ゲール文字もじ

「インシュラー体たい」も参照さんしょう

ラテン文字もじ (ゲール変種へんしゅ)
類型るいけい:	アルファベット
言語げんご:	アイルランド語ご
時期じき:	1571 –
親おやの文字もじ体系たいけい:	ラテン文字もじ インシュラー体たい ラテン文字もじ (ゲール変種へんしゅ)
ISO 15924 コード:	Latg
注意ちゅうい: このページはUnicodeで書かかれた国際こくさい音声おんせい記号きごう (IPA) を含ふくむ場合ばあいがあります。

ゲール文字もじ(ゲールもじ)は、アイルランド文字もじ、ゲール書体しょたいなどとも呼よばれ、アイルランド語ごを印刷いんさつするための、インシュラー体たいに属ぞくする書体しょたいである。16世紀せいきから20世紀せいき半なかばまで広ひろく使つかわれたが、現在げんざいはほとんど使つかわれない。すべてのゲール書体しょたいについて「ケルト書体しょたい」あるいは「アンシャル体たい」と言いわれることがあるが、実際じっさいには大だい部分ぶぶんのゲール書体しょたいはアンシャル体たいではない。17世紀せいきの古こ英語えいご用ようの書体しょたいもこの範疇はんちゅうに含ふくめられることがある。古こ英語えいご用ようの字じもゲール文字もじも手書てがき用ようのインシュラー体たいの文字もじに由来ゆらいしている。

「ゲール文字もじ」ないし「アイルランド文字もじ」という語かたりは、アイルランド語ごでは cló Gaelach ([kɫ̪oː ˈɡˠeːɫ̪əx]) と翻訳ほんやくされる。アイルランドでは、cló Gaelach は、cló Rómhánach (ラテン文字もじ)の対たいになる語かたりとして使つかわれる。

特徴とくちょう

ゲール文字もじの諸しょ書体しょたいの一覧いちらん

ラテン文字もじの26字じに加くわえて、ゲール文字もじのタイプフェイスはアキュート・アクセントつきのすべての母音ぼいん(Áá Éé Íí Óó Úú)と、上うえドットのついた子音しいん(Ḃḃ Ċċ Ḋḋ Ḟḟ Ġġ Ṁṁ Ṗṗ Ṡṡ Ṫṫ)、およびアイルランド語ごの agus (「…と」)のために用もちいるティロ式しき記号きごうの et (⁊)を含ふくんでいなければならない。そのほかにゲール文字もじのタイプフェイスはしばしばインシュラー体たいの s と r を用意よういしており、また初期しょきのタイポグラフィで使つかわれ、手書てがきの伝統でんとうに由来ゆらいする合ごう字じを含ふくむものもある。小文字こもじの i は上うえの点てんなしに書かかれ(ただしトルコ語ごの点てんのない i とは別物べつもの)、d、f、g、t はインシュラー体たいと同おなじ形がたをしている。 現代げんだいの多おおくのゲール文字もじのタイプフェイスは、(アイルランド語ご正書法せいしょほうで使つかわれない) j、k、q、v、w、x、y、z についてもゲール文字もじ式しきの字体じたいを含ふくみ、また通常つうじょうは他たのケルト語ご派はの言語げんご用ようの少すくなくとも母はは音字おんじを持もっている。また、& と ⁊ を区別くべつする(伝統でんとう的てきなタイポグラフィも同様どうようであった)。ただし、両方りょうほうとも「…と」を意味いみするため、現代げんだいのフォントのいくつかは、アンパサンドをティロ式しき記号きごうで置おきかえている。

起源きげん

詳細しょうさいは「インシュラー体たい」を参照さんしょう

ゲール文字もじの Corcaigh フォントで「Corcaigh」と書かいた例れい

アイルランドのアンシャル体たいの文字もじは、ラテン文字もじの「インシュラー」(島しま)変種へんしゅと同様どうよう、中世ちゅうせいの手書てがき文字もじに由来ゆらいする。ゲール文字もじの最初さいしょの活字かつじは1571年ねんにエリザベス1世せいがアイルランドのローマ・カトリック教徒きょうとを英国えいこく教きょうに改宗かいしゅうさせるために依頼いらいしたカテキズムを印刷いんさつするために設計せっけいされた。

使用しよう

ゲール文字もじの印刷いんさつは、20世紀せいき半なかばまでアイルランドでは普通ふつうに行おこなわれていた。しかし現在げんざいではゲール文字もじは装飾そうしょく目的もくてきを除のぞいて、めったに印刷いんさつされることはない。例たとえば、伝統でんとう的てきなアイルランドの新聞しんぶんの多おおくは今いまも最初さいしょのページの誌し名めいの部分ぶぶんをゲール文字もじで記しるしているほか、パブの看板かんばんや、グリーティング・カードや、ディスプレイ広告こうこくに使つかわれている。エドワード・ルイドのコーンウォール語ご文法ぶんぽうでは、[ð] や [θしーた] などの音おとを示しめすのにゲール文字もじを使用しようしている。

Unicode のゲール文字もじ

Unicode はゲール文字もじをラテン文字もじのフォント差さとみなしている。小文字こもじのインシュラー体たいの G (ᵹ) はアイルランド語学ごがくで [ɣ] を表あらわす音声おんせい記号きごうとして使つかわれているため、Unicode 4.1 で音声おんせい記号きごう拡張かくちょうブロックに追加ついかされた。 Unicode 5.1 (2008年ねん) ではさらに大文字おおもじの G (Ᵹ) を追加ついかし、そのほかに エドワード・ルイドが1707年ねんの『Archaeologia Britannica』でコーンウォール語ごの科学かがく的てき正書法せいしょほうのために使つかったという理由りゆうで D、F、R、S、T の大文字おおもじと小文字こもじを追加ついかした。

