塩谷朝業

凡例はんれい 塩谷しおや朝ちょう業ぎょう
時代じだい	平安へいあん時代じだい末期まっき - 鎌倉かまくら時代ときよ初期しょき
生誕せいたん	承うけたまわ安やす4年ねん1月がつ24日にち（1174年ねん2月がつ27日にち）
死没しぼつ	宝たから治おさむ2年ねん10月7日にち（1248年ねん10月24日にち）
改名かいめい	竹たけ千せん代だい（幼名ようみょう）→塩谷しおや朝ちょう業ぎょう→信生のぶお法師ほうし→信しん阿弥陀あみだ仏ほとけ
別名べつめい	四郎しろう、五郎ごろう（吾妻あづま鏡きょう）
戒名かいみょう	長ちょう興信おきのぶ生なま大だい禅定ぜんじょう門もん
官位かんい	従したがえ五ご位い下か、兵衛ひょうえ尉じょう、周防すおう守もり、民みん部ぶ大輔だいすけ
幕府ばくふ	鎌倉かまくら幕府ばくふ
主君しゅくん	源実朝みなもとのさねとも
氏族しぞく	下野しもの宇都宮うつのみや氏し→塩谷しおや氏し
父母ちちはは	父ちち：宇都宮うつのみや成しげる綱つな、母はは：新院しんいん蔵人くろうど平たいら長ちょう盛もり女おんな 養父ようふ：塩谷しおや朝ちょう義よし
兄弟きょうだい	頼綱よりつな、業ごう綱つな、永えい綱つな、朝ちょう業ぎょう
妻つま	塩谷しおや朝ちょう義ぎ女おんな
子こ	親朝ちかとも、益子ましこ継つぎ正ただし室しつ、笠間かさま時じ朝あさ、 小田おだ貞宗さだむね室しつ、朝あさ貞さだ

塩谷しおや 朝ちょう業ぎょう（しおのや ともなり）は、平安へいあん時代じだい末期まっきから鎌倉かまくら時代ときよ初期しょきにかけての武士ぶし・御家人ごけにん・歌人かじん。宇都宮うつのみや成しげる綱つなの子こ。母ははは平忠正たいらのただまさの長子ちょうしの新院しんいん蔵人くろうど長ちょう盛もり（新院しんいんは崇徳天皇すとくてんのうの事こと）の娘むすめ。実父じっぷと養父ようふの名なを取とって朝あさ業ぎょうと名乗なのる。下野しもの宇都宮うつのみや氏しの生うまれだが、当代とうだいの清和せいわ源はじめ氏し流ながれ塩谷しおや氏し当主とうしゅ朝あさ義よしに子こが無なかったことから、朝あさ義ぎの娘むすめ婿むことなり塩谷しおや氏しの名跡みょうせきを継つぐ。系図けいずでは、子こに塩谷しおや親朝ちかとも、笠間かさま時じ朝あさ、26歳さいで出家しゅっけして親鸞しんらんの弟子でしとなった塩谷しおや朝ちょう貞さだ（賢けん快かい・肥前ひぜん法師ほうし）、三さん人にんの男子だんしの間あいだに一人ひとりずつ娘むすめ（第だい二に子し、第だい四よん子し）がいる。

略歴りゃくれき

宇都宮うつのみや氏し宗家そうけ4代だい当主とうしゅ宇都宮うつのみや成しげる綱つなと平忠正たいらのただまさの孫娘まごむすめを父母ちちははに持もつ。塩原しおばら地方ちほうの統治とうち基盤きばんのてこ入いれとして、後継こうけい者しゃの無ない塩谷しおや朝ちょう義ぎの養子ようしとして塩谷しおや氏しを継つぐ。

承うけたまわ安やす4年ねん（1174年ねん）1月がつ24日にち (旧暦きゅうれき)に生うまれ、建たて久ひさ3年ねん（1192年ねん）に父ちち・業ぎょう綱つなが夭逝ようせい、2年ねん後ごの建けん久ひさ5年ねん（1194年ねん）5月がつには祖父そふ・朝あさ綱つなが下野しもの守まもる野呂のろ行こう房ぼうより公田くでん横領おうりょうを訴うったえられ、同年どうねん7月がつには朝あさ業ぎょうも連座れんざの咎とがめで周防すおう国こく国府こくふへと配流はいるされる。この時とき、朝あさ綱つなは土佐とさ国こく、兄あに・頼綱よりつなは豊後ぶんご国こくへ流ながされている。源みなもと頼朝よりともの働はたらきかけがあったか、早はやいうちに赦免しゃめんされ帰国きこくする。なお一説いっせつに実際じっさいには周防すおう国こくには行いかなかったとされる。

