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マニュアルトランスミッション - Wikipedia

マニュアルトランスミッション

運転うんてんしゃがギアを選択せんたくして操作そうさするトランスミッション

マニュアルトランスミッションえい: Manual Transmission, MT)もしくは手動しゅどう変速へんそく(しゅどうへんそくき)とは運転うんてんしゃ減速げんそく(ギア)選択せんたくして操作そうさするトランスミッション(変速へんそくおも内燃ないねん機関きかん原動機げんどうきである自動車じどうしゃオートバイ農業のうぎょう機械きかいなどに装備そうびされている。操作そうさ容易ようい燃費ねんぴ・ドライビングフィールも改良かいりょうされてきたオートマチックトランスミッション(自動じどう変速へんそく普及ふきゅうした現在げんざいいちじるしく減少げんしょうしている。

16そく(2x4x2) ZF 16S181トランスミッション
I - インプットシャフト、II - メインシャフト、П - カウンターシャフト、1 - インプットシャフト、2 - スプリッターハイギアホイール、3 - ベアリング、4 - スプリッターシンクロナイザー、5 - スプリッタースライドスリーブ、6 - 6そくギアホイール(破損はそんしている)、 7 - 3そく-4そくギヤスライドスリーブ、8 - 2そくギヤ駆動くどうホイール、9 - 後退こうたいギヤシフトレール、10 - 3そく-4そくギヤシフトレール

・シフトチェンジは、手元てもとのシフトレバーをうごかし、それにつながるシフトフォーク・シャフトがスリーブをし、スリーブをギアにませることでおこなう。
・スリーブを移動いどうさせることで、シンクロナイザ・キーがメーン・シャフトじく方向ほうこう移動いどうし、シンクロナイザ・リングをす。
・シンクロナイザ・リングは、メーン・シャフトじょう空転くうてんするようになっているかくギヤのコーン部分ぶぶんにあたり、クラッチの役目やくめをする。
・スリーブは、シンクロナイザ・リングをギアのコーンけて、摩擦まさつによりシャフトとシンクロナイザ・リングとギアのうごきを同期どうきさせ、シンクロナイザ・ハブとシンクロナイザ・リングとギアのをかみわせる。
マニュアルトランスミッションしゃにおけるシフトノブのれい
5そくマニュアルしゃのシフトパターンのれい

概要がいよう

一般いっぱんてきにマニュアルトランスミッション(以下いかMT)は、減速げんそくことなる歯車はぐるまくみを、変速へんそく段数だんすうおなすうだけつ。これにたいし、代表だいひょうてきオートマチックトランスミッション以下いかAT)は、遊星ゆうせい歯車はぐるま機構きこう動作どうさ切替きりかえて減速げんそく変更へんこうしており、変速へんそく段数だんすうとギアのくみすうかならずしも一致いっちしない。現代げんだい自動車じどうしゃのMTは、運転うんてんしゃ任意にんいのギアだんして変速へんそくできる一方いっぽう、オートバイやレース車両しゃりょうのMTでは、となうギアだんでしか変速へんそくすることができないものがおおい。後者こうしゃとくシーケンシャルマニュアルトランスミッションぶ。

ATが開発かいはつされ普及ふきゅうした結果けっかレトロニムとして旧来きゅうらい手動しゅどう変速へんそくがMTとしょうされるようになった。イギリス英語えいごではマニュアル・ギアボックスともばれる。日本語にほんご慣例かんれいではMTマニュアルなどと略称りゃくしょうされる。一部いちぶでMTをして「ミッション」という略語りゃくごもちいられる場合ばあいがあるが、「ミッション」は「トランスミッション」のりゃくであり、MTかATかを区別くべつすることにはならない[1]

2010年代ねんだいにおいて、日本にっぽん国内こくない自動車じどうしゃ販売はんばい台数だいすうにおけるMTの普及ふきゅう台数だいすうすくなく、業務ぎょうむよう大型おおがたしゃ作業さぎょうよう車両しゃりょう趣味しゅみせいつよいスポーツタイプ乗用車じょうようしゃなどに搭載とうさいされるにまる。またスポーツタイプでもこう価格かかくたいではほとん絶滅ぜつめつ状態じょうたいで、フェラーリマクラーレンといった代表だいひょうてきスーパーカーメーカーではMTを全廃ぜんぱいすることもめずらしくなくなった。フェラーリ最後さいごのMT設定せっていしゃであるカリフォルニアでは、英国えいこく販売はんばいされた260だいのうち、MTはただ1だいだけであったことからもその需要じゅようすくなさはうかがえる[2]

