ß

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ẞß ẞß
ラテン文字もじ
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ジュッターリーンたい

ßエスツェットeszett [ɛsˈt͡sɛt])またはシャーフェス・エスscharfes S [ʃaɐfəs ˈɛs]するどS)とばれ、ドイツ正書法せいしょほうラテン文字もじアルファベット)にくわえて使つかわれる文字もじである。元来がんらい小文字こもんじだけであるが、2017ねん以降いこう正式せいしき大文字おおもじ使つかわれている。スイスではこの文字もじ使つかわず、わりに「ss」とつづる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

この文字もじごう(リガチャ)のひとつである。スイスをのぞき、エスツェットはドイツ正書法せいしょほうにおいて固有こゆう機能きのう文字もじであり、s の無声音むせいおん /s/あらわすためにもちいられる。

一般いっぱんには ß は、おなじく s の無声音むせいおん /s/あらわす ss とほぼ等価とうかであり、ss を1文字もじいたものとされる。辞書じしょでは ss の位置いちかれる。また、英文えいぶんタイプライターなどで ß表示ひょうじできないときも ss と代用だいよう表記ひょうきすることになっている。正書法せいしょほうßもちいるのは、つぎのような場合ばあいである。

  • ちょう母音ぼいんのち - ドイツ正書法せいしょほうでは、ちょう母音ぼいんのちには子音しいんを1つ、たん母音ぼいんのちには子音しいん複数ふくすうくという原則げんそくがある。このため、ちょう母音ぼいんのちには ss をくことができず、一方いっぽう単独たんどくの s は母音ぼいんまえではゆうごえ/z/あらわすため、ßもちいる。
  • 語末ごまつ - きゅう正書法せいしょほうでは、語末ごまつ/s/ には、s と ß の2つのつづりがあり、単語たんごによってけられた。たとえば同音どうおん異義いぎdasdaß がそうだった。1996ねんしん正書法せいしょほうでは、たん母音ぼいんのちß は ss とつづるようになったので、前記ぜんきかたりdasdass になった。

しん正書法せいしょほうでは ß使つかえないときのえにはつねに ss がもちいられるよう規定きていされた。きゅう正書法せいしょほうでは sz もまたみとめられるえであった。旧東きゅうとうドイツ政府せいふにおいても sz をみとめようとするうごきがあった。

かたり全体ぜんたい大文字おおもじくときは SS とくが、ß大文字おおもじとして使つかうか、Unicodeに登録とうろくされている ß大文字おおもじ)を使つかうことも散見さんけんされる。固有名詞こゆうめいしなどは混同こんどうけるため ß をそのままもちいる。たとえばせいWeissWeiß大文字おおもじくときは、それぞれ WEISS, WEIß, WEI になる。

2017ねん、ドイツ正書法せいしょほう協議きょうぎかいRat für deutsche Rechtschreibung)は、ついに大文字おおもじß)をドイツ正書法せいしょほう採用さいようし、正書法せいしょほうをめぐる論争ろんそう終止符しゅうしふった[1]。「Straße」という言葉ことば全部ぜんぶ大文字おおもじ場合ばあい従来じゅうらいどおり「STRASSE」といても、大文字おおもじもちいて「STRAE」といても、どちらもただしい。

このきわめてドイツてきごうかたち適切てきせつめるための議論ぎろんが、いまもなおつづいていることは、あたらしいタイポグラフィーデザインにしめされている。

起源きげん[編集へんしゅう]

エスツェットのタイポグラフィには大別たいべつして3つあり、ſながいsばれ、f にているが、よこぼうみぎさない)と普通ふつうsごうドイツ文字もじſ(エス)とz(ツェット、ドイツ文字もじの z は筆記ひっきたいの z とている。下記かき画像がぞう参照さんしょう)のごうの、系統けいとうがある。現在げんざいラテン字母じぼとともに使つかわれる文字もじがたſs ごう由来ゆらいする。また、「エスツェット」の名称めいしょう後者こうしゃ由来ゆらいする。

エスツェットのタイポグラフィ

大文字おおもじ[編集へんしゅう]

大文字おおもじ
1957ねんライプツィヒ出版しゅっぱんのドゥーデン辞書じしょ表紙ひょうし

ドイツには「ß」ではじまる単語たんごはないので、基本きほんてきには大文字おおもじ必要ひつようはないが、ある題名だいめい強調きょうちょうするさい全文ぜんぶん大文字おおもじかなければいけないような場合ばあいもある。そのため19世紀せいき後半こうはん大文字おおもじ」の使用しよう提唱ていしょうされるようになったものの、すぐに普及ふきゅうすることはなく、もっぱら「SS」などで代用だいよう表記ひょうきされた。

ただし単語たんごによっては「SS」でくと、ただしい単語たんごしめせない可能かのうせいがある。たとえば「MASSE」が「Masseかたまり群衆ぐんしゅう)」とかれているのか、「Maßeおおきさ、範囲はんい)」とかれているのかがどっちつかずとなってしまう。

このためながらく議論ぎろんつづいていたが、21世紀せいき初頭しょとうふたた大文字おおもじ」の使用しようもとめるこえたかまり、2008ねん登場とうじょうしたUnicode 5.1では大文字おおもじ」が登録とうろくされ、対応たいおうしたコンピューターフォントがあれば出力しゅつりょくすることができるようになった。

2016ねんにはドイツ正書法せいしょほう審議しんぎかい大文字おおもじ」を正式せいしきれることをめ、2017ねんあらたな正書法せいしょほう公布こうふされた[2]代用だいよう表記ひょうきである「SS」もつづ利用りようすることができるとされ、今日きょうでは「SS」と「」は等価とうかでどちらの表記ひょうきただしいものとされる。

備考びこう[編集へんしゅう]

ギリシャ文字もじΒべーた(ベータ)の小文字こもじβべーた」とているが、まったべつ文字もじである。情報処理じょうほうしょり機器ききとうあつかえる文字もじß がない場合ばあい便宜べんぎてきに「βべーた」で代用だいようすることがあるが、ドイツでは「ss」で代用だいようすることがつね推奨すいしょうされる。

大文字おおもじUnicodeに U+1E9E として収録しゅうろくされている。コードチャートのグリフは「」となっているが、フォントや環境かんきょうによっては「SS」という表示ひょうじになることがある。

符号ふごう位置いち[編集へんしゅう]

大文字おおもじ Unicode JIS X 0213 文字もじ参照さんしょう 小文字こもんじ Unicode JIS X 0213 文字もじ参照さんしょう 備考びこう
U+1E9E - ẞ
ẞ
ß U+00DF 1-9-53 ß
ß
ß

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Ha, Thu-Huong. “Germany has ended a century-long debate ove1r a missing letter in its alphabet” (English). 2017ねん8がつ9にち閲覧えつらん。 “According to the council’s 2017 spelling manual: When writing the uppercase [of ß], write SS. It’s also possible to use the uppercase ẞ. Example: Straße — STRASSE — STRAẞE.”
  2. ^ Amtliches Regelwerk der deutschen Rechtschreibung aktualisiert - Rat für deutsche Rechtschreibung