セレンディピティ ダイアリー

もう一いちヶ月かげつくらいたちますが、久ひさしぶりにインド映画えいがを見みに行いきました。

エンドロールのつづき　(Chhello Show / Last Film Show)

インドの貧まずしいチャイ売うりの少年しょうねんが、初はじめて見みた映画えいがをきっかけに映画えいがの世界せかいに魅みせられ、いつか自分じぶんで映画えいがを作つくりたい、と夢見ゆめみる物語ものがたり。インド出身しゅっしんのパン・ナリン監督かんとくが、自身じしんの体験たいけんをもとに作つくった作品さくひんです。

この映画えいがのことを知しった時とき、インド版ばん「ニュー・シネマ・パラダイス」みたいだなーと思おもい、楽たのしみにしていました。主演しゅえんの男おとこの子この無垢むくな笑顔えがおがかわいくて、ニュー・シネマ・パラダイスのトトみたい！と思おもっていました。

監督かんとくはインドのグジャラート州しゅう出身しゅっしんで、本ほん作さくもグジャラート州しゅうで撮影さつえいされています。そしてこの映画えいがの主役しゅやくに抜擢ばってきされた男おとこの子こ、バヴィン・ラバリもグジャラート出身しゅっしんで、学校がっこうに通かよいながら祖父そふのチャイ売うりを手伝てつだっているそうです。

映画えいがは貧まずしい中なかにも明あかるく前向まえむきに生いきる少年しょうねんたちの姿すがたがノスタルジーたっぷりに描えがかれています。親切しんせつな技師ぎしさんの計はからいで、少年しょうねんサマイがこっそり映写えいしゃ室しつに入いれてもらうシーンなどもあり、たしかにニュー・シネマ・パラダイスのテイストもあるのですが

私わたしにとって意外いがいだったのは、サマイの映画えいがへの興味きょうみの方向ほうこうです。「映画えいがを作つくりたい」と聞きいて、私わたしはてっきり、ストーリー作づくりや映像えいぞう作づくりに興味きょうみを持もったのだろうと思おもっていたのですが、サマイが興味きょうみを持もったのは、映画えいがを上映じょうえいする仕組しくみでした。

映画えいが=動うごく絵えをスクリーンに映うつし出だすのに、光ひかりの作用さようが大おおきくかかわっていることに気きがつくと、身みの回まわりの道具どうぐを使つかってカメラの仕組しくみや、アニメーションの仕組しくみについて次々つぎつぎと実験じっけんを行おこないます。そう、まるでリュミエール兄弟きょうだいのように。

そしてついには、映画えいが館かんからこっそり持もち出だしたフィルムを編集へんしゅうし、自分じぶんで映画えいがを作つくって上映じょうえいに成功せいこうします。私わたしはサマイの映画えいが作づくりに対たいする、科学かがく的てきアプローチに感動かんどうしました。

最初さいしょはサマイが映画えいがを作つくりたいという夢ゆめが理解りかいできず、反対はんたいしていた父ちちですが、ある時ときひょんなことから、サマイが仲間なかまたちと手作てづくりの楽器がっきで演奏えんそうしながら、秘密ひみつの場所ばしょで映画えいが上映じょうえい会かいを行おこなっているところを見みてしまいます。

サマイがとうとう自分じぶんの力ちからで映画えいがを作つくり、幸しあわせそうに仲間なかまと喜よろこびを分わかち合あっている姿すがたを見みた父親ちちおやは、チャイ売うりをしてためたお金かねをサマイに渡わたし、映画えいがの勉強べんきょうができるよう彼かれを送おくり出だす展開てんかいに、映画えいが「リトル・ダンサー」(Billy Elliot) を思おもい出だしました。

この映画えいがでは、サマイの父親ちちおやが親戚しんせきにだまされて羊ひつじを取とられ、チャイ売うりで生計せいけいを立たてていること。チャイ売うりをしている駅えきに列車れっしゃが停車ていしゃしないことになり、その仕事しごとさえも失うしなってしまうこと。インドの貧まずしい暮くらしの現実げんじつもさりげなく描えがかれています。

そうした中なか、優やさしいお母かあさんが家族かぞくのために作つくる、おいしそうなごはんが心しんに残のこり、食しょくのもたらす力ちからについても考かんがえさせられました。