一方いっぽうポルシェBMW依然いぜんとしてMTしゃのこしているほか、マツダCX-8のぞぜんラインナップにMTを設定せっていするなどちゅうてい価格かかくたい中心ちゅうしん需要じゅよう多少たしょうのこっている。マツダの場合ばあいアテンザ売上うりあげの10%、ロードスターいたっては75%がMTである[3]近年きんねんトヨタもエンジン回転かいてんすう自動じどう調節ちょうせつ機能きのうつiMT(インテリジェンス・マニュアル・トランスミッション)を開発かいはつして、一般いっぱん乗用車じょうようしゃ搭載とうさいするようになってきている。

内部ないぶ構造こうぞう

うえ構成こうせいいちれいであり、うえでアウトプットシャフトに保持ほじされている歯車はぐるまがインプットシャフトに保持ほじされる場合ばあいもある。また、前輪ぜんりん駆動くどうしゃのようにディファレンシャルギア内蔵ないぞうしてトランスアクスルとなる場合ばあいもある。

自動車じどうしゃようのMTでは3だん程度ていどから10だんえるものまで、用途ようと時代じだいおうじてことなる段数だんすう前進ぜんしんギアをそなえ、後進こうしんギアは1だん場合ばあいがほとんどである。うえのようにインプットシャフトとアウトプットシャフトが同軸どうじくとなるMTでは、さい高段こうだんの「トップギア」で歯車はぐるまかいさずりょうシャフトを直結ちょっけつして伝達でんたつする構造こうぞうをとり、減速げんそくを1:1とするものがおおかった。この方式ほうしきはじめて採用さいようしたのは1898ねんルイ・ルノーがド・ディオン=ブートン(De Dion-Boutonしゃ改造かいぞう開発かいはつした「ヴォワチュレット」(Voiturette)で、通常つうじょう多用たようされるトップギアでMT内部ないぶ摩擦まさつらし、効率こうりつよく駆動くどうさせるねらいがあった。以後いご世界せかい各国かっこく自動車じどうしゃメーカー追随ついずいする方式ほうしきとなっている。エンジン回転かいてんすうより出力しゅつりょくじく回転かいてんすうたかくなる(1:1以上いじょう)のギアは「オーバートップ」や「オーバードライブ」とばれ、エンジン回転かいてんすうひくおさえて静粛せいしゅくせい経済けいざいせいたかめる効果こうかがあったが、その普及ふきゅう道路どうろ交通こうつう高速こうそく進展しんてんしただい世界せかい大戦たいせん以降いこうである。MTとはべつたいのオーバードライブユニットがまれたものもあり、代表だいひょうれいとしてイギリスMG・MGBではシフトノブにまれたボタンによって作動さどうさせた。

シャフト

MTを構成こうせいする歯車はぐるまシンクロメッシュのシャフトは複数ふくすうあるが、車両しゃりょう駆動くどう方式ほうしきによって、入力にゅうりょくじく出力しゅつりょくじく配置はいちかずことなる。たとえばフロントエンジン・リヤドライブしゃのように、一方いっぽうから入力にゅうりょくけて反対はんたいがわ出力しゅつりょくする場合ばあいうえのようにインプットシャフト、カウンターシャフトおよびアウトプットシャフトの3ほんがある。インプットシャフトとアウトプットシャフトは同軸どうじくじょうにあるため、一方いっぽうはし中空ちゅうくうでもう一方いっぽうはしがそのなか挿入そうにゅうされる場合ばあいもあり、この場合ばあい両方りょうほうわせてメインドライブシャフトとばれる。一方いっぽう前輪ぜんりん駆動くどうしゃおおい、入力にゅうりょくじくかって出力しゅつりょくする形式けいしき場合ばあいは、インプットシャフトとカウンターシャフトの2ほんのみ存在そんざいする。

歯車はぐるま

 
4そくMTの機構きこうしきアニメーション

トランスミッションにまれる歯車はぐるまは、選択せんたくされた段位だんい歯車はぐるまだけが選択せんたくすりどうしきと、かくだん歯車はぐるま常時じょうじいつつ、噛いクラッチで歯車はぐるまとシャフトを1だんだけ接続せつぞくする常時じょうじごうい(コンスタントメッシュ、えい: constant meshしきがある。

選択せんたくすりどうしきでは、歯車はぐるまはシャフトじょうをスライドできるように保持ほじされている[4]歯車はぐるまめんすべらせながらいと分離ぶんりおこなわれるためひら歯車はぐるまもちいられる。黎明れいめい自動車じどうしゃでは一般いっぱんてきだったが、なめらかな変速へんそくには高度こうど技量ぎりょうようするため、現代げんだい自動車じどうしゃ用途ようとでは後退こうたいギアをのぞいて常時じょうじごうしきってわられている[4]

