいし、オオウミガラス(頭部とうぶしろい)をかたりとして12世紀せいきごろから使つかわれていたという仮説かせつ。しかし、いち史料しりょう現存げんそんせず、疑問ぎもんされることもある。

オオウミガラスの絶滅ぜつめつ[編集へんしゅう]

語源ごげんてきには「ペンギン」はオオウミガラス由来ゆらいした。しかし、当時とうじ(16世紀せいき以前いぜん)の人々ひとびとがオオウミガラスとペンギンを峻別しゅんべつしていたわけではなく、オオウミガラスと(みなみの)ペンギンが「ペンギン」とばれるようになったのはほとんどどう時期じきである。

南半球みなみはんきゅう探検たんけんすすみ、みなみのペンギンの研究けんきゅう利用りようえる一方いっぽう、オオウミガラスは乱獲らんかくにより17世紀せいきごろから激減げきげんし、18世紀せいきにはりょう商業しょうぎょうてきりたなくなり、1844ねんには絶滅ぜつめつした。これにともない、「ペンギン」はみなみのペンギンをすことが徐々じょじょおおくなり、ついには完全かんぜんみなみのペンギンのみをすようになった。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ なお、くわだて鵝は本来ほんらい和名わみょうではなくいわゆる漢語かんご表記ひょうきちゅうぶん粤語くわだて / くわだて)である。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c 山階やましなよし麿まろ 「ペンギン」『世界せかい鳥類ちょうるい和名わみょう辞典じてん』、大学だいがく書林しょりん、1986ねん、17-18ぺーじ
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  7. ^ Loons, penguins, petrels, Gill F & D Donsker (Eds). 2016. IOC World Bird List (v 7.1). doi:10.14344/IOC.ML.7.1 (Retrieved 18 April 2017)
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参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]