朝ちょう業ぎょうがいつ塩谷しおや氏しの養子ようしとなりその名跡みょうせきを継ついだかは不ふ詳しょうであるが、朝ちょう業ぎょうの領地りょうちの一ひとつであった下伊佐野しもいさのの箒ほうき根ね神社じんじゃの由緒ゆいしょ沿革えんかくによれば、建たて久ひさ2年ねん（1191年ねん）に下伊佐野しもいさの一帯いったいが朝あさ業ぎょうの領地りょうちとなり、免めん地ち高だか二に石せき二に斗とを寄進きしんされたとあり、この頃ころか、少すくなくともこの時とき以前いぜんには、家督かとくを継ついでいたものと考かんがえられている。

こうして朝ちょう業ぎょうは塩谷しおや郡ぐんにおける宇都宮うつのみや氏し族ぞくの防衛ぼうえい基盤きばんを構築こうちくする傍かたわら、建たて仁ひとし3年ねん（1203年ねん）に第だい3代だい将軍しょうぐんとなった源実朝みなもとのさねともに仕つかえて歌詠うたよみの相手あいてとなる。『吾妻あづま鏡きょう』によると、建けん暦れき2年ねん2月がつ1日にち（1212年ねん3月12日にち）に実じつ朝あさが梅うめの花はなを一いち枝折しおりって送おくり人じん知しらずで朝あさ業ぎょうに届とどけさせると、朝ちょう業ぎょうは直すぐに実じつ朝あさの仕業しわざと解かいし「嬉うれしさも匂においも袖そでに余あまりける、我わが為ため折おれる梅うめの初はつ花はな」と一いち首しゅ詠よんで追つい奉ほうしたとある。朝ちょう業ぎょうと実じつ朝あさは身分みぶんを越こえて親したしい間柄あいだがらとなり、建たて保たもつ7年ねん1月がつ27日にち（1219年ねん2月がつ20日はつか）に実じつ朝ちょうが公おおやけ暁あかつきに暗殺あんさつされると、塩谷しおやに戻もどり出家しゅっけして信生のぶおと号ごうし隠遁いんとんした。その後ご半生はんせいは歌人かじんとして『信生のぶお法師ほうし日記にっき』を著あらわすなど、兄あに・頼綱よりつな入道にゅうどう蓮はちす生せい法師ほうしと共ともに宇都宮うつのみや歌壇かだんを創成そうせいし、また高僧こうそう法然ほうねんを畏敬いけいしてその弟子でしの証あかし空むなしに師事しじし、文人もんと・宗教しゅうきょう人じんとして京きょうで暮くらした。元げん仁ひとし2年ねん（1225年ねん）4月がつには善行ぜんこう寺詣てらもうでの途中とちゅうで、前年ぜんねんの伊賀いが氏し事件じけんで信濃しなの国こくに配流はいるされた旧知きゅうちの伊賀いが光ひかり宗むねを姥捨山うばすてやまの麓ふもとにあるという配所はいしょに訪たずね、和歌わかを詠よみ交かわしている。

嘉よしみ禄ろく3年ねん（1227年ねん）に発生はっせいした嘉よしみ禄ろくの法難ほうなんの際さいには、延暦寺えんりゃくじの僧兵そうへいから法然ほうねんの遺骸いがいを守まもるために、信生のぶお（朝ちょう業ぎょう）と兄あにの蓮はちす生せい（頼綱よりつな）の他ほか、法ほう阿おもね（東ひがし胤たね頼よりゆき）、道みち弁べん（渋谷しぶや七郎しちろう）などの出家しゅっけ者しゃや六ろく波は羅ら探題たんだいの武士ぶし団だんらと共ともに、東山ひがしやまの法然ほうねん廟所びょうしょから二尊院にそんいんまでの遺骸いがい移送いそうの護衛ごえいにあたった。

年譜ねんぷ

• 1174年ねん（承うけたまわ安やす4年ねん1月がつ24日にち） - 宇都宮うつのみや業ぎょう綱つなの次男じなんとして朝ちょう業ぎょう（幼名ようみょう竹ちく千せん代だい）誕生たんじょう。
• 1192年ねん（建たて久ひさ3年ねん） － 2月がつ24日にち、父ちち・業ごう綱つなが夭逝ようせい(37歳さい)する。
• 1194年ねん 6月17日にち（建たて久ひさ5年ねん5月がつ20日はつか (旧暦きゅうれき)） – 下野げや国こく国司こくしの野呂のろ行こう房ぼうから祖父そふ朝あさ綱つなが公田くでん掠かすめ領りょう（百ひゃく余よ町まち）したと訴うったえられ、周防すおう国こくに配流はいるとなる。〔吾妻あづま鏡きょう〕
• 1199年ねん（正治しょうじ元年がんねん） － この頃ころから川崎かわさき城じょうの築城ちくじょうを開始かいしする。
• 1204年ねん（建たて仁ひとし3年ねん） － 源実朝みなもとのさねともが第だい3代だい将軍しょうぐんとなり、これに仕つかえて歌詠うたよみの相手あいてとなる。
• 1204年ねん（建たて仁ひとし4年ねん） － この頃ころまでに川崎かわさき城じょうが竣工しゅんこうし、居城きょじょうを川崎かわさき城じょうに移うつす。
• 1212年ねん3月12日にち（建けん暦れき2年ねん2月がつ1日にち） － 実じつ朝あさが梅うめ一枝かずえを持参じさんさせた返歌へんかとして「嬉うれしさも匂においも袖そでに余あまりける、我わが為ため折おれる梅うめの初はつ花はな」と詠よむ。〔吾妻あづま鏡きょう〕
• 1213年ねん10月12日にち（建けん暦れき3年ねん8月がつ20日はつか） － 和田わだ合戦かっせんで将軍しょうぐん御所ごしょが焼失しょうしつしたため、新しん御所ごしょを建たてて移転いてんが行おこなわれた。京きょうからの使者ししゃを新しん御所ごしょに迎むかえるための行列ぎょうれつの御ご後ごの一人ひとりとして参列さんれつする。〔吾妻あづま鏡きょう〕
• 1214年ねん9月9日にち（建たて保たもつ2年ねん7月がつ27日にち） － 鎌倉かまくら大倉おおくらの大慈寺だいじじ新御堂しみどうで供養くようがあり、随ずい兵へいの一人ひとりとして実じつ朝あさに付つき従したがう。〔吾妻あづま鏡きょう〕　（同年どうねん頃ごろ、妻つま死しす。）
• 1218年ねん7月がつ27日にち（建けん保ほ6年ねん6月27日にち） － 実じつ朝あさ右みぎ大将たいしょう就任しゅうにんの拝賀はいがのため、鶴岡つるおか八幡宮はちまんぐうに参さんずる行列ぎょうれつに衛まもる尉じょうの一人ひとりとして追従ついしょうする。〔吾妻あづま鏡きょう〕
• 1219年ねん2月がつ20日はつか（建けん保ほ7年ねん1月がつ27日にち） － 実じつ朝あさ右大臣うだいじん就任しゅうにんの拝賀はいがのため、鶴岡つるおか八幡宮はちまんぐうに参さんずる行列ぎょうれつに参列さんれつする。実じつ朝あさ、阿闍梨あじゃり公おおやけ暁あかつきに襲おそわれて落命らくめいする。〔吾妻あづま鏡きょう〕
• 1220年ねん（承うけたまわ久ひさし2年ねん2月がつ） - 法然ほうねんの後継こうけい者しゃ証しょう空そら上人しょうにんの教導きょうどうにより出家しゅっけし、信生のぶお法師ほうしを名乗なのる。
• 1225年ねん（嘉よしみ禄ろく元年がんねん） - 2月がつ10日とおか、修行しゅぎょうのため、東海道とうかいどうを下くだる。2月29日にち、鎌倉かまくら到着とうちゃく。3月4日にち、北条ほうじょう政子まさこの許ゆるしを得えて持仏堂じぶつどうにて実じつ朝あさの念仏ねんぶつ供養くよう。
• 1226年ねん（嘉よしみ禄ろく2年ねん） - 妻つま十じゅう三さん回忌かいき。この頃ころ、川崎かわさき城じょうに帰かえる。
• 1248年ねん（宝たから治おさむ2年ねん10月7日にち） - 京都きょうとにて客死かくし。火葬かそうされる。享年きょうねん75。