常時じょうじごうしきでは、歯車はぐるまはシャフトとは独立どくりつして回転かいてんし、かくだん歯車はぐるまつねに噛っている[4]歯車はぐるま側面そくめんとシャフトにはがみいクラッチようもうけられ、変速へんそく操作そうさ対応たいおうするクラッチスリーブがスライドして、歯車はぐるまとシャフトのはまごう(かんごう)させて動力どうりょく伝達でんたつする[4]

シンクロナイザー

自動車じどうしゃようのMTにはシンクロナイザー(えい: synchronizer)とばれる機構きこうまれることが一般いっぱんてきで、これをそなえる変速へんそく機構きこうはシンクロメッシュ(えい: synchromesh)とばれる。これは常時じょうじごうしき変速へんそくのクラッチスリーブと歯車はぐるまが噛さいに、なめらかにたがいの回転かいてん速度そくど同調どうちょう(シンクロナイズ)させる機構きこうである。

クラッチスリーブと歯車はぐるまたがいにことなる回転かいてん速度そくど回転かいてんしている場合ばあいがほとんどで、その速度そくどおおきい場合ばあいがみごう衝突しょうとつによる騒音そうおん発生はっせいしたり、機構きこういためることもある。シンクロナイザーはクラッチスリーブと歯車はぐるまあいだ同軸どうじくじょう介在かいざいし、変速へんそく操作そうさによってなめらかなめん荷重かじゅうけながら歯車はぐるましつけられ、摩擦まさつりょくでクラッチスリーブから歯車はぐるまへと回転かいてん伝達でんたつする方式ほうしきひろ普及ふきゅうしている。シンクロメッシュが普及ふきゅうしたことで、自動車じどうしゃ運転うんてんがより容易よういとなった。

ふるくは自動車じどうしゃようMTもシンクロナイザーをそなえていないのが一般いっぱんてきで、シンクロメッシュが普及ふきゅうしたのちには対比的たいひてきノンシンクロトランスミッションばれるようになった。耐久たいきゅうせい整備せいびせい観点かんてんから、ノンシンクロトランスミッションは現在げんざいでも大型おおがた自動車じどうしゃ建設けんせつ機械きかい、オートバイあるいは競技きょうぎよう自動車じどうしゃなどで利用りようされるれいがある。

後進こうしんギア

一般いっぱんてき自動車じどうしゃようのMTでは、前進ぜんしんギアが2つの歯車はぐるまいちくみであるのにたいし、後進こうしんギアはリバースアイドラー(えい: reverse idler gear)とばれる歯車はぐるまくわえた3つの歯車はぐるまが1くみ構成こうせいされる。前進ぜんしんギアよりも歯車はぐるまを1つおおかいして伝達でんたつされるため回転かいてん方向ほうこうぎゃくになる(後退こうたいともう)。

前進ぜんしんギアに常時じょうじしき採用さいようされることが一般いっぱんてきになってからも、後進こうしんギアには選択せんたくすりどうしき採用さいようされることがおおかったが、後進こうしんギアにも常時じょうじしき採用さいようされ、同時どうじにシンクロナイザーがわされるようになった。選択せんたくすりどうしき場合ばあい、カウンターシャフトとアウトプットシャフトに固定こていされた歯車はぐるまたがいにっておらず、後進こうしん選択せんたくされるとがこれらの歯車はぐるまあいだにリバースアイドラーが挿入そうにゅうされて動力どうりょく伝達でんたつする。そのためリバースには独特どくとくのうなりおん発生はっせいする。また、選択せんたくすりどうしき場合ばあいひら歯車はぐるまであるため、はす歯車はぐるま利用りようしたほかの段位だんいくらべると走行そうこう騒音そうおんおおきくなる。

整備せいび

MTはオイルで潤滑じゅんかつされていて、定期ていきてき交換こうかんしなければならない自動車じどうしゃもある一方いっぽう交換こうかん不要ふようとする車種しゃしゅもある。マニュアルトランスミッションの潤滑じゅんかつもちいられるオイルはギアオイルばれ、めんすべりやめんにかかる圧力あつりょく油膜ゆまくれるのをふせぐため、硫黄いおうリン亜鉛あえんなどからなるごくあつ添加てんかざいばれる化合かごうぶつ添加てんかされており、特有とくゆうにおいがある。ただしギヤの種類しゅるい関係かんけいからディファレンシャル系統けいとうなどにくら過酷かこく一般いっぱんてきにはきびしくなく、またごくあつざいがシンクロメッシュへの攻撃こうげきせい場合ばあいがあるため、ディファレンシャル系統けいとうよりもごくあつせいひくいオイルが指定していされることおおい。しかしディファレンシャルと一体化いったいかしたトランスアクスルにおいては一定いっていきょくあつせいもとめられるためシンクロ攻撃こうげきせいとのバランスがもとめられる。一部いちぶ製造せいぞう業者ぎょうしゃではギアオイルにこれらの添加てんかぶつ使つかわず、近年きんねんまでは通常つうじょうエンジンオイル指定していしていたが、現在げんざいでは自社じしゃブランドのギアオイルを指定していしている。4サイクルエンジンを搭載とうさいしたオートバイのMTはエンジンのクランクケースと一体化いったいかしたギアハウジングを採用さいようしている車種しゃしゅがほとんどで、エンジンオイルによってトランスミッションも同時どうじ潤滑じゅんかつする。

クロースレシオトランスミッション

かく変速へんそくだんあいだ歯車はぐるま比較的ひかくてきちいさいトランスミッションはクロースレシオトランスミッションとばれる。クロース(Close)は「ちかい」ので、歯車はぐるまちいさく(ちかく)することで、変速へんそく前後ぜんこうのエンジン回転かいてん速度そくど変化へんかちいさくできる。

MTしゃ特有とくゆう運転うんてん操作そうさ

AT搭載とうさいしゃやセミオートマチックトランスミッション搭載とうさいしゃとはことなり、MT搭載とうさいしゃではクラッチ操作そうさ運転うんてんしゃおこなう。車両しゃりょう停止ていしさせる場合ばあいやシフトチェンジをおこなさいにはクラッチをってトランスミッションへ伝達でんたつされる動力どうりょく遮断しゃだんする。自動車じどうしゃではペダルによって、オートバイではハンドルの左側ひだりがわいたレバーで操作そうさするのが一般いっぱんてきで、単純たんじゅん動力どうりょくだんせっだけでなく、クラッチをすべらせながら部分ぶぶんてき動力どうりょく伝達でんたつさせるはんクラッチばれる操作そうさもMT搭載とうさいしゃ運転うんてんするじょう不可欠ふかけつ運転うんてん操作そうさである。

登坂とさか発進はっしんするさいはクラッチをったままブレーキペダルからあしはなすと車両しゃりょう後退こうたいしてしまうため、これをふせぐためにパーキングブレーキを利用りようし、クラッチ接続せつぞく同時どうじ徐々じょじょにブレーキを解放かいほうする運転うんてん操作そうさもある。「坂道さかみち発進はっしん」とばれ、日本にっぽん自動車じどうしゃ教習所きょうしゅうじょではMTしゃ運転うんてんする実技じつぎ必須ひっす項目こうもくとなっている。

左足ひだりあしでクラッチを操作そうさするのと同時どうじに、右足みぎあしでブレーキとアクセルを同時どうじ操作そうさする場合ばあいもあり、ヒール・アンド・トウばれる。3つのペダルで運転うんてん操作そうさおこなうMT搭載とうさいしゃ特有とくゆう操作そうさ方法ほうほうである。また、モータースポーツなどでおこなわれる特殊とくしゅ操作そうさ方法ほうほうとして、走行そうこうちゅうにアクセルをひらいたままクラッチをり、エンジンの回転かいてん速度そくどがったところで急激きゅうげきにクラッチを接続せつぞくする操作そうさもある。故意こい駆動くどう空転くうてんさせて、エンジンの回転かいてん速度そくど出力しゅつりょくたか領域りょういき、すなわちトルクバンドにたもって走行そうこうするための運転うんてん技術ぎじゅつである。駆動くどう空転くうてんするため車体しゃたい挙動きょどう不安定ふあんていになるが、これをドリフト走行そうこうのきっかけに利用りようする場合ばあいもある。

クラッチスタートシステム

トランスミッションをニュートラルにしないまま、クラッチをまずにエンジンを始動しどうさせると車両しゃりょうはしして事故じこつながるおそれがあることから、日本にっぽん国内こくないでは、1999ねん7がつ以降いこうより新車しんしゃ販売はんばいされているMTしゃには、クラッチをまないとエンジンがかからない、クラッチスタートシステムの採用さいよう義務付ぎむづけられている。

変速へんそくとの比較ひかく

乗用車じょうようしゃ場合ばあい一般いっぱんてき自動じどう変速へんそく比較ひかくするとつぎのような特徴とくちょうがある。

  • 構造こうぞう単純たんじゅんで、許容きょようトルクにして小型こがた軽量けいりょうである。
  • 歯車はぐるまによる伝達でんたつのため、CVTよりも伝達でんたつ効率こうりつたかい。
  • 定常ていじょう運転うんてんすべりのない摩擦まさつクラッチとわされるため、ロックアップ機構きこうたないトルクコンバータしきATより伝達でんたつ効率こうりつたかい。
  • しがけやきがけ[注釈ちゅうしゃく 1]によるエンジンの始動しどう可能かのうである(クラッチスタートシステム装着そうちゃくしゃでも可能かのうである)。
  • ATしゃくらべて複雑ふくざつ運転うんてん操作そうさようするが、ぎゃくにいえばたんにブレーキペダルとアクセルペダルを間違まちがえただけでは意図いとせぬ発進はっしんをせず、意図いとせぬきゅう加速かそくおさえられることでもある。
  • 複雑ふくざつ運転うんてん操作そうさにより運転うんてんたいする集中しゅうちゅうりょくたもたれるとする主張しゅちょうや、複雑ふくざつ運転うんてん操作そうさたのしみを見出みいだ趣向しゅこうもある。

マニュアルモードきAT

ATしゃのカタログに「マニュアルモードき」などのように記載きさいされていれる場合ばあい通常つうじょうのモードでは自動じどうおこなわれる変速へんそくを、ドライバーの任意にんい選択せんたくできるスイッチをもうけたATをしめしている。CVTの場合ばあいは、自動じどう制御せいぎょでは変速へんそく段階だんかい連続れんぞくてき変化へんかさせているが、マニュアルモードではCVTの変速へんそく範囲はんいなか段階だんかいてき設定せっていされた変速へんそくをスイッチで選択せんたくできるように制御せいぎょする。いずれも変速へんそく任意にんいえらべるだけであり、MTのようなクラッチ操作そうさ不可能ふかのうかつ不要ふようである。英語えいごけんでは、マニュアルモードきのトルクコンバータしきATは「manumatic」とばれる。

現在げんざいF1NASCARインディカーSUPER GTDTMWRCル・マンなどのプロけビッグレースでは軒並のきなみセミATが採用さいようされており、変速へんそくはやさでおとるMTは完全かんぜん絶滅ぜつめつしている。一方いっぽう86/BRZレーススーパー耐久たいきゅう(ST-2〜ST-5クラス)のようなアマチュアしょくつよいレースや、ドリフトのような特殊とくしゅ操作そうさ必要ひつようとする競技きょうぎ依然いぜんとしてMTが主流しゅりゅうである。

小型こがたバイクなどに使つかわれる自動じどう遠心えんしんクラッチひとし利用りようした手動しゅどう変速へんそくも、セミオートマチックトランスミッションも、マニュアルモードきATもともに、日本にっぽん運転うんてん免許めんきょ制度せいどじょうでは、クラッチ操作そうさペダル・クラッチ操作そうさレバーがなければオートマチック限定げんてい免許めんきょ運転うんてんゆるされる。

日本にっぽん普及ふきゅうじょうきょう

MTは比較的ひかくてき製造せいぞうコストがひくく、動力どうりょく伝達でんたつ効率こうりつてきであったため、かつてはMTが主流しゅりゅうで、ATは一種いっしゅ贅沢ぜいたくひんとしてオプション設定せっていとされることがおおかった。とく排気はいきりょうちいさい小型車こがたしゃについては、初期しょきのATはトルクコンバーター損失そんしつおおきく、走行そうこう性能せいのう燃費ねんぴ性能せいのうともひくかったため、エンジンの動力どうりょく効率こうりつてき使つかえるMTがてきしていた。

しかし、近年きんねん車種しゃしゅではだん変速へんそく(CVT)やATのほう燃費ねんぴでも走行そうこうせい能面のうめんでも優位ゆういっており[5]性能せいのうてきアドバンテージをうしなったMTはおおきくかずらした。日本にっぽんでは1980年代ねんだい後半こうはんまで、MTはよんりん自動車じどうしゃ変速へんそく機構きこう主流しゅりゅうであったが、いまはモデルチェンジや改良かいりょうによりMTを廃止はいしし、ATもしくはCVTのみに縮小しゅくしょうされることがおおい。また三菱自動車みつびしじどうしゃ日本にっぽん国内こくないにおける。輸出ゆしゅつ仕様しようには現在げんざいもMTしゃ存在そんざいする)のように自社じしゃ生産せいさんしゃからMTを全廃ぜんぱいする意向いこうのメーカーもあらわれた。モデルべつても、ミニバンでは、1999ねん平成へいせい11ねん)の日産にっさん・セレナのモデルチェンジ、トヨタエスティマエミーナおよエスティマルシーダのモデル廃止はいしをもってラインナップから姿すがたした。2017ねん平成へいせい29ねん)の国内こくないMT比率ひりつは2.6 %であった。

このようにMTは完全かんぜん時代遅じだいおくれのかんつよいが、2019ねん平成へいせい31/れい元年がんねん現在げんざいでもスバル・WRX STIトヨタ・マークX GRMN限定げんてい生産せいさん)のようなMT専用せんようモデルが販売はんばいされているほか、スズキ・ジムニーホンダ・S660トヨタ・86/スバル・BRZマツダ・ロードスターのような安価あんかかつ趣味しゅみせいつよ車種しゃしゅではMTがATよりれているものもある[6]スズキは、ブランクを復活ふっかつした8代目だいめアルトワークスで、MTをあやつることのたのしさを前面ぜんめんした宣伝せんでんおこなっていた。これら以外いがいにも、トヨタマツダ、スズキは実用じつよう車種しゃしゅにも積極せっきょくてきにMTをラインナップしている。また、変速へんそく操作そうさわせてエンジン回転かいてんすう制御せいぎょおこな日産にっさんの「シンクロレブコントロール」や、それにくわえて微速びそく坂道さかみち発進はっしんにスロットルをおおめにひらいてエンストふせぐトヨタのiMTのような、あらたな付加ふか価値かちつMTしゃえており、運転うんてん操作そうさむずかしさを払拭ふっしょくし、MTしゃさをばす努力どりょくがなされている。

営業えいぎょうよう自動車じどうしゃ

トラックバスなどの商業しょうぎょうよう大型おおがたしゃでは、流体りゅうたいクラッチ伝達でんたつロスから必然ひつぜんてきしょうじるかず %の燃費ねんぴ克服こくふくできず、商用しょうようしゃきびしく要求ようきゅうされる燃料ねんりょうコストや整備せいびせい積載せきさい走行そうこう性能せいのう問題もんだいからMTしゃ主流しゅりゅうであった。しかし、2000年代ねんだいなか以降いこう、MTをベースとしたセミオートマチックトランスミッション実用じつようレベルにたっし、MTしゃ遜色そんしょくない燃費ねんぴ走行そうこう性能せいのう実現じつげんしたことで、トラックでもAT・オートメイテッドマニュアルトランスミッション(AMT)への移行いこうすすんでいる。

大型おおがた中型ちゅうがたバスも2000年代ねんだいまではMTしゃ主流しゅりゅうであったが、交通こうつうバリアフリーほうによるノンステップバスハイブリッドしゃ普及ふきゅうエンジンのしょう排気はいきりょうともなってAT・AMTへの移行いこうすすんだ結果けっか2021ねんれい3ねん時点じてんでは、大型おおがた路線ろせんバス新車しんしゃラインナップからは消滅しょうめつし、大型おおがた観光かんこうバス日野ひの・セレガいすゞ・ガーラ一部いちぶ仕様しようのみと、小型こがたトラックとパワートレインを共用きょうようするマイクロバスのこ程度ていどとなっている。

日本にっぽんのタクシー同様どうようで、1990年代ねんだいまではMTが主流しゅりゅうであったが、2014ねん平成へいせい26ねん)のだいしゅ普通ふつう運転うんてん免許めんきょ取得しゅとくしゃの15,701にんちゅう、55 %の8,649にんがAT限定げんてい取得しゅとくしている[7]。タクシーよう車種しゃしゅ構成こうせいも、2008ねん平成へいせい20ねん)から2009ねん平成へいせい21ねん)にかけてトヨタ・クラウンコンフォートトヨタ・クラウンセダン日産にっさん・セドリック営業えいぎょうしゃがATのみになった。クラウンコンフォート・クラウンセダンの後継こうけいタクシー専用せんようしゃであるトヨタ・ジャパンタクシーも、トヨタ・ハイブリッド・システムしょうする電力でんりょく機械きかい併用へいようしきCVT専用せんようしゃである。

オートバイ

オートバイでは50 ccスクーターのぞき、ほとんどがクラッチレバーをつMTであったが、いわゆるビッグスクーターブームで、一時いちじてきに250 ccクラスは販売はんばい台数だいすう大半たいはんがATとなった。それにともない、2005ねん平成へいせい17ねん)には普通ふつうりん免許めんきょ小型こがた限定げんていふくむ)と大型おおがたりん免許めんきょにAT限定げんてい新設しんせつされた。現在げんざいはビッグスクーターブームの衰退すいたいと、カワサキ・Ninja 250Rなどのスポーツバイクのヒットで、250 ccクラスにおけるMTの販売はんばい比率ひりつもどりつつある[8]。なお、オートバイの場合ばあいはMTといっても、現代げんだい自動車じどうしゃちがってほぼすべてがノンシンクロトランスミッションである。

軍用ぐんようしゃ

大型おおがたトラックや特殊とくしゅ車両しゃりょうなどの場合ばあい、MTでは操作そうさ習熟しゅうじゅくしたものでないと発進はっしんすら困難こんなん場合ばあいがあるが、ATでは自動車じどうしゃ運転うんてんができるものならある程度ていど運転うんてんすることは可能かのうであり、小型こがた車両しゃりょうにおいても片手かたてへんあし負傷ふしょうした状態じょうたいでも運転うんてん可能かのうとなる。戦車せんしゃのような装甲そうこう戦闘せんとう車両しゃりょうでもかつてはMTがもちいられたが、現在げんざいではだい出力しゅつりょくともないMT変速へんそく困難こんなんとなったため、基本きほんてきにATがもちいられている。

MT普及ふきゅうりつ低下ていかによる影響えいきょう

ひがしアジア、北米ほくべい中東ちゅうとう東南とうなんアジア、豪州ごうしゅうなどはATしゃ主流しゅりゅうとなり、つぎのような状態じょうたい発生はっせいしている。

  • MTが設定せっていされている車種しゃしゅ減少げんしょうし、おおくの車種しゃしゅ・クラスでMTしゃえらびたくてもえらべないほどにまでなっている。2019ねん平成へいせい31ねん/れい元年がんねん現在げんざい、AT専用せんようしゃ多数たすうめており、そのため、クラス・グレードをわず、すでATしゃ・CVTしゃしかないのが現状げんじょうである。よく境遇きょうぐうガラケーフィーチャーフォン)とスマホスマートフォン)の関係かんけいまさにこれとてはまり、ガラケーがMTしゃ、スマホがATしゃ・CVTしゃ揶揄やゆされることもすくなくない[だれによって?]
    • 近年きんねんでは乗用車じょうようしゃのAT進行しんこう影響えいきょうけるかたちで、それとプラットフォームを共用きょうようするステーションワゴンかたライトバンにおいてもMTが廃止はいしされている。たとえばトヨタ・ヴィッツがベースであるプロボックス/サクシードが、2014(平成へいせい26)ねんなつ衝突しょうとつ安全あんぜんせい見直みなおしで大幅おおはば改良かいりょうけたさい全車ぜんしゃCVTとなり、商用しょうようバンからMT仕様しよう消滅しょうめつした(ヴィッツのMTしゃ一時期いちじき設定せっていがなかった時期じきがあるが、現在げんざい設定せってい存在そんざいする)。
  • かつてはどういち車種しゃしゅどういちグレードで比較ひかくした場合ばあい、ATしゃはMTしゃよりも高額こうがくであったが、ATしゃ普及ふきゅうによって価格かかくちいさくなり、ほとんど価格かかくがないことがおおくなった。さらに、量産りょうさん効果こうか逆転ぎゃくてんすることもあり、ダイハツ・コペン場合ばあい、2010ねん平成へいせい22ねん)のマイナーチェンジでMTしゃのほうがATしゃよりわずかながらたかくなった。また、フィットRS場合ばあい、トランスミッション以外いがい装備そうびふくめて、MTしゃのほうがCVTしゃより20まんえん以上いじょうたか設定せっていされていた時期じきがある[注釈ちゅうしゃく 2]一方いっぽう近年きんねんのトヨタしゃ(カローラやヤリス)はMT仕様しようほう価格かかくやす設定せっていされている。
  • 自動じどう変速へんそく技術ぎじゅつ向上こうじょう自動じどう変速へんそく連動れんどうさせたエンジン回転かいてんすう燃料ねんりょう噴射ふんしゃなどの制御せいぎょ技術ぎじゅつなど変速へんそく以外いがい技術ぎじゅつ向上こうじょうによって、総合そうごうめんでの効率こうりつじょうのMTの優位ゆういちいさくなり、近年きんねんではほぼ逆転ぎゃくてんしている。2019ねん時点じてんではほとんどの車種しゃしゅにおいてAT、またはCVTのほう燃費ねんぴい。
  • かつてはスポーツカーはMTを搭載とうさいすることが一般いっぱんてきであったが、高速こうそくいきでクラッチを変速へんそくすることは危険きけんともなうため、日産にっさん・GT-Rホンダ・NSXトヨタ・スープラなどだい排気はいきりょうスポーツカーはモデルチェンジのすえにATまたはDCTのみとなっている。フェラーリランボルギーニもMTを廃止はいししている[10]。また、F1カーをはじめとしたプロレーシングカーでも、MTのクラッチ操作そうさ自動じどうしたセミATが主流しゅりゅうになっている。一方いっぽうで、スバル・WRX VAポルシェ・ケイマンマツダ・ロードスターのようにMTをのこすスポーツカーも存在そんざいする。

日本にっぽん国外こくがい普及ふきゅうじょうきょう

1980年代ねんだい以降いこう一般いっぱんてき乗用車じょうようしゃはATへの移行いこうすすみ、アメリカのMTしゃ普及ふきゅうりつは4.4%[11]日本にっぽん場合ばあいは1.7%[12]である。アメリカと日本にっぽんのメーカーのかく国内こくないけに販売はんばいされる車種しゃしゅは、ほとんどがATを搭載とうさいした仕様しようで、現在げんざいもMTが主流しゅりゅう欧州おうしゅうしゃも、日本にっぽん北米ほくべい輸出ゆしゅつされるものにはMTが設定せっていされていない車種しゃしゅおおい。その東南とうなんアジア、中国ちゅうごく中東ちゅうとう豪州ごうしゅうなどでもATが標準ひょうじゅんてきである。

ヨーロッパではMTしゃ販売はんばい台数だいすうおおく、日本にっぽんのメーカーで日本にっぽん国内こくない仕様しようにはMTを設定せっていしない車種しゃしゅでも輸出ゆしゅつようにはMTを設定せっていしている車種しゃしゅがある。ヨーロッパでMTしゃおおいことについてプジョーは、ヨーロッパの人間にんげんはATについて知識ちしき不足ふそくであり、ネガティブなイメージをっていること、販売はんばい価格かかくがMTよりたか普及ふきゅうしにくいとしている[13]

しかし、近年きんねんイタリアしゃフランスしゃではATの技術ぎじゅつ大幅おおはば進歩しんぽしてきており、ラインアップにも多数たすう採用さいようされてきていることからATのイメージも改善かいぜん片手かたて自由じゆうになるメリットも認知にんちされるようになり、車種しゃしゅによっては過半数かはんすうから90%がATしゃえらばれるなど、徐々じょじょにATが主流しゅりゅうとなりつつある[14]

脚注きゃくちゅう

注釈ちゅうしゃく

  1. ^ しがけは、くるますかくだざかでニュートラルでころがすなどして、速度そくどがったら適当てきとうなギアにれてクラッチをつなぐ。きがけはくるま牽引けんいんしてもらい、速度そくどがったら適当てきとうなギアにれてクラッチをつなぐことによってセルモーターを使つかわずにエンジンを始動しどうする。
  2. ^ 2代目だいめの2007ねん10がつ-2009ねん11月モデル[1]。2009ねん11月の一部いちぶ改良かいりょうによりCVTしゃとMTしゃどういち価格かかくになった[2]

出典しゅってん

  1. ^ コトバンクにてデジタル大辞泉だいじせんならびに大辞林だいじりんだいさんはん引用いんよう
  2. ^ Ferrari click-clack manual transmissions, RIP CAR MAGAZINE 2011ねん11月11にち
  3. ^ 池田いけだただしわたり週刊しゅうかんモータージャーナル」:一周いっしゅうして最先端さいせんたん、オートマにはないMTしゃの“ちょう可能かのうせい(2/4) IT Mediaビジネス 2016ねん3がつ7にち
  4. ^ a b c d だいくるまりん-自動車じどうしゃ情報じょうほう辞典じてん. 三栄書房さんえいしょぼう. (2003). ISBN 4879046787 
  5. ^ 変速へんそく単体たんたい重量じゅうりょうでは、依然いぜんとしてシングルクラッチのMTがもっと軽量けいりょうである。
  6. ^ 絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅか!? だいブーム到来とうらいか!? 「MT」の行方ゆくえはどっちだベストカーweb 2018ねん8がつ27にち
  7. ^ 警察庁けいさつちょう2014ねん運転うんてん免許めんきょ統計とうけい https://www.npa.go.jp/toukei/menkyo/index.htm
  8. ^ 若者わかもののバイクばなれに反攻はんこう、バカれ“Ninja250”にるカワサキの「掴(つか)むりょく」!
  9. ^ トヨタ カローラ スポーツ 燃費ねんぴ走行そうこう性能せいのうトヨタ自動車とよたじどうしゃ公式こうしきサイト
  10. ^ [3]
  11. ^ アーカイブされたコピー”. 2011ねん8がつ2にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2011ねん10がつ6にち閲覧えつらん
  12. ^ 2010ねん新車しんしゃ販売はんばい台数だいすうMT比率ひりつベストカープラス6月18にち増刊ぞうかんごう記事きじ
  13. ^ [4]
  14. ^ 「イタしゃ&フラしゃはMTだ」なんてふるい?WEBCG

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