• Ᵹ ᵹ インシュラー体たいG (U+A77D, U+1D79)
• ◌ᷘ 上うえつきの小文字こもじインシュラー体たいD　(U+1DD8) （古こノルド語ごで使用しよう）
• Ꝺ ꝺ インシュラー体たいD (U+A779, U+A77A)
• Ꝼ ꝼ インシュラー体たいF (U+A77B, U+A77C)
• Ꝿ ꝿ 180度ど回転かいてんしたインシュラー体たいG (U+A77E, U+A77F)
• Ꞃ ꞃ インシュラー体たいR (U+A782, U+A783)
• Ꞅ ꞅ インシュラー体たいS (U+A784, U+A785)
• Ꞇ ꞇ インシュラー体たいT (U+A786, U+A787)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

A

B

C

D

E

F

U+1D7x

ᵹ

U+1DDx

◌ᷘ

U+204x

⁊

U+A77x

Ꝺ

ꝺ

Ꝼ

ꝼ

Ᵹ

Ꝿ

ꝿ

U+A78x

Ꞃ

ꞃ

Ꞅ

ꞅ

Ꞇ

ꞇ

例れい

Duibhlinn (1906年ねんのモノタイプシリーズ24 Aを元もとに作つくられた1993年ねんのデジタルフォント)

Ceanannas (アーサー・ベイカーによりケルズの書しょのレタリングを元もとに作つくられた1993年ねんのデジタルフォント)

上うえの各かく図ずの最初さいしょの文ぶんはパングラムになっている。

Ċuaiġ bé ṁórṡáċ le dlúṫspád fíorḟinn trí hata mo ḋea-ṗorcáin ḃig.

と書かいてあり、「大おおいに満足まんぞくした女おんなは本当ほんとうに白しろく濃こい鋤すきで私わたしのよく小ちいさく太ふとらせた豚ぶたの帽子ぼうしを突つき通とおした」という意味いみである。

2番目ばんめ(一番いちばん下か)の文ぶんは、

Duibhlinn/Ceanannas an cló a úsáidtear anseo

と書かいてあり、「Duibhlinn/Ceannanas はここで使つかわれているフォントである」という意味いみである。2番目ばんめの文ぶんは短みじかい r と s を使つかっており、1番目ばんめの文ぶんでは長ながい r と s を使つかっている。

ギャラリー

• 
  ダブリン城じょうに近ちかいダブリン市役所しやくしょの由来ゆらいを示しめす飾かざり板ばんにゲール文字もじを使用しよう
• 
  ローマの教皇きょうこう庁ちょう立たてアイルランド大学だいがくの門もんに使つかわれているゲール文字もじ
• 
  ケリー県けんの墓石はかいしに刻きざまれたゲール文字もじ
• 
  アイルランドのナショナル・モニュメントの説明せつめいに使つかわれるゲール文字もじ

関連かんれん項目こうもく

• ブラックレター
• フラクトゥール
• インシュラー体たい
• アイルランド語ご
• ISO/IEC 8859-14
• ラテン文字もじ
• ローマン体たい
• アンシャル体たい
• {{Script/Gaelic}}
  • {{Gaelic}}

関連かんれん文献ぶんけん

• Lynam, E. W. (1969). The Irish character in print: 1571–1923. New York: Barnes & Noble  (初版しょはんは Transactions of the Bibliographical Society, 4th Series, Vol. IV, No. 4, March 1924 の Oxford University Press による抜刷ぬきずり)
• McGuinne, Dermot. Irish type design: A history of printing types in the Irish character. Blackrock: Irish Academic Press. ISBN 0-7165-2463-5 

参考さんこう文献ぶんけんおよび外部がいぶリンク

• Michael Everson (2000年ねん6月がつ19日にち). “History and classification of Gaelic typefaces”. 2013年ねん10月がつ7日にち閲覧えつらん。
• Michael Everson. “Celtscript range of fonts”. 2013年ねん10月がつ7日にち閲覧えつらん。
• Brendan Leen. “Four centuries of printing in the Irish character”. Drumcondra: Cregan Library, St Patrick's College. 2013年ねん10月がつ7日にち閲覧えつらん。
• Vincent Morley. “An Cló Gaelach”. 2013年ねん10月がつ7日にち閲覧えつらん。 （アイルランド語ご）
• Mícheál Ó Searcóid (1990年ねん). “The Irish Alphabet”. 2013年ねん10月がつ7日にち閲覧えつらん。 (アイルランドの活字かつじの起源きげん、歴史れきし、現在げんざいの使用しように関かんする記事きじ)
• Mathew D. Staunton (2005). “Trojan Horses and Friendly Faces: Irish Gaelic Typography as Propaganda”. La revue LISA III; n°1: 85-98. ISSN 1762-6153. 
• Bunchló GC (Unicode の現代げんだいゲール語ご小文字こもじフォント)
• Gadelica (Unicode の伝統でんとう的てきゲール語ご小文字こもじフォント)
• Gaelic Fonts for MS-Windows — basic information and a summary